誤振り込みと詐欺罪

2020-04-19

誤振り込みによって得たお金を引き出して使用することで何らかの犯罪に問われるのか,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

【事件】

福岡市西区に住むAさんは自身の銀行口座にV名義の口座から約10万円の振り込みがあったことに気付きました。
身に覚えのなかったAさんですがつい出来心でこのお金を銀行の窓口で引き出し遊興費として使ってしまいました。
後日,誤振り込みをしてしまったことに気付いたVさんが銀行に問い合わせ銀行から福岡県警察西警察署に被害が届けられました。
Aさんは福岡県警察西警察署で事情を聞かれることになっています。
(フィクションです)

【誤振り込み】

誤振り込みされたお金を銀行の窓口で引き出してしまった場合,詐欺罪(刑法第246条)に問われる可能性があります。

刑法第246条
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。
第2項 前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,前項と同様とする。

判例(最決平成15・3・12刑集57巻3号322頁)は,被告人が自己の口座に誤振り込みがあったことを知りながら銀行に誤振り込みがあったことを告げず払い戻しを
受けた事件について以下のような理由で詐欺罪が成立するものとしました。

すなわち,振込依頼人と受取人との間に振り込みの原因となる法律関係は存在しませんが,このような振り込みであっても,受取人である被告人と振込先の銀行との間に振込
金額相当の普通預金契約が成立し,被告人は,銀行に対し,上記金額相当の普通預金債権を取得します。
つまり,民事上は,誤振り込みされた者が銀行に対して誤振り込みされたお金を引き出すことを要求する権利があるということです。
そうであれば、誤振り込みされた者は飽くまでも正当な権利を行使しているに過ぎず、それが詐欺罪に当たるなどと言われる筋合いはないのではないかとも考えられます。

しかし他方で,銀行実務では組戻しなどの手続きによって受取人の承諾を得て誤振り込みがあった以前の状態にしたり,受取人からの誤振り込みの指摘により振り込みに誤り
がなかったかを確認・照会するなどの措置が行われています。
そしてこれらの銀行の措置は安全な振込送金制度を維持するために必要なものであり,受取人においても,銀行との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行って
いる者として,自己の口座に誤った振り込みがあることを知った場合には,銀行に上記の措置を講じさせるため,誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務
があります。
この義務に反して,誤った振り込みがあることを知った受取人が,誤振り込みされたという事情を隠して預金の払戻しを請求することは,本来言わなければならないことを言
わないことで銀行を欺くという点で,詐欺罪の欺罔行為に当たると評価できます。
また,誤った振り込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるので,錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払い戻しを受けた場合には,詐欺罪が成立します。

以上が判例が示した理由と結論です。
この判例に従えば,今回の事件においてもAさんに詐欺罪が成立する可能性はあります。

ただし、銀行の窓口ではなくATMでお金を引き出した場合については、人が介在しないことから詐欺罪は成立しないという見解が支配的です。
その場合でも、ATMの操作に不正があったとして電子計算機使用詐欺罪に当たる、あるいは銀行の意思に反して金銭を自己のものにしたとして窃盗罪に当たると考えられていま
す。
電子計算機使用詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役,窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。

【弁護活動】

Aさんから依頼を受けた弁護士はどのように警察に話したらよいのか,今後予想される手続きなどをAさんに説明します。

今回のような詐欺事件ですと,被害者との示談を成立させることで不起訴処分を獲得できる可能性を高めることが活動の中心となる場合が多いです。
今回の事件の場合,実質的に被害を受けたのはVさんですが,理論的に詐欺罪の相手方となっているのは銀行です。
こうしたケースについては、誰を相手方として示談を行うのが効果的か検討の余地があるかもしれません。

謝罪や示談交渉が実を結ぶためには場合によっては多くの時間がかかることもあります。
またあくまで一般論ですが,心理的にも早期から謝罪を申し入れられた方が最終的に受け入れてもらいやすいことが多いです。

被害額が多額に上らない場合でも,早期から刑事事件に強い弁護士に事件を依頼しているかそうでないかでは結果に大きな違いが出てきます。

誤振り込みされたことを銀行に伝えずお金を使ってしまった方,詐欺事件の被疑者となってしまった方,福岡県警察西警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お
早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

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