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【事例解説】致死量未満の睡眠薬大量摂取による嘱託殺人未遂事件(前編)

2023-09-05

 自らの殺害を依頼された配偶者に睡眠薬を大量摂取させたものの、致死量未満のため殺害に至らなかった架空の事件を参考に、嘱託殺人罪の成立と未遂犯・不能犯の区別について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住の男性A(65歳)は、進行性の難病を患い数年前から寝たきりの妻V(64歳)と二人で生活していましたが、Vは「もう生きることが辛い。Aにこれ以上迷惑をかけるのも嫌だから殺してくれないか。」とAに懇願するようになりました。
 Aは都度拒んでいたものの、Vに連日懇願されたことから意を決し、Vを殺すために睡眠薬を大量に摂取させましたが、致死量を勘違いし、摂取させた睡眠薬の量は、成人女性の通常の致死量の10分の1程度であったため、Vは数日後に目を覚ましました。
 Vに懇願されて行ったこととはいえ、罪の意識に苛まれたAは警察に自首し、嘱託殺人未遂の容疑で取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)

嘱託殺人罪とは

 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する、と定められています(刑法第202条)。

 同条は、(1)人を教唆して自殺させる自殺教唆罪、(2)人を幇助して自殺させる自殺幇助罪、(3)嘱託を受けて人を殺す嘱託殺人罪、(4)承諾を受けて人を殺す承諾殺人罪の4つの罪が定められており、(1)と(2)とをまとめて自殺関与罪、(3)と(4)とをまとめて同意殺人罪と言うこともあります。本件Aは、(3)嘱託殺人罪の未遂の容疑となっています。

 嘱託殺人罪における「嘱託」(被害者から行為者への自らの殺害依頼)は、被害者の真意に基づき、かつ明示的なものでなければならないとされており、これらが欠けての殺害行為については、通常の殺人罪(刑法第199条)が成立することとなります。

次回の後編では、未遂犯・不能犯の区別について、解説します。

嘱託殺人事件の刑事弁護

 嘱託殺人罪は、「人を殺す」という点では殺人罪と変わらないため、被害者から行為者への殺害依頼が存在したのか、その依頼が被害者の真意に基づくものであったのかが、取調べにおいて厳しく追及される可能性が高いです。
 また、(3)嘱託殺人よりも (4)承諾殺人の方が一般に量刑相場が重いこともあり、加害者から被害者に対し、殺害への承諾の働きかけがなかったなど、併せて追及されることが考えられます。
 取調べで供述する内容は、裁判で証拠として用いられることとなるため、取調べに際しては、刑事事件に強い弁護士から、どのように受け答えをすればよいか等のアドバイスを事前に受けることをお勧めします。

 なお、本件Aのように、事件が捜査機関に発覚する前に自首したときは、刑が減軽される場合があるほか、逃亡・罪証隠滅の恐れがないとして、逮捕を回避する可能性を高めることも期待できます。
 自首を検討している場合、自首の成立要件が満たされているか、自首した後の刑事手続きの見通しなどについて、あらかじめ刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、主に刑事事件を取り扱う法律事務所で、様々な刑事事件における取調べ対応の豊富な実績があります。
 嘱託殺人罪で自身やご家族が取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】乗り捨てされた自転車の一時使用による占有離脱物横領罪(後編)

2023-09-02

 前回に引き続き、共同住宅に乗り捨てされた放置自転車を一時的に使用したことで、占有離脱物横領罪で取調べを受けた架空の事件とその弁護活動ついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 北九州市内の共同住宅に居住する自営業男性A(42歳)は、共同住宅の駐輪場に数日前から放置されている鍵の付いていない自転車を、近所のスーパーなどへの買い物で2時間程度、繰り返し使用するようになりました。
 いつもの通り自転車に乗って近所のスーパーに向かっていたとき、鍵の付いていない自転車を見て不審に思った警察官に呼び止められ、職務質問を受けました。
 警察の調べで、Aが使用していた自転車は、数日前に窃盗の被害に遭い乗り捨てられたものであることが判明し、Aは占有離脱物横領の容疑で警察の取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)

前回の前編では、占有離脱物横領罪の成立について、「不法領得の意思」以外の要件を解説しました。

不法領得の意思とは

 不法領得の意思とは、窃盗罪や横領罪などの領得罪の成立において、不可罰的な一時使用行為や、罪質の異なる毀棄・隠匿罪との区別のために、故意と別個の主観的要件として必要とされるものです。
 窃盗罪の判例ですが、不法領得の意思の内容は、(1)所有者などの権利者を排除して他人の物を自己の物として振る舞う意思(権利者排除意思)と、(2)他人の物をその経済的用法に従い、利用又は処分する意思(利用・処分意思)、とされます。

 本件における占有離脱物横領罪の成立について、Aが自転車を、近所のスーパーなどへの買い物で2時間程度使用した行為に、(1)権利者排除意思や(2)利用・処分意思が認められるか問題となり、自転車の使用時間や使用方法、自転車自体の価値や使用に伴う価値の減少の程度、自転車の所有者の利用可能性の排除の程度、など様々な要素から判断されると考えられます。

 窃盗罪占有離脱物横領罪の裁判例では、乗り捨ての意思がなく元の場所に返還する意思をもって、短時間、他人の自転車を一時使用した行為について、不法領得の意思が認められないとして、罪の成立を否定したものもありますが、判例上明確な基準が確立されているわけではなく、自転車の一時使用で不法領得の意思を認めた裁判例もあります。

一時使用による占有離脱物横領罪の弁護活動

 不法領得の意思が認められないとして、占有離脱物横領罪の成立を争うことも可能ではありますが、早期に被害者との示談を成立させ不起訴処分での事件の終了を目指すことも、現実的な選択肢の一つと考えられます。

 本件における被害者は、自転車の所有者となります。所有者から自転車を窃盗した犯人が別にいるとはいえ、占有離脱物横領罪に係る自転車の使用によって、所有者が自転車を使用する権利が損なわれていることは間違いないため、これに対して謝罪と被害弁償を行う意味は十分にあると考えられます。

 弁護士であれば通常、示談交渉のために捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらえると考えられ、刑事事件に強い弁護士であれば、しっかりした内容の示談が成立する可能性が見込まれ、不起訴処分で事件が終了する可能性を高めることが期待できます。

 また、本件では、取調べにおいて自転車の窃盗の容疑も追及される可能性も考えられますが、窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金と、占有離脱物横領罪と比べると重いため、取調べ対応について刑事事件に強い弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、占有離脱物横領罪などの財産犯の刑事事件において、示談成立による不起訴処分を獲得している実績が多数あります。
 占有離脱物横領罪で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事例解説】乗り捨てされた自転車の一時使用による占有離脱物横領罪(前編)

2023-08-30

 共同住宅に乗り捨てされた放置自転車を一時的に使用したことで、占有離脱物横領罪で取調べを受けた架空の事件とその弁護活動ついて、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 北九州市内の共同住宅に居住する自営業男性A(42歳)は、共同住宅の駐輪場に数日前から放置されている鍵の付いていない自転車を、近所のスーパーなどへの買い物で2時間程度、繰り返し使用するようになりました。
 いつもの通り自転車に乗って近所のスーパーに向かっていたとき、鍵の付いていない自転車を見て不審に思った警察官に呼び止められ、職務質問を受けました。
 警察の調べで、Aが使用していた自転車は、数日前に窃盗の被害に遭い乗り捨てられたものであることが判明し、Aは占有離脱物横領の容疑で警察の取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)

占有離脱物横領罪とは

 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する、と定められています(刑法第254条)。

 「占有を離れた他人の物」とは、所有者の意思に基づかずにその占有を離れ、誰の占有にも属していない物とされます。

 本件の自転車が、共同住宅の住人の所有物であるなど他人の占有する物だった場合には、窃盗罪の問題になり得ますが、実際は乗り捨てされた物で、既に所有者など他人の占有する状態になかったといえることから、占有離脱物横領罪の問題になったものと考えられます。

 占有離脱物横領罪における「横領」とは、不法領得の意思をもって、自己の占有する占有離脱物を自己の事実上の支配下に置くこと、とされます。
 本件のAが、占有離脱物である本件自転車を、買い物で2時間程度使用することは、「自己の事実上の支配下に置く」ものとして占有離脱物横領罪の成立が考えられますが、一時的に使用した行為でもあることから、「不法領得の意思」の有無が問題になると考えられます。

次回の後編では、占有離脱物横領罪における「不法領得の意思」について、詳しく解説します。

一時使用による占有離脱物横領罪の弁護活動

 不法領得の意思が認められないとして、占有離脱物横領罪の成立を争うことも可能ではありますが、早期に被害者との示談を成立させ不起訴処分での事件の終了を目指すことも、現実的な選択肢の一つと考えられます。

 本件における被害者は、自転車の所有者となります。所有者から自転車を窃盗した犯人が別にいるとはいえ、占有離脱物横領罪に係る自転車の使用によって、所有者が自転車を使用する権利が損なわれていることは間違いないため、これに対して謝罪と被害弁償を行う意味は十分にあると考えられます。

 弁護士であれば通常、示談交渉のために捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらえると考えられ、刑事事件に強い弁護士であれば、しっかりした内容の示談が成立する可能性が見込まれ、不起訴処分で事件が終了する可能性を高めることが期待できます。

 また、本件では、取調べにおいて自転車の窃盗の容疑も追及される可能性も考えられますが、窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金と、占有離脱物横領罪と比べると重いため、取調べ対応について刑事事件に強い弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、占有離脱物横領罪などの財産犯の刑事事件において、示談成立による不起訴処分を獲得している実績が多数あります。
 占有離脱物横領罪で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事件解説】山菜採取で森林窃盗罪 事件化阻止の弁護活動

2023-08-27

 山林で山菜を無断採取したところを森林所有者に発見され、森林法違反(森林窃盗罪)に問われた事件を参考に、森林窃盗罪と事件化を阻止する弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 福岡県八女市内の森林で、同市内在住の自営業男性A(52歳)が山菜の「タラの芽」を10本ほど採取して所持していたところを、所有者Vから発見されました。
 Vから、森林法違反(森林窃盗罪)として警察への通報を仄めかされたところ、Aはその場で知人の弁護士に電話し、今後の対応について相談しました。
(過去に報道された実際の事件に基づき、事実関係を大幅に変更したフィクションです。)

森林窃盗罪とは

 森林法とは、森林の保護・培養と森林生産力の増進に関する基本的事項を規定する法律です。
 同法197条で「森林においてその産物(人工を加えたものを含む。)を窃取した者は、森林窃盗とし、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」と定められています。
 「森林」は、私有地・公有地を問わず、「産物」は、山菜やキノコ等の食材となる有機物のみならず、昆虫や植物、鉱物や岩石なども対象となります。

 訪れた山や森で昆虫や植物を採取した経験のある方もいるかもしれませんが、所有者の許可なく行うことは同法違反となる可能性が高いため、注意が必要です。

事件化阻止の弁護活動

 Vが警察に通報し、被害届を提出した場合、刑事事件として警察の捜査の対象となる可能性が高まります。
 森林法違反(森林窃盗罪)は法定刑が比較的軽微とはいえ、その目的や常習性といった事情次第では、逮捕・勾留による身体拘束の可能性がないとも言い切れません。

 そのため、警察に被害届が出される前に、被害者に謝罪と被害弁償を行った上、被害届を提出しない内容を含む示談の成立を目指すことが考えられます。
 これにより、警察が介入することなく事件化を防ぐ可能性を高めることが期待できます。

 弁護士を介さず示談交渉を行うことも可能ではありますが、当事者同士では、被害者の被害感情などから、交渉がうまくいかない可能性が考えられます。

 また、法律の専門家ではない当事者同士による示談の場合、内容に不備があることで、一旦示談が成立したにも関わらず、後日紛争が蒸し返される恐れがでてきます。
 そのため、被害者との示談交渉は、弁護士に依頼して行うことをお勧めします。刑事事件における示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼することで、適切な示談金を算定した上で、十分な内容の示談が成立する可能性を高めることができます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において、被害者との間での、被害届を提出しない内容を含む示談の成立により、事件化を阻止した実績が多数あります。
 森林窃盗罪で自身やご家族が森林所有者とトラブルとなりお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【少年事件解説】同級生に万引きを行わせた中学生 窃盗容疑で警察の取調べ(後編)

2023-08-24

 前回に引き続き、同級生に万引きを行わせたことにより、中学生が窃盗容疑で警察の取調べを受けた架空の事件を参考に、間接正犯や教唆犯・共同正犯の成立について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 北九州市内の中学校に通う少年A(15歳)は、同校内の特別支援学級に通う知的障害を有する同級生のBに命じ、家電量販店で欲しかったゲームソフト1点の万引きを行わせ、Bから回収しました(X事件)。
 犯行後、Bは体調不良で学校を欠席するようになりました。Aは別の同級生Cに「前に成功した店だから絶対に大丈夫。」と唆し、同店でCにゲームソフト数点の万引きを行わせ、Cから情報提供料として内1点を譲り受けました(Y事件)。
 後日、被害に気づいた同店が警察に被害届を提出し、防犯カメラの映像からBとCの犯行が明らかになりました。BとCは、警察の取調べに際しAの関与を供述したことから、Aは窃盗の容疑で警察の取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)

前回の前編では、X事件における間接正犯の成立について解説しました。

教唆犯及び共同正犯の成立について

 人を教唆して犯罪を実行させた者は、教唆犯が成立します(刑法第61条)。

 Y事件で、CはAから唆されて万引きを実行しましたが、Aに意思を抑圧されるような両者の関係性は見受けられず、Cは万引きしたゲームソフトのほとんどを自分の物としている点で、X事件とは異なり、Cに窃盗罪正犯、Aに同罪の教唆犯が成立することがまず考えられます。

 なお、AがCから万引きしたゲームソフトを譲り受けた点について、盗品を無償で譲り受けたとして、Aに盗品等無償譲受け罪も成立し得ます(刑法第256条第1項)。

 他方で、Aは万引きにより得た利益を享受しており、自らの犯罪としてCに万引きを行わせる意思を有していたとも言い得ます。
 そのため、万引きの計画や実行の際に、Aが一定の役割を担った事実が認められるなどした場合、窃盗罪教唆犯ではなく、2人以上で共同して犯罪を実行したものとして、窃盗罪正犯(共同正犯)が成立する可能性もあります(刑法第60条)。

 なお、Aに窃盗罪正犯(共同正犯)が成立する場合は、AがCから万引きしたゲームソフトを譲り受けた点は、窃盗罪の正犯の中で評価されているため、別途、盗品等無償譲受け罪は成立しないと考えらえられます。

少年が万引きに関与して取調べを受ける場合の弁護活動

 窃盗罪は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科する、とされる罪ですが、本件は15歳の少年による事件のため、原則として刑事裁判や刑事罰の対象とはならず、少年法における少年事件として取り扱われます。

 ただし、捜査段階では成人の刑事事件と原則同じ手続きとなるため、逮捕・勾留され、長期の身体拘束を強いられる可能性はあります。
 そうした不利益を回避する可能性を高めるためにも、できるだけ早期の段階で刑事事件や少年事件の弁護活動の実績が豊富な弁護士に相談し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることをお勧めします。

福岡県の刑事事件・少年事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、主に刑事事件や少年事件を取り扱っており、窃盗の刑事事件・少年事件対応の豊富な実績があります。
 ご家族の少年が窃盗に関与したとして警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【少年事件解説】同級生に万引きを行わせた中学生 窃盗容疑で警察の取調べ(前編)

2023-08-21

 同級生に万引きを行わせたことにより、中学生が窃盗容疑で警察の取調べを受けた架空の事件を参考に、間接正犯や教唆犯・共同正犯の成立について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 北九州市内の中学校に通う少年A(15歳)は、同校内の特別支援学級に通う知的障害を有する同級生のBに命じ、家電量販店で欲しかったゲームソフト1点の万引きを行わせ、Bから回収しました(X事件)。
 犯行後、Bは体調不良で学校を欠席するようになりました。Aは別の同級生Cに「前に成功した店だから絶対に大丈夫。」と唆し、同店でCにゲームソフト数点の万引きを行わせ、Cから情報提供料として内1点を譲り受けました(Y事件)。
 後日、被害に気づいた同店が警察に被害届を提出し、防犯カメラの映像からBとCの犯行が明らかになりました。BとCは、警察の取調べに際しAの関与を供述したことから、Aは窃盗の容疑で警察の取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)

間接正犯の成立について

 万引きは、他人の財物を窃取する行為であり、窃盗罪が成立します(刑法第235条)。

 万引きを直接実行したのは、X事件ではB、Y事件ではCですが、関与したAにも同罪が成立するか問題となります。

 自身で直接犯行を行わなくても、事情を知らない他人や、幼児などの是非を弁識する能力のない者を利用して犯行を行う場合、正犯が成立するとされます(これを「間接正犯」といいます。)。

 具体的には、他人を利用する者が、(1)自らの犯罪として行う意思を有し、(2)他人の行為を道具として一方的に支配・利用した、と認められる場合に間接正犯が成立し得ると解されます。

 X事件で、(1)について、Aは自分の欲しかったゲームソフトの万引きをBに行わせ、回収し自分の物としている点で、自らの犯罪として行う意思を有したと認定し得ると考えられます。
 (2)について、Bは特別支援学級に通う知的障害を有する生徒であることから、是非を弁識する能力のないBをAが一方的に利用したものと認められる可能性が十分にあります。

 以上のことから、X事件で、Aに間接正犯として窃盗罪が成立し得ると考えらえます。
 なお、この場合、Bは心神喪失(精神の障害により、善悪を区別する能力が全くない状態)に当たるとして、不可罰になると考えられます。

 次回の後編では、Y事件における教唆犯及び共同正犯の成立について解説していきます。 

少年が万引きに関与して取調べを受ける場合の弁護活動

 窃盗罪は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科する、とされる罪ですが、本件は15歳の少年による事件のため、原則として刑事裁判や刑事罰の対象とはならず、少年法における少年事件として取り扱われます。

 ただし、捜査段階では成人の刑事事件と原則同じ手続きとなるため、逮捕・勾留され、長期の身体拘束を強いられる可能性はあります。
 そうした不利益を回避する可能性を高めるためにも、できるだけ早期の段階で刑事事件や少年事件の弁護活動の実績が豊富な弁護士に相談し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることをお勧めします。

福岡県の刑事事件・少年事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、主に刑事事件や少年事件を取り扱っており、窃盗の刑事事件・少年事件対応の豊富な実績があります。
 ご家族の少年が窃盗に関与したとして警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】配偶者の虐待を黙認した場合に罪に問われる可能性(後編)

2023-08-15

 前回に引き続き、同居の母に対する虐待の疑いで、傷害の容疑で息子夫婦が逮捕された架空の事件を参考に、配偶者による虐待を黙認した場合に共謀共同正犯や不作為の幇助犯として罪に問われる可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住の会社員男性A(55歳)は、妻B(54歳)と母V(88歳)と3人で同居していましたが、Bは要介護認定を受け寝たきりのVの在宅介護のストレスから、Vの腕をつねるなどの虐待を行うようになりました。
 Aは、BからVに対する虐待が行われている様子を目にすることがあっても、Bとの関係悪化を恐れ、見て見ぬふりをしていました。
 Vの娘XがA宅を訪問した際、Vの腕の多数の内出血に気づき、AとBによる虐待を疑い警察に通報したことにより捜査が開始され、AとBはVへの傷害の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

 前回の前編では、共謀共同正犯の成立について解説しました。

不作為の幇助犯の成立について

 Aに傷害罪共謀共同正犯が認められなかった場合でも、BのVに対する暴行を黙認したことが、Aの犯行を手助けしたものとして、なお傷害罪幇助犯が成立するか問題となります。

 幇助犯の成立には、正犯の犯行を容易にする行為がなされたこと(作為)が通常必要とされるため、具体的な行為を行わなかったこと(不作為)を、作為と同視して処罰するには、(1)正犯の犯行を阻止する義務を有すること、(2)阻止することが可能かつ容易であったこと、が必要とされます。

 本件では、(1)について、Aは実母であるVの扶養義務(民法877条)を負う上、要介護認定を受け寝たきりのVと妻Bの3人で同居していることから、BのVに対する虐待が行われている様子を目にした場合は、それを阻止する義務を有すると認められる可能性があります。
 (2)について、AはBの夫であり、特段の事情がない限り、Vに対する暴行を阻止することが可能かつ容易であったと認められる可能性が高いと考えられます。

 なお、子の虐待死事件において、夫から子への暴行を阻止する行為をとらなかった妻に対し、傷害致死罪の幇助犯を認定した裁判例があります。

虐待を黙認したことで逮捕された場合の弁護活動

 傷害罪共謀共同正犯の場合、通常の法定刑である15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があり、幇助犯の場合でも、刑の減軽はされますが、なお懲役刑の実刑などの重い処罰を受ける可能性はあります。

 共謀共同正犯不作為の幇助犯の成立の認定に際し、実行行為者との意思の連絡の有無犯行への関与の形態などについて、逮捕後の取調べで厳しく追及されることが予想されるため、早めに弁護士と接見し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることが重要です。

 また、捜査機関が押さえている物的証拠実行行為者の供述内容など、捜査状況を的確に把握した上で対応を検討する必要があるため、刑事事件に強い弁護士に依頼し、適切な弁護活動を早く開始してもらうことをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において不起訴処分刑の減軽などを獲得した実績があります。

 配偶者による虐待を黙認したことによる傷害の容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】配偶者の虐待を黙認した場合に罪に問われる可能性(前編)

2023-08-12

 同居の母に対する虐待の疑いで、傷害の容疑で息子夫婦が逮捕された架空の事件を参考に、配偶者による虐待を黙認した場合に共謀共同正犯や不作為の幇助犯として罪に問われる可能性について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住の会社員男性A(55歳)は、妻B(54歳)と母V(88歳)と3人で同居していましたが、Bは要介護認定を受け寝たきりのVの在宅介護のストレスから、Vの腕をつねるなどの虐待を行うようになりました。
 Aは、BからVに対する虐待が行われている様子を目にすることがあっても、Bとの関係悪化を恐れ、見て見ぬふりをしていました。
 Vの娘XがA宅を訪問した際、Vの腕の多数の内出血に気づき、AとBによる虐待を疑い警察に通報したことにより捜査が開始され、AとBはVへの傷害の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

共謀共同正犯の成立について

 人の身体を傷害した者には、傷害罪が成立します(刑法第204条)。

 本件で、Vの腕をつねる暴行を加え、内出血を負わせたBに同罪が成立することは明らかですが、Bの当該行為を黙認したAにも同罪が成立するか問題となります。

 2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする、と定められています(刑法第60条)。
 「正犯」とは、自ら犯罪を実行する者とされ、原則、法定刑で処罰されるのに対し、正犯を幇助、つまり手助けするに過ぎない者は「従犯」とされ、刑が軽減されます(刑法第62条)。

 2人以上の者がそれぞれ、(1)互いに共同で犯罪を実行するという意思の連絡のもと、(2)犯行の一部を実行した、という(1)及び(2)の要件を充たす場合に正犯と認められるのが通常ですが、(2)の要件を欠く、つまり犯行の一部を実行していない者であっても、実行した者との関係性、犯行に至るまでに果たした役割、犯行による分け前の分与その他の事情を考慮し、正犯と認められることがあります(これを「共謀共同正犯」といいます。)

 本件で、BはVへ暴行を加えていませんが、Vへの暴行についてAとBの間で意思の連絡があったと認められる場合、共謀共同正犯としてBも傷害罪が成立する可能性があります。

 なお、子の虐待死事件において、子に死因となる暴行を加えたのは妻であっても、それをあえて制止せず黙認した夫との間の意思の連絡を認め、夫に傷害致死罪の共謀共同正犯を認定した裁判例があります。

 次回の後編では、不作為の幇助犯の成立について解説していきます。

虐待を黙認したことで逮捕された場合の弁護活動

 傷害罪共謀共同正犯の場合、通常の法定刑である15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があり、幇助犯の場合でも、刑の減軽はされますが、なお懲役刑の実刑などの重い処罰を受ける可能性はあります。

 共謀共同正犯不作為の幇助犯の成立の認定に際し、実行行為者との意思の連絡の有無犯行への関与の形態などについて、逮捕後の取調べで厳しく追及されることが予想されるため、早めに弁護士と接見し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることが重要です。

 また、捜査機関が押さえている物的証拠実行行為者の供述内容など、捜査状況を的確に把握した上で対応を検討する必要があるため、刑事事件に強い弁護士に依頼し、適切な弁護活動を早く開始してもらうことをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において不起訴処分刑の減軽などを獲得した実績があります。

 配偶者による虐待を黙認したことによる傷害の容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】わいせつ目的で幼児を多目的トイレに連れ込み逮捕(後編)

2023-08-09

 前回に引き続き、わいせつ目的で幼児を多目的トイレに連れ込み、わいせつ誘拐罪などで逮捕された架空の事件を参考に、わいせつ誘拐罪、監禁罪、不同意わいせつ罪の成立とその弁護活動及び未遂と中止未遂ついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡県糟屋郡内のショッピングモールで、女児V(4歳)を多目的トイレに連れ込み、わいせつな行為をしようとしたとして、福岡市在住の会社員の男A(25歳)が、わいせつ誘拐、監禁、不同意わいせつ未遂の容疑で逮捕されました。
 福岡県粕屋警察署の調べによると、犯行当時、玩具売場で母親から離れて1人で遊んでいるVに、「お母さんが探している」と嘘を告げ、わいせつ行為を行う目的で、玩具売場外の多目的トイレに連れ込んで中から鍵をかけたところ、Vが泣き叫んだため解放したとのことです。
 Aは容疑を認めており、「Vが泣いてかわいそうになったので、わいせつ行為には及んでいない」と供述しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

前回の前編では、わいせつ誘拐罪、監禁罪及び不同意わいせつ罪の成立について解説しました。

未遂とは

 本件Aは、Vにわいせつ行為を行う前に解放したとして、同罪の未遂の容疑で逮捕されています。

 未遂とは、犯罪の実行に着手したが、これを遂げなかった場合、と規定されています(刑法第43条)。
 どの時点で「犯罪の実行に着手した」と認定されるかについて、判例上明確な基準はありませんが、犯罪の結果発生の現実的危険性のある行為が開始された時点、と解する立場が有力です。

 旧強姦罪(現行法の不同意性交等罪)の判例ですが、被害者を性交目的でダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階で、犯罪の実行に着手したと認定し未遂犯が成立したものがあります。

 本件で、Aがわいせつ目的でVを多目的トイレに監禁し、Vの服を脱がせようとするなどのわいせつ行為に及ぶような挙動を見せていた場合、不同意わいせつ罪の現実的危険性が生じるに至ったとして、不同意わいせつ罪の実行に着手したと認定され得ると考えられます。

中止未遂とは

 未遂の場合は、刑を減軽することができる、と規定されていますが、未遂のうち、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する、と規定されています(刑法第43条)。
 刑が必ず減軽又は免除される点で、通常の未遂と区別して、中止未遂と呼ばれます。

 「自己の意思により犯罪を中止した」について、判例上明確な基準はありませんが、通常犯行の継続を思いとどまらせるような外部的事情により犯行を中止したような場合は、自発的意思による犯行の中止とは言えないため、中止未遂は成立しないとされます。

 本件でAは、「Vが泣いてかわいそうになったので、わいせつ行為には及んでいない」と供述していますが、多目的トイレの外にVの泣き叫ぶ声が漏れて、犯行が直ちに発覚するのを防ぐためなど、やむなく犯行を中止したものと認定された場合は、中止未遂は成立しないこととなります。
 中止未遂が成立しない場合は、通常の未遂として、刑が任意的に減免されることとなります。

幼児に対するわいせつ誘拐罪などの弁護活動

 幼児が被害者となるわいせつ誘拐罪不同意わいせつ罪などは、被害児童の今後の日常生活や対人関係に深刻な影響を及ぼす可能性があり、悪質と評価されやすく、被害者側との示談が成立したとしても不起訴処分を得られるとは限りません。
 しかしながら、示談の成否は、起訴された場合の量刑や執行猶予の判断にも影響を及ぼし得るため、示談を成立させることはなお重要と言えます。

 示談交渉は通常、被害者本人と行うものですが、被害者が幼児である場合は、当然ながら、両親等の保護者と行うこととなります。
 保護者は、子どもの心身に深刻な被害を受けたということで、犯人を許せないという処罰感情が強いことが一般的であり、示談交渉を断られる可能性もあるため、刑事事件に強く、示談交渉の経験の豊富な弁護士への相談をお勧めします。

 また、中止未遂が認められる可能性がある場合、被疑者(被告人)にとって有利となる事情を捜査機関や裁判所に的確に主張できるかが重要であり、この点からも、出来るだけ早く刑事事件に強い弁護士に相談し、適切な弁護活動を開始してもらうことをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、未成年者が被害者である様々な性犯罪において、保護者との示談締結により不起訴処分や刑の減軽などを獲得した実績があります。
 ご家族が幼児に対するわいせつ誘拐罪などで逮捕されご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】わいせつ目的で幼児を多目的トイレに連れ込み逮捕(前編)

2023-08-06

 わいせつ目的で幼児を多目的トイレに連れ込み、わいせつ誘拐罪などで逮捕された架空の事件を参考に、わいせつ誘拐罪、監禁罪、不同意わいせつ罪の成立とその弁護活動及び未遂と中止未遂ついて、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡県糟屋郡内のショッピングモールで、女児V(4歳)を多目的トイレに連れ込み、わいせつな行為をしようとしたとして、福岡市在住の会社員の男A(25歳)が、わいせつ誘拐、監禁、不同意わいせつ未遂の容疑で逮捕されました。
 福岡県粕屋警察署の調べによると、犯行当時、玩具売場で母親から離れて1人で遊んでいるVに、「お母さんが探している」と嘘を告げ、わいせつ行為を行う目的で、玩具売場外の多目的トイレに連れ込んで中から鍵をかけたところ、Vが泣き叫んだため解放したとのことです。
 Aは容疑を認めており、「Vが泣いてかわいそうになったので、わいせつ行為には及んでいない」と供述しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

わいせつ誘拐罪及び監禁罪について

 未成年者を誘拐した者は、未成年者誘拐罪(法定刑は3月以上7年以下の懲役)が成立しますが、わいせつ目的があった場合、被害者が成人の場合と同様、わいせつ誘拐罪(法定刑は1年以上10年以下の懲役)が成立します(刑法第224、225条)。

 「誘拐」とは、欺罔又は誘惑を手段とし、人を従来の生活環境から離脱させ、自己又は第三者の事実的支配下に置くこと、とされます。
 本件で、AはVに「お母さんが探している」と嘘を告げて「欺罔」しており、「わいせつ行為を行う目的」で、母親のいる玩具売場外の多目的トイレに連れ込んでおり、Vを「従来の生活環境から離脱」させ「事実的支配下」に置いたものとして、わいせつ誘拐罪が成立し得ます。

 また、不法に人を監禁した者は、監禁罪(法定刑は3月以上7年以下の懲役)が成立します(刑法第220条)。
 監禁罪は、人の身体的活動の自由を奪う犯罪とされますが、幼児であっても自らの意思に基づき活動する能力を通常有するため、対象の「人」に含まれます。「監禁」とは、人が一定の区域内から脱出することが不可能又は著しく困難にすること、とされます。

 本件で、AはVを多目的トイレに連れ込んで中から鍵をかけており、4歳のVが自らトイレから脱出することは著しく困難であると考えられ、監禁罪も成立し得ます。

不同意わいせつ罪について

 16歳未満の者に対しわいせつな行為をした者は、被害者の同意の有無にかかわらず、一定の例外を除き、不同意わいせつ罪が成立します(刑法第176条)。

 同罪は、令和5年の性犯罪規定に関する刑法改正によって、従来の強制わいせつ罪に代わり、新たに創設された犯罪で、令和5年7月13日から施行されました。
 法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑、とされています(「拘禁刑」はまだ施行されていないので、それまでは「懲役」になります。)。

 なお、強制わいせつ罪では、被害者の同意の有無にかかわらず犯罪が成立する被害者の年齢が「13歳未満」であったところ、不同意わいせつ罪では「16歳未満」に引き上げられています(但し、被害者の年齢が13歳以上16歳未満の場合は、加害者と被害者の年齢差による一定の例外があります。)。

 次回の後編では、不同意わいせつ罪未遂中止未遂について解説していきます。

幼児に対するわいせつ誘拐罪などの弁護活動

 幼児が被害者となるわいせつ誘拐罪不同意わいせつ罪などは、被害児童の今後の日常生活や対人関係に深刻な影響を及ぼす可能性があり、悪質と評価されやすく、被害者側との示談が成立したとしても不起訴処分を得られるとは限りません。
 しかしながら、示談の成否は、起訴された場合の量刑や執行猶予の判断にも影響を及ぼし得るため、示談を成立させることはなお重要と言えます。

 示談交渉は通常、被害者本人と行うものですが、被害者が幼児である場合は、当然ながら、両親等の保護者と行うこととなります。
 保護者は、子どもの心身に深刻な被害を受けたということで、犯人を許せないという処罰感情が強いことが一般的であり、示談交渉を断られる可能性もあるため、刑事事件に強く、示談交渉の経験の豊富な弁護士への相談をお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、未成年者が被害者である様々な性犯罪において、保護者との示談締結により不起訴処分刑の減軽などを獲得した実績があります。
 ご家族が幼児に対するわいせつ誘拐罪などで逮捕されご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

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