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【事例解説】性的姿態等撮影罪とその弁護活動(商業施設で女性のスカート内を盗撮したケース)

2024-04-11

【事例解説】性的姿態等撮影罪とその弁護活動(商業施設で女性のスカート内を盗撮したケース)

事例:商業施設で女性のスカート内を盗撮したケース

3月7日夜福岡市の商業施設で女性のスカートの中を盗撮していたとして44歳の無職のAさんが現行犯逮捕されました。
性的姿態撮影等処罰法」いわゆる盗撮処罰法違反の疑いで現行犯逮捕されたのは福岡市博多区の無職のAさんです。
警察によりますとAさんは7日午後8時20分ごろ福岡市天神の商業施設で韓国から観光で訪れていた29歳の女性Vさんが陳列棚を見ていたところ後ろから近づきスカートの中にデジタルカメラを差し入れて下着を撮影しました。
一緒にいたVさんの家族らが気づき近くの警備員に通報し発覚しました。
Aさんは調べに対し「やったことは間違いありません」と容疑を認めています。
警察は余罪の有無についても詳しく調べています。

KBC 福岡 03/08 08:36の記事を一部変更し引用しています。)

1,性的姿態等撮影罪について

〈性的姿態等撮影〉

次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
1 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治40年法律第45号)第177条第1項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

2 刑法第176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
3 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
4 正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の映像に係る電磁的記録の消去に関する法律2条。以下「性的姿態撮影等処罰法」といいます。)

いわゆる盗撮行為は、従前も各都道府県の迷惑防止条例に違反し処罰の対象となっていましたが、2023年7月13日に施行された性的姿態等撮影処罰法により性的姿態等撮影罪等を設けることで盗撮行為が厳罰化され、都道府県により刑罰の差異が無くなりました。
性的姿態等撮影罪は、正当な理由なく、人の性的な部位や身に着けている下着やわいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態などの性的姿態等を撮影される者の同意を得ることなく撮影した場合に成立します。
正当な理由」とは、例えば、医師が救急搬送された意識不明の患者の上半身裸の姿を医療行為上のルールに従って撮影する場合など、極めて限定的な場合にのみ認められるものと考えられています。(参考:法務省 性犯罪関係の法改正Q&A Q4 A4
また、13歳未満の者の性的姿態等を撮影する行為、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、その撮影される者よりも5年以上年上の者が性的姿態等を撮影する行為も処罰対象となります。
13歳未満の者、あるいは13歳以上16歳未満の者は、大人と比べて心身の両側面において成長が不十分であり、それに乗じて性的な姿態を撮影する行為を処罰することが目的であると考えられます。

2,性的姿態等撮影罪とその弁護活動

性的姿態等撮影罪で逮捕・勾留された場合、起訴されるまでの間は最大で23日間しかありません。
その間に、被疑者として身柄を拘束され、警察と検察の取調べを受けることになりますが、罪を認めている場合でも、警察と検察にどのようなことを話せばいいのかなど、適切かつ丁寧なアドバイスを法律の専門家である弁護士から受けることが大切です。
なぜなら、身柄を拘束されている被疑者は1人で不安を抱えたまま取調べに臨むことになるため、話さなくてもいいことまで話してしまい刑が重くなる可能性もあり得るからです。
また、性的姿態等撮影罪は被害者がいる犯罪であるため、被害者との示談を成立させるための弁護活動を行います。
被害者に対し謝罪や被害弁償を行うことで被害者からの宥恕(被害者に対して謝罪し、それを受けて加害者の刑事処罰を求めないという意思)を得ることができれば、起訴猶予による不起訴処分や仮に起訴されてしまった場合でも執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高くなります。
不起訴処分となれば前科が付くのを回避でき、また執行猶予付き判決を獲得できれば実刑を回避できるため、これまで通りの日常生活に戻ることができます。
また、勾留による身柄拘束は、被疑者に証拠隠滅又は逃亡のおそれが認められるためになされるものですが(刑事訴訟法207条1項、60条1項各号)、示談が成立していれば、そのおそれはないと判断され、早期の身柄解放が期待できます。
以上より、刑事事件はスピードがなによりも大切です。
性的姿態等撮影罪で逮捕・勾留された場合には、刑事弁護において経験や実績が豊富な刑事事件に特化した弁護士の迅速なサポートを受けることが重要なります。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において性的姿態等撮影罪の当事者となってしまった方または家族・親族が当事者となってしまった方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、性的姿態等撮影罪の当事者となってしまった方に対しては初回無料でご利用いただける無料相談を、家族・親族が当事者となってしまった方に対しては初回接見サービス(有料)をそれぞれご提供しております。
ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

被疑者が正当防衛を主張する場合の弁護活動(電車内で高校生に因縁をつけ土下座させた上に暴行を加えて重傷を負わせたケース)

2024-04-08

被疑者が正当防衛を主張する場合の弁護活動(電車内で高校生に因縁をつけ土下座させた上に暴行を加えて重傷を負わせたケース)

今回は、電車内で喫煙していたAさんが男子高校生Vさんに喫煙を注意されたことに逆上し、Vさんに因縁をつけ土下座させ蹴る殴るなどの暴行を加えたというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:電車内で高校生に因縁をつけ土下座させた上に暴行を加えて重傷を負わせたケース

JR宇都宮線内で喫煙を注意した高校生を暴行し、傷害強要などの罪に問われた元ホストクラブ従業員Aさんの判決公判が19日、宇都宮地裁栃木支部で開かれ、裁判長は懲役2年(求刑懲役3年)の実刑判決を言い渡した。
Aさんは今年1月23日、電車の優先席で寝転んで喫煙。男子高校生Vさんが注意すると、「くそがき、おまえ、俺にしゃべりかけられる分際とちゃうんや」「ぶっ殺すぞ、こら。けんか売ってるんじゃねえぞ」と因縁をつけ、土下座させた。Vさんの頭を踏み付けた上、蹴る殴るの暴行を加え、頬骨(きょうこつ)骨折など全治6カ月の重傷を負わせた。
また、送検後、検察官の取り調べに対して「あんまり人をばかにしたしゃべり方すんなよ」「カメラ関係あるか。俺、暴れるときまじで暴れるぞ」「女には手上げへんけど、男には手上げるからな」と脅迫し、公務執行妨害でも起訴された。
弁護側は「大々的に報道され、社会罰も受けている」と執行猶予を求めたが、裁判長は「感情に任せた犯行で、一方的で執拗(しつよう)。動機、経緯に酌量の余地はない」と量刑理由を説明した。
100万円を準備し、被害弁償の意向を持っていることや、交際相手が更生に協力する意向があることなど、「酌むべき事情を考慮しても、執行猶予は相当ではない」と実刑を選択した。
日刊スポーツ 2022年7月19日13時8分の記事を一部変更し引用しています。)

1, 傷害罪

人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法204条

傷害罪は「人の身体を傷害した」場合に成立する犯罪で、「傷害」するとは、人の身体の生理的機能を侵害することを言います。
簡単に言うと、人に怪我を負わせたりすることで、上記の事例ではAさんはVさんに対して蹴る殴るなどの暴行を加えて骨折の怪我を負わせているため「傷害した」に該当し、傷害罪が成立したと言えます。

2, 強要罪

生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。」(刑法223条1項

強要罪は意思決定の自由を保護法益として、その自由を侵害することを処罰する犯罪です。
➀人の生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対して、②脅迫や暴行を用いて、③人に義務のないこと行わせ又は権利の行使を妨害した場合に成立します。
②の脅迫は「殺すぞ」や「殴るぞ」などの害悪を告知することで、暴行は殴る蹴るなどの人の身体に対する不法な有形力の行使を言います。
③の義務のないことを行わせるとは土下座させる行為などがその典型で、権利の行使を妨害するとは債権の回収をさせないことなどがこれに当たります。

3, 公務執行妨害罪

公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法95条1項

公務執行妨害罪は、公務の執行を保護法益とし、また抽象的危険犯(現実に結果が発生することは要せず結果が発生するおそれがあれば足りる)であるため、現実に公務の執行が妨害されることを要せず、公務の執行が妨害される危険があれば成立します。

4, 弁護活動

上記の事例ではAさんは正当防衛の成立を主張していますが、正当防衛は成立するのでしょうか。
正当防衛とは、犯罪に該当する行為を行ってしまった場合でも、正当防衛であると認められれば、違法性が排除され犯罪が成立しなくなることを言います。

<正当防衛>

急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」(刑法36条1項

正当防衛とは、①急迫不正の侵害が対して、②自己又は他人の権利を防衛するため、③やむを得ずにした行為である場合に成立します。
➀の「急迫」とは、法益の侵害が現に存在し又は間近に押し迫っていることを言い、過去の侵害行為、例えば一週間前に殴られたことに対して殴り返す場合などには急迫性は否定されます。
また、「不正」とは、違法であることを言います。
②の要件は自分や第三者の権利を「防衛するため」、つまり当該行為は防衛の意思をもってなされる必要があります。
防衛の意思とは、急迫不正の侵害を認識しそれを避けようとする単純な心理状態をいいます。
ここで問題となるのは、防衛者が攻撃の意思を有していた場合に防衛の意思が否定されるのかということです。
判例通説では、行為者が攻撃の意思を持っていたとしてもただちに防衛の意思は否定されないとしています。
それは、攻撃することが防衛になることがあると考えられます。
しかし、侵害行為に対して、その機会を利用して積極的に加害を加える意思で防衛行為に及んだ場合には急迫性が否定され、正当防衛は成立しないことになります。
これは、正当防衛が緊急時に国家機関(例えば警察など)に助けを求めることが難しいなどの事情がある場合に、例外的に私人による自救行為を許容することを趣旨としているため、侵害を予期してその機会を利用して積極的に攻撃を加えることは、もはや防衛の意思から防衛行為に出たとは言えないとえるためです。
③の「やむを得ずにした行為」とは、防衛行為の相当性、すなわち防衛行為が社会的見て必要かつ相当であることを要します。
例えば、素手で一発殴るという侵害行為に対して金属バットで複数回殴り返すなどの行為は、防衛行為としての相当性を欠き正当防衛が成立しません。
なお、防衛行為の相当性を欠くが他の要件は満たすという場合には、過剰防衛刑法36条2項)の成立が別途検討されることになります。
上記の事例で言えば、VさんはAさんに対して電車内での喫煙を注意しただけであり、そもそもVさんのAさんに対する「急迫不正の侵害」が存在しないため、Aさんに正当防衛は成立しないと考えられます。
以上より、被疑者が正当防衛を主張する場合の弁護活動としては、正当防衛の各要件の充足性を示すための客観的な証拠や事情の収集活動が主たる活動になると言えます。
例えば、相手方が攻撃してくることを予想して武器を持たずに相手方が居る場所に向かったが相手が凶器を持っていたなどの場合には、侵害を予期していたとは言えず、急迫性は肯定する客観的な事情と言えます。
弁護士による弁護活動としては、そのような客観的な事情や証拠の収集活動を行うことになります。
また、正当防衛が成立するか否かは判決により決まるため、たとえ自分で正当防衛に当たる行為をしたと思っていても、逮捕や勾留により身柄を拘束されるおそれがあります。
逮捕・勾留による身柄拘束は最長で23日間の間続き、その間に警察と検察による取調べを受けることになります。
逮捕・勾留による被疑者の身柄拘束が認められるのは、被疑者に証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合になります(刑事訴訟法207条1項、60条1項)。
そのため、弁護士による弁護活動としては、それらを否定する客観的な事情や証拠の収集活動を通じて被疑者の早期の身柄解放を目指します。

5, まずは弁護士に相談を

福岡県内において正当防衛の成立を争いたいなどをご希望の方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、正当防衛の成立を争いたい方に対しては初回無料の法律相談や身柄拘束中の方のご家族等の方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
お気軽にご相談ください。

裁判員裁判の対象となる現住建造物等放火罪で逮捕

2024-04-05

裁判員裁判の対象となる現住建造物等放火罪で逮捕

現住建造物等放火罪と裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福岡県嘉麻市に住んでいる大学生のAさんは、住んでいるアパートを燃やしての自殺を計画し、アパートのカーテンにライターで火を付けました。
火はカーテンから部屋の壁に燃え移って煙が上がったため、アパートの住人が燃えていることに気付き、119番通報しました。
駆け付けた消防隊の消火活動で火は消し止められ、捜査によって火災の原因がAさんの放火であることがわかりました。
その後、Aさんは嘉麻警察署現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

現住建造物等放火罪

放火の罪刑法に定められており、現住建造物等放火罪は「放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と刑法第108条に定められています。
この場合の「建造物」は、屋根があり壁または柱によって支えられ土地に定着し、その内部に人が出入りし得る家屋、またはこれに類似する建造物と定義されています。
焼損」とは火が媒介物を離れても、建造物などの一部が独立しても燃え続ける状態で、参考事件の場合はカーテンに付いた日が壁に燃え移り、そのまま独立して燃え始めると焼損したと言えます。
また、「現に人が住居に使用」しているとは、犯人以外の人が起臥寝食の場所として日常使用することを意味しており、犯人以外の人が住居に使用している建造物であれば、仮に放火当時に人が現在していなくても現住建造物等放火罪は成立します。
ちなみに、「現に人がいる」とは犯人以外の人間が建造物内に現存することを指します。
これらのことから、Aさんには現住建造物等放火罪が適用されました。
現住建造物等放火罪の刑罰は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」です。
死刑又は無期の懲役」の刑罰に当たる事件の場合、起訴されると裁判員裁判が開かれます。

裁判員裁判制度

裁判員裁判とは、ランダムで選ばれた一般の国民が裁判員となり、裁判に参加する形式の裁判です。
一般の方が裁判員となることから、裁判の前に裁判官、検察官、弁護士が事件の争点を明確にする公判前整理手続をとります。
また、裁判員裁判での弁護士は、裁判員の選任手続きにも弁護士は立ち合います。
これは弁護士のチェックを通し、被告人に不利または不公平な裁判をするおそれのある裁判員の選出を阻止して公平な裁判に行うためです。
このように、裁判員裁判は通常の事件とは勝手が違う裁判になります。
裁判員裁判の対応もスムーズに行えるよう、参考事件のような放火事件の場合、裁判員裁判制度にも詳しい弁護士に、弁護活動を依頼することが重要です。

裁判員裁判に詳しい弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件と少年事件に特化している法律事務所です。
当事務所では、初回無料の法律相談逮捕された方のもとに弁護士が直接伺う初回接見サービスを実施しております。
どちらのご予約も、24時間、年中無休で電話対応いたします。
裁判員裁判の対象となる事件を起こしてしまった、または現住建造物等放火罪の容疑でご家族が逮捕されてしまった、そのような場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、是非、ご相談ください。

【事例解説】過失運転致傷罪とその弁護活動(怪我をさせひき逃げした架空の事例に基づく解説)

2024-04-02

【事例解説】過失運転致傷罪とその弁護活動(怪我をさせひき逃げした架空の事例に基づく解説)

福岡県嘉麻市の路上で横断歩道を歩行中の自営業Vさんが、福岡県嘉麻市在住の会社員Aさんの運転する乗用車にはねられる被害に遭ったという架空の事例を想定して、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説致します。

事例:乗用車で相手を跳ねて逃走したケース

福岡県警察嘉麻警察署は、嘉麻市の路上で横断歩道を歩行中だった自営業のVさんを自分が運転する乗用車ではねて逃走したとして、福岡県嘉麻市在住の会社員Aさんを逮捕しました。
警察の調べによりますと、Aさんは、横断歩道の直前で一時停止することなくVさんをはねた後、車から降りてVさんを見てその場から逃げ去ったとのことです。
警察の調べに対し、Aさんは、「被害者を見ていない。」「車の外で音がしたので、車から降りただけ。」などと供述し、容疑を否認しているとのことです。
なお、Vさんは跳ねられて転倒し、尾てい骨骨折など全治3か月の怪我を負ったとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,過失運転致傷罪について

<過失運転致傷罪>

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし。その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
自動車の運転により人を死傷させる行為等を処罰に関する法律第5条

刑法は原則として故意犯(罪を犯す意思をもってした行為)のみを処罰の対象としています(刑法38条1項)。
過失犯は、過失犯を処罰する規定がある場合に、例外的に、罪を犯す意思がなく不注意で起こした行為であったとしても処罰されます。
過失犯とは、結果回避義務を前提とする注意義務違反であり、結果回避義務とは、結果予見可能性と結果回避可能性によって決定づけられる。
また、注意義務違反とは、注意義務を怠ったことを言います。
上記の例でいえば、Aさんは、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいる場合、自動車の運転者は横断歩道の直前で車を一時停止して、前方に注意して、横断歩道の標識等がある場合に歩行者の有無を確認する義務をおっていたにもかかわらず、それらの義務に違反したことになります。
また、その注意義務の前提となる結果回避義務は、結果予見可能性と結果回避可能性から構成されます。
今回の事例で言えば、Aさんは、横断歩道を歩行者が横断しているときに一時停止することなく前方の注意しなければ歩行者をはねてしまうことが予見でき、それが予見できれば歩行者をはねるという結果を回避することができます。
そのため、Aさんは、注意義務の前提となる結果回避義務を負っていたことになります。
以上より、Aさんには過失運転致傷罪が成立する可能性があります。

<救護義務違反・報告義務違反>

また、交通事故を起こした場合、自動車の運転者には、負傷者を救護し、道路における危険を防止する危険を防止する等必要な措置を講じる義務(救護義務)、そして、事故が発生した日時及び場所等を報告する義務(報告義務)を負います(道路交通法72条1項)。
そして、救護義務に違反した場合は5年以下の懲役又は50万円以下の罰金道路交通法117条1項)、また被害者の怪我が当該自動車の運転者の運転に起因する場合には10年以下の懲役又は100万円以下の罰金道路交通法117条2項)が、報告義務に違反した場合は3月以下の懲役又は5万円以下の罰金道路交通法119条1項17号)の刑がそれぞれ科されます。

2,過失運転致傷罪とその弁護活動

過失運転致傷罪で逮捕・勾留されると最長で23日間、身柄を拘束されることになります。
その間、被疑者は取調べを受けることになります。
身柄を拘束されて取調べを受ける際、被疑者は一人であり、肉体的・精神的に大きな負担となるため、まずは被疑者の早期の身柄解放に向けた弁護活動を行います。
被疑者勾留は逃亡のおそれ又は罪証隠滅のおそれ(=犯罪の証拠を隠滅するおそれ)がある被疑者に場合になされます(刑事訴訟法207条1項60条1項)。
そのため、弁護活動としては、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれを否定する事情や客観的証拠の収集活動を行います。
具体的には、被疑者の同居のご家族や親族の方に身元引受人になってもらい監督することで被疑者が逃亡するおそれを否定する事情や、当該犯罪の証拠となり得る物は既に捜査機関に押収されているため、証拠の隠滅はできないという客観的証拠を収集することで、被疑者の早期の身柄拘束を解放できる可能性があります。
また、過失運転致傷罪の場合は法定刑が7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金であり、救護義務違反の場合5年以下の懲役又は50万円以下の罰金道路交通法117条1項)、被害者の怪我が当該自動車の運転者の過失に起因する場合には10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される可能性があります。
しかし、弁護活動によっては、不起訴執行猶予を獲得できる可能性があります。
過失運転致傷罪救護義務違反は被害者がいる犯罪であるため、弁護士が被害者に対し被害を弁償し、示談交渉を進め、示談が成立していれば、不起訴処分になる可能性があり前科を回避できます。
仮に起訴されてしまったとしても、示談が成立していれば執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高くなります。
そのため、過失運転致傷罪救護義務違反で逮捕・勾留されてしまった場合、刑事弁護に関する知識や経験が豊富な弁護士の迅速なサポートを受けることが重要になります。

3,まずは弁護士に相談を

過失運転致傷罪救護義務違反でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に特化した弁護士が多数在籍しており、過失運転致傷罪救護義務違反でお困りの方からの法律相談を初回無料で承っておりますので、ぜひ一度ご相談ください。

大麻取締法違反で少年逮捕、少年事件で重要な要保護性とは

2024-03-30

大麻取締法違反で少年逮捕、少年事件で重要な要保護性とは

大麻取締法違反と少年事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福岡県飯塚市に住んでいる高校生のAさんは、友人から大麻を貰って使用していました。
ある日警察官が自宅に訪ねて来て、大麻所持について話があると言われました。
そして警察官から、大麻をAさんに渡していた友人が逮捕され、その捜査によってAさんの大麻所持が判明したと説明を受けました。
そのままAさんは大麻取締法違反の疑いで、飯塚警察署に連行されることになりました。
(この参考事件はフィクションです。)

大麻取締法違反

大麻取締法には大麻の輸入や栽培など、大麻の取扱いについて定めた法律です。
参考事件でAさんに適用されたのは、「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。」と定めている大麻取締法第24条の2第1項です。
このように、大麻取扱者でないものは大麻を所持しているだけでも大麻取締法違反になります。
しかし、近年はインターネットの普及で大麻を買うことが容易になり、高校生や中学生など若年層が大麻に関する事件を起こしやすくなっていることが問題視されています。

少年の薬物事件

大麻取締法違反で上記のような刑罰が下されるのは、犯人が成人している場合です。
参考事件のように高校生が事件を起こしている場合、少年事件として事件が扱われます。
少年事件とは少年法が適用される事件を意味し、この法律では20歳に満たない者を少年としています。
少年事件は懲役や罰金などの成人が起こした事件の刑罰と違い、制裁や処罰ではなく少年の教育と保護を目的とし、更生を促す処分を与えます。
その処分を決めるために少年事件は原則全てが家庭裁判所に送られ、少年審判が開かれます。
この少年審判で審理されるものの1つに要保護性があります。
要保護性とは、少年の非行再発の可能性、更生の余地、保護処分の有効性などで構成されるもので、この要保護性が高いと判断されれば、非行事実(犯罪行為)が軽微な物であっても処分が重くなってしまう可能性があります。
処分を軽いものにするためには弁護士に依頼し、付添人活動をしていく必要があります。
少年には更生の余地があることや、更生を促すための環境が家庭に整っていることをアピールし、要保護性が低いことを主張します。
大麻取締法違反などの薬物事件であれば、専門家から治療を受ける、カウンセリングを受けるなどして再発防止に取り組んでいると主張することも大切です。
少年事件は細部が通常の事件と異なっているため、付添人には少年事件の知識と経験が豊富な弁護士を立てることをお勧めいたします。

少年事件に強い弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、少年事件を含む刑事事件を中心に取り扱っている法律事務所です。
当事務所はフリーダイヤル「0120-631-881」にて、初回無料の法律相談の他、逮捕された方のもとに弁護士が直接伺う初回接見サービスのご予約を受け付けております。
フリーダイヤルは24時間、年中無休で対応しておりますので、少年事件を起こしてしまった、大麻取締法違反の容疑でご家族が逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、お気軽にご連絡ください。

会社に隠しカメラで性的姿態等撮影罪、不特定多数との示談交渉

2024-03-27

会社に隠しカメラで性的姿態等撮影罪、不特定多数との示談交渉

性的姿態等撮影罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福岡県直方市に住んでいる会社員Aさんは、自身が勤めている会社のトイレに隠しカメラを仕掛けていました。
Aさんはその隠しカメラで日常的に盗撮を繰り返していましたが、トイレの清掃員に隠しカメラを見つかってしまいました。
隠しカメラのことが見つかったことで、会社は警察に通報することにしました。
そして直方警察署の捜査によって仕掛けたのはAさんであることが分かり、性的姿態等撮影罪の疑いでAさんは逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

性的姿態等撮影罪

令和5年7月13日に施工された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」に、性的姿態等撮影罪は定められています。
参考事件に適用されたのはこの法律の第2条第1項であり、この条文は「正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為」を禁じています。
性的姿態等」も同条に記載があり、人の性的な部位又は人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分その他のわいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態となっています。
第2条第1項に違反した場合は、「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」が刑罰として科されます。
参考事件のAさんは盗撮行為を目的に会社のトイレに隠しカメラを仕掛け、人の性的姿態等を撮影していることから、性的姿態等撮影罪が成立しました。

被害者の多い盗撮事件

Aさんは日常的に盗撮行為を繰り返していたことから、盗撮をしていた期間は長期にわたっていると考えられます。
また、会社のトイレは多数の人が利用する場所です。
そのため参考事件は、不特定の被害者が非常に多くなっていると予想できます。
盗撮事件において、示談の締結は減刑を目指す上で最も効果的です。
しかし参考事件のような盗撮事件の場合、不特定多数の被害者と連絡を取って示談交渉を進める必要があります。
示談交渉は個人でもできるとはいえ、個人の力で多数いる面識のない被害者を特定し、示談交渉を進めることは現実的ではありません。
また、警察に被害者の連絡先を聞いたとしても、基本的に教えてもらうことはできません。
このようなケースで示談の締結を目指すのであれば、弁護士によるサポートは欠かせません。
性的姿態等撮影罪での示談交渉をお考えであれば、盗撮事件に詳しい弁護士に相談し、弁護活動を依頼することが重要です。

盗撮事件の経験が豊富な弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件及び少年事件に特化している法律事務所です。
当事務所は土、日、祝日も24時間対応しているフリーダイヤル「0120-631-881」にて、初回であれば無料でご利用いただける法律相談逮捕された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービスのご予約を受け付けております。
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無免許運転による道路交通法違反が発覚、考えられる弁護活動は

2024-03-24

無免許運転による道路交通法違反が発覚、考えられる弁護活動は

参考事件

福岡県豊前市に住んでいる会社員Aさんは、スーパーから自宅に帰る際にパトカーから車を止められました。
Aさんは運転免許証の提示を求められましたが、Aさんは免許証を忘れたと説明しました。
その後、Aさんのことを警察が調べると、Aさんは免許を数年間更新していなかったことが分かりました。
豊前警察署はAさんを道路交通法違反の容疑で逮捕しました。
(この参考事件はフィクションです。)

道路交通法違反

無免許運転は一般的にもよく知られている犯罪ですが、これは正式な表現ではなく、道路交通法の規定に違反した場合はどのような罪状でも道路交通法違反と呼称されます。
無免許運転道路交通法第64条に規定があり、「何人も、第84条第1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第90条第5項、第103条第1項若しくは第4項、第103条の2第1項、第104条の2の3第1項若しくは第3項又は同条第5項において準用する第103条第4項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。」と定められています。
この条文に違反した場合、道路交通法第117条の2の2第1項の規定により「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられます。
無免許運転は交通事故やその他の道路交通法違反が伴って発生してしまうと、より刑罰が重くなります。
交通事故を起こしていない無免許運転だけの道路交通法違反の場合、逮捕されない、または逮捕後に身体拘束する必要がないと釈放されることもあります。
しかし、参考事件のAさんは数年前から無免許状態であり、その状態で無免許運転を繰り返していたのであれば、事態を重く見られます。
その場合、逮捕され長期的に勾留される可能性も高くなります。

また、Aさんが本当に運転免許を忘れており、携帯していなかった場合でも別の道路交通法違反が成立します。
その場合、「免許を受けた者は、自動車等を運転するときは、当該自動車等に係る免許証を携帯していなければならない。」と定められた道路交通法第95条が適用され、罰金となります。

被害者のいない事件

参考事件は単純な無免許運転であるため、被害者は存在しません。
被害者がいる事件では示談交渉を行い、減刑や不起訴を目指すことが一般的で、示談の締結は処分に大きな影響を与えます。
ですがAさんの場合、事件の性質上示談交渉はできません。
このような事件で考えられる弁護活動として、贖罪寄付があげられます。
公的な組織や団体などに寄付することによって、事件を起こしてしまったことを反省する態度を示す行為が、贖罪寄付です。
しかし、贖罪寄付は多くの場合、弁護士を通して寄付を行う必要があります。
仮に弁護士を通す必要のない組織に贖罪寄付を行うとしても、専門的な知識がなければ減刑に効果的な寄付金額はわかりません。
そのため贖罪寄付をお考えであれば、法的専門知識を持った弁護士からサポートを受けることは必須と言えます。

交通違反に強い弁護士

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住居侵入窃盗(侵入盗)とその弁護活動(知人の家に侵入し物を盗んだケース)

2024-03-21

住居侵入窃盗(侵入盗)とその弁護活動(知人の家に侵入し物を盗んだケース)

今回は、福岡県宇美町在住の公立中学校の教員Aさんが知人Vさんの住宅に侵入し物を盗んだというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:知人宅に侵入し物を盗んだケース

窃盗の疑いで逮捕されたのは、福岡県志免町に住む公立中学校の教員Aさんです。
Aさんはおととし8月、福岡県宇美町の知人男性Vさんの住宅に侵入し、着物など7点、あわせて115万円相当を盗んだ疑いが持たれています。
警察によりますと、Vさんの住宅付近の防犯カメラに映った車の映像などから、Aさんの関与が浮上したということです。
取り調べに対し、Aさんは、「間違いありません」と容疑を認めているということです。
(RKBオンライン 2024/03/01 14:09の記事を一部変更し引用しています。)

1,住居侵入窃盗(侵入盗)とは

住居侵入窃盗(侵入盗)とは、窃盗犯の手口の一つであり、空き巣や事務所荒らしなどがその典型例です。
刑法上は、住居侵入罪(130条前段)と窃盗罪(235条)の別の犯罪が成立しますが、住居侵入が窃盗を行うための手段として行われた場合、両罪は牽連犯(刑法54条後段)としてその最も重い刑により処断されることになります(刑法54条)。

2,牽連犯とは

牽連犯とは、「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名にふれる」場合をいいます(刑法54条後段)。
複数の行為の間に手段と目的、又は原因と結果の関係(牽連関係)が認められる場合には牽連犯が成立しますが、複数の行為に牽連関係が認められるかどうかの判断基準として、ある犯罪が手段若しくは結果とが経験上通常、手段と目的又は原因と結果の関係にあるか否かによって判断されます(客観説 大判明42.12.20)。
牽連犯として認められたものとして、住居侵入窃盗の他に住居侵入と殺人、住居侵入と強盗、住居侵入と放火などが挙げられます。
反対に、牽連犯として認められないものとして、監禁と傷害、殺人と死体遺棄、強盗殺人と証拠隠滅のためにした放火などが挙げられます。
牽連犯が成立した場合の効果として、「その最も重い刑により処断する」とありますが、これは複数の犯罪を行った場合でも科される刑罰はそのうちの最も重い刑しか科されないことを意味し、科刑上一罪として処理されます。
住居侵入窃盗の場合では、住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金であり、窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金であるため、その最も重い刑である窃盗罪の法定刑の範囲で刑罰が科されることになります。
そのため、上記事例におけるAさんが有罪となった場合、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金の範囲で刑罰が科されることになります。

3,住居侵入窃盗とその弁護活動

住居侵入窃盗で逮捕・勾留された場合、最長で23日間、身柄を拘束されて警察と検察の取調べを受けることになります。
逮捕・勾留により身柄を拘束されている被疑者は一人で精神的・肉体的に大きな不安を抱えるため冷静な状態で取調べに臨むことが難しくなります。
そこで、弁護士による取調べ対応などの弁護活動が重要となります。
弁護士が接見に向かえば、被疑者はどのように取調べに臨めばいいか、何を話すべきかなどの丁寧かつ適切なアドバイスを受けることができるため、被疑者の不安の解消の一助となるでしょう。
また、勾留による被疑者の身柄拘束が認められるのは、被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれが認められるからです(刑事訴訟法207条1項、60条1項)。
そこで、被疑者の早期の身柄解放に向けた弁護活動としては、証拠隠滅や逃亡のおそれを否定し得る客観的証拠や事情の収集活動を行います。
たとえば、被疑者が犯してしまった犯罪の証拠となる物は既に捜査機関に押収されているため証拠隠滅は不可能であるという客観的事情を主張することで証拠隠滅のおそれを否定し得るでしょう。
そして、住居侵入窃盗は被害者が存在する犯罪であるため、被害者との示談交渉を進め示談を成立させることも重要な弁護活動と言えます。
被害者との示談が成立していれば、早期の身柄解放や起訴猶予による不起訴処分を得られる可能性が高くなり、前科の回避や身柄解放後の日常生活への支障を最小限に抑えることができます。
以上より、逮捕・勾留から起訴されるまでの23日間に、一刻も早い刑事弁護活動を受けることが重要となります。
仮に起訴されてしまった場合でも、被害者との示談が成立しているなどの事情があれば執行猶予付き判決を得られる可能性が高くなるため、どちらにせよ刑事弁護はスピードが大事であることに変わりはありません。
そのため、住居侵入窃盗(侵入盗)で逮捕・勾留されてしまった場合には、刑事事件に特化した弁護士による適切かつ適切なサポートを受けることがなによりも重要となります。

4,まずは弁護士に相談を

福岡県内において住居侵入窃盗でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、住居侵入窃盗でお困りの方には初回接見サービス(有料)をご提供しております。
お気軽にご相談ください。

マッサージでない行為をマッサージと偽り逮捕、不同意わいせつ事件

2024-03-17

マッサージでない行為をマッサージと偽り逮捕、不同意わいせつ事件

不同意わいせつ罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福岡県行橋市に住んでいるAさんは、市内でマッサージ店を経営していました。
Aさんは来店した好みの女性であるVさんにマッサージを行う際、下半身を触りそれをマッサージと偽りました。
しかしVさんは他のマッサージ店にも通っていたことから不自然さを感じ、マッサージではなかったのではと思い、警察に相談しました。
その後、行橋警察署の警察官がマッサージ店に現れ、Aさんを不同意わいせつ罪の容疑で逮捕しました。
(この参考事件はフィクションです。)

不同意わいせつ罪

相手の同意を得ずに、わいせつな行為をした場合に適用される犯罪が、不同意わいせつ罪です。
わいせつな行為」とは、被害者の意思に反して性的羞恥心を害し、かつ一般的に性的羞恥心を害すると考えられる行為を指しています。
刑法第176条第1項に定められた不同意わいせつ罪の条文は、全部で8つの条件をあげ、それらの中のいずれかの行為をした上で、わいせつな行為を同意なく行うと適用されます。
Aさんは相手に嘘をつきましたが同意は得ているため、この第1項の条文は適用されていません。
しかし、不同意わいせつ罪には他にも条文があります。
刑法第176条第2項には、「行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。」と定められています。
相手に嘘をつくなどして偽り、同意を得るタイプの不同意わいせつ罪に適用されるのが、こちらの条文です。
そのためAさんはマッサージではない行為をマッサージと称して偽り、Vさんの下半身に触れているため、刑法第176条第2項不同意わいせつ罪が成立したと分かります。
条文には「前項と同様とする。」とあり、これは第1項の刑罰が第2項にも適用されることを意味します。
刑法第176条第1項の法定刑は「6月以上10年以下の拘禁刑」であるため、Aさんの不同意わいせつ罪に対する法定刑もこちらが適用されます。

弁護士と示談交渉

不同意わいせつ罪には罰金刑が定められていません。
そのため起訴されてしまうと、実刑判決となってしまう可能性があります。
刑務所への服役を回避するのであれば、示談の締結が最も重要な弁護活動です。
しかし、参考事件のように被害者が知り合いでないケースの場合、示談交渉のためには連絡先を知る必要があります。
被害者の連絡先を警察が教えることはまずありません。
そのため参考事件のような事例の場合に示談交渉を進めるのであれば、弁護士に弁護活動を依頼する必要があります。
別の方法で被害者の連絡先を調べ、個人で連絡をとるということも不可能ではありませが、弁護士を間に入れての示談交渉であれば、専門的な知識によるサポートを受け、より円滑に示談交渉を進めることができるでしょう。
不同意わいせつ事件の際に示談の締結を目指すのであれば、示談交渉の知識と経験が豊富な弁護士に弁護活動を依頼することをお勧めいたします。

示談交渉は弁護士にお任せを

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器物損壊罪となった放火、放火の罪になる条件とは

2024-03-14

器物損壊罪となった放火、放火の罪になる条件とは

参考事件

福岡県北九州市に住んでいる大学生のAさんは、市内にある無人の公園に来ました。
Aさんは持っていたマッチに火を付けると、公園内にあるゴミ箱に火のついたマッチを投げ入れました。
Aさんは公園の外から火に人が集まって消火する様子を眺め、消し止められるとその場を離れました。
その後、小倉北警察署が事件を捜査し、火を付けたのがAさんであることを突き止めました。
そしてAさんは器物損壊罪の疑いで逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

放火の罪と器物損壊罪

Aさんは物に火を付けましたが、器物損壊罪で逮捕されました。
参考事件の内容であれば、放火に関する罪が適用されるのではないかと疑問を浮かべる人も多いでしょう。
しかし、放火が行われたとしても事件状況によって問われる罪は変わってきます。
放火の罪とAさんに適用された器物損壊罪は、どちらも刑法に定められた犯罪です。
放火の罪は刑法第108条に「現住建造物等放火罪(人が住居にしている、又は人がいる建造物等に放火する罪)」、刑法第109条は「非現住建造物等放火(人か住居に使用せず、かつ人のいない建造物等に放火する罪)」、刑法第110条に「建造物等以外放火罪」が定められています。
参考事件は建造物に対する放火ではないため、仮に放火事件として扱われたのであれば刑法第110条に「放火して、前2条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。」と定められた建造物等以外放火罪が適用となった可能性はあります。
実際にAさんの逮捕容疑となったのは、刑法第261条に「前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」と定められた器物損壊罪です。
損壊とは物理的な破壊だけを意味するものではありません。
これは「物の効用を害する一切の行為」を意味し、隠す、汚すといった行為も損壊に含まれます。
この条文の傷害は、ペット等の他人が所有する動物を傷付けた場合に使われる表現です。
前3条とは、刑法第258条の「公用文書等毀棄罪(公務所で使用される文書または電磁的記録を毀棄する罪)」、刑法第259条の「私用文書等毀棄罪(法的な権利や義務を証明する文書または電磁的記録を毀棄する罪)」、刑法第260条の「建造物等損壊罪及び同致死傷罪(建造物等を損壊する罪)」を指し、ここに含まれない物を損壊するのが器物損壊罪です。

適用される条件

建造物等以外放火罪ではなく、器物損壊罪でAさんが逮捕された理由は、Aさんの放火行為が「公共の危険を生じさせ」ていないことにあります。
公共の危険とは、不特定および多数の人、他の建造物、財産に対する危険を意味します。
参考事件の場合、放火されたゴミ箱の周りに木や木製のベンチ等、延焼する危険性があると判断される物があれば、建造物等以外放火罪が成立した可能性がありました。
しかしAさんの放火したゴミ箱は、周りに何もなかった、もしくは延焼の危険性のあるものがなかったため、器物損壊罪が適用されたと考えられます。
参考事件のように、一般的なイメージや言葉から受ける印象とは違った運用となる事件は多々あります。
そのため刑事事件を起こしてしまった時は、速やかに弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受け自身の置かれた状況を正しく把握することが重要です。

刑事事件の専門知識を持つ弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、少年事件を含めた、刑事事件を中心に取り扱う弁護士事務所です。
当事務所は初回無料の法律相談逮捕された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービスのご予約を24時間体制で受け付けております。
ご予約のフリーダイヤルは、「0120-631-881」となっております。
建造物等以外放火罪の容疑でご家族が逮捕されてしまった方、または器物損壊罪事件を起こしてしまった方、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、お気軽にご相談ください。

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