玉替え受検で逮捕
有印私文書偽造罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
Aさんは、私立V大学の入試に何とかして合格したいという弟Bさんからの依頼を受け、V大学の入試当日にBさんに代わって受験をし、答案の記名欄にBさんの氏名を記入したうえで答案を作成しました。
このAさんの替え玉受験がV大学の知るところとなり、V大学が被害届を出したことで、Aさんは有印私文書偽造罪の容疑で福岡県直方署の警察官により逮捕されました。
Aさんの両親は、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼しました。
(事実を基にしたフィクションです。)
~ 有印私文書偽造罪 ~
有印私文書偽造罪は刑法159条に規定されています。
刑法159条
1 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事 実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
「行使の目的」にいう「行使」とは、虚偽作成にかかわる文書を、真正な文書、内容の真実な文書として他人に認識させ又は認識し得る状態に置くことをいいます。
「行使」と言えるかどうかについては2つのポイントがあります。
一つは、作成された虚偽文書が、内容が真実であると一般人が誤信する程度の外観を備えていること、もう一つは、作成された虚偽文書を他人に示すことです。
そのため、例えば、だれが見ても偽物の文書であることが明らかであるような文書を作成し、これを誰かに見せたとしても「行使」とはいえません。また、虚偽文書を作成したとしても、他人に示していない以上は「行使」とはいえません。
これをじれに当てはめると、AさんがBさんの名前を書いた上で答案を作成しこれを他人が見た場合、Aさんが作成したものであると気付くことは困難ですし、大学側に提出する目的で作成していることも明らかです。よって、「行使の目的」が認めらえることになりそうです。
次に、Aさんは、V大学入試の答案にBさんの名前を記入していますから、「他人の…署名を使用」することにも当たります。
「事実証明に関する文書」とは、実生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書をいうと解されています。
例として
・履歴書
・推薦状
・クレジットカード払いをする際に署名をする支払伝票
などがあります。
大学入試における答案については、答案それ自体で志願者(受験者)の学力が明らかになるものではないが、それが採点されて、その結果が志願者の学力を示す資料となり、これを基に合否判定が行われるという性質を踏まえ、「事実証明に関する文書」に当たると解されています。
「偽造」とは、文書の作成権限を有しない者が他人の名義を冒用して文書を作成すること(有形偽造)を言います。
上の事案で言えば、本来答案作成の権限を有しないAさんが、Bさんという他人の名義を冒用して答案にBさんの氏名を記入したことが「偽造」にあたることになります。
以上より、Aさんは有印私文書偽造罪(刑法159条1項)に問われる可能性があります。
最後に、Aさんが作成した内容虚偽の答案をV大学に提出した行為は「行使」に当たり、Aさんは偽造私文書等行使罪にも問われる可能性があります(刑法161条)。
しかし、偽造罪と行使罪とは、手段と目的の関係にあり併せて1罪として評価されます(牽連犯)。
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