窃盗罪と準現行犯人逮捕②
Aさんは,福岡県小郡市にある民家に,深夜の午前2時30分頃,窃盗の目的で侵入し,1階リビングのテーブルの上に置かれていた現金5万円入りの財布1個を盗みました(以下,本件)。2階で寝ていたVさん夫婦は1階で何かが壊される音を聞き,慌てて1階に降りたところ,リビングのドアガラスが壊されていました。Vさん夫婦は盗みに入られたと思い,すぐさま110番通報(午前2時40分)しました。
その時,小郡警察署に所属する警察官Kは,Vさん方から約50メートル離れたところで夜間警邏中でした。無線で本件の通報を受けたKは,右手にバールのようなものを所持していた男を認めたことから,男(のちに,Aさんと判明)に職務質問のため停止を求めました(午前2時45分)。そうしたところ,制服姿のKをみたAさんはその場から逃げ出し(その間,バールは川に投棄)たため,Kは追跡し,約50メートルしてAさんに追いつきました。Kの所持品検査の結果,Aさんは財布(Vさんの免許証入り)とペンライトを所持していたため,KはAさんを準現行犯逮捕しました(午前2時47分)。
~ 私人でも可能な現行犯人逮捕・準現行犯人逮捕 ~
刑事訴訟法では,検察官,検察事務官及び司法警察職員以外の者を「私人」と呼んでいます。現行犯人は,逮捕者にとって犯罪と犯人が明白であることから,誤認逮捕のおそれがなく,犯人を確保し,犯罪を制圧するなど速やかに犯人を逮捕する必要も高いことから,私人でも逮捕できるとされています。私人の現行犯逮捕については刑事訴訟法213条に規定があります。
刑事訴訟法213条
現行犯人は,何人でも逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
* 緊急逮捕との違い *
緊急逮捕は,逮捕時に無令状(裁判官から発せられた令状がない)であることは現行犯逮捕と同じです。しかし,現行犯逮捕の場合と違い,逮捕者が犯罪及び犯人を現に見たわけではありません。そのため,緊急逮捕の場合は,誤認逮捕を防止するため,逮捕後,裁判官に逮捕状の発布を求める手続をしなければならないとされおり,逮捕状が発布されないときは,ただちに犯人(被疑者)を釈放しなければならないとされています(刑事訴訟法210条1項)。緊急逮捕できるのは,検察官,検察事務官,司法警察職員で,私人には認められていません(刑事訴訟法210条1項)。逮捕状が発せられたときは,逮捕状を犯人に示さなければなりません(刑事訴訟法211条,201条1項)。
~ 現行犯逮捕後の手続,流れ ~
現行犯逮捕の場合,犯罪及び犯人が明白であることから,逮捕するにあたって逮捕の理由となる被疑事実の要旨(どんな罪を犯しのか大まかな概要)を告げる必要はないと解されています(この点,通常逮捕,緊急逮捕の場合は必要です)。
逮捕後の流れを次の2パターンにわけてご紹介いたします。
= 私人による現行犯逮捕の場合 =
私人が現行犯逮捕した場合は,直ちに犯人を検察官,司法警察職員に引き渡さなければなりません。近くに警察官がいた場合は,警察官に引き渡せば済みますし,いない場合は連絡を取り(110番通報などし),警察官が現場に来るまで犯人の身柄を確保しておく必要があるでしょう。私人が自分の判断で犯人を釈放することはできません(ただし,犯人が自力で逃走した場合など,やむを得ず釈放してしまった場合は責任を問われることはないでしょう)。
= 司法警察職員(警察官=司法警察員と司法巡査)が逮捕した場合 =
司法警察職員が逮捕した場合の流れは,司法巡査が現行犯人を受け取った場合,速やかに司法警察員に引致しなければならないとされている他は,通常の逮捕の場合と同様です。
* 逮捕後の流れ *
司法警察員による弁解を聴く手続,すなわち「弁解録取」の手続が取られます。その上で,司法警察員は,身柄を拘束する必要があるか否かを判断し,拘束する必要がないと判断したときは釈放し,必要がある判断したときは逮捕から48時間以内に,犯人及び事件を検察官の元に送致する手続を取ります。送致を受けた検察官も「弁解録取」という手続をとります。身柄拘束の必要がない場合は釈放し,必要がある場合は,犯人を受け取ってから24時間以内に,裁判官に対し勾留請求の手続を取ります。勾留の請求を受けた裁判官は,「勾留質問」という手続を取った上で,勾留するか釈放するかの判断をします。勾留の決定が出た場合は10日間拘束されます(ただし,不服申し立ての制度あり)。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。
(福岡県小郡警察署までの初回接見費用:39,200円)