窃盗罪と準現行犯人逮捕①

窃盗罪と準現行犯人逮捕①

Aさんは,福岡県小郡市にある民家に,深夜の午前2時30分頃,窃盗の目的で侵入し,1階リビングのテーブルの上に置かれていた現金5万円入りの財布1個を盗みました(以下,本件)。2階で寝ていたVさん夫婦は1階で何かが壊される音を聞き,慌てて1階に降りたところ,リビングのドアガラスが壊されていました。Vさん夫婦は盗みに入られたと思い,すぐさま110番通報(午前2時40分)しました。
その時,小郡警察署に所属する警察官Kは,Vさん方から約50メートル離れたところで夜間警邏中でした。無線で本件の通報を受けたKは,右手にバールのようなものを所持していた男を認めたことから,男(のちに,Aさんと判明)に職務質問のため停止を求めました(午前2時45分)。そうしたところ,制服姿のKをみたAさんはその場から逃げ出し(その間,バールは川に投棄)たため,Kは追跡し,約50メートルしてAさんに追いつきました。Kの所持品検査の結果,Aさんは財布(Vさんの免許証入り)とペンライトを所持していたため,KはAさんを準現行犯逮捕しました(午前2時47分)。

~ 準現行犯人逮捕とは ~

準現行犯人逮捕とは,現行犯人逮捕の場合のように現に犯罪,犯人を目の前で見てはいないものの,これじ準じる要件があるために,現行犯人逮捕と同様に犯人を無令状で逮捕できるというものです。要件については,刑事訴訟法212条2項に規定されています。

刑事訴訟法212条2項
 左(下)の各号の一にあたる者が,罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときは,これを現行犯人とみなす。
1号 犯人とし追呼されているとき。
2号 贓物(ぞうぶつ)又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
3号 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
4号 誰何(すいか)されて逃走しようとするとき。

= 「罪を行い終わってから間がない」 =

「罪を行い終わってから間がない」とは,犯行終了時から時間的に近接した時点をいいます。「間がない」とは,せいぜい数時間であると解するのが通説ですが,場所的に離れれば離れるほど,一般的に犯人であることの明白性(犯人であることが明らかであること)は失われているいくことから,場所的な近接性も無視できないとされています。

= 「追呼」(1号) =

「追呼」とは,犯人として追跡,又は呼称されていることをいいます。声を出して追っていることは必要ではなく,身振り手振りで追いかけている場合でもよいとされています。犯罪終了後継続して追呼されていることを要しますが,一度見失った後,間もなくして発見して追呼した場合でもよいとされています。

= 「贓物」(2号) =

「贓物」とは財産犯によって得られたものをいいます。「財産犯」とは,窃盗罪,強盗罪,恐喝罪,詐欺罪,横領罪,背任罪,盗品等に関する罪のことを指します。

= 「兇器」「その他の物」(2号) =

「兇器」とは,ナイフ・包丁など人を殺傷し得る物をいいます。「その他の物」とは,贓物や兇器以外の物であって,これらの物と同様に犯罪と犯人とを結びつける物をいいます。各種偽造罪の偽造用具,住居侵入に用いた鉄棒,ドライバーなどがその例です。

= 「身体又は被服に犯罪の顕著な証跡がある」(3号) =

「身体又は被服に犯罪の顕著な証跡がある」とは,身体に負傷していたり,被服に結婚が付着していたりして殺傷罪が推認される場合や,放火犯人の手に石油が染みついていた場合などを指します。

= 「誰何」(4号) =

「誰何」とは,「誰か」と問う必要は必ずしもなく,制服警察官を見て逃げ出したような場合も含みます。一般市民の方による誰何も4号に該当します。

~ 本件の準現行犯人逮捕は適法か? ~

では,本件の準現行犯人逮捕は要件を満たしているか確認しましょう。

まず,本件は,犯行(午前2時30分)から逮捕(午前2時47分)まで17分ですし,逮捕現場も犯行現場からさほど離れているとはいえないため「罪を行い終わってから間がない」といえるでしょう。Aさんの逃走状況から1号,4号にも当たります。また,Aさんは財布とペンライトを持っていたということでした。財布は「贓物」(2号)に当たりますし,夜間,ペンライトを持って入れば盗みに入ったと疑われますから「ペンライト」は「明らかに犯罪の用に供したと思われるその他の物」(2号)に当たります。
以上より,Kの逮捕準現行犯人逮捕の要件を満たし適法ということができるでしょう。

明日は,現行犯人逮捕,準現行犯人逮捕された場合のその後の手続(流れ)についてご紹介いたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。
福岡県小郡警察署までの初回接見費用:39,200円)

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