高齢者と万引き

高齢者と万引き

福岡県福津市に住む高齢女性のAさん(75歳)は、4年前に夫と死別し、現在、一人暮らしです。Aさんは普段、自宅で過ごすことが多く、近所付き合いもめったにありません。ところが、ある日、Aさんは東京都内に住む息子(40歳)から、「休みが取れたので実家に帰ってくる」との連絡を受けました。Aさんは喜び、息子や孫たちのために肉をご馳走してやろうと思いました。そして、Aさんは、近所のスーパーへ買い物に出かけました。Aさんは商品かごに次々と食料品など入れていきましたが、「もしかしたら肉を買うお金が足りないかもしれない」「しかし、せっかく久しぶりに息子や孫たちの顔を見るので諦めるわけにはいかない」と思い、高級肉1パック(販売価格3000円)を持ってきた買い物袋の中に入れました。Aさんはレジで商品かごに入れた食料品などの精算を済ませ店外に出たところ、Aさんの万引きを一部終始見ていた保安員に声をかけられました。Aさんは、事務室に連れていかれ、福岡県宗像警察署の警察官に事情を聴かれることになりました。その後、Aさんの息子が今後の対応について弁護士に無料相談を申込みました。
(フィクションです。)

~ はじめに ~

平成30年度版犯罪白書(以下、犯罪白書といいます)によると、平成29年度に刑法犯で検挙された高齢者(65歳以上の者)の数は

4万6264人

で、平成10年の1万3739人から約3.4倍増加したとのことです。高齢者による犯罪の増加の背景には、日本の総人口に占める高齢者の割合が増加したことはもちろんですが、犯罪白書では、将来の貯蓄や社会保障に不安抱えるている高齢者が多く、ご近所付き合いに関する高齢者の意識が薄れ、高齢者が社会的に孤立していることも要因ではないかと指摘されています。

* 高齢者に対する意識調査 *

内閣府が全国の60歳以上の男女を対象に実施した「高齢者の経済・生活環境に関する調査」によりますと、経済的な暮らし向きに心配ないと感じている高齢者の割合(「家計にゆとりがあり,まったく心配なく暮らしている」及び「家計にあまりゆとりはないが,それほど心配なく暮らしている」に回答した者)は,全体の6割以上を占めています(平成28年度)。他方で、「現在の貯蓄や資産は老後の備えとして十分か」という質問に対しては、「社会保障で基本的な生活は満たされているので,資産保有の必要性がない」,「十分だと思う」及び「まあ十分だと思う」と回答した高齢者の割合は、ドイツ及び米国と比べ顕著に低い割合となっており、老後の備えについて不安を感じている高齢者が多くいると思われます。

~ 窃盗罪が圧倒的に多い ~

最近では、東京池袋、福岡市早良区などでの交通事故がマスコミ等で大きく取り上げられていますが、実は、万引きをはじめとする

窃盗罪

高齢者犯罪の割合を大きく占めています。
犯罪白書によると、

① 窃盗罪    50.8% (うち万引きが30.8%、万引き以外が20%)
② 傷害、暴行罪 21.7%
③ 横領罪     8.3%
④ 詐欺罪     4.6%
⑤ その他    14.6%

とのことです。これは高齢者全体の統計で、男女別でみると、女性の高齢者に関しては、

65歳から69歳 86.7%(うち万引きが69.5%、万引き以外が17.2%)
70歳以上    93.1%(うち万引きが82.5%、万引き以外が10.6%)

が窃盗罪を占めています。特に、70歳以上の女性高齢者の82.5%が万引きという点が目を引きます。

* 万引きを犯すと?繰り返すと? *

窃盗罪は刑法235条に規定されており、法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされています。また、万引きを繰り返すと(服役前科が多数あると)、常習累犯窃盗罪という別の罪に問われることもあります。法定刑は「3年以上の懲役」とされています。

* 高齢者の窃盗罪再犯率は高い? *

犯罪白書によれば、法務総合研究所が調査したところによりますと、平成23年6月中に、窃盗罪で有罪の裁判が確定した高齢者を対象に調査を行ったところ、354人いた高齢者のうち、判決時に、前科(罰金以上の前科に限り、交通関係4法令違反のみによる前科を除く)がなかった高齢者は96人(全体の27.1%)だったのに対し、前科持ち(罰金刑、懲役刑を含む)の高齢者は258人(全体の72.8%)いたそうです。これからすると、窃盗罪に関する高齢者の再犯率は高いのではないかと思われます。

~ 万引きで検挙されたら微罪処分を目指そう ~

微罪処分とは、簡単にいうと、警察で検挙されても事件が検察庁へ送致されない手続、のことをいいます。検察庁へ送致されないわけですから、微罪処分となれば

・起訴、不起訴の刑事処分を受けない
・懲役刑、罰金刑の処罰を受けない
・前科が付かない

というメリットを受けることができます。犯罪白書によれば、平成29年における高齢者の微罪処分人員2万3965人のうち8割を窃盗罪(うち万引きは65.2%)が占めたとのことです。

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