自撮り条例が2月1日から施行
福岡県では,青少年(18歳未満の者)が下着姿や裸の写真を撮影,送信させられる「自撮り被害」が急増しています。福岡県警察の発表によれば,自撮り被害にあった青少年の数は,平成25年に22人,平成26年に26人,平成27年に23人,平成28年に31人,平成29年に49人だったそうです。このことを受け,福岡県では,自撮り画像等(児童ポルノ等)の提供を求める行為を禁止する福岡県青少年健全育成条例(以下,条例)の改正案が議会で可決され,平成31年2月1日から施行されますから注意が必要です。
~ 罰則規定など ~
条例31条には「児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止」規定を,条例38条4項には罰則規定を設けています。
31条の2 何人も,青少年に対し,次に掲げる行為をしてはならない。
1号 青少年に拒まれたにもかかわらず,当該青少年に係る児童ポルノ等(略)の提供を行うように求めること
2号 青少年を威迫し,欺き,若しくは困惑させ,又は青少年に対し対償を供与し,若しくはその供与の約束をする方法により,当該青少年に係る児童ポルノ等の提供 を行うように求めること
38条4項 第31条の2の規定に違反した者は,30万円以下の罰金又は科料に処する。
~ 青少年とは ~
まず,はじめに,条例2条1号で,青少年とは
18歳未満の者(他の法令により成年者と同一の能力を有するとされる者を除く。)をいう
と定義されています。
「他の法令により成年者と同一の能力を有するとされる者」として,民法753条による成年擬制を受ける者が挙げられます。成年擬制とは,未成年者(20歳未満の者)が婚姻したときは成年に達したものとみなすというものです。よって,婚姻している18歳未満の者は「青少年」ではありませんから,これらの方に自撮り要求行為を行っても条例違反に問われることはありません。
~ 31条の2第1号 ~
= 「拒まれた」ことが必要 =
単に,「自撮り画像を送れ」などと要求しただけでは足りず,その前提として,口頭でもメールでも形式は問いませんから「拒まれた」ことが必要とされています。
= 当該青少年に係る児童ポルノ等 =
拒んだ青少年の児童ポルノ等ということであって,拒まれたため,別人の児童ポルノ等の提供を求めても1号には該当しません。なお,児童ポルノ等とは,写真そのもののほか,HDD,DVD,BL,USBメモリ,画像データなどが含まれます。
= 提供を行うように求めること =
注意が必要なのは「求めた」だけで既遂となってしまう点です。つまり,相手が要求に応じたか否かは問わないことになります。
~ 31条の2第2号 ~
= 威迫,欺き,困惑させ =
威迫:暴行,脅迫に至らない程度の言語,動作,態度等により心理的威圧を加え,相手方に不安の怠を抱かせること
→「裸の写真,ネットにばらまくぞ」などと言う行為
欺き:嘘を言って相手方を錯誤に陥らしめ,又は真実を隠して錯誤に路らしめること
→交際する,結婚するつもりはないのに,その旨を言う行為
困惑させ:立場を利用したり,言語や態度により相手方を惑い困らせること
→塾講師が「テストの点数上げてやる」なと言う行為
= 対償を供与し,若しくはその供与の約束をする =
対償とは,青少年からを児童ポルノ等の提供を受けることに対する反対給付としての経済的利益をいい,現金のみならず,物品,債務(借金)の免除などの財産上の利益も対償に含まれるとされていますから,青少年が欲しいものを買ってあげる,食事をご馳走してあげることなども対償を供与することに当たる場合もあります。また,約束だけでも成立することがありますから注意が必要です。
~ 最後に ~
以上のように,自撮り画像要求行為は立派な犯罪ですから,発覚すれば逮捕,勾留されるおそれがあります。また,罰則は罰金刑しかありませんが,裁判を受け,確定すれば前科がつきます。さらに,実際に,青少年(児童)に裸などの写真を取らせ,それをスマートフォンなどに送らせた場合は,児童ポルノ製造の罪が成立するおそれがあります。そうなれば,拘束期間や刑罰がさらに重くなることが予想されますので注意が必要です。
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