犯人は証拠隠滅罪に問われない?②

2019-08-26

犯人は証拠隠滅罪に問われない?②

Yさんを殺したAさんは、その現場にいたVさんにその場で「警察にちくったらどうなるか分かっているのでだろうな」などと言って語気鋭くして脅し、捜査機関への口止めをしていました。しかし、後になって、Aさんは知人Bさんに「あいつ(Vさん)は口が軽いから信用できん。」「お前の方で処分して(殺して)くれないか」と言いました。そして、Bさんは、Aさんから言われたとおりVさんを呼び出し、Vさんを殺害しました。しかし、一連の件が、福岡県博多警察署に発覚し、AさんはYさんに対する殺人罪、Vさんに対する殺人罪の共犯及び証拠隠滅罪の教唆犯、BさんはVさんに対する殺人罪の共犯及び証拠隠滅罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~ はじめに ~

前回の「犯人証拠隠滅罪に問われない?①」では、

・Bさんに証拠隠滅罪が成立する

一方で、

・本来、殺人犯人であるAさんには証拠隠滅罪は成立しないこと
・その理由

についてご説明いたしました。今回は、なぜ、Aさんが証拠隠滅罪の教唆犯に問われているのかご説明いたします。

~ Aさんは、なぜ、証拠隠滅罪の教唆犯に問われる? ~

前回、Aさんが証拠隠滅罪に問われないのは、

犯人が証拠の隠滅などを図ることは、人の心情として当然・自然のことで、法律で犯人に「そんなことしたらだめだ!」と強制するには無理があるから(期待可能性がないから)

とご説明しました。しかし、「自ら証拠を隠滅する行為」と「他人を介して証拠を隠滅させる行為」は別の行為だと考えられています。この点に関して、あくまで犯人蔵匿罪での事例ですが、判例(昭和40年2月26日)は、

犯人自身の蔵匿行為が不可罰とされるのは、これらの行為を罰することが刑事訴訟法における被疑者・被告人の防御の地位(黙秘権等が認められています)と相容れないからであるのに対して、他人を教唆してまでその目的を達成しようとすることは、もはや法の放任する防御の範囲を逸脱する

とし、犯人蔵匿罪を教唆した犯人を犯人蔵匿罪の教唆犯に問えると判断しています。犯人蔵匿罪も犯人自身は処罰されませんから、考え方としては証拠隠滅罪にも適用できるのではないかと思います。

~ 教唆犯とは? ~

教唆犯とは、人を教唆して犯罪を実行させた者をいいます。教唆犯が成立するには、

・人を教唆すること
・それに基づいて被教唆者が犯罪を実行すること

の2つの要件がそろうことが必要です。

刑法61条1項 
 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
 
* 教唆とは *

教唆とは、まだ犯罪に対する実行の決意をしていない他人を唆して、犯罪実行の決意を生じさせることをいいます。教唆犯は、自ら犯罪を実行した者(正犯者といいます)と同様の地位にあることから、教唆犯にも正犯者と同様の刑を科すとされています。
教唆は、特定の犯罪の実行を決意させるに足りるもでなければなりません。AさんがBさんに「お前の方で処分してくれないか」と言った行為は、この教唆に当たると判断されたのでしょう。

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