【事例解説】アルバイトとして勤務していたお店のお金を持ち帰った場合に成立する可能性がある犯罪とは

【事例解説】アルバイトとして勤務していたお店のお金を持ち帰った場合に成立する可能性がある犯罪とは

今回は、アルバイトとして勤務していたお店のお金を持ち帰ったという架空の事例に基づき、成立する可能性がある犯罪について解説致します。

事例:アルバイトとして勤務していたお店のお金を持ち帰ったケース

福岡市にある飲食店にアルバイトとして勤務していたAさんは、勤務中にお店のレジから現金5万円を持ち帰ったとして、逮捕されました。
レジ締め作業中に5万円の差額が出たことで不審に思った被害店舗関係者が防犯カメラの映像を見返すと、Aさんが現金を取り出してポケットに入れる瞬間が映っていたことから、警察に被害届を提出し、Aさんは逮捕されるに至りました。
警察の調べに対して、Aさんは「自分がやったことに間違いありません」と容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,成立し得る犯罪について

上記の事例では、Aさんにはいかなる犯罪が成立することが考えられるでしょうか。
お店の現金を持ち帰るという行為は、刑法窃盗罪刑法第235条)もしくは業務上横領罪刑法第253条)に該当することが考えられます。

〈窃盗罪〉

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪は、他人の財物を窃取した場合に成立します。
他人の「財物」とは、所有権の対象であれば広く保護の対象となります。
窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことを言います。

〈業務上横領罪〉

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

業務上横領罪は、通常の横領罪刑法第252条1項)を業務者という身分を有する者が犯した場合に成立する犯罪です。
そのため、まずは横領罪について解説致します。
横領罪は、①自己の占有する他人の物を②横領した場合に成立します。
①「自己の占有する他人の物」にいう、「」とは財物を意味し、窃盗罪における財物と同じですが、横領罪の場合は不動産も含まれます。
占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力を言い、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態を言います。
法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人の物を処分し得る状態を言います。
また、その占有は他人からの委託信任関係を原因とすることが必要となります。
仮に、その占有が委託信任関係によらずに開始した場合、その物は誰の占有にも属していない、あるいは偶然自分の占有に属したことになり、その場合は遺失物等横領罪刑法第254条)が成立します。
そのため、横領罪における占有は他人からの委託信任関係が必要となります。
委託信任関係は委任民法第643条以下)などの契約に基づく場合のほか、取引上の信義則に基づく場合などがあります。
②「横領」とは、不法領得の意思を発現する一切の行為を言います。
横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、その物の経済的用法に従って、所有者でなければできないような処分をする意思を言います。
横領行為は、費消、着服、拐帯などの事実行為のみならず、売却、貸与、贈与などの法律行為も含まれます。
以上が横領罪の成立に必要な要件となり、業務上横領罪は、業務者という身分を有する者が横領行為を行った場合に成立します。
業務者とは、委託を受けて他人の物を保管・管理する事務を反復又は継続的に行う者を言い、質屋や運送業者などがその典型ではありますが、職務上公金を管理する公務員や会社や団体などの金銭を管理する会社員や団体役員なども業務者に含まれます。

まとめると、窃盗罪は他人の占有を侵害する犯罪で、業務上横領罪は他人の所有権を侵害する犯罪であると言えます。
そのため、両罪は、占有が誰に認められるかにより区別されると言えます。
上記の事例を参考にすると、レジ内の現金の占有がお店に認められるなら、Aさんはお店の意思に反してお店の占有を排除してレジ金の占有を自分に移しており「窃取」しているといえるため、窃盗罪が成立し得ます。
一方で、レジ内の現金の占有がAさんに認められるならば、Aさんは業務としてお店のレジ金を占有していたことになり、レジ金を持ち帰るという行為は横領といえるため、業務上横領罪が成立し得ます。
雇用関係などにより上下関係がある場合、下位にある者が財物を管理していたとしても、その財物の占有は上位の者に認められ、下位の者は占有を補助する者に過ぎません。
上記の事例で言えば、Aさんはただのアルバイトで上位の者(例えば、お店のオーナー、雇用主など)の占有を補助する者に過ぎないということになります。
そのため、Aさんの、レジ金の占有者であるお店のオーナーの占有を、占有者の意思に反して自分の占有に移した行為は、「窃取」に該当するため、Aさんには窃盗罪が成立すると考えられます。
なお、Aさんがただのアルバイトではなく、そのお店の店長であった等の事情があれば、Aさんとオーナーとの間には高度の信頼関係が存在し、Aさんにはレジ金についてある程度の処分権が委ねられているといえるため、レジ金を持ち帰るという行為に業務上横領罪が成立する余地はあると言えます。

2,まずは弁護士に相談を

窃盗罪業務上横領罪は被害者が存在する犯罪であるため、被害者との示談交渉を行うことが身柄拘束からの解放や不起訴処分を獲得するうえで肝要となります。
示談交渉は事件の当事者同士でも行うことはできますが、被害者は加害者に対して強い処罰感情を有しており、交渉に応じてもらえないことも考えられます。
しかし、弁護士が間に入れば、加害者が反省・謝罪の意思を有していることや被害の弁償等を行う意思があることなどを冷静かつ丁寧に被害者に説明することができ、交渉に応じていただける期待が十分に持てます。
そのため、示談交渉は、交渉のプロである弁護士に依頼することがオススメです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験しており、当該分野において高い実績を誇ります。
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