Archive for the ‘財産事件’ Category
【事例解説】詐欺罪とその弁護活動(新型コロナウイルス対策の持続化給付金をだまし取ったケースとその弁護活動)
【事例解説】詐欺罪とその弁護活動(新型コロナウイルス対策の持続化給付金をだまし取ったケースとその弁護活動)
今回は、国が支給する新型コロナウイルス対策の持続化給付金の受給資格があるかのように装って申請サイトから申請し、自身の口座に100万円の入金を受けだまし取ったというニュース記事を参考にして、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例 :新型コロナウイルス対策の持続化給付金をだまし取ったケースとその弁護活動
山口県警山口署は2023年11月20日、福岡市南区、建設作業員のAさんを詐欺の疑いで逮捕した。
逮捕容疑は、国の新型コロナウイルス対策の持続化給付金の受給資格があるかのように装い、2020年7月3日にサイトから申請し、同10日にAさん自身の口座に100万円の入金を受け、だまし取った疑い。
(中國新聞 2023/11/20の記事を一部変更し引用しています。)
1,詐欺罪について
〈詐欺罪〉(刑法246条)
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪は、人を欺いて財物(1項)あるいは財産上の利益(2項)を交付させた場合に成立します。
「人を欺」く行為(欺罔行為)とは、欺罔行為の相手方を錯誤に陥らせる行為、すなわち相手方が財物や財産上の利益を交付(処分)しようと判断する際の、その判断の重要な事項を偽ることを言います。
上記の事例で言えば、Aさんは持続化給付金の受給資格が無いにもかかわらず、それがあるかのように装うことで、給付者たる国の機関はAさんに受給資格があると判断して100万円をAさんの口座に振り込んでいるため、国の機関の交付の判断の基礎となる重要な事項を偽っているため、Aさんの受給資格があるかのように装い給付金の申請を行うことは「人を欺」く行為に該当すると考えられます。
「財物」とは、所有権の対象となり得る物であれば広く保護されますが、経済的にも主観的にも全く無価値な物は保護されません。
過去の裁判例では、メモ紙1枚(大阪高等裁判所判決昭和43年3月4日)やちり紙13枚(東京高等裁判所判決昭和45年4月6日)などが財物性を否定されています。
財産上の利益(2項)とは、財物以外の財産上の利益を言い、例えば、飲食店で飲食した代金の支払いなどの債務を免れる場合や、サービス・労務などを提供させる場合などがこれに該当します。
また、「財産上不法の利益を得」たとは、財産上の利益の取得手段が不法=違法なことを言うのであって、財産上の利益が違法なものであることではありません。
詐欺罪は、欺罔行為→相手方の錯誤→錯誤に基づく交付(処分)行為→財物または財産上の利益の移転がそれぞれ原因と結果の関係になければなりません。
欺罔行為を行ったが、その相手方が錯誤に陥らず別の理由(例えば、欺罔行為者にお金がないことを知っていて憐みからお金を渡したなど)で交付(処分)行為を行った場合は、詐欺罪は既遂とはならず未遂にとどまることになります。
そして 、詐欺罪は他人の財産を侵害する犯罪であるため、条文上の記載はありませんが成立には財産的損害の発生が必要とされています。
財産的損害が発生したか否かは経済的に評価して損害が発生したかどうかを実質的に見て判断されることになります。
過去の裁判例では、価格相当の商品を提供したとしても、事実を知ればお金を払わないといえるような場合において、商品の性能等につき真実に反する誇大な事実を告知して相手方を誤信させてお金を受け取った場合には、相手方に対する詐欺罪が成立するとしたものがあります。(最高裁判決昭和34年9月28日)
2,詐欺罪とその弁護活動
詐欺罪で逮捕・勾留された場合、身柄を拘束されて警察と検察の取調べを受けることになります。
ここで、被疑者が犯罪事実について否認している、あるいは取調べにおいて話したくないことがある、といった事情がある場合、どのように取調べに臨めばよいのかを知ることはとても重要と言えます。
被疑者段階における勾留は、被疑者が定まった住居を有しない場合、証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合に認められます。(刑事訴訟法207条1項本文、60条1項各号)
しかし、被疑者が犯罪事実を否認している場合、捜査機関としては、被疑者の身柄を解放してしまえば証拠を隠滅するのではないか、または逃亡を図るのではないかという推測が働くことで、勾留請求がなされてしまい、身柄拘束が長引いてしまう可能性が高くなることもあります。
また、捜査機関の取調べ中の質問に対し、被疑者がやみくもに黙秘権を行使すれば、捜査機関側にあまり良い印象を抱かれません 。
それにより取調官が厳しい言動で問い詰めるような取調べが行われるおそれや、このまま帰したら被疑者が証拠を隠滅するのではないか、または逃亡するのではないかと判断され勾留されてしまうおそれがある、といった不利益を被る可能性があります。
そこで、弁護士に依頼するメリットとして、取調べの対応について適切かつ丁寧なアドバイスを受けることができることが挙げられます。
例えば、どのような質問には黙秘すれば良いのか等適切な黙秘権の行使方法についての説明や、身柄を拘束されている事件の場合は頻繁に接見に向かい取調べ状況を逐一確認し、違法あるいは不適切な取調べを受けたという事情があれば、弁護士はしかるべき相手への抗議を行うことができるなど、その内容は多岐にわたります。
また、詐欺罪は被害者が存在する犯罪です。
そのため、被疑者が罪を認めて反省している等の事情がある場合には、弁護士は被疑者に代わって被害者との示談交渉を行います。
示談といっても加害者側だけに有利な内容での示談の成立は難しく、被害者側の意向をくみ取りつつ宥恕条項(加害者の謝罪を受け入れ、加害者の刑事処罰を望まないことを意味する条項)や被害届の取下げや刑事告訴の取消などの条項を加えた内容での示談成立に向けた交渉が必要となります。
示談交渉は当事者同士でも行うことはできますが、当事者同士での示談交渉は、通常、拗れて上手くいかないことが多いです。
加えて、加害者側が被害者側に示談交渉を持ち掛ければ、捜査機関側は、加害者側が被害者側に不正に働きかけて証拠の隠滅を図ろうとしているのではないかなどと思われることもあり得ます。
そのため、示談交渉は法律の専門家である弁護士に依頼することがよりスムーズな示談の成立のために必要と言えるでしょう。
3,まずは弁護士に相談を
山口県内において詐欺罪の当事者となってしまった方またはご家族等が詐欺罪の当事者となってしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、詐欺罪の当事者となり在宅で捜査を受けている方または被害者の方に被害届や刑事告訴をされてこれから捜査を受けるおそれのある方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
また、ご家族等が詐欺罪の当事者となり身柄を拘束されている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
お気軽にご相談ください。
【事例解説】窃盗罪とその弁護活動(親子3人でコンビニエンスストアから電子タバコの機械2つを万引きした)
【事例解説】窃盗罪とその弁護活動(親子3人でコンビニエンスストアから電子タバコの機械2つを万引きした)
今回は、親子3人でコンビニから電子タバコ2個を万引きしたというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:親子3人でコンビニから電子タバコ2個を万引きしたケース
山口県警岩国警察署はコンビニエンスストアで万引きをしたとして、Aさんら親子3人を窃盗の疑いで逮捕しました。
窃盗の疑いで逮捕されたのは福岡県北九州市の建設業のAさんら親子3人です。
警察によりますと3人は2月15日、山口県岩国市内のコンビニエンスストアで電子タバコの機械2つ、8000円相当を盗んだ疑いがもたれています。
警察は防犯カメラを調べるなどして、20日午前10時ごろ北九州市内にいる親子3人を逮捕しました。 警察で詳しく調べています。
(tys テレビ山口 3/20(水) 16:48配信の記事を一部変更し引用しています。)
1,窃盗罪について
〈窃盗罪〉
「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法235条)
窃盗罪は、占有(財物に対する事実的支配)を保護法益とし、その占有を侵害することを処罰する犯罪であるため、①他人の財物を②窃取した場合に成立します。
①「他人の財物」とは、他人が占有する財物をいい、財物とは財産的価値がある物をいいます。
しかし、財物とは「所有権の対象となり得べき物を言い、それ自体が金銭的乃至経済的価値を有する否やは問うところではない」とした判例があります(最高裁判決昭和25年8月29日)。
このことから、所有権の対象であれば、経済的価値がなくても主観的に価値があるものであれば財物として保護されることになります。
しかし、経済的にも主観的にも価値が認められないものは財物として保護されず、例えば、メモ紙1枚やちり紙13枚などは財物性が否定された判例があります。
②「窃取」とは、他人の占有する財物を、占有者の意思に反して、その占有を侵害して自己又は第三者の占有に移転させることを言います。
上記の事例で言えば、コンビニ店が占有する電子タバコ2個の占有を、コンビニ店の意思に反して、電子タバコ2個の占有を侵害してAさんら3人の占有に移転させたと言えるため、Vさんらは電子タバコ2個を「窃取した」と言えるでしょう。
また、窃盗罪は故意犯(罪を犯す意思を持ってした行為により成立する犯罪)であるため、上記の2つの要件の他に、③故意と④不法領得の意思が必要となります。
③の故意とは、犯罪事実の認識・認容を言い、窃盗罪の場合は、行為者が他人の財物を窃取することを認識し、窃取することになっても構わないと考えていること(認容)が必要となります。
④不法領得の意思は、条文上記載はありませんが、窃盗罪をはじめとする財産犯の成立には必要となる要件です。
そして、不法領得の意思とは、Ⓐ権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてⒷその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思を言います。
Ⓐを権利者排除意思、Ⓑを利用処分意思と言い、Ⓐは不可罰の使用窃盗(例えば、自転車の一時的な使用)との区別のため、Ⓑは毀棄罪(器物損壊罪など)との区別のためにそれぞれ必要となります。
2,接見禁止の解除または一部解除を求める弁護活動
窃盗罪で逮捕・勾留された場合、最長で23日間、身柄を拘束されてその間に警察と検察の取調べを受けることになります。
また、今回のような共犯事件において、事件の犯人がお互いに口裏合わせを行い証拠隠滅のおそれがあると判断された場合、身柄を拘束されている被疑者には接見禁止処分が付けられる可能性があります。
接見禁止とは、被疑者に逃亡または証拠隠滅のおそれが認められる場合に、弁護人または弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者以外の者との面会を禁止することを言います(刑事訴訟法207条1項本文、81条本文)。
接見禁止処分が行われると、家族・親族・恋人・友人などが身柄拘束されている被疑者と面会できなくなります。
身柄を拘束されている被疑者は精神的にも身体的にも不安を抱えていることが多く、家族や友人と面会することでその不安の解消に繋がるだけでなく、その後の人生における更生の一助となることもあります。
しかし、接見禁止処分が行われるとそれらの実現が不可能となるため、弁護士は接見禁止の解除に向けた弁護活動を行います。
上記の通り、被疑者に接見禁止が認められるのは逃亡や証拠隠滅のおそれが認められるためです。
したがって、それらのおそれを否定する客観的な事情や証拠を収集することが主な活動となります。
例えば、捜査機関の捜査により犯罪の証拠となる物(例えば犯行が記録された防犯カメラ)は既に押収されている等の事情があれば、被疑者による証拠隠滅は不可能である旨の主張を行い、接見禁止の解除に繋がります。
以上から、逮捕・勾留により身柄を拘束され、接見禁止処分が行われてしまった場合、少しでも早く弁護士に依頼することが大切と言えます。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において窃盗罪の当事者となってしまった方、もしくは家族・親族が窃盗罪の当事者となってしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、窃盗罪の当事者となってしまった方で在宅捜査を受けている等の場合には初回無料でご利用いただける法律相談を、家族・親族が窃盗罪の当事者となってしまい身柄を拘束されている方には初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
お気軽にご相談ください。
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(事務局の口座から現金を不正に払い出して横領したケース)
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(事務局の口座から現金を不正に払い出して横領したケース)
今回は、事務局担当者として経理事務と金銭出納などの業務に従事していた町職員が、事務局の口座から現金約63万円を払い出し横領したというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:事務局担当者として経理事務や金銭出納などの業務に従事していた町職員が、事務局の口座から現金約63万円を払い出し横領したケース
松阪署は4日、業務上横領の疑いで明和町、同町職員Aさんを逮捕した。
逮捕容疑は多気郡町村会の令和4年度事務局担当者として町村会経理事務と金銭出納などの業務に従事していた同5年2月28日、同町の金融機関で2回にわたり同事務局口座から払い出した現金合計約63万円を横領した疑い。
Aさんは「私はやっていない」と否認している。
同署によると、令和5年4月の人事異動で新しい担当者が事務を引き継いだ時、使途不明金が見つかったため、同町が同署に同年7月下旬から8月上旬にかけて相談し、10月上旬に告訴、受理された。
同町長職務代理者の下村由美子副町長は「多くの皆さまにご迷惑をおかけしたことをおわびいたします」「捜査に全面協力しますとともに、厳正に対処する」とコメントを出した。
(伊勢新聞 3/5(火) 8:00配信のニュース記事を一部変更し引用しています。)
1,業務上横領罪について
〈業務上横領罪〉
「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。」(刑法253条)
業務上横領罪は、通常の横領罪(刑法252条1項)を業務者という身分を有する者が犯した場合に成立する犯罪です。
そのため、まずは横領罪について解説致します。
横領罪は、①自己の占有する他人の物を②横領した場合に成立します。
また、横領罪は故意犯であるため③故意(刑法38条1項)と、条文上の記載はありませが、④不法領得の意思が必要となります。
横領罪は窃盗罪などとは異なり、既に行為者のもとに他人が所有権を有する物が存在しているため、他人の占有を侵害する犯罪ではありません。
そのため、横領罪の保護法益は、第一次的には所有権であり、また、横領行為は物を預けた人に対する裏切り行為といえるため、第二次的には委託信任関係であると考えられています。
①「自己の占有する他人の物」にいう、「物」とは財物を意味し、窃盗罪における財物と同じですが、横領罪の場合は不動産も含まれます。
「占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力を言い、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態を言います。
法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人の物を処分し得る状態を言い、法律上の支配が問題となる場面は不動産の占有と銀行預金の占有です。
不動産の場合は、不動産の所有権の登記名義人は、当該不動産を実際に居住するなど事実上支配していなくても、売却など自由に処分できる立場にあるため、法律上支配していると言えます。
また、他人から預かった金銭を自分の口座で管理している場合は、金銭を自分の財布に入れて実際に管理しているわけではないため事実上支配しているとは言えませんが、その金銭はいつでも自分の口座から引き出すことができ、自由に処分できる立場にあるため、他人の金銭に対する法律上の支配が認められます。
また、その占有は他人からの委託信任関係を原因とすることが必要となります。
仮に、その占有が委託信任関係によらずして開始した場合、その物は誰の占有にも属していないか偶然自分の占有に属したことになり、その場合は遺失物等横領罪(刑法254条)が成立します。
そのため、横領罪における占有は他人からの委託信任関係が必要となります。
委託信任関係は委任(民法643条以下)などの契約に基づく場合のほか、取引上の信義則に基づく場合などがあります。
②「横領」とは、不法領得の意思を発現する一切の行為を言います。
横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、その物の経済的用法に従って、所有者でなければできないような処分をする意思を言います。
横領行為は、費消、着服、拐帯などの事実行為のみならず、売却、貸与、贈与などの法律行為も含まれます。
以上が横領罪の成立に必要な要件となり、業務上横領罪は、業務者という身分を有する者が横領行為を行った場合に成立します。
業務者とは、委託を受けて他人の物を保管・管理する事務を反復又は継続的に行う者を言い、質屋や運送業者などがその典型ではありますが、職務上公金を管理する公務員や会社や団体などの金銭を管理する会社員や団体役員なども業務者に含まれます。
2,業務上横領罪で逮捕・勾留による身柄拘束を受けた場合における弁護活動
業務上横領罪で逮捕・勾留された場合、最長で23日間 、身柄を拘束されて警察と検察の取調べを受けることになります。
その後、検察官によって起訴されるか否かが判断され、起訴されてしまった場合には公判が開かれることになります。
窃盗罪などの他の財産犯に比べて、業務上横領罪は未遂犯を処罰する規定が存在しないため、業務上横領罪に当たる行為を行った時点で結果が発生していなくとも既遂となります。
未遂犯は既遂犯に比べて刑罰を減軽される可能性がありますが(刑法43条本文)、業務上横領罪はすべて既遂として処罰されることになります。
また、横領行為は信頼して預けていた財物に手を出すという信頼を失墜させる行為であること、「業務上」という反復継続して行う立場でありながら犯行に及んだという点で非難の度合いが高く、起訴されてしまった場合には実刑判決を受ける可能性が高いと言えます。
業務上横領罪の刑罰は10年以下の懲役刑のみであるところ、執行猶予付き判決を獲得するためには、判決によって言い渡される刑罰が懲役又は禁錮3年以下である必要があります(刑法25条柱書)。
そのため、業務上横領罪で逮捕・勾留された場合、それに引き続いて起訴されてしまった場合いは、弁護士による迅速なサポートを受けることが重要となります。
まず、勾留による身柄拘束が認められるのは、被疑者・被告人に証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文、60条1項各号)
そこで、弁護士はそれらの事情を否定し得る客観的な事情や証拠を収集する活動を通じて早期の身柄解放を行います。
具体的な活動の一例としては、被疑者・被告人の家族や親族に働きかけて身元引受人となってもらい、被疑者・被告人の裁判所や捜査機関への出頭の機会を確保することができれば、逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情となり、早期の身柄解放が期待できます。
次に、業務上横領罪は被害者が存在する犯罪でもあります。
そのため、弁護士が被疑者・被告人に代わって被害者との示談交渉を行い、示談の成立に向けた活動を行います。
示談と一口に言っても内容は種々様々で、加害者側にだけ都合のいい内容で示談交渉を進めると交渉が拗れてしまい、示談が成立する可能性は低くなります。
そのため、被害者側の意向をくみ取りつつ、宥恕条項(加害者側の謝罪を受け入れて、加害者の刑事処罰を望まないことを意味する条項)や刑事告訴取消といった約定を入れた内容で示談交渉を進める必要があります。
また、身柄を拘束されている事件では、逮捕から起訴までの間 に示談を成立させることができれば、証拠隠滅や逃亡のおそれが低いと判断され早期の身柄拘束が、起訴猶予による不起訴処分の獲得がそれぞれ期待できます。
そのため、身柄を拘束されてしまった場合には、短い期間で示談交渉を行い必要があるため、速やかな示談交渉が必要不可欠となります。
もし起訴されてしまった場合でも、示談が成立していれば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まるため、示談交渉の成立に向けた弁護活動が重要であることに変わりはありません。
以上より、業務上横領罪など逮捕・勾留により身柄を拘束されてしまった場合には、少しでも早く弁護士に依頼することがとても重要と言えます。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内で業務上横領罪の当事者となってしまった方、もしくは家族・親族が当事者となってしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事弁護の経験・実績が豊富で刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、業務上横領罪で在宅捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、家族・親族が当事者となってしまった方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
お気軽にご相談ください。
住居侵入窃盗(侵入盗)とその弁護活動(知人の家に侵入し物を盗んだケース)
住居侵入窃盗(侵入盗)とその弁護活動(知人の家に侵入し物を盗んだケース)
今回は、福岡県宇美町在住の公立中学校の教員Aさんが知人Vさんの住宅に侵入し物を盗んだというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:知人宅に侵入し物を盗んだケース
窃盗の疑いで逮捕されたのは、福岡県志免町に住む公立中学校の教員Aさんです。
Aさんはおととし8月、福岡県宇美町の知人男性Vさんの住宅に侵入し、着物など7点、あわせて115万円相当を盗んだ疑いが持たれています。
警察によりますと、Vさんの住宅付近の防犯カメラに映った車の映像などから、Aさんの関与が浮上したということです。
取り調べに対し、Aさんは、「間違いありません」と容疑を認めているということです。
(RKBオンライン 2024/03/01 14:09の記事を一部変更し引用しています。)
1,住居侵入窃盗(侵入盗)とは
住居侵入窃盗(侵入盗)とは、窃盗犯の手口の一つであり、空き巣や事務所荒らしなどがその典型例です。
刑法上は、住居侵入罪(130条前段)と窃盗罪(235条)の別の犯罪が成立しますが、住居侵入が窃盗を行うための手段として行われた場合、両罪は牽連犯(刑法54条後段)としてその最も重い刑により処断されることになります(刑法54条)。
2,牽連犯とは
牽連犯とは、「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名にふれる」場合をいいます(刑法54条後段)。
複数の行為の間に手段と目的、又は原因と結果の関係(牽連関係)が認められる場合には牽連犯が成立しますが、複数の行為に牽連関係が認められるかどうかの判断基準として、ある犯罪が手段若しくは結果とが経験上通常、手段と目的又は原因と結果の関係にあるか否かによって判断されます(客観説 大判明42.12.20)。
牽連犯として認められたものとして、住居侵入と窃盗の他に住居侵入と殺人、住居侵入と強盗、住居侵入と放火などが挙げられます。
反対に、牽連犯として認められないものとして、監禁と傷害、殺人と死体遺棄、強盗殺人と証拠隠滅のためにした放火などが挙げられます。
牽連犯が成立した場合の効果として、「その最も重い刑により処断する」とありますが、これは複数の犯罪を行った場合でも科される刑罰はそのうちの最も重い刑しか科されないことを意味し、科刑上一罪として処理されます。
住居侵入窃盗の場合では、住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金であり、窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金であるため、その最も重い刑である窃盗罪の法定刑の範囲で刑罰が科されることになります。
そのため、上記事例におけるAさんが有罪となった場合、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金の範囲で刑罰が科されることになります。
3,住居侵入窃盗とその弁護活動
住居侵入窃盗で逮捕・勾留された場合、最長で23日間、身柄を拘束されて警察と検察の取調べを受けることになります。
逮捕・勾留により身柄を拘束されている被疑者は一人で精神的・肉体的に大きな不安を抱えるため冷静な状態で取調べに臨むことが難しくなります。
そこで、弁護士による取調べ対応などの弁護活動が重要となります。
弁護士が接見に向かえば、被疑者はどのように取調べに臨めばいいか、何を話すべきかなどの丁寧かつ適切なアドバイスを受けることができるため、被疑者の不安の解消の一助となるでしょう。
また、勾留による被疑者の身柄拘束が認められるのは、被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれが認められるからです(刑事訴訟法207条1項、60条1項)。
そこで、被疑者の早期の身柄解放に向けた弁護活動としては、証拠隠滅や逃亡のおそれを否定し得る客観的証拠や事情の収集活動を行います。
たとえば、被疑者が犯してしまった犯罪の証拠となる物は既に捜査機関に押収されているため証拠隠滅は不可能であるという客観的事情を主張することで証拠隠滅のおそれを否定し得るでしょう。
そして、住居侵入窃盗は被害者が存在する犯罪であるため、被害者との示談交渉を進め示談を成立させることも重要な弁護活動と言えます。
被害者との示談が成立していれば、早期の身柄解放や起訴猶予による不起訴処分を得られる可能性が高くなり、前科の回避や身柄解放後の日常生活への支障を最小限に抑えることができます。
以上より、逮捕・勾留から起訴されるまでの23日間に、一刻も早い刑事弁護活動を受けることが重要となります。
仮に起訴されてしまった場合でも、被害者との示談が成立しているなどの事情があれば執行猶予付き判決を得られる可能性が高くなるため、どちらにせよ刑事弁護はスピードが大事であることに変わりはありません。
そのため、住居侵入窃盗(侵入盗)で逮捕・勾留されてしまった場合には、刑事事件に特化した弁護士による適切かつ適切なサポートを受けることがなによりも重要となります。
4,まずは弁護士に相談を
福岡県内において住居侵入窃盗でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、住居侵入窃盗でお困りの方には初回接見サービス(有料)をご提供しております。
お気軽にご相談ください。
強盗傷人罪となった際に開かれる裁判員裁判
強盗傷人罪となった際に開かれる裁判員裁判
強盗傷人罪と裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
参考事件
福岡県朝倉市に住んでいる会社員のAさんは、銀行から出てきたVさんの後をつけました。
AさんはVさんが人目に付かない路地に入っていくところを見計らい、持っていたナイフをVさんに突きつけ金を渡すよう脅迫しました。
しかしVさんは抵抗し、AさんはVさんの腕を切り付けました。
Vさんはバッグを落とし、Aさんは落ちたバッグを拾ってそのまま走り去りました。
その後Vさんが警察に通報したことで、朝倉警察署が捜査を開始し、ほどなく犯人がAさんであることが分かりました。
そしてAさんは強盗傷人罪の疑いで逮捕されることになりました。
(この参考事件はフィクションです。)
強盗傷人罪
Aさんの起こした強盗事件に適用されたのは、刑法第240条に「強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。」と定められた強盗傷人罪(および強盗致傷罪)の条文です。
通常の強盗事件は刑法に定められた強盗罪が適用され、この強盗罪とは暴行や脅迫を用いて他人の財物を強取する犯罪です。
その犯行時に人が負傷する結果が生じると、強盗傷人罪または強盗致傷罪となります。
強盗犯が故意に人を傷付ける場合が強盗傷人罪と呼ばれ、強盗犯が故意なく人を傷付けた場合に強盗致傷罪と呼ばれます。
強盗傷人罪と強盗致傷罪は適用される条文は同じであるため、どちらも法定刑は「無期又は6年以上の懲役」となります。
また、強盗犯が人を「死亡させたとき」は、故意に人を死亡させると強盗殺人罪、故意なく人を死亡させると強盗致死罪、とこちらも呼称が異なっています。
Aさんはまず、ナイフを示しながら現金を要求しました。
強盗罪となる「暴行又は脅迫」は、相手側の反抗を著しく困難にする強度が必要ですが、凶器を示しての脅迫は反抗を著しく困難にする強度があると判断されるため、この時点でAさんは強盗罪、少なくとも強盗未遂罪になります。
そしてVさんが抵抗したため、AさんはナイフでVさんを切り付けた上でバッグを奪いました。
そのため故意を持って「人を負傷させた」Aさんには、強盗傷人罪が成立することになりました。
裁判員裁判対象事件
Aさんの逮捕容疑である強盗傷人罪の法定刑は「無期又は6年以上の懲役」です。
裁判員裁判対象事件となる条件の1つには、刑罰に無期が含まれる事件があるため、強盗傷人罪では裁判員裁判が開かれることになります。
一般の国民がランダムに裁判員として選ばれ、裁判に参加する制度が裁判員裁判制度です。
裁判に一般の方が参加する都合上、裁判員裁判では通常の裁判とは異なる手続きがとられます。
まず、裁判員裁判では公判前整理手続という、裁判官、検察官、弁護士が公判に先だって事件の争点を事前に整理し、審理の予定を立てる作業を行います。
また、弁護士は裁判員の選任手続にも立ち合います。
これは不公平な裁判を行う可能性がある裁判員が選出されないよう裁判員候補者をチェックするためで、裁判を公平に行えるようにすることが目的です。
その他にも裁判員裁判は様々な手続きがとられます。
そのため、裁判員裁判対象事件を起こしてしまった場合に弁護士と契約するのであれば、裁判員裁判に詳しい弁護士に依頼することが重要と言えます。
裁判員裁判に詳しい弁護士
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件を中心に取り扱っている弁護士事務所です。
当事務所ではフリーダイヤル「0120-631-881」にて、初回無料の法律相談および、逮捕された方のもとに弁護士が直接伺う初回接見サービスのご予約を受け付けております。
24時間体制でお電話をお待ちしておりますので、裁判員裁判対象事件を起こしてしまった方、またはご家族が強盗傷人罪の容疑で逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、是非、ご連絡ください。
万引きで逮捕、会社相手にする示談交渉
万引きで逮捕、会社相手にする示談交渉
万引きの窃盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
福岡県筑紫野市に住んでいる会社員のAさんは、特定のコンビニで複数回万引きを繰り返していました。
そしてAさんがまたコンビニで万引きをした際、店員から万引きを見つかり取り押さえられてしまいました。
取り押さえた店員はすぐに警察に通報し、ほどなくして筑紫野警察署の警察官が臨場しました。
そしてAさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることになりました。
(この参考事件はフィクションです。)
万引き
窃盗罪は刑法第235条に「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」とあります。
窃取とは他人が占有(物に対する実質的な支配または管理を意味する)する他人の物を、その占有者(占有している人物)の意思に反して、自己または第三者へと占有を転移させることを指しています。
参考事件の場合、占有者はその商品を取り扱っている店舗になります。
そのためコンビニの商品を、対価を支払わずにその意思に反して、自身の占有下に置いたAさんの行為は窃盗罪で間違いありません。
Aさんのようにコンビニやスーパーなどの店舗から、商品を無断で持ち帰る窃盗罪は、万引きと呼ばれます。
あまり大きな犯罪ではないと思われている方もいますが、万引きは刑法に定められた窃盗罪が適用されるため、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が刑罰です。
そのため決して軽い犯罪とは言えず、特に複数回繰り返したり転売を目的として万引きしたりといったケースでは逮捕リスクも高くなっていきます。
個人が被害者でない場合
万引きの初犯であれば正式な裁判は開かれず、不起訴や略式罰金で事件が終了することもあります。
しかし、Aさんの場合は繰り返して万引きを行っているため、その点を重く見られ裁判が開かれてしまう可能性もあります。
こういった万引き事件で不起訴や略式罰金を目指すのであれば、被害者、つまり店舗との示談を締結することがその第一歩です。
しかし、個人ではなく会社などの法人が被害者である場合、弁護士がいなければ示談交渉には応じないと言われてしまうケースも十分あり得ます。
また、弁護士不在でも被害弁償は行えることが多いですが、商品の買い取りを済ませたとしても、それだけでは示談が締結したことになりません。
法的に効果を持つ形で示談を締結するためには、やはり弁護士に依頼し正式な示談書を作成することが確実でしょう。
万引き事件であっても事態を軽く扱わず、弁護士に相談し、速やかに示談交渉を進めることが重要です。
万引き事件に詳しい弁護士事務所
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件または少年事件を中心に扱う弁護士事務所です。
当事務所では、初回無料でご利用いただける法律相談、逮捕された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービスなどを実施しています。
どちらも24時間体制で、土曜日、日曜日だけでなく、祝日もご予約を受け付けております。
万引き事件を起こしてしまった、またはご家族が窃盗罪の容疑で逮捕されてしまった際には、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部のフリーダイヤル「0120-631-881」にご連絡ください。
特殊詐欺事件の役割である受け子について
特殊詐欺事件の役割である受け子について
参考事件
福岡県福津市に住んでいる大学生のAさんは、インターネット上にあった闇バイト募集に応募しました。
Aさんは「現金を取りに行くと伝えておいたから、職場の同僚を装って被害者の自宅に受け取りに行くように」と指示役から言われました。
伝えられた被害者の家に着いたAさんは、被害者に「職場の同僚です」と言って、被害者の自宅にあがりました。
そして現金を受け取りましたが、被害者はAさんを取り押さえ、事前に警察に通報していたため、その場で警察官に引き渡されました。
そしてAさんは宗像警察署に詐欺罪の容疑で逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)
特殊詐欺事件
参考事件のような詐欺事件は特殊詐欺事件と言われ、Aさんは「受け子」と呼ばれる役割を担っていました。
まず、特殊詐欺事件とは電話、手紙、メールなどの被害者と対面しない形で会社の上司や医者などを装い信用させ、口座振込または受け子への手渡しといった方法で不特定多数から財物(現金など)を騙し取る詐欺事件の手口です。
特殊詐欺事件は単独犯の場合もなくはありませんが、主に複数の犯人がそれぞれ役割を担って実行されます。
Aさんの担当した「受け子」は、親族や公人を装って被害者から現金などを受け取る役割です。
直接被害者と対面する立ち位置であるため、参考事件のようにその場で取り押さえられたり、顔を覚えられたりと、特殊詐欺事件の中でも逮捕される可能性が高い役割です。
そのため闇バイトとしてインターネットなどで募集された一般の方が、使い捨てとして利用されていることが多いです。
また、参考事件の指示役は「現金を取りに行くと伝えておいた」という言葉から「架け子」であることがわかります。
「架け子」とは被害者に信用できる人間を装って電話をかける役割です。
こちらは被害者と対面しない性質上逮捕リスクは低く、指示役が担っているケースが多いです。
特殊詐欺の弁護対応
特殊詐欺事件は複数人で計画的に実行されるため、悪質性が高いと判断されやすいです。
そのため詐欺グループに使い捨てられる受け子であっても、被害者を騙して現金を奪う実行犯として重く見られます。
刑法に定められた詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」であるため、特殊詐欺事件で逮捕されれば刑務所に服役する可能性が高いです。
実刑判決を避けて執行猶予を獲得するためには、被害者と示談を締結することは必須であり、速やかに示談交渉を進めるためにも特殊詐欺事件について詳しい弁護士に弁護活動を依頼することが重要です。
特殊詐欺事件に強い弁護士
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件及び少年事件を中心に取り扱う弁護士事務所です。
初回無料の法律相談や、逮捕された方のもとに弁護士が直接伺う初回接見サービスのご予約を、フリーダイヤル「0120-631-881」にて受け付けております。
ご予約は土日祝日を含め、24時間体制で承っておりますので、特殊詐欺事件に加担してしまった方、ご家族が詐欺罪の容疑で逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、お気軽にご相談ください。
【事例解説】電子計算機使用詐欺罪とその弁護活動(電子マネーを不正送金した架空の事例に基づく解説)
この記事では、架空の事例を基に、電子計算機使用詐欺罪がどのような場合に成立し、弁護活動がどのように展開されるかを解説します。
事例紹介:電子マネーを不正送金したケース
北九州市在住の同市職員の男性Aが、同市在住の会社員女性Vのスマートフォン上の電子決済アプリのアカウントから、Vになりすまして虚偽の送金情報を入力し、自身のアカウントに8万円相当の電子マネーを不正送金したとして、電子計算機使用詐欺の容疑で逮捕されました。
警察の調べによると、AとVは飲食店で知り合った後にA宅で過ごし、翌日Vが帰宅後に自身のアカウントの電子マネー残高が減っていることに気づき、同署に相談したことから捜査が開始され、送金履歴などからAの不正送金が発覚したとのことです。
Aは、電子計算機使用詐欺の容疑を認めています。
(事例はフィクションです。)
電子計算機使用詐欺罪とは
人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて、財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、財産上不法の利益を得た者は、10年以下の懲役に処する、と定められています(刑法第246条の2)。
詐欺罪(刑法第246条)が、人を欺き財物を交付させたり、財産上の利益を得た場合などに成立するのに対し、電子計算機使用詐欺罪は、「電子計算機」(パソコン、スマートフォンなどの電子機器全般)に虚偽の情報を入力することなどにより、財産上の利益を不正に得る場合などに成立します。
「虚偽の情報」とは、電子計算機のシステムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反する情報、とされます。
電子マネーの送金は、通常本人の意思に基づき行われるものであるため、送金する約束もないのに本人になりすまして入力した送金情報は、真実に反する「虚偽の情報」に当たると考えられます。
また、「財産権の得喪若しくは変更に係る電磁的記録」について、ネットバンキングの預金残高や電子決済アプリの電子マネー残高は、通常これに該当します。
本件で、送金する約束もないのにVになりすまして入力した送金情報によって、「不実の電磁的記録」が作出されたといえ、不正送金した金額が、自身のアカウントの電子マネー残高に反映された時点で、Aは当該残高相当の電子マネーを自由に利用することができると考えられるため、「財産上不法の利益」を得たものと通常認められます。
よって、本件Aの不正送金行為は、電子計算機使用詐欺罪が成立し得ると考えられます。
なお、AがVの電子決済アプリのアカウントに不正にログインした行為については、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(不正アクセス禁止法)第3条違反が別途成立する可能性があります(法定刑は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。
市役所職員による電子計算機使用詐欺事件の刑事弁護
電子計算機使用詐欺罪は罰金刑の定めがないため、起訴され有罪となった場合、執行猶予が付く可能性はありますが、懲役刑が科せられることとなります。
Aは地方公務員であることから、起訴され有罪となり懲役刑が科せられた場合、執行猶予が付いたとしても、地方公務員法第16条1号で定める「禁錮以上の刑に処せられた者」に該当し、原則として失職することとなります(同法第28条4項)。
そのため、不起訴処分の獲得を目指して、早期に被害者に対する謝罪及び被害弁償を行った上、示談成立に向けた交渉を行うことが重要ですが、本件のような詐欺事件では、銀行や電子決済アプリ運営会社がVに被害金額を補填する場合もあり、示談交渉の相手先が必ずしもVとは限らない可能性もあります。
よって、示談交渉を行うに際しては、事前に十分な検討を要するため、刑事事件に強く、詐欺事件の示談交渉の経験豊富な弁護士への相談をお勧めします。
福岡県の電子計算機使用詐欺事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、電子計算機使用詐欺などの詐欺事件において、示談成立による不起訴処分を獲得した実績が多数あります。
電子マネーの不正送金などの電子計算機使用詐欺事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。
【事例解説】詐欺利得罪とその弁護活動(タクシーに無賃乗車して逮捕された架空の事例に基づく解説)
この記事では、架空の事例を基に、無賃乗車による詐欺利得罪の成立とその弁護活動について、解説します。
事例紹介:タクシーに無賃乗車して逮捕された事例
大牟田市在住の男性Aが、タクシーに無賃乗車したとして、詐欺の容疑で逮捕されました。
福岡県大牟田警察署の調べによると、Aは深夜、福岡市内でタクシーに乗車し、目的地付近の大牟田市内のコンビニでタクシーの停車中に、運賃と高速道路料金の計約1万1000円を支払わず逃走しようとしたところを、運転手Vに発見され警察に通報されたとのことです。
Aは、「知人に会いに行くためにタクシーに乗車した。所持金はなく、料金を支払わないつもりでいた。」と供述し、詐欺の容疑を認めています。
(事例はフィクションです。)
財産上の利益を得る詐欺罪とは
詐欺には通常、金品等の「財物」を交付させる刑法246条第1項の詐欺と、役務の提供等の「財産上の利益」を得る同条第2項の詐欺があり、本件は、タクシーの運転という役務の提供を行わせたものであるため、第2項の詐欺罪の適用が考えられます。
第2項の詐欺罪の成立には、通常、(ア)人を欺く行為により、(イ)相手方が錯誤に陥り、(ウ)それによって、相手方が財産上の利益を供与し、(エ)行為者又は第三者が財産上の利益を得ること、が必要とされます。
本件Aは、(ア)料金を支払う資力も意思もないにもかかわらず、それを秘してタクシーに乗車し目的地を告げるという、運転手Vを「欺く」行為を行い、(イ)VはAが料金を支払うものと誤信し、(ウ)それによって、目的地に向けてタクシーの運転を開始し、(エ)Aは目的地に向かうタクシーに乗車したという「財産上の利益」を得たものとして、第2項の詐欺罪が成立すると考えられます。
なお、Aは目的地到着前にタクシーを下車し逃走していますが、タクシーが目的地に向けて走り始めた段階で既に利益を得たものとして、第2項の詐欺罪の既遂犯が成立すると考えられます。
タクシーの無賃乗車による詐欺事件の刑事弁護
第2項の詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役刑のみであるため、動機や犯行態様の悪質性、被害金額の程度や被害弁償の状況などから、検察官が起訴するべきと判断した場合は、公開の法廷での正式な裁判となります。
タクシーの無賃乗車事件の場合、詐欺の故意の認定のために、乗車時点で運転手を騙す意思があったのか取調べで追及されることとなりますが、本件Aはこれを認める供述をしています。
なお、料金は支払うつもりだったとして、仮に詐欺の故意を争おうとしても、所持金などが手元になかった上、停車中に逃走したという状況では、故意を争うのは難しいと思われます。
そのため、起訴猶予による不起訴処分の獲得を目指して、タクシー会社への未払い運賃の弁償を行った上、示談の成立を目指すことが考えられますが、被害者が会社などの場合は、会社の方針等により示談交渉を拒まれる場合が相当数あり、被害者が個人の場合に比べて、示談交渉が難航するおそれもあることから、刑事事件に強く、示談交渉の経験豊富な弁護士への相談をお勧めします。
福岡県の詐欺利得事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、詐欺罪などの財産犯の刑事事件において、示談成立による不起訴処分を獲得している実績があります。
詐欺事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(母親の預金を着服した成年後見人の息子が逮捕された架空の事例に基づく解説)
母親の預金を着服したとして、成年後見人の息子が業務上横領罪で逮捕された事件とその弁護活動ついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
成年後見人として財産管理をしていた認知症の母親Vの預金口座から500万円を着服したとして、福岡市在住の会社員の長男Aが、業務上横領の容疑で逮捕されました。
警察の調べによると、Aは家庭裁判所から成年後見人に選任された後、数年間にわたり、Vの口座から計500万円を引き出し、着服したとのことです。Aは、業務上横領の容疑を認めています。
(事例はフィクションです。)
成年後見人による業務上横領罪について
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する、と定められています(刑法第253条)。
業務上横領罪における「業務」とは、人がその社会生活上の地位に基づき反復・継続して行う事務とされ、職業である必要はありません。
成年後見人は、認知症、知的障害などの理由で、財産管理や各種契約等が困難になった方々を保護し、支援することを目的として、家庭裁判所から選任されるなどされ、その地位に基づき、被後見人に代わって、法律行為を行ったり財産の管理を行います。
よって、成年後見人が、自己が管理してその占有下にある被後見人の財産を着服する行為は、横領に当たることから、業務上横領罪が成立する可能性が高いです。
親族間での業務上横領罪の取り扱い
配偶者、直系血族又は同居の親族との間で、窃盗、詐欺、横領などの財産犯を犯した場合は、その刑を免除する、と定められています(刑法第244条、第255条参照)。
これは、「法律は家庭に入らず」との思想の下、これらの場合には、国の刑罰権の行使を差し控え、家庭内の規律に委ねるのが望ましいとの政策的考慮によるものとされ、「親族相盗例」と呼ばれます。
業務上横領罪も親族相盗例の対象とされるため、Aが直系血族である母親Vの財産を横領した場合は、刑が免除されるのではないかとも思われますが、判例上、「家庭裁判所から選任された成年後見人の後見事務は、公的性格を有する」ことから、家庭内での規律に委ねるべきものと言えず、その適用はないとされます。
よって、本件Aに業務上横領罪が成立する場合、親族相盗例は適用されず、10年以下の懲役が科される可能性があります
業務上横領罪の刑事弁護
業務上横領罪は罰金刑の定めがないため、起訴された場合、正式な裁判となります。不起訴処分を得て裁判を回避するためには、財産犯であることから、被害弁償と示談締結が極めて重要と言えます。
本件のように被害金額が高額の場合、被害弁償を一括で行うことが難しいことが考えられるため、被疑者の収入や資産の状況を説明し、分割での被害弁償に応じてもらえるよう、粘り強く交渉することも必要になると考えられます。
また、成年後見人による業務上横領の場合、通常、成年後見人は解任され、新たな成年後見人が選任されると考えられ、この場合、新たに選任された成年後見人と示談交渉する必要があり、一般的な業務上横領の場合よりも、複雑な対応が求められると考えられます。
以上のことから、業務上横領罪における被害者との示談交渉は、刑事事件に強く、財産犯における示談交渉の経験豊富な弁護士への依頼をお勧めします。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、業務上横領事件において、示談成立による不起訴処分などを獲得している実績があります。
業務上横領罪でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。