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同意があっても逮捕される、被害者が16歳未満の不同意わいせつ罪

2024-02-13

同意があっても逮捕される、被害者が16歳未満の不同意わいせつ罪

参考事件

福岡県糸島市に住んでいる会社員のAさんは、会社の同僚宅に訪問していました。
同僚の家には小学生のVさんがおり、Aさんは2人きりになったタイミングで、Vさんに「胸を触っていいか」と尋ねました。
Vさんが「いいよ」と了承すると、服に手を入れ胸部を触るなどしました。
その後、VさんがAさんにされたことを両親に話したため、そのまま両親は警察に被害届を提出しました。
その後、Aさんは不同意わいせつ罪の容疑で糸島警察署に逮捕されることになりました。
(この参考事件はフィクションです。)

不同意わいせつ罪

不同意わいせつ罪は、強制わいせつ罪(及び準強制わいせつ罪)が変更される形で、刑法に新設された犯罪です。
刑法第176条第1項には不同意わいせつ罪について、特定の行為を用いて「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者」に適用することが明記されています。罪名の通り不同意であることが不同意わいせつ罪の要件になっていますが、参考事件の場合、Vさんは同意して胸を触らせています。
しかし、不同意わいせつ罪の対象となる被害者が16歳未満である場合、別の条文が適用されます。
それが「16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第1項と同様とする。」と定められた刑法第176条第3項です。
この条文では、不同意であることが不同意わいせつ罪の条件になっていません。
つまり、被害者が16歳未満の場合は(13歳以上で年齢差が5歳未満でない限り)同意があったとしてもわいせつな行為があれば不同意わいせつ罪が成立します。
これは16歳未満では性的な自由に対する判断能力・同意能力が備わっていないと考えられているからです。
そのためVさんの同意があっても、小学生(12歳以下)であるVさんにわいせつな行為をしたAさんは、不同意わいせつ罪となります。

被害者が16歳未満の性犯罪

不同意わいせつ事件は被害者がいる事件です。
そのため被害者と示談が締結できていれば、減刑を求めたり執行猶予の獲得を目指したりといった際に有利となります。
しかし参考事件のように被害者が16歳未満である場合、示談交渉する被害者側(参考事件の場合は両親)の怒りが特に強くなりやすいため、示談交渉が難航しやすい性犯罪に係る事件の中でもさらに示談の締結が難しくなります。
最悪の場合、示談交渉そのものが拒否されてしまうことも十分に考えられます。
速やかな事件の解決のためには弁護士に依頼し、弁護士限りの連絡で示談交渉を進める等の弁護活動が必要になります。
参考事件のような不同意わいせつ事件の際は、性犯罪や示談交渉に詳しい弁護士に弁護活動を依頼することが重要です。

不同意わいせつ事件に詳しい弁護士事務所

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件を中心に扱っている弁護士事務所です。
フリーダイヤル「0120-631-881」にて当事務所は、初回無料の法律相談逮捕された方のもとに弁護士が直接伺う初回接見サービスのご予約を受け付けております。
24時間体制で電話対応致しますので、不同意わいせつ事件の当事者となってしまった方、ご家族が不同意わいせつ罪の容疑で逮捕・勾留中の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、是非、ご連絡ください。

ショッピングモールで盗撮、性的姿態等撮影罪で逮捕

2024-02-10

ショッピングモールで盗撮、性的姿態等撮影罪で逮捕

性的姿態等撮影罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

福岡県福岡市に住んでいる会社員のAさんは、市内にあるショッピングモールに訪れていました。
Aさんはエスカレーター(上り)を使う際、スマートフォンの動画機能をオンにし、前にいる女性Vさんのスカートの下にカメラを入れました。
しかし、Vさんはスマホに気付いていたため、エスカレーターを上がり切った際にAさんの腕を掴んで店員を呼びました。
Aさんを引き渡された店員はその後警察に通報し、しばらくして現場に駆け付けた中央警察署の警察官にAさんは性的姿態等撮影罪の疑いで逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

性的姿態等撮影罪

性的姿態等撮影罪とは、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」に定められています。
この法律の第2条第1項では「正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為」が禁止されています。
次に掲げる姿態等」には、わいせつな行為や性交をしている人の姿態の他、人の性的な部位およびそれらを隠すために身に付けている衣服(下着)が挙げられています。
そのため参考事件でAさんは、人が通常衣服を着けているショッピングモールでVさんのスカートの中の下着を撮影しているため、性的姿態等撮影罪が適用されます。
また、参考事件の場面ではまだAさんの撮ったスマホの動画にVさんの性的姿態等が写っているかは確認されていませんが、同条第2項には「前項の罪の未遂は、罰する。」と定められています。
そのため仮にAさんの撮影した動画に性的姿態等が写っていなかったとしても、性的姿態等撮影未遂罪は成立することになります。
性的姿態等撮影罪の法定刑は上記の法律の第2条に「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」と定められています。
以前まで盗撮事件は都道府県ごとに定められた迷惑行為防止条例で処分が決められていましたが、性的姿態等撮影罪が新設されたことで盗撮事件の処罰は全国で同じになり、その内容もより厳しいものになっています。

逮捕後の流れについて

警察に逮捕されると、釈放されない限りは48時間以内に検察官に身柄が送致されます。
そして検察官へ送致されると、検察官は24時間以内に裁判官に勾留請求をするかを決定します。
勾留請求された裁判官が勾留を決定すれば、10日間身体拘束されることになり、勾留が延長されれば最大で20日間身体拘束が継続されます。
つまり、逮捕されると外部との連絡を制限された状態で取調べを連日受ける状態が、最大23日間続く可能性があります。
長期の身体拘束を避けるためには、身体拘束では会社や家庭への影響が大きいと主張したり、逮捕するほど証拠隠滅や逃亡の危険がないことなどを書面にして提出したりといった身柄解放活動が必要です。
逮捕後早期の釈放を目指すのであれば、弁護士に相談し、弁護活動を依頼することをお勧めします。

盗撮事件に強い弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件と少年事件を中心に扱う弁護士事務所であり、初回無料の法律相談や、逮捕または勾留された方のもとに弁護士が直接伺う初回接見サービスを実施しております。
どちらもフリーダイヤル「0120-631-881」で、24時間ご予約を受け付けております。
盗撮事件を起こしてしまった方、ご家族が性的姿態等撮影罪で逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、是非、ご相談ください。

【事例解説】不同意性交等罪とその弁護活動(性交後に同意がなかったと主張された架空の事例に基づく解説)

2024-01-27

 この記事では、架空の事例を基に、性交の同意があったとして不同意性交等罪の成立を争う場合の弁護活動について、解説します。

不同意性交等罪とは

 不同意性交等罪は、相手の同意なく性交する行為を処罰するための法律です。
 この罪は、暴行や脅迫がなくとも、相手が同意する意思を持てない状態にある場合に成立する可能性があります。
 例えば、相手がアルコールなどの影響で意識が不明瞭な状態や、精神的な圧力を感じている状況下での性交がこれにあたります。

 令和5年の法改正により、以前の強制性交等罪は不同意性交等罪と名称が変更され、法的な扱いも更新されました。
 改正後の法定刑は、5年以上の拘禁刑とされており、「拘禁刑」の施行までは「懲役」とされています。この変更は、性犯罪に対する社会的な認識の変化と法的な対応の必要性を反映しています。

 不同意性交等罪の成立要件は複雑で、被害者の内心の状態や、当事者間の関係性、事件の状況など、多岐にわたる要素が考慮されます。
 したがって、この罪に問われた場合、専門的な法律知識と経験を持つ弁護士のアドバイスが不可欠となるのです。

事例紹介:性交後に同意がなかったと主張されたケース

 福岡市内の会社員Aさんは、あるマッチングアプリを通じて20代の女性Vさんと知り合いました。数回の食事を共にした後、AさんはVさんを自宅に招き、夕食を共にしました。
 その夜、二人は性交に及びますが、後日Vさんは「嫌だ」と言ったにも関わらずAさんに強いられたとして、福岡県中央警察署に被害届を提出しました。これにより、Aさんは不同意性交等の容疑で警察の取り調べを受けることになります。
 Aさんは「性交は合意の上だった」と主張していますが、Vさんの訴えにより、捜査が進められている状況です。

 この事例はフィクションですが、実際の事件では、被害者と加害者の供述がしばしば食い違い、真実が何であるかを見極めることが法律の専門家にとって重要な課題となります。

問われる同意

 不同意性交等罪において最も論点となるのは、「同意」の存在です。
 このケースでは、AさんはVさんの同意があったと主張していますが、Vさんはその事実を否定しています。法律上、同意の有無は被害者の内心に関わる問題であり、それを証明することは容易ではありません。

 事件の真相を解明するためには、当事者間の関係性、当時の状況、そして事件前後の行動など、多角的な視点からの検証が必要となります。例えば、マッチングアプリやメッセージのやり取り、当日の行動パターンなどが、両者の主張を裏付ける証拠として検討されることでしょう。

 弁護側は、Vさんが同意する意思を形成できなかった、またはその意思を表明することが困難であったという事実を否定するために、客観的な証拠や証言を集める必要があります。また、AさんがVさんの非同意を知り得なかった、あるいは誤解していた可能性を示すことで、容疑を否認する戦略を立てることが考えられます。

証拠の役割

 不同意性交等罪の事件における証拠は、真実を解明するための鍵となります。
 架空の事例では、AさんとVさんの主張が対立しており、どちらの言い分に真実性があるのかを判断するには、具体的な証拠が不可欠です。

 通常、この種の事件では、通信記録、目撃証言、現場の証拠、医学的所見などが重要な役割を果たします。例えば、事件当日のAさんとVさんのメッセージのやり取りは、同意があったかどうかの状況証拠として検討されることになります。また、第三者の証言や、事件現場の状況を示す写真やビデオなども、事実関係を明らかにするために重要です。
 しかし、証拠は常に明確な答えを提供するわけではありません。証拠の解釈は、しばしば主観的な要素を含み、異なる見方が可能です。そのため、弁護士は証拠を慎重に分析し、クライアントに有利な方法で提示するための戦略を練る必要があります。このプロセスは、弁護の成功において決定的な要素となることが多いのです。

法的弁護戦術

 不同意性交等罪の容疑に直面した際、弁護士は複数の戦術を駆使してクライアントの権利を守ります。架空の事例においても、Aさんの弁護団は以下のような戦略を展開することが考えられます。

 まず、Vさんの主張に矛盾点がないか徹底的に調査します。これには、Vさんの過去の行動パターンや、事件当日の行動、Aさんとの関係性に関する証拠を精査することが含まれます。
 また、Vさんの精神状態や、事件に至るまでの経緯を詳細に検討し、同意があったというAさんの主張を裏付ける証拠を集めることが重要です。

 次に、Aさんが誠実に同意を得たと信じていたという証拠を提示することで、誤解に基づく行為であった可能性を示唆します。これは、Aさんの認識とVさんの意思表示との間に齟齬があったことを示すことにより、故意ではないことを主張する戦略です。

 さらに、第三者の証言や、事件当夜の両者の行動を記録した映像など、客観的な証拠を用いて、Aさんの主張に信憑性を持たせることも考慮されます。これらの証拠を通じて、Aさんの無罪を証明するための弁護戦略を構築することが、弁護士の重要な役割となります。

通信記録の影響

 不同意性交等罪の訴訟において、通信記録はしばしば重要な証拠となります。
 架空の事例では、AさんとVさんの間のメッセージのやり取りが、事件の解明に役立つ可能性があります。

 事件前のメッセージは、二人の関係性や、その夜の出来事に対する期待を示すことができます。例えば、フレンドリーで親密なやり取りがあれば、それは同意が存在したことの指標となり得ます。
 一方で、Vさんが不安や疑念を示していた場合、それは同意がなかったことの証拠として解釈されるかもしれません。

 事件後の通信は、事件の認識に関する両者の態度を反映します。Aさんが事件後に謝罪のメッセージを送っていた場合、それは罪悪感の表れと見なされる可能性があります。
 しかし、これらのメッセージは文脈を考慮せずに解釈されるべきではなく、全体のやり取りの流れの中で評価される必要があります。

 弁護士は、これらの通信記録を慎重に分析し、クライアントの主張を支持する証拠として利用する方法を模索します。通信記録は、事件に関する両者の真実の意図を解き明かす手がかりとなるため、その取り扱いには細心の注意が払われるのです。

福岡県の不同意性交等罪に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、法改正前の強制性交等罪の否認事件において、嫌疑不十分による不起訴処分を獲得している実績があります。
 福岡県での不同意性交等事件で、自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事例解説】事件後長期間経過後に性被害を訴えられた事件(元教え子から示談金を請求された架空の事例に基づく解説)

2024-01-21

 元教え子から、在校中に行ったわいせつな行為での示談金の支払いを請求された架空の事件を参考に、令和5年法改正による性犯罪の公訴時効期間の延長や、事件後長期間経過後に被害を訴えられた場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事例紹介:元教え子から強制わいせつの示談金を請求された教員のケース

 久留米市内の高校教員Aは、7年程前に、当時担任していた18歳の女子生徒Vの身体を抑えつけ、身体を触るなどのわいせつな行為を行いました。
 最近になり、VからAに対し、示談金200万円を支払わないと、在校中に受けたわいせつな行為の件で、警察に被害届を出す旨の連絡がありました。
 Aは、7年程前の事件のため既に公訴時効期間が経過しているのではないかと思い、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

旧強制わいせつ罪(現不同意わいせつ罪)の公訴時効

 AがVに対して行った行為は、13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をしたとして、旧刑法第176条の強制わいせつ罪に該当し得ると考えられます。

 強制わいせつ罪は、令和5年法改正により、現行法では不同意わいせつ罪となりましたが、AがVにわいせつな行為を行ったのは、現行法の施行前であるため、施行後に被害を訴えられたとしても、旧法の強制わいせつ罪が適用されます。

 公訴時効とは、犯罪から一定期間が経過した場合には、犯人を処罰することができなくなる制度です。
 強制わいせつ罪の公訴時効期間は7年でしたが、令和5年法改正において、性犯罪は、その性質上、恥ずかしさなどの感情から、被害申告が難しい場合もあることなどが考慮され、現行法の不同意わいせつ罪の公訴時効期間は、7年から12年に延長されました(刑事訴訟法第250条3項3号)。

 なお、改正法施行時に公訴時効期間が進行中の事件は、延長された新しい公訴時効期間が適用されることとなるため、強制わいせつ罪であっても、改正法施行時に7年の公訴時効期間が経過していなければ、公訴時効期間が12年に延長となります。

 そのため、本件でAがVに対するわいせつな行為を行った具体的な年月日によっては、強制わいせつ罪の公訴時効期間が12年に延長される結果、公訴時効期間が経過していない可能性があると考えられます。

事件後長期間経過後に被害を訴えられた場合の刑事弁護

 公訴時効期間が経過していれば、通常、刑事事件化されることもなくなるため、事件後長期間経過後に被害を訴えられた場合、訴えの内容により成立し得る罪と公訴時効期間の経過について検討する必要があります。

 公訴時効期間は、対象となる罪の法定刑の長短等に応じて大きく変わるため、成立し得る罪の検討は、慎重に行う必要があります。
 例えば、本件において、被害者が、わいせつな行為によりPTSDを発症したと訴える場合、強制わいせつ致傷罪が成立する可能性があり、この場合、公訴時効期間は15年(現不同意わいせつ致傷罪であれば20年)と、大幅に長期化します。

 また、令和5年法改正により、性犯罪の被害者が18歳未満の場合、被害申告が特に難しいであろうことを考慮し、被害者が18歳になるまでの期間が公訴時効期間に加算されることとなりました。
そのため、18歳未満の者に対する性犯罪の場合は、被害者が18歳になってから公訴時効期間が実質進行することにも留意する必要があります。

 以上のことから、事件後長期間経過後に被害を訴えられた場合、特に性犯罪では公訴時効期間等が大幅に改正されたこともあるため、刑事事件に強い弁護士に相談し、公訴時効期間の経過の可能性、刑事事件化のリスクや取るべき対応などについて、慎重に検討することをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、性犯罪をはじめとする様々な刑事事件における弁護活動の豊富な実績があります。
 事件後長期間経過後に被害を訴えられるなどして、今後の対応についてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事例解説】児童ポルノ提供によるわいせつ物頒布等罪とその弁護活動(SNSで児童ポルノ販売した架空の事例に基づく解説)

2023-12-31

 この記事では、架空の事例を基に、児童ポルノ提供によるわいせつ物頒布等罪の成立とその弁護活動について、解説します。

事例紹介:SNSで児童ポルノ販売したケース

 SNSを通じて児童ポルノをインターネット上で販売したとして、福岡県行橋市の専門学校生の男Aが児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供)とわいせつ物頒布等の容疑で逮捕されました。
 警察の調べによると、Aは昨年11月、児童ポルノの画像データをファイル共有用のサーバーにアップロードし、自身のSNSで購入者を募り、ダウンロード用URLをメッセージ機能で送信して販売したとのことです。
 Aは「児童ポルノであることは認識していた。10回は売っている。」などと供述しています。
(事例はフィクションです。)

児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供)

 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(児童買春・児童ポルノ禁止法)で、児童ポルノを提供した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する、と定められています(第7条第2項)。
 「児童」とは、18歳未満の者を指し、「児童ポルノ」とは、児童を被写体とする性的な描写のことで、例えば、性的な行為や性器を露出した写真などが該当し得ます。
 なお、不特定若しくは多数の者に「提供」した場合は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金となります(同条第6項)。

わいせつ物頒布等罪とは

 電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する、と定められています(刑法第175条)。

 「わいせつ」とは、「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」とされ、児童ポルノはわいせつ物と通常認められます。

 「頒布」とは、有料・無料を問わず不特定又は多数の者に交付することとされ、パソコンのハードディスクやインターネットのサーバーなどに記録されている画像データを他者にダウンロードさせたことは、電気通信の送信により電磁的記録を頒布した、ものにあたると考えられます。

 よって、本件Aは、「電気通信の送信」により「わいせつな電磁的記録」を「頒布」したとして、わいせつ物頒布等罪(わいせつ電磁的記録等送信頒布罪)が成立する可能性が高いです。

児童ポルノを販売した事件の刑事弁護

 児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供)は児童に対する性的搾取の防止、わいせつ物頒布等罪は善良な風俗、とそれぞれ社会的法益に対する罪とされますが、実務上は被写体となっている者が被害者的な立場で扱われることがあります。
 そのため、弁護士であれば、捜査機関から被写体となっている者の個人情報を教えてもらうことで、示談交渉により不起訴処分や刑の減軽の可能性を高める弁護活動の余地が生まれます。

 本件は被写体となっている者が児童のため、通常は児童の保護者との示談交渉になると考えられますが、保護者が子の被害に対して感情的になり、被害者本人との示談交渉の場合よりも難航する可能性が高いため、刑事事件に強く、示談交渉の経験の豊富な弁護士への相談をお勧めします。

 なお、捜査機関において被写体となっている者の特定が行われないことなどにより示談交渉ができない場合であっても、本人の反省はもとより、家族の協力等により再犯防止の環境を整えたことを申述することや、被害弁償や示談金の代わりとして贖罪寄付を行うなど、不起訴処分や刑の減軽の可能性を高める弁護活動を行うことは可能です。

福岡県の児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供)やわいせつ物頒布等罪に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、被害者との示談成立などによる不起訴処分を獲得している実績が多数あります。

 児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供)やわいせつ物頒布等罪でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事例解説】ストーカー規制法違反その弁護活動(元交際相手に復縁を迫り逮捕された架空の事例に基づく解説)

2023-12-25

 元交際相手の女性に復縁を迫り、待ち伏せや連続で電話をかけるなどしたとして、ストーカー規制法違反の容疑で逮捕された架空の事件を参考に、ストーカー規制法の成立とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事例紹介:Aさんのケース

 元交際相手の20代の女性Vに復縁を迫り、待ち伏せや連続で電話をかけるなどしたとして、糸島市在住の男性Aがストーカー規制法違反の容疑で逮捕されました。
 糸島警察署の調べによると、Aは、元交際相手のVに復縁を迫るため、Vの勤務先の近くで待ち伏せをしたり、着信拒否にもかかわらず連続で電話をかけるなどのストーカー行為をした疑いです。Aは、ストーカー規制法違反の容疑を認めています。
(事例はフィクションです。)

ストーカー規制法違反とは

 「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(「ストーカー規制法」)では、特定の者に対する「恋愛感情」等や、それが満たされなかったことに対する「怨恨の感情」を充足する目的で、特定の者やその関係者に対し、「つきまとい等」を行うことを禁じています。
 「つきまとい等」にあたる行為として、本件AがVに対して行った「待ち伏せ」や「拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかける」行為が含まれます(同法2条1項)。

 同一の相手に対して、「つきまとい等」を反復することを「ストーカー行為」とし、ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する、とされています(同法2条4項、18条)。

 被害者から警察への相談・申出により、警察から「つきまとい等」をした者に対して、「つきまとい等」を止めるよう「警告」が発せられることもありますが、行為の悪質性などから、被害者への接触を禁止した上で捜査を行う必要性が高いとして、警告のないまま逮捕される場合もあります。

 なお、警告に反して「つきまとい等」を続ける者に対しては、都道府県公安委員会は「禁止命令等」を発することができるとされ、「禁止命令等」に違反してストーカー行為をした者は、刑が加重され、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が科される可能性があります。

ストーカー規制法違反事件の刑事弁護

 事例のように、ストーカー規制法違反で逮捕され身体拘束された場合、弁護活動としては、加害者が被害者と接触しないための具体的な措置を講じたことなどを検察官や裁判官に主張し、身体拘束からの解放を目指します。

 また、ストーカー規制法違反は、被害者との示談の成立を目指すことも重要な弁護活動だと考えられます。
 ストーカー規制法違反は、被害者の告訴がなくとも検察官の判断で起訴できる罪(非親告罪)となりましたが、実務上の運用は、被害者の意思を尊重し、プライバシー侵害が生じないように配慮する観点から、被害者との示談が成立することにより、検察官が起訴することなく事件が終了する可能性を高められると考えられるためです。

 しかしながら、事件の性質上、被害者が加害者との直接の示談交渉を拒む可能性は極めて高く、警告や禁止命令等が発せられている場合であれば、加害者が直接示談交渉を申し入れたりすること自体がストーカー行為の一環とみなされてしまう恐れもあるため、身体拘束されている場合はもとより、そうでない場合でも、示談交渉は弁護士に依頼して行う必要性が高いと考えられます。

福岡県のストーカー規制法違反事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、ストーカー規制法違反事件において、身体拘束からの解放や示談成立による不起訴処分を獲得している実績があります。

 ストーカー規制法違反の容疑で自身やご家族が逮捕されたり、警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事例解説】不同意わいせつ致傷罪とその弁護活動(被害者がPTSDを発症した架空の事例に基づく解説)

2023-12-10

 この記事では、架空の事例を基に、不同意わいせつの被害者がPTSDを発症した場合の弁護活動について、解説します。

事例紹介:不同意わいせつの被害者がPTSDを発症したケース

 知人の20代女性Vにわいせつな行為をし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせたとして、久留米市在住の会社員男性A(28歳)が不同意わいせつ致傷の容疑で逮捕されました。
 警察の調べによると、Aは、車に同乗していたVの身体を触るなどのわいせつな行為を行い、事件後、Vは心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受けたとのことです。
 Aは、Vにわいせつな行為を行ったことは認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

PTSD発症による不同意わいせつ致傷罪の成立

 不同意わいせつ罪(未遂犯も含む)を犯し、これにより人に「傷害」を負わせた場合、不同意わいせつ致傷罪(刑法第181条第1項)が成立します。
不同意わいせつ致傷罪は、令和5年法改正前の強制わいせつ致傷罪にあたる罪であり、法定刑は、無期又は3年以上の拘禁刑(「拘禁刑」の施行までは「懲役」)です。

 「傷害」とは、人の生理的機能に障害を与えること、又は人の健康状態を不良にすることとされており、外傷のみならず、パニック障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神的な疾患もこれに該当するとされます。

 よって、Aのわいせつ行為とVの心的外傷後ストレス障害(PTSD)の因果関係が認められると、Aに不同意わいせつ致傷罪が成立する可能性があります。

不同意わいせつ致傷事件の刑事弁護

 不同意わいせつ致傷罪は、法定刑に無期懲役を含むため、裁判員裁判の対象となりますが、性犯罪では、裁判員裁判の量刑は一般的に重くなる傾向があり、不同意性わいせつ致傷罪で起訴された場合、実刑となる可能性も十分あります。
 そのため、裁判を回避するために、被害者との示談の成立などにより不起訴処分を目指すことが特に重要だと言えます。
 不同意わいせつ致傷罪は、被害者の告訴がなくとも検察官の判断で起訴できる罪(非親告罪)ではありますが、実務上の運用は、被害者の意思を尊重し、プライバシー侵害が生じないように配慮する観点から、被害者との示談によって告訴の取消しに結びつけることができれば、不起訴処分となる可能性を高めることができると考えられます。

 不同意わいせつ致傷罪の被害者は、加害者に強い嫌悪感や恐怖感などを抱くことが通常であり、加害者が被害者と示談交渉を直接行うことは極めて困難だと考えられますが、弁護士であれば、被害者も話を聞いても良いとなることも多く、示談交渉の余地が生まれ、刑事事件に強く示談交渉の経験豊富な弁護士であれば、十分な内容の示談がまとまる可能性が見込まれます。

 なお、わいせつ行為と傷害の因果関係が疑われる事情、例えば、本件で言えば、被害者が別の要因により、事件前から既に精神疾患を有していた疑いがあるといった事情があれば、そうした事情を取調べの際に供述するなどして、捜査機関にわいせつ行為と傷害の因果関係に疑いを持たせ、捜査を十分に尽くさせることにより、罪名から「致傷」が外れる可能性もあるため、取調べの対応も重要になってくるケースも考えられます。
 不同意わいせつ罪であれば、法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑(懲役)と軽くなる上、裁判員裁判の対象外となり、起訴されても実刑を回避する可能性を高めることが期待できます。

福岡県の不同意わいせつ致傷事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、改正前の強制わいせつ致傷事件において、身体拘束からの早期解放や示談成立による不起訴処分などを獲得している実績があります。
 不同意わいせつ致傷事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事件解説】陸上大会で女子選手の下半身を撮影し逮捕(後編)

2023-10-20

 前回に引き続き、高校生の陸上競技大会で女子選手の下半身を撮影したとして、福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 福岡市内であった高校生の陸上競技大会で女子選手の下半身を撮影したとして、同市内在住の男性Aが、福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)の容疑で逮捕されました。
 福岡県中央警察署の調べによると、Aは、福岡市内であった高校生の陸上競技大会で、10代の女子選手の下半身をデジタルカメラでズーム撮影していたところ、それに気付いた選手の保護者が警察に通報しました。
 Aは、「服の上から撮影するだけでは罪にならないと思っていた」と、供述しているとのことです。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)

前回の前編では、性的姿態等撮影罪の成立について、解説しました。

福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)とは

 盗撮行為につき性的姿態等撮影罪が成立しない場合であっても、各都道府県が定める迷惑行為防止条例において規定されている「卑わいな言動」として、処罰の対象になる可能性があります。

 福岡県迷惑行為防止条例では、何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、「卑わいな言動」を行ってはならない、と規定されています(第6条第1項2号)。

 そのため、本件Aのように、「公共の場所」といえる陸上競技場で、女子選手の下半身をデジタルカメラでズーム撮影したという場合、その女子選手に恥ずかしい思いをさせたり、不安を覚えさせる「卑わいな言動」を行ったとして、福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)が成立する可能性があります。

 なお、Aは、「服の上から撮影するだけでは罪にならないと思っていた」と供述していますが、刑法第38条第3項で、法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない、と規定されているため、罪の成立は妨げられないこととなります。

盗撮行為を罪に問われた場合の刑事弁護

 福岡県迷惑行為防止条例違反(盗撮、卑わいな言動)の法定刑は、常習でない場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金ですが、性的姿態等撮影罪の法定刑は、未遂犯を含めて、3年以下の拘禁刑(施行までは懲役刑)又は300万円以下の罰金と、大きな開きがあります。

 福岡県迷惑行為防止条例違反(盗撮、卑わいな言動)で逮捕された場合、初犯であり、被害者との示談が成立すれば、不起訴処分を獲得できる可能性が高かったのですが、厳罰化された性的姿態等撮影罪においては、同様に不起訴処分を獲得できるとは必ずしも限らない可能性があります。

 盗撮行為に関する処罰規定は大幅に改正されたばかりということもあるため、盗撮行為を罪に問われた場合、今後どのような手続で事件が進み、どの程度の刑罰が科される可能性があるのか、刑事事件に強い弁護士に相談されることをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、新法制定前の福岡県迷惑防止条例違反事件において、身体拘束からの解放示談成立による不起訴処分を獲得している実績が多数あります。

 盗撮行為を行ったとして、ご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事件解説】陸上大会で女子選手の下半身を撮影し逮捕(前編)

2023-10-17

 高校生の陸上競技大会で女子選手の下半身を撮影したとして、福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)で逮捕された事件とその弁護活動について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 福岡市内であった高校生の陸上競技大会で女子選手の下半身を撮影したとして、同市内在住の男性Aが、福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)の容疑で逮捕されました。
 福岡県中央警察署の調べによると、Aは、福岡市内であった高校生の陸上競技大会で、10代の女子選手の下半身をデジタルカメラでズーム撮影していたところ、それに気付いた選手の保護者が警察に通報しました。
 Aは、「服の上から撮影するだけでは罪にならないと思っていた」と、供述しているとのことです。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)

性的姿態等撮影罪の成立について

 令和5年7月13日に施行された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(「性的姿態撮影等処罰法」)により、従来、各都道府県の迷惑行為防止条例違反として処罰されていた盗撮行為は基本的に、「性的姿態等撮影罪」(同法2条1項)として、全国一律での処罰の対象となりました。

 本件Aの盗撮行為につき、性的姿態等撮影罪が成立するでしょうか。

 同罪では、「性的姿態等」正当な理由がなくひそかに撮影する行為を、一定の例外を除き処罰すると定めています。
 この「性的姿態等」の対象として、(1)人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)、又は(2)人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を覆っている部分、と規定されています(同法2条1項1号イ参照)。
 スカートの中の下着を盗撮するような、性的姿態等撮影罪が成立し得る典型的な例とは異なり、衣服の上からの撮影にとどまる場合は、通常、「性的姿態等」の撮影に該当しないと考えられます。

 本件Aは、陸上競技のユニフォームを着た女子選手の下半身の撮影ということであり、透視機能付きカメラでもなく、大腿部の撮影とユニフォームの上からの臀部の撮影にとどまるものであれば、性的姿態等撮影罪が成立する可能性は低いと考えられます。

 なお、性的姿態等撮影罪には未遂犯の処罰規定があるため、「性的姿態等」を撮影しようとしていたと認められる場合は、未遂犯として処罰される可能性があります(同法2条2項)。

次回の後編では、福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)について、解説します。

盗撮行為を罪に問われた場合の刑事弁護

 福岡県迷惑行為防止条例違反(盗撮、卑わいな言動)の法定刑は、常習でない場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金ですが、性的姿態等撮影罪の法定刑は、未遂犯を含めて、3年以下の拘禁刑(施行までは懲役刑)又は300万円以下の罰金と、大きな開きがあります。

 福岡県迷惑行為防止条例違反(盗撮、卑わいな言動)で逮捕された場合、初犯であり、被害者との示談が成立すれば、不起訴処分を獲得できる可能性が高かったのですが、厳罰化された性的姿態等撮影罪においては、同様に不起訴処分を獲得できるとは必ずしも限らない可能性があります。

 盗撮行為に関する処罰規定は大幅に改正されたばかりということもあるため、盗撮行為を罪に問われた場合、今後どのような手続で事件が進み、どの程度の刑罰が科される可能性があるのか、刑事事件に強い弁護士に相談されることをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、新法制定前の福岡県迷惑防止条例違反事件において、身体拘束からの解放示談成立による不起訴処分を獲得している実績が多数あります。

 盗撮行為を行ったとして、ご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事件解説】「身分なき共犯」として監護者性交等罪で起訴された事件(後編)

2023-09-17

 前回に引き続き、交際相手の未成年の娘と性交したとして、交際相手である母親とともに監護者性交等罪で起訴された事件を参考に、監護者性交等罪の成立とその弁護活動、「身分なき共犯」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 交際していた女性Bの娘V(16歳)と性交したとして、福岡市在住の男性A(45歳)が、監護者性交等罪で起訴されました。
 捜査機関の調べによると、AとBは出会い系サイトで知り合って交際を開始し、Aは、Bの娘Vが18歳未満だと知りながら性交したいと考え、Bに依頼してVに性交に応じるよう説得させ、Vと性交するようになったとのことです。
 A、Bは起訴内容を認めています。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)

前回の前編では、監護者性交等罪の成立について解説しました。

「身分なき共犯」について

 監護者性交等罪は、犯人が「監護者」であることが成立要件となっていますが、このように、犯人が一定の身分を有することが成立要件である犯罪を「真正身分犯」と呼び、「身分を有しない者」が行っても、犯罪は成立しないこととなります。

 保護者の交際相手の立場であっても、「監護者」と認められる可能性はあるものの、本件Aは、居住状況、生活状況、経済的状況などから、Vの「監護者」とまでは認められなかったようです。よって、Aに監護者性交等罪は成立し得ないとも思われます。

 しかし、「身分を有する者」の犯行に「身分を有しない者」が加担した場合は、「身分を有しない者」にも当該犯罪の共犯が成立するとされます(刑法第65条第1項)

 本件では、Vの「監護者」と認められる母親のBについて、Aとの性交に応じるようVを説得したという役割の大きさなどから、監護者性交等罪が成立し得ることを前提に、Bの犯行に「身分を有しない者」であるAが加担したとして、「身分を有しない者」であるAにも監護者性交等罪の共犯が成立し得るとして、起訴されたものと考えられます。

監護者性交等罪の弁護活動

 監護者性交等罪は、法定刑が5年以上の有期拘禁刑(拘禁刑の施行までは懲役)のため、起訴されると正式な裁判となります。

 被害者が未成年者である性犯罪の弁護活動では一般的に、不起訴処分等を目指して、被害者の両親等の保護者との示談を目指すことが重要となりますが、監護者性交等罪では被疑者が監護者の立場にあるため、示談を行うことがそもそも想定できない場合があります。

 このような場合、不起訴処分や刑の減軽を得るために、真摯な反省とともに再犯防止の意欲や取組みを、検察官や裁判官に具体的に示すことが特に重要になると考えられます。
 性犯罪再犯防止のカウンセリング等を受ける意欲を示すことや、被害者やその家族との元々の関係性に応じて、離婚や交際の解消、離縁や別居等により、被害者である児童が安心して生活できるよう環境調整を行っていることを示すことなどが考えられます。
 被害者の今後の生活環境や家族関係に関わることであるため、弁護活動においては、被害者とその家族の心情に配慮した調整が必要となります。

 このように、監護者性交等罪の刑事弁護は、通常の性犯罪の場合とは異なる対応が求められることが想定されるため、刑事事件に強く、被害者が未成年者である場合を含む、様々な性犯罪の刑事弁護の経験豊富な弁護士への相談をお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、被害者が未成年者である様々な性犯罪において、不起訴処分や刑の減軽などを獲得した実績があります。
 ご家族が監護者性交等罪などで逮捕されご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

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