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【暴行】西鉄満員電車でのトラブルで暴行と示談

2020-01-26

【暴行】西鉄満員電車でのトラブルで暴行と示談

暴行罪示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡市中央区天神で勤務するAさん(23歳)は、ショルダーバッグを背負って満員の西鉄電車に乗って通勤していました。そうしたところ、後方にいた男性Vさん(50歳)から、「満員なのでショルダーバックを降ろすか、棚に上げるかしてくれませんか。」などと声をかけられました。それでも言うことを聞かなかったAさんは、降車した天神駅でVさんから「ショルダーバックを背負っていると迷惑なんだよ。」「車内放送聞こえんかったんか。」と攻めよられるように言われたことから、カッとなって「なんだと~!」と言いながらVさんの背広の胸ぐらをつかみました。すると、近くにいた男性のWさんがAさんとVさんの間に割って入り、事態はいったん収まりました。しかし、その後Aさんは、現場に駆け付けた福岡県中央警察署の警察官から事情を聴かれることになりました。一方のVさんも事情聴取に応じ、中央警察署に暴行罪での被害届を提出しました。Aさんは自分に非があったことを認め、Vさんに謝罪し示談を成立させたいと考えています。
(フィクションです。)

~ 満員電車内でのバックの位置 ~

満員電車内では、ショルダーバッグを降ろすか、棚の上に置きましょう。
これはショルダーバッグを背負っていると、その分のスペースを確保することができず他の乗客の迷惑となるからです。
最近な、電車の車内放送や張り紙などでこのことを積極的に周知されるようになりました。
それでも、まだ上記マナーを守らない方を多くみかけます。
特に、地方の都市だと、満員電車自体が珍しく、ショルダーバックを降ろしたり棚の上にあげる必要性を実感できてない方が多いことがその原因とも考えられます。

~ 暴行罪 ~

暴行罪は刑法208条に規定されています。

刑法208条
 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
刑法(一部抜粋)

暴行」とは、人の身体に対する不法な有形力の行使をいいます、
殴る蹴るといった行為が典型ですが、本件のように胸ぐら掴む行為も「暴行」に当たります。
また、狭い部屋でナイフを振り回す、最近だと、あおり運転のように、直接人の身体に触れない行為であっても、場合によっては「暴行」に当たることがあります。

このように、日常生活における「ちょっとした行為」が暴行に当たるおそれがあります。
特に感情に任せたままの行為は暴行罪に問われるおそれが高いですから注意が必要です。

~ 暴行罪と示談 ~

AさんはVさんに対する謝罪と示談を希望されているようです。
仮に、示談が成立すると、Vさんが「被害届を取り下げてくれる」ことが期待できます。
被害届が取り下げられると、その後の捜査を受けることはありません。
つまり、事件は警察どまりとなり、検察庁に送致されることはありません。
検察庁に送致されることがないということは、起訴、不起訴などの刑事処分を受けたり、懲役●●年、罰金●●円という刑罰を受けることはありません。また、前科もつきません(前歴としては残ります)。
また、会社によりますが、一般的には、Aさんの仕事へもさほど影響はないのではないでしょうか?

ただ、示談交渉を円滑に進めるためには弁護士に示談交渉を依頼した方が無難です。
まず、示談交渉を始めるには、捜査機関を通じて被害者の連絡先等を取得する必要があります。
しかし、捜査機関が加害者に被害者の連絡先等を教えることはありません。他方、弁護士であれば、被害者の承諾を得た上で教えます。つまり、弁護士でなければ示談交渉を始めることはほぼ不可能ということです。

また、実際の示談交渉では、様々な交渉をしなければなりません。
示談交渉は被害者の被害感情などが入り混じって進展が困難となる場合もあります。
こうした際、加害者自らが交渉することは困難ですし、示談交渉を頓挫させる原因ともなります。

示談を円滑かつ適切に成立させるためには弁護士に依頼した方が無難です。

示談についてはこちらもどうぞ→★示談について

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【危険ドラッグ】ダッシュボード内から危険ドラッグが発見!

2020-01-25

ダッシュボード内から危険ドラッグが発見!

危険ドラッグについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県古賀市に住むAさんは、車を運転中、後方から走ってきた福岡県粕屋警察署の警察官が運転するパトカーに呼び止められました。Aさんは車を停止させ、警察官の職務質問や所持品検査に応じました。すると、Aさんの車のダッシュボード内から、薬のようなものが発見されました。警察官が薬の成分を簡易検査すると「危険ドラッグ」であることが判明しました。そこで、Aさんは危険ドラッグを所持していたとして薬機法違反(所持罪)で現行犯逮捕されました。Aさんは、警察官や接見に来た弁護士に「危険ドラッグは私のものではない。」「友人か誰かが私の知らないうちにそこに隠したとしか考えられない。」「ダッシュボード内に入っていると知らなかった。」などと話しています。
(フィクションです)

~ 危険ドラッグ ~

危険ドラッグは、おもに、麻薬や覚醒剤の構造を変えた薬物のことをいいます。

危険ドラッグを規制する法律は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、略して「薬機法」と呼ばれる法律です。
薬機法では、

 中枢神経の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物(以下、略)として、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの

を「指定薬物」とし(薬機法2条15項)、指定薬物の

・製造
・輸入
・販売
・授与
・所持
・購入
・譲受
・医療等の用途以外の用途の施用

を禁止しています(薬機法76条の4)。

薬機法が制定される前までは、危険ドラッグは「脱泡ドラッグ」や「違法ドラッグ」などと呼ばれていました。

業として(反復継続する意思で)の、製造、輸入、販売、授与、所持(販売又は授与の目的で貯蔵し、陳列した者に限る)の場合は、

5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金。又は併科(薬機法83条の9)

単なる、製造、輸入、販売、授与、所持(販売又は授与の目的で貯蔵し、陳列した者以外)、購入、譲受、医療等の用途以外の用途の施用の場合は

3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科(薬機法84条26号)

です。

~ Aさんの所持罪は成立する? ~

薬機法違反の所持罪が成立するには、「所持」していたことに加えて、危険ドラッグを所持していた「認識」があったことが必要です。
では、Aさんに危険ドラッグを所持していた認識を認めることはできるでしょうか?
Aさんが危険ドラッグの所持の認識を否認していることから問題となります。

この点、確かに、Aさんの車のダッシュボードから危険ドラッグが発見された、という事実は、Aさんの認識を推認させる状況証拠(間接事実)となりえます。
だからといって、それだけでAさんに危険ドラッグの所持の認識があると断定することはできません。
Aさんが言うように、第三者の持ち物である可能性も否定できないからです。

薬物の所持事案では、本件のように薬物の所持の「認識」を否認される方が多くいます。
その際、薬物がどういう経緯で、どこに、どういう形、状況で保存されていたのかがポイントとなります。
これらの事情が「認識」を推認させる事情ともなり得るからです。

捜査機関での取調べでは、上記の点に加えて、交友関係なども厳しく追及されることでしょう。
しかし、その際、どう対応してよいか分からない、という方も多いかと思われます。
そんなときは弁護士に対応を依頼ください。
弁護士でであれば、捜査機関の違法、不当な取調べに対し適切に対処することができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。

【酒気帯び運転】酒気帯び同乗罪で接見禁止~福岡県朝倉市

2020-01-24

【酒気帯び運転】酒気帯び同乗罪で接見禁止~福岡県朝倉市

酒気帯び同乗罪で接見禁止について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

AさんとBさんは会社の同僚でご近所同士で,ある日,地域の忘年会に参加するため,Aさんが車を運転して(BさんはAさんの車に同乗)忘年会の会場まで行きました。AさんもBさんも忘年会でお酒を飲みました。そして,忘年会後,BさんはAさんに「車に乗せてってくんない?」と言ったところ,Aさんはこれを承諾し「帰りもオイが運転するけん乗っていかんね」と言いました。そして,AさんとBさんは車で帰宅途中,警ら中の福岡県朝倉警察署のパトカーの職務質問に遭い,Aさんは飲酒運転(酒気帯び運転)の罪で,Bさんは飲酒運転(酒気帯び運転)同乗罪で逮捕され,その後勾留されました。また,AさんとBさんは他人を介して通謀し,証拠隠滅を図るおそれが高いとして接見禁止決定を受けてしまいました。
(フィクションです)

~ 酒気帯び運転同乗罪 ~

お酒を飲む機会が増える方も多いのではないでしょうか?
そんな中,警察の取り締まりも強化されていますから注意が必要です。

ご存知のとおり,飲酒運転だけではなく,飲酒運転をすることとなるおそれがあるものに対し車両等を提供したり,飲酒運転者に対し自己の運送を要求し,又は依頼して車両に同乗した場合も犯罪となります。
後者は飲酒運転(酒気帯び運転)同乗罪で,道路交通法65条4項に規定があり,罰則は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(道路交通法117条の2の2第4号)。
なお,条文上は要求,依頼とありますが,明示的な要求,依頼行為がなくても,同乗者と運転者の関係,同乗に至った経緯等個別具体的な事情を勘案して要求,依頼があったと認められる場合があります(つまり,暗黙の了解という場合であっても同乗罪に問われることがあります!)。

道路交通法65条
1 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
2 何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
3 何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
4 何人も、車両(トロリーバス及び旅客自動車運送事業の用に供する自動車で当該業務に従事中のものその他の政令で定める自動車を除く。以下この項、第百十七条の二の二第六号及 び第百十七条の三の二第三号において同じ。)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、 当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。

~ 接見禁止と解除 ~

弁護人以外の者(ご家族など)との接見は,通常,勾留後に可能です。
ところが,勾留後もご家族などとの方との接見が制限されることがあります。それが,

被疑者・被告人に接見禁止決定が出た場合

です。
接見禁止決定とは,通常検察官の請求を受けた裁判官が,被疑者・被告人が逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると認めた場合に,勾留されている被疑者・被告人と弁護人又は弁護人となろうとする者以外の者との接見を禁じる決定のことをいいます。
今回,Aさん,Bさんの認否が明らかではありません。
また,AさんとBさんはともに身柄拘束を受けていますから,両者が直接通謀して証拠隠滅を図ることは物理的に不可能です。
それでも,他人を介して通謀することは可能です。
今回は,そうした理由から接見禁止決定を出された可能性があります。

接見禁止を解除するための手段として,接見禁止の裁判に対する準抗告・抗告の申立てがあります。これは法律(刑事訴訟法)上認められた手続きです。他に,接見禁止の全部又は一部解除の申立てがあります。全部解除となれば,制限なく接見できます。また,一部解除とは,裁判官・裁判所が認めた範囲の人のみ接見を認める処置です。

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【覚せい剤】覚せい剤の逮捕のきっかけ

2020-01-23

覚せい剤の逮捕のきっかけ

覚せい剤について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県大川市に住むAさん(56歳)は、仕事や職場での人間関係からストレスが溜まっていました。そこで、Aさんは覚せい剤を使ってストレスを発散しようと思い、ネットを通じて売人を見つけ、売人から覚せい剤を入手して覚せい剤の使用を繰り返していました。そうしたところ、Aさんの言動が徐々におかしくなり、職場の上司から福岡県筑後警察署へ通報されたことをきっかけにAさんは覚せい剤取締法違反(使用罪)で逮捕されました。Aさんの家族が、弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 覚せい剤は違法! ~

最近は、元有名芸能人が覚せい剤で逮捕されたり、福岡県では、大川市の中学校で勤務する現役の教諭が覚せい剤で逮捕されるなど、覚せい剤に関連するニュースが相次いでいます。

覚せい剤や麻薬等は、それを乱用する人間の精神や身体をボロボロにし、人間としての生活を営むことをできなくするだけでなく、場合によっては死亡することもあります。
また、薬物の乱用による幻覚・妄想が、殺人、放火等の凶悪な犯罪や交通事故を引き起こします。また、覚せい剤は暴力団組織などの犯罪組織の活動資金のネタとしても使われており、その活動資金を基に新たな犯罪、新たな被害者を生み出しかねません。
このように、覚せい剤は、乱用者本人のみならず、周囲の人、さらには社会全体に対しても、取り返しのつかない被害を及ぼしかねないものです。
こうしたことから、覚せい剤、麻薬等の使用、所持等は法律により厳しく禁止されています。

~ 覚せい剤取締法の法定刑 ~

覚せい剤取締法で規定されている法定刑は以下のとおりです。

覚せい剤の場合

□輸入・輸出・製造
・単純(営利目的以外)→1年以上の有期懲役
・営利目的      →無期若しくは3年以上の懲役または情状により1000万円以下の罰金併科

□所持・譲渡・譲受
・単純(営利目的以外)→10年以下の懲役
・営利目的      →1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科

□施用・使用
・単純(営利目的以外)→10年以下の懲役
・営利目的      →1年以上の有期懲役又は情状により500万年以下の罰金併科

【覚せい剤原料】
□輸入・輸出・製造
 単純(営利目的以外)→10年以下の有期懲役
 営利目的      →1年以上の有期懲役又は情状により500万年以下の罰金併科

□所持・譲渡・譲受
 単純(営利目的以外)→7年以下の懲役
 営利目的      →10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科

□施用・使用
 単純(営利目的以外)→7年以下の懲役
 営利目的      →10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科

~ 覚せい剤の逮捕のきっかけとは ~

覚せい剤の所持等が発覚すれば、逮捕される可能性は高いと思われます。
覚せい剤が発覚するきっかけには、様々なものがあります。

中でも最も多いのは、警察官による街頭や検挙件数の多い地域での、職務質問・所持品検査です。
覚せい剤を使用している疑惑のある人は、痩せていたり、顔色が悪かったり、やけにキョロキョロして落ち着きがなく挙動不審なところがあります。
仮に、外見上、明らかにこれらの症状が分からなくても、警察官は経験上、何となく覚せい剤に関与している疑いがある者であることを嗅ぎつける能力を有しています。
先にご紹介した大川市の教諭は職務質問がきっかけで逮捕されました。
他にも、売人や覚せい剤仲間が逮捕されたこと、匿名の捜査機関への通報などから逮捕に繋がるケース、家族が医療機関や捜査機関に通報して逮捕につながるケースもあります。

いつ、どこから、どんなルートで発覚するか分かりません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。

【横領】業務横領罪と被害弁償

2020-01-22

【横領】業務横領罪と被害弁償

業務上横領罪被害弁償について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

V社の財務経理主任であるAさんは、V社の口座から50万円を横領したことが会社に発覚し、会社から、「全額一括で弁償しなければ警察に業務上横領罪で告訴状を提出する」と言われています。このままでは逮捕されるかもしれないと不安になったAさんは、被害弁償のため刑事専門の弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです。)

~ 業務上横領罪 ~

業務上横領罪は刑法253条に規定されています。

刑法253条
 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

単なる横領罪(単純横領罪と呼ばれることもあります)は刑法252条に規定されています。

刑法252条
 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
 
まず、「横領」とは、一般的に不法領得の意思を実現する一切の行為をいいます。他人から預かっていたものついて勝手に処分することです。
上の事案でいえば、AさんはV社の財務経理課主任という立場で、V社のお金の管理を任されています。このようなお金を勝手に処分することは、もちろん会社から許可されているはずはなく「横領」に当たるでしょう。

次に、「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復・継続して行われる事務をいいます。
Aさんは、V社の財務経理課主任という立場にありますので、V社のお金を反復・継続して管理していたと考えられます。
これに対し、同じお金の管理でも、その管理が1回限り、という場合は単なる横領罪となる可能性があります。
ただ、その場合でも、将来、反復・継続する意思があると認められる場合は、やはり業務上横領罪に問われる可能性があります。

以上から、Aさんは、業務上、V社のお金・口座を預かっていたものと言えるでしょう。

~ 横領罪と被害弁償 ~

業務上横領罪のような財産犯の場合、会社に告訴状に提出をやめてもらうには、なによりもまず会社に被害弁償することが先決です。
会社が警察に告訴状を提出しなければ、その結果、あなたが逮捕されること、刑事処罰を受けることは避けられるでしょう。

また、被害弁償するだけでは足りません。
つまり、被害弁償に加えて会社側と示談交渉して示談を成立させる必要があります。
この示談交渉の中で被害弁償金の具体的金額についても詰めていきます。
また、示談交渉ではその他の条件についても決めてまいります。その条件の中には、あなたにとって不利な条件も含まれています。しかし、同時に、示談交渉は適切な被害金額を確定させ、将来、それ以上会社から請求を受けることがない、というあなたにとって安心できる条件も含まれています。
この意味でも示談を成立させる意義は大きいといえます。

こうした交渉事は弁護士にお任せください。
弁護士であれば、示談交渉の経験、知識から、円滑に会社側と交渉することができ、適切な内容、形式に示談を成立させることが可能です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、業務上横領罪をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。

【無免許運転】無免許運転の量刑

2020-01-21

【無免許運転】無免許運転の量刑

無免許運転の刑事弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

配達の仕事をしているAさんは3か月前に自家用車を飲酒運転し(道路交通法違反)て検挙され、略式起訴されて罰金30万円の略式命令を受けて前科が付き、さらに免許取消しの行政処分を受けていました。しかし、Aさんは会社をクビになりたくたいと思って、そのことを会社には報告せずに無免許のまま会社の車を運転していました。そして、Aさんはいつものように、会社の車を運転して配達業に就いていたところ、赤色信号無視違反で福岡県飯塚警察署の警察官が運転するパトカーに呼び止められました。Aさんは警察官から免許証の提示を求められましたが、無免許だったため提示することができず無免許運転が発覚し、道路交通法違反の被疑者として逮捕されてしまいました。逮捕の通知を受けたAさんの妻は、弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 無免許運転 ~

無免許運転については道路交通法64条1項に規定されています。

道路交通法64条1項
 何人も、84条1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(略)、自動車又は原動機付自転車(以下、自動車等)を運転してはならない。

なお、無免許運転を分類すると以下のように区分することができます。

純 無 免:いかなる運転免許も受けないで自動車等を運転
取消無免:運転免許が取り消された後に自動車等を運転
停止中無免:運転免許の効力が停止されている間に自動車等を運転
免許外無免:特定の種類の自動車等を運転することができる運転免許を受けているが、その運転免許で運転することができる種類の自動車以外の種類の自動車等を運転すること
失効無免:免許を受けた者が、その運転免許証の有効期間の更新をしないため失効しているのに自動車等を運転

以上はいずれも無免許運転です。
無免許運転となった以上、それまでの経緯に関係なく、自動車等を運転してはいけません。

無免許運転の罰則は

3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

です(法117条の2の2第1号)。

また、無免許運転中に交通事故(人身事故)を起こした場合は、道路交通法とは別の自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、法律といいます)が適用されるおそれがあります。
法律6条では、無免許運転による刑の加重規定が設けられています。

無免許運転+危険運転(人を負傷させた場合に限る)→6月以上の懲役
無免許運転+準危険運転→人を負傷させた場合、15年以下の懲役 人を死亡させた場合、6月以上の懲役
無免許運転+アルコール発覚免脱→15年以下の懲役
無免許運転+過失運転致死傷→10年以下の懲役
 
罰則は単なる無免許運転より格段に重たくなっていることがわかります。

~ Aさんの量刑は? ~

Aさんは、3か月前に飲酒運転(道路交通法違反)で検挙され、罰金30万円の前科を有しています。
そして、また今回、同じ道路交通法違反で検挙されています。
こうしたことから、Aさんは、今回は略式起訴ではなく正式起訴されるおそれが高いでしょう。
正式起訴されると、正式裁判を受けなければなりません。

正式裁判では、懲役刑を言い渡されるおそれが高いです。
懲役刑は6月から1年が相場といえます。
はじめての正式起訴の場合は、実刑に処せられることは少ないと思われます。つまり、執行猶予が付くことが多いかと思われます。
しかし、執行猶予期間中に交通違反を起こすと、ほぼ間違いなく実刑に処せられます。
注意しましょう。

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傷害罪~逮捕後の流れと釈放

2020-01-20

傷害罪~逮捕後の流れと釈放

傷害罪での逮捕後の流れと釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県久留米市に住むAさんは、久留米市内の居酒屋で学生時代の友人と酒を飲みました。その際、Aさんはついつい飲みすぎてしまい、同じ店で酒を飲んでいたVさんと些細な理由で口論になりました。怒りが収まらなかったAさんは、いきなりVさんの顔面を右拳で1回殴り、さらにもう1回Vさんを殴ろうとしたところで近くにいた友人に慌てて制止されました。Aさんはなお興奮が収まらず、居酒屋の店員の通報で駆けつけた久留米警察署の警察官により、暴行罪で逮捕されました。そして、後日、Vさんから久留米警察署に「加療約1週間を要する傷害」との診断書が提出されたことから、Aさんに対する容疑は暴行罪から傷害罪に切り替えられました。Aさんと接見した弁護士は、Aさんの早期釈放を目指すことにしました。
(フィクションです。)

~ 傷害罪 ~

傷害罪は刑法204条に規定されています。

刑法204条 
 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

「傷害」の意義については諸説ありますが、判例、裁判例は、人の生理機能に障害を与えること、又は人の健康状態を不良に変更することとする生理機能障害説に立っているものと思われます。

・打撲
・骨折
・創傷

傷害」に当たることは明らかですが、中毒症状を惹起し、

・めまい
・嘔吐
・病菌の感染

なども「傷害」に当たるとされています。

次に、規定上は単に「人の身体を傷害した」と行為の結果しか書かれていませんが、その前提として、

1 暴行の故意+暴行行為
2 傷害の故意+傷害行為

が必要とされています。
「暴行」とは人の身体に対する不法な有形力の行使をいい

・殴る
・蹴る
・突く
・押す
・投げ飛ばす

などがその典型といえるでしょう。
「暴行の故意」とは、要は、怪我させるつもりはなかったという場合です。この、暴行の故意で暴行行為を働き、結果、傷害を発生させた場合でも傷害罪に問われます。
他方、「傷害の故意」とは、傷害させるつもりだったという場合です。傷害の故意で傷害行為を働き、結果、傷害を発生させた場合は傷害罪に、傷害を発生させなかった場合は暴行罪(刑法208条)に問われます。

最後に、暴行行為、又は傷害行為と傷害との間に因果関係があることが必要です。この因果関係の考え方についても諸説ありますが、基本的には「その行為がなかったならばその結果は発生しなかった」という関係が認められれば因果関係を認められるとされています。よって、暴行、傷害を加え怪我を負わせたとしても、その暴行、傷害と怪我との間に因果関係が認められない場合は傷害罪ではなく暴行罪が成立します。

~ 逮捕後の流れと釈放について ~

逮捕後の流れを大まかに見ると以下のようになります。

①逮捕(この間、釈放あり)→②勾留(この間、釈放あり)→③ア正式起訴→正式裁判→判決(有罪OR無罪)【例:懲役〇〇年 〇間執行猶予】→釈放(無罪、執行猶予付き判決時)
          
                             イ略式起訴→略式裁判→略式命令【例:罰金〇〇円】→釈放

                             ウ不起訴→釈放

まず、①から②(勾留決定まで)の間は、通常、2日から3日を要します。
この間に、釈放されることもあります。
弁護士としては、捜査機関や裁判所に早期釈放に向けて働きかけを行います。

②勾留が決定すると、当初の身柄拘束期間は「10日間」です。この期間については裁判官の裁量がなく、勾留決定を出すと自動的に身柄拘束期間は「10日間」と決まります。
しかし、この間、釈放されることもあります。
弁護士としては、勾留の裁判が間違っていますという「勾留の裁判に対する準抗告」、勾留の理由、必要性がなくなりましたという「勾留取消し請求」を駆使して早期釈放に努めます。

③に至ると、起訴か不起訴かの刑事処分が決められます。
起訴には正式裁判と略式裁判の2通りがあります。
初犯で被害者の怪我の程度が軽い場合は略式起訴されることが多いかと思います。
正式起訴後は「保釈請求」によって釈放を求めることができます。仮に、保釈が許可されず、身柄拘束が継続した場合でも、裁判で無罪か執行猶予付き判決を受けるとその時点で釈放です。
略式起訴された場合は略式命令が出た段階で釈放です。

不起訴処分が決定した場合は、まずは処分保留のまま釈放され、その後不起訴処分とされることが多いでしょう。

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【刑事事件】飲食代金に偽札使って通貨偽造~福岡市南区

2020-01-19

【刑事事件】飲食代金に偽札使って通貨偽造~福岡市南区

通貨偽造罪、偽造通貨行使罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡市南区内に住むAさんは、会社を首になりお金に困っていました。
そこで、Aさんは偽札を作って、お金に代えようと考えました。
Aさんは、自宅にあったプリンターを使って、複写用紙に金額千円の本物の日本銀行券の表面及び裏面を複写し、これを裁断するなどして本物そっくりの千円札を複数枚作りました。
そして、ある日、Aさんは飲食店で昼食した際、会計時に店員に偽千円札を渡し、おつりを受け取りました。
そうしたところ、Aさんは、福岡県南警察署の警察官に通貨偽造罪及び偽造通貨行使罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~ 通貨偽造罪 ~

通貨偽造罪は刑法148条1項に規定されています。

刑法148条1項
 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。

「行使」とは、偽造・変造した通貨を真正な通貨として流通に置くことをいいます。
つまり、通貨偽造罪が成立するには、偽造した通貨を真正な通貨として流通に置く目的で通貨を偽造することが必要、ということになります。
Aさんは、偽札を飲食代金の支払いのための使っていますから、Aさんが何と言おうが「行使の目的」ありと認められる可能性は高いといえます。

「通用する」とは、強制通用力を有していることを意味します(※通用する通貨か否かは日本銀行のホームページなどで確認することができます)。
貨幣、紙幣、銀行券を総称して「通貨」といいます。
「貨幣」とは政府が発行する硬貨、「紙幣」とは政府が発行する貨幣代用証券(現在は流通してない)、「銀行券」とは日本銀行が発行する貨幣代用証券、すなわち日本銀行券を意味します。千円札はもちろん銀行券です。

「偽造」とは、通貨発行権者(政府・日本銀行)でない者が、真正の通貨の外観を有するものを作ること、「変造」とは、通貨発行権者でない者が、真正な通貨に加工して、別個の、真正な通貨と紛らわしい外観を有する物を作ることをいいます。
「偽造」と「変造」の違いが分かりにくいですが、「変造」は常に真正な(本物の)通貨が材料となる点を抑えてください。簡単に言えば、本物の千円札に0を一個加えて1万円札にする行為は「偽造」ではなく「変造」となります。本件は「偽造」に当たるでしょう。

「偽造・変造」というためには、一般人が誤解する程度に似ているものである必要があります。そのため、一見して偽物とわかる偽札を作った程度では「偽造・変造」には当たらず「模造」となり、通貨及証券模造取締法で処罰されることとなります。

偽造・変造した通貨を行使した場合は、通貨偽造行使罪に問われます。
同罪は刑法148条2項に規定されています。

刑法148条2項 
 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人の交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

~ 偽造罪と行使罪の関係 ~

では、偽造罪と行使罪の関係はどうなるのでしょうか?
この点、本件のような事案では、行使の「目的」のために偽造(「手段」)した、という関係が認められます。
このようにある罪とある罪とが「目的」、「手段」にある関係を「牽連犯」といいます。

もっと身近な例でいれば、住居侵入罪と窃盗罪の関係です。
これも、窃盗が目的、住居侵入が手段ですから、牽連犯といえます。

牽連犯は、本来は複数の罪であるにもかかわらず、処断上は「一罪」として扱われます。
そして、罪の重さが異なる場合は、重い刑を基準に刑が科されます。
偽造罪と行使罪は法定刑が同じですから、Aさんは「無期又は3年以上の懲役」の範囲内で刑を科されます。
住居侵入罪と窃盗罪は、窃盗罪の方が重く、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の範囲内で刑を科されます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。お子様が刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。

企業管理者必見~パワハラ指針まとまる

2020-01-18

企業管理者必見~パワハラ指針まとまる

パワハラについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県太宰府市の会社経営者であるAさんは、社員のVさんが仕事でミスをすると、「クビにするぞ、土下座してみんなに謝れ」「土下座しなければ減給するぞ」などといって無理矢理土下座させたりしていました。すると、VさんがAさんに謝罪と損害賠償を求め、これに応じなければ、福岡県筑紫野警察署へ行って強要罪での告訴も辞さないと言ってきました。Aさんは、強要罪の容疑で逮捕されるかもしれないと不安を覚えたことから、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(この事案はフィクションです)

~ パワハラ指針まとまる ~

昨年、11月20日、労働政策審議会(厚生労働省の諮問機関)の分科会が、職場での「パワーハラスメント」の防止に向け、企業に求める具体的な対策を盛り込んだ指針をまとめました。
指針によると、

パワハラに該当する例】
・「必要以上に長時間、叱責(しっせき)を繰り返す」
・「新人に高い目標を課し、達成できないと厳しく叱る」

パワハラに該当しない例】
・「ルールを欠いた言動を強く注意する」
・「育成のために少し高いレベルの業務を任せる」

などの一例を示しています。
もっとも、これらはあくまで「一例」で、実際にはどこからがパワハラでどこからがパワハラではないか線引きすることが難しい場合も出てくると思われます。
そこで、厚生労働省は「提示した例がすべてではなく、パワハラかどうかはすべての要素を総合的に勘案して決める」としています。
指針ではパワハラの一例のほか、就業規則でパワハラ防止の方針を示すことや、加害者の懲戒規定を設けること、相談窓口の設置などを盛り込んでいます。

今後についてですが、来年6月に、企業にパワハラ防止を義務付ける改正労働施策総合推進法が施行されます。
厚生労働省は、それまでにパンフレットを作成するなどして指針を周知していくとのことです。

~ 本件事例について ~

土下座をさせることは理由はどうであれ、パワハラに当たる可能性が高いでしょう。
また、パワハラによって、被害者に財産的損害(うつ病などで通院し治療費がかかった、働けなくなり給料が減った)、精神的損害を与えた場合は民事上の損害賠償責任を可能性もあります。
また、この責任を負うのはパワハラを行った個人だけではありません。
その使用者(会社)も使用者責任として、損害賠償責任を負わなければならない場合があります。

また、刑事上の責任としては強要罪で規定されてある刑罰を受けなければならない可能性もあります。
強要罪は刑法223条に規定されています。

刑法223条1項
 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対して害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

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【性犯罪】主たる性犯罪と未遂規定

2020-01-17

【性犯罪】主たる性犯罪と未遂規定

性犯罪未遂について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡市西区の会社員Aさん(30歳)は、福岡市市の居酒屋でお酒を飲んだ後歩いて自宅へ帰る途中、性的欲求を満たすため、前を歩いていたで女性Vさん(25歳)と性行しようと考えました。そこで、AさんはVさんを尾行し、Vさんが人気のない公園に入ったところでVさんに「すみません。ここら辺の地理に疎いもので、今宿駅までの行き方を教えてくれませんか?」と言って声をかけVさんに近づきました。そして、Aさんは、Vさんがスマートフォンを出してアプリの地図を使って案内している隙に、「ちょっとこい、言うことを聞け」などと言いながらVさんの腕を両手でつかんでさらに人気の少ない場所へと連れて行きました。ところが、AさんはVさんの腕を離した隙にVさんに逃げられたことから性行を行うことはできませんでした。Aさんは、後日、福岡県西警察署に強制性交等未遂罪で逮捕されました。Aさんの家族から依頼を受けた弁護士が、Aさんと接見をしました。
(フィクションです。)

~ 主たる性犯罪と未遂規定 ~

未遂と聞くと、罪に問われないなどと軽く考えられる方も中にはおられるのではないでしょうか?
しかし、犯罪の「未遂」も立派な犯罪です。
ある犯罪の未遂犯として処罰されるには、その犯罪について未遂を処罰する旨の規定が設けられている必要があります。
刑法は、既遂犯を処罰するのを原則としており、その前の段階である未遂を処罰するのはあくまで例外としているためです。

刑法44条
 未遂を罰する場合は、各本状で定める。

たとえば、今回、Aさんに疑いがかかっている強制性交等罪についてみていきます。
強制性交等罪は刑法177条に規定されています。

(強制性交等)
刑法177条
 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

そして、刑法180条に

(未遂)
刑法180条
 第176条から前条までの罪の未遂は、罰する。

という規定が設けられています。
この規定によって、強制性交等罪未遂も処罰されるというわけです。
ちなみに、強制わいせつ罪は刑法176条に規定されており、やはり、刑法180条によってその未遂罪も処罰されます。

(強制わいせつ)
刑法176条
 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

~ どこからが未遂、どこからが既遂? ~

では、どこからが未遂で、どこからが既遂でしょうか?
この点、未遂に関する刑法43条では次のように規定されています。

刑法43条
 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

つまり、犯罪の「実行に着手(実行の着手)」してからが未遂ということになります。
犯罪の実行に着手したかどうかは、犯罪実現の現実的具体的危険性が認められるかどうか、という観点から決められます。

強制性交等罪の場合、「暴行・脅迫」が加えられた時点で、一応、「実行の着手」ありとされます。
本件では、AさんがVさんの腕を両手で引っ張る行為が「暴行」に当たるでしょう。
しかし、外形的には単なる暴行罪(刑法208条)の「暴行」か強制性交等罪の「暴行」か分かりません。
そこで、もっとより具体的に、犯罪実現の現実的具体的危険性が認められるかどうか、という観点から「実行の着手」の有無を決めるのです。

そして、犯罪実現の現実的具体的危険性の有無は、行為者の主観(犯意)のほか、客観的事情(犯行現場の状況など)を総合考慮して決められます。
たとえば、仮に、AさんがVさんに「やらせろ。」などと言っていた場合は、AさんがVさんの腕を両手で引っ張る行為は、強制性行等罪の犯意がより具現化しているものといえ、強制性交等罪の実行の着手ありと認定され得る材料となるでしょう。

このように、どこからが未遂か既遂かの判断は難しいですから、お困りの方は弁護士までご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。

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