Author Archive

【事例解説】所持品検査に違法性の疑いのある覚醒剤所持事件

2023-08-03

 職務質問に伴う所持品検査により、覚醒剤所持が発覚し現行犯逮捕された架空の事件を参考に、所持品検査の違法性と押収された証拠の証拠能力について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住の自営業男性A(28歳)が深夜、同市中央区天神の路地に佇んでいたところ、巡回中の福岡県中央警察署の警察官Pに気づき慌てた様子で立ち去ろうとしました
 PはAを呼び止め、Aの挙動不審な様子から、何らかの犯罪の嫌疑があると考え、Aに職務質問を行い、所持しているバッグの中身を見せるように言いました。
 Aが拒否してその場を去ろうとしたため、PはAの進路を塞ぎ、Aのバッグを掴んで開き、中から粉末入りの小袋と注射器を発見しました。その場で検査したところ、粉末が覚醒剤であると判明したため、Aは覚醒剤所持の容疑で現行犯逮捕され、覚醒剤と注射器は証拠として押収されました。
(事例はフィクションです。)

所持品検査の違法性について

 警察官は、何らかの犯罪の嫌疑がある者に対し、職務質問を行うことができます(警察官職務執行法第2条第1項)。
 職務質問に伴い所持品検査を行うことは、職務質問の効果をあげる上で必要性、有効性の認められる行為であるとして、許容される場合があるとされますが、任意の職務質問に附随する行為として許容される以上、所持人の承諾を得て、その限度で行うのが原則とされます。

 本件で、Aは所持品検査を承諾しておらず、Pはその場を立ち去ろうとするAの進路を塞いだ上、Aのバッグを掴んで開いています。
 詳細な状況次第ではありますが、本件所持品検査は、Aの意思に反して、所持品の捜索・押収を受けることのない権利(憲法第35条)を侵害する強制処分(個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するもの)であるとして、捜索・差押令状なく行うことが違法と判断される可能性があります。

 また、強制処分に至るものではないと判断された場合でも、本件所持品検査必要性・緊急性を考慮の上、具体的状況の下で相当と認められる限度を超えた処分として、なお違法と判断される可能性はあります。

違法な所持品検査により押収された証拠の証拠能力

 本件所持品検査が違法と判断されたとしても、Aが押収された覚醒剤を所持していた事実に変わりはないため、Aはこれを所持していたことによる覚醒剤取締法違反(所持)で有罪と認定され得るでしょうか。

 これについて、証拠収集手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法捜査抑止の見地からして相当でないと認められる場合、証拠能力を否定すべきと解されています。
 証拠能力とは、証拠として公判廷に提出して事実認定に供しうる能力とされますので、証拠能力が否定される場合、当該証拠に基づく有罪認定はできなくなります。

 本件に照らすと、所持品検査に、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これによって押収された覚醒剤等を証拠として許容することで、将来同様の違法な所持品検査が繰り返されるおそれがあり相当でないと認められる場合、押収された覚醒剤等の証拠能力が否定され、これらを証拠としては覚醒剤取締法違反(所持)で有罪と認定されないことになります。

所持品検査に違法性の疑いのある覚醒剤所持事件の弁護活動

 覚醒剤使用・所持などの薬物事件では、令状又は本人の許可なく行われた居室への立ち入りや、実質逮捕に相当するような任意同行などについて、捜査の違法性が認定され、違法な捜査により得られた証拠の証拠能力が否定された結果、無罪となった裁判例が数多くあります。

 他方で、捜査の違法性を認定しつつも、得られた証拠の証拠能力までは否定せず有罪とされる場合もあるため、公判で捜査の違法性を主張することにより無罪を争うことは容易ではありませんが、弁護人が、起訴される前の段階で検察官に対し、所持品検査の違法性を十分な説得力をもって主張することで、検察官が不起訴処分を選択する可能性を高めることができると考えられます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件に強く、覚醒剤所持などの薬物事件で、不起訴処分を獲得した実績があります。
 ご家族が覚醒剤所持の容疑で逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】常習賭博罪の成立と一事不再理効について

2023-07-31

 常習賭博罪で有罪の確定判決を受けた者が、裁判中に開始した別の賭博行為により警察の取調べを受けた事件を参考に、常習賭博罪の成立や一事不再理効について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住の会社員男性Aは、2020年1月から同年12月までの間、オンラインカジノで度々金銭を賭けたとして、常習賭博罪で起訴され有罪となり、懲役1年6月(執行猶予3年)の判決を受け、2021年6月に刑が確定しました。
 Aは、裁判中の2021年4月頃から再びオンラインカジノを行うようになり、そのことが同年12月に警察に発覚し、同年4月から12月までの賭博行為について、警察の取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)

常習賭博罪の成立について

 賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する、と定められているのに対し、常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処するとされ、賭博行為をした者に常習性が認められる場合に刑を加重しています(刑法第185条、186条)。

 常習賭博における「常習」とは、反復・継続して賭博をする習癖のあることを意味し、判例によると、賭博行為の種類、賭けの金額、賭博行為が行われた期間・回数、同種前科の有無などの諸般の事情により総合的に判断されます。

 常習性が認められる場合には、個々の賭博行為賭博罪が成立するのではなく、常習賭博罪一罪が成立することにとなります。

一事不再理効について

 本件Aは、2020年1月から同年12月までの間のオンラインカジノでの賭博行為により、常習賭博罪で懲役1年6月(執行猶予3年)の確定判決を受けていますが、当該賭博行為とは別の、2021年4月から同年12月までの間のオンラインカジノでの賭博行為について、別途罪に問われる可能性はあるのでしょうか。

 何人も、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない、との憲法第39条の規定を受け、刑事訴訟法第337条で、既に確定判決を経た場合に再度起訴された場合、判決で免訴の言渡しをしなければならない、と定められています。
 この規定は、一度有罪判決を受ける危険にさらされた者を同じ事実で再び危険にさらすべきではないという、「二重の危険」の考えに基づくものとされ、「一事不再理効」と呼ばれます。

 ここで、「確定判決を経た」の範囲が問題となりますが、公判手続において、「公訴事実の同一性」の範囲で審判対象である訴因の変更が許され、有罪とされる危険が生じることから(刑事訴訟法第312条参照)、訴因の変更が許される「公訴事実の同一性」の範囲と「確定判決を経た」の範囲が通常重なると考えられます。

 常習賭博罪は、常習性が発現された賭博者の一連の賭博行為を、1個の常習犯罪として処罰の対象とするものであり、本件Aが起訴され有罪の確定判決を受けた常習賭博罪判決確定時までに反復して行われた賭博行為は全て、同裁判の「公訴事実の同一性」の範囲に含まれると考えられます。

 よって、確定判決を受けた2021年6月より前に行っていた、2021年4月から同年6月までの賭博行為は、既に「確定判決を経た」場合にあたるとして、起訴された場合は免訴になる可能性が高いため、罪に問われる可能性は低いと考えられます。
 他方で、2021年7月から同年12月までの賭博行為は、確定判決後に新たに行われているため、そもそも一事不再理効の問題とはならず、別途、賭博罪常習賭博罪として罪に問われる可能性はあると考えられます。

賭博の容疑で取調べを受ける場合の弁護活動

 賭博の容疑で逮捕されるなどして警察の取調べを受ける場合、賭けの金額、賭博行為が行われた期間・回数、などを中心に聴取され、常習性が認められると判断された場合には、容疑が常習賭博罪に変わる可能性があります。
 また、警察の取調べで作成される供述調書は、検察官が処分を判断する際の重要な判断材料になるほか、起訴され裁判となった場合は、証拠となります。
 そのため、意思に反した供述調書が作成されるなどして不利益を被らないよう、刑事事件の弁護活動の経験豊富な弁護士に、取調べ対応について事前に相談しておくことをお勧めします。

 この他、弁護士は検察官と処分交渉を直接行うことも可能なため、弁護士に依頼することで、ギャンブル依存症の治療のため専門機関を受診していることや、二度と賭博を行わないことを誓約していることなど、被疑者に有利な事情を弁護士が検察官に申述することで、不起訴処分を獲得できる可能性を高めることが期待できます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において不起訴処分を獲得した実績が数多くあります。
 自身やご家族が賭博の容疑で警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】特殊詐欺で勾留 接見禁止解除の弁護活動

2023-07-28

 特殊詐欺事件で逮捕・勾留され、接見禁止決定がなされた事件を参考に、接見禁止解除の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住の男子大学生A(21歳)は、アルバイト先の先輩からの誘いをきっかけに高齢者を騙して現金を振り込ませる特殊詐欺事件に加担したことで、詐欺の容疑で逮捕され、福岡県中央警察署の留置場に身体拘束されました。
 中央警察署からAの父Bに、Aが逮捕されたという連絡があった2日後、再び警察からBに、Aに対して10日間の勾留が決定したことと併せて、接見禁止決定がなされたため面会できない旨の連絡がありました。
 Aと早く面会して直接話をしたいBは、刑事事件に強い弁護士にどうしたらよいか相談しました。
(事例はフィクションです。)

接見禁止決定とは

 被疑者が警察に逮捕された場合、通常、警察所の留置場に身体拘束されます。逮捕後から勾留決定前は、弁護人及び弁護人となろうとする者以外との面会は基本的に認められていないため、家族であっても被疑者と面会をすることはできません。

 逮捕から最大3日間の身体拘束後に勾留決定が行われる際に、接見禁止決定がなければ、面会時間や警察官の立会等の制約はありますが、家族を含めて一般の方でも面会することが通常可能となります。

 しかし、事例の特殊詐欺事件のような複数の共犯者がいる組織的な犯罪の場合は、被疑者が一般面会を利用して、口裏合わせなどの証拠隠滅を図ることを防ぐため、勾留決定と併せて接見禁止決定が裁判所によりなされることが多いです。

 身体拘束を受けたまま起訴された場合、基本的には、判決が出されるまで身体拘束が継続することになります。起訴されてから判決が出るまでの期間は、場合によっては数か月やそれ以上に及ぶこともあり、接見禁止決定がなされると、そのままでは家族であっても長期間面会できない可能性があります。

接見禁止解除の弁護活動

 接見禁止決定は、逃亡・罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由があることが要件(刑事訴訟法第81条)ですが、事件と無関係の両親との面会により、逃亡・罪証隠滅することが疑われる可能性は一般的に低いと思われます。

 そこで、弁護人は、接見禁止決定に対して、その一部の解除、例えば、両親等の特定の親族との関係においてのみ面会を許すよう、裁判所に申立てを行い、被疑者と両親等との早期の面会を可能とする弁護活動を行うことが考えられます。

 接見禁止の一部解除の申立てにおいて、対象者が事件と関係ないため被疑者との面会を認めても逃亡・罪証隠滅の恐れがないこと、対象者と被疑者との間で接見を認める必要性があることなどを申述する必要があり、経験の豊富な弁護人からの申立てが有効です。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、被疑者が身体拘束され接見禁止決定がなされた刑事事件も多数取り扱い、接見禁止解除の弁護活動により、被疑者とご家族との早期の面会を可能とした実績が多数あります。

 ご家族が逮捕・勾留され、接見禁止決定がなされて面会ができないなどしてお悩みをお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】飲酒による酩酊状態での器物損壊事件

2023-07-25

 公務員が飲酒による酩酊状態で器物損壊し逮捕された架空の事件を参考に、酩酊状態での犯行における刑事責任能力と器物損壊罪の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します

参考事件

 福岡県久留米市内の居酒屋で、店の扉を壊したとして、同市内在住の同市職員の男性A(28歳)が逮捕されました。
 警察の調べによると、事件当時Aは飲酒により酩酊しており、トイレの扉を蹴って損壊したところ、被害に気づいた店員が警察に通報し、駆け付けた警察官により逮捕されました。Aは、酷く酩酊していたため全く覚えていないと供述しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

心神喪失と心神耗弱について

 心神喪失者心神耗弱者の犯行については、刑事責任能力の欠如を根拠に刑の免除や減軽が規定されています。精神の障害により、善悪を区別する能力又は自分の行動を制御する能力全くない状態「心神喪失」著しく減退している状態「心神耗弱」といいます(刑法第39条)。

 心神喪失心神耗弱が認定される例として、統合失調症や躁うつ病等の精神障害、知的障害や認知症、薬物や飲酒による酩酊状態などが挙げられますが、例えば、精神障害であれば一律に責任能力を欠くという訳ではなく、犯行当時の病状、犯行前の生活状態や犯行の動機・態様などから、犯行がその障害の影響によるものであると認定される必要があります。

飲酒による酩酊状態と刑事責任能力

 飲酒による酩酊状態の場合、普段の酒癖や犯行前の飲酒量、犯行の動機・態様、犯行前後の言動などが総合的に考慮されて責任能力が判断されることになりますが、一般的な酩酊状態(「単純酩酊」の場合は、完全な責任能力が認められる可能性が非常に高いです。

 仮に、著しい興奮が生じる「複雑酩酊」や幻覚が生じるほどの「病的酩酊」として、心神喪失心神耗弱と認定される可能性があるとしても、自由な意思による飲酒でその状態を招いた場合は、刑事責任を認めることとされ、犯罪の成立は妨げられない可能性が高いです(「原因において自由な行為」といいます。)。

公務員による器物損壊事件の弁護活動

 器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料、と定められています(刑法第261条)。

 Aは地方公務員であることから、起訴され有罪となり万一懲役刑となった場合、執行猶予が付いたとしても、地方公務員法第16条1号で定める「禁錮以上の刑に処せられた者」に該当し、原則として失職することとなります(同法第28条4項)。

 他方、器物損壊罪親告罪であり、被害者からの告訴(犯人の処罰を求める意思表示)がないと起訴されないため、弁護活動としては、早期に被害者に対する謝罪及び被害弁償を行った上、被害者との示談交渉により、告訴をしない又は告訴を取り消す内容を含む示談の成立を目指すことが考えられます。
 刑事事件に強く、示談交渉の経験の豊富な弁護士であれば、示談金の支払いと併せて、今後一切、被害店舗に立ち入らない旨を誓約することなどにより、告訴の取り下げ又は告訴をしない内容を含む示談が成立する可能性を高めることが期待できます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、器物損壊事件における示談成立による事件解決の実績が数多くあります。

 器物損壊事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【少年事件解説】大麻取締法違反で17歳の少年を逮捕

2023-07-22

 大麻取締法違反で17歳の少年が逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 福岡市中央区内のコンビニエンストアの駐車場内で乾燥大麻約2グラムを所持したとして、大麻取締法違反(共同所持)の容疑で、同市早良区在住の17歳の男子高校生2人が現行犯逮捕されました。
 福岡県中央警察署の調べに対し、2人はいずれも容疑を認めており、「自分たちで吸うために、他校の先輩から約1万2千円で買った」と供述しています。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)

少年の大麻取締法違反での身体拘束について

 大麻の所持は、5年以下の懲役に処するとされている犯罪です(大麻取締法第24条の2第1項)。

 大麻取締法違反などの薬物事件の場合、売人等の事件関係者との口裏合わせや、薬物を使用するための器具類の破棄等の罪証隠滅の恐れがあるとして、逮捕・勾留される可能性が極めて高いですが、これは被疑者が17歳の少年の場合でも同様であり、逮捕され、捜査を行う上でやむを得ないと判断された場合、最長20日間、刑事施設に勾留される可能性があります。

 捜査機関による捜査が終了し、犯罪の嫌疑が固まった場合は、全ての事件が家庭裁判所に送致され、少年の性格・資質や精神状態、生活環境などを調べる必要があると判断したときは、「観護措置」として、最長8週間、少年鑑別所に収容された上で、少年審判を受けることになります。

家庭裁判所の審判と保護処分について

 17歳の少年の場合、原則として懲役刑などの刑事罰を受けることは無く、家庭裁判所の審判において、少年の非行事実があるとされた場合、非行内容や少年の抱える問題性(「要保護性」といいます。)に応じて、処分を決定します(保護処分又は不処分の決定)。

 保護処分(少年法第24条第1項)は、重い順に、少年院送致、児童自立支援施設・児童養護施設送致、保護観察処分、となっています。
 保護観察処分は前2者と異なり、少年を家庭や職場等に置いたまま、保護観察官による指導監督という社会内処遇によって、少年の更生を目指すものです。

少年の大麻取締法違反での弁護活動について

 捜査段階においては、弁護士が、弁護人として、少年の身体拘束からの解放を目指したり、取調べに関するアドバイスなどの活動をしていく必要があります。

 また、事件が家庭裁判所に送致された後は、弁護士が付添人として、少年の更生に向けた活動をし、家庭裁判所に対し適切な処分を求めることが考えられます。
 具体的には、少年の家庭や学校での普段の素行を踏まえ、少年本人への働き掛けや、ご家族と協力して、少年を取り巻く環境を整えるなどし、少年が再び非行を行う危険性がない事情などを、主張・立証していくことになります。

 特に薬物事件では、その依存性・中毒性により一般に再非行の可能性が高いことから、入手したルートや交友関係を断ち切ることが非常に重要であるため、少年の交友関係や活動場所などを制限していくこと、少年の所持金に関して保護者が管理することなどの取り組みのほか、既に薬物の依存状態になっている場合は、専門的な治療を行うため、専門医療機関への通院なども必要となる可能性があります。

 どのような段階で、どのような対応をしていくべきか専門的な判断を必要とするため、少年事件の場合、できるだけ早い段階で少年事件の実績が豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

福岡県の少年事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、主に刑事事件や少年事件を取り扱っており、少年事件における付添人審判対応の豊富な実績があります。
 薬物事件でご家族の少年が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事件解説】ひき逃げ事件の容疑者を緊急逮捕

2023-07-19

 ひき逃げ事件の容疑者が緊急逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 北九州市在住の会社員男性Aは、同市内の国道で自動車を運転していたところ、道路を横断中のVに衝突し、全治3か月の怪我を負わせたのにそのまま逃走した疑いで、福岡県折尾警察署に、道路交通法違反(ひき逃げ)自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで緊急逮捕されました。
 目撃者の証言する車の車種、色やナンバーの情報から、事故現場より帰宅途中のAの車が特定され、Aが緊急逮捕されるに至ったとのことです。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)

ひき逃げ事件で成立し得る罪

 人身事故を起こした場合、直ちに車両の運転を停止して、負傷者の救護を行う義務(救護義務)警察官に事故を報告する義務(報告義務)があります(道路交通法第72条第1項)。

 人身事故を起こし、救護義務報告義務を怠り逃走することを一般的にひき逃げと呼びますが、本件では、Aの運転によりVが負傷したと考えられるため、Aには、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる可能性があります(道路交通法第117条第2項)。

 また、本件で、Vの負傷が、Aが運転上必要な注意を怠ったことに起因するものであれば、別に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷処罰法)第5条の過失運転致傷罪も成立し、併合罪として処罰される可能性があります。

緊急逮捕とは

 逮捕の種類には、「現行犯逮捕」や裁判官の令状による「通常逮捕」の他に、本件のような「緊急逮捕」があります。

 緊急逮捕については、(ア)検察官、検察事務官又は司法警察職員は、(イ)死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を、(ウ)犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、(エ)急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる、と要件が定められています(刑事訴訟法第210条第1項)。

 本件では、以下の通り各要件を充足するとして、Aを緊急逮捕したと考えられます。

(ア)について、逮捕したのは折尾警察署の警察官(司法警察職員)です。
(イ)について、道路交通法違反(ひき逃げ)だけでも、長期10年の懲役にあたる罪です。
(ウ)について、Aの車の車種、色やナンバーと目撃者の証言が一致したことから、車の損傷の状況も併せて考慮すると、要件を充たし得ると考えられます。
(エ)について、Aはひき逃げ、つまり罪を犯し逃走していることから、すぐに身体を拘束しないと逃亡の可能性が高いとして、要件を充たし得ると考えられます。

ひき逃げ事件の弁護活動

 本件では、被害者Vが全治3か月の重傷を負っていることもあり、Aが起訴され実刑となる可能性もあります。

 弁護活動としては、取調べ対応や身体拘束からの解放に向けてのもののほか、Aに有利な証拠の収集を行いますが、その一つにVとの示談交渉が考えられます。

 本件は自動車事故のため、弁護士は、Aが加入している自動車保険会社とも連携しながら示談交渉を図り、示談の成立により量刑判断に有利な影響を及ぼす可能性を高めることを狙います。
 なお、保険金で完全な賠償を行える場合でも、謝罪とともにA個人からの見舞金等の支払いを別途行うことで誠意を示し、示談書に「重い処分を求めない」旨の宥恕条項を入れてもらえることも考えられるため、交通事故関係の刑事事件の経験豊富な弁護士への依頼をお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、交通事故関係の刑事事件も多数取り扱い、被害者との示談交渉を含む弁護活動の豊富な実績があります。
 ひき逃げ事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

司法試験・予備試験受験生アルバイト求人募集

2023-07-18

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、司法試験又は予備試験受験生を対象に、全国12都市にある各法律事務所の事務アルバイトを求人募集致します。司法試験合格に向けて勉強やモチベーション維持をしたい方や、弁護士・検察官・裁判官を目指していて刑事事件又は少年事件に興味のある司法試験・予備試験受験生にぴったりの法律事務所アルバイト業務です。

司法試験・予備試験受験生アルバイト求人募集情報

 受験生が司法試験に合格するためには勉強環境及びモチベーションの維持が重要になります。特に司法試験受験後は、合格発表まで、次の行動を起こしづらかったり勉強に身が入りづらい時期でもあります。そんな時には、勉強及びモチベーション維持のために、法律事務所でのアルバイトが一つの有効な手段となります。
 あいち刑事事件総合法律事務所の事務アルバイトに採用されると、専門弁護士による刑事・少年事件の弁護活動を間近に見ることができます。司法試験又は予備試験の勉強で学んだ法律知識が弁護士事務所でどのように使われているのかを見ることで、知識の確認と深化定着につながります。深夜早朝アルバイトであれば、冷暖房完備の快適で静かな環境で、電話対応などの簡単な仕事以外の時間は自由に勉強等をしていただけます(深夜早朝手当も出ます)。司法試験合格者のアルバイトを多数受け入れ、当事務所アルバイト経験者の多くが司法試験に合格しているモチベーションの高い職場です。

【事務所概要】

 日本では稀有な、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う全国的刑事総合法律事務所です。創立以来、刑事事件・少年事件の当事者の弁護活動に従事し、重大著名事件から市民生活に密接した事件まで、数多くの事件をほぼ全分野にわたって幅広く取り扱ってきました。現在は、札幌、仙台、さいたま、千葉、東京(新宿、八王子)、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡まで全国に事務所を構えており、経験豊富な弁護士に加え、元裁判官、元検察官、元官僚等の専門領域を持ったエキスパートが集まる専門性の高い職場環境となっています。刑事・少年事件のリーディングファームとして、プロフェッショ ナル養成のための所内研修及び業務支援制度を整え、全国に高レベルの弁護サービス普及を目指しています。また、犯罪被害者支援や入管事件にも力を入れて取り組んでいますので、犯罪被害者支援や外国人問題に興味のある司法試験・予備試験受験生も歓迎しています。

【募集職種】

・事務アルバイト
・深夜早朝アルバイト

【給与(東京の場合)】

・事務アルバイト:時給1300円+交通費
・深夜早朝アルバイト:時給1300円+深夜早朝割増(25%UP)+交通費
※時給は勤務地によって異なり、1000〜1300円となります。

【勤務時間】

勤務時間:週1日~、1日3時間~
※業務内容や個人の事情に応じて勤務時間は柔軟に対応いたしますのでご相談下さい。

【仕事内容】

・事務アルバイト
事務対応(電話応対、来客対応、書面作成、書類提出、記録整理等)
法律書面準備(リサーチ、資料の収集)
テキスト作成

・深夜早朝アルバイト
電話対応
テキスト作成
※上記仕事以外の時間はご自身の勉強等にあてていただいて構いません

【執務環境】

・交通費支給
・各事務所とも主要駅近く利便性抜群。
・PC、事務処理環境、インターネット等完備
・刑事、少年、外国人事件の専門性が高い職場

【事務所紹介】

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、博多駅から徒歩4分の立地にあり、福岡県内全域の刑事事件・少年事件を中心に取り扱っております。
 現在、弁護士1名、事務員1名の少人数体制ではございますが、その分、弁護士と事務員が綿密に連携し、様々な刑事事件・少年事件の弁護活動を行っております。専門弁護士による刑事事件・少年事件の弁護活動を間近に見ることができ、司法試験や予備試験の勉強で学んだ法律知識が実際の弁護活動でどのように使われているのかを見ることで、知識の確認と深化定着につながると思います。
 司法試験や予備試験合格に向けて、社会経験を積みつつ、勉強環境やモチベーションを維持をしたい方にとって、とても良い環境の職場だと思います。

司法試験・予備試験受験生アルバイト求人応募方法

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所のアルバイト求人募集にご興味のある方は、エントリー・説明会参加フォーム又は電子メールnoritakesaiyou@keiji-bengosi.com 宛で事務所までご応募ご質問下さい。5日間程度のうちに採用担当者からメール又は電話でご連絡させていただきます。

【事件解説】支払い念書への署名 強要罪で逮捕

2023-07-16

 客を脅して支払い念書に署名させたとして、飲食店店主が強要罪で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 福岡市中央区中洲の飲食店で、客Vを脅して支払い義務があることを認める念書に署名させたとして、店主の男性Aが強要罪の容疑で逮捕されました。
 福岡県中央警察署の調べによると、Vは「1時間5千円」と説明されて入店したところ、会計時にAから20万円を請求された上、「期日までに支払わなかった場合は親族に一括で請求されることを許します」などと書かれた念書に署名させられた、とのことです。Aは強要の容疑を認めています。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)

強要罪とは

 相手方又はその親族の、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせた者は、3年以下の懲役に処する、と定められています(刑法第223条)。

 「脅迫」とは、一般人に恐怖心を抱かせる程度の害悪の告知、とされます。
 なお、「害悪の告知」の対象は、「相手方又はその親族の、生命、身体、自由、名誉若しくは財産」とされているため、親族ではない恋人や友人等に対して害を加えることを告知する場合は、強要罪は成立しないと考えられます。

 「義務のないこと」とは、法律上又は社会通念上なすべきとされていないことを指すと考えられています。
 義務のないこと強要する具体的な例として、謝罪や土下座の強要があげられることが多いですが、その他にも、性的な写真を拡散するなどと脅迫して、性行為や面会を強要して逮捕されたなどの事件報道が見受けられます。

 本件で、V本人に対する脅迫において、いかなる内容の「害悪の告知」あったかは定かでありませんが、少なくとも「期日までに支払わなかった場合は親族に一括で請求されることを許します」という念書については、その記載内容自体が「親族の財産に対する害悪の告知」であり、脅迫にあたると考えられます。

 また、本件の状況からは可能性は低いと思われますが、仮にVがAに20万円を支払う民事上の法的義務が発生するとしても、親族への請求を承諾する旨の念書に署名する法的義務や社会通念上の義務は通常発生しないと考えられます。

 よって、Aは、Vの「親族の財産に対する害悪を告知」して脅迫し、Vに念書の署名という「義務のないことを行わせた」として、強要罪が成立する可能性があります。

強要事件の刑事弁護

 脅迫罪と異なり、強要罪の場合、法定刑は懲役刑のみであるため、起訴されると通常、公開の法廷での正式な裁判となります。
 そのため、不起訴処分の獲得を目指して、早期に被害者に対する謝罪や被害弁償を行った上、示談成立に向けた交渉を行うことが重要です。

 本件のような強要事件の場合、被害者は加害者に強い嫌悪感や恐怖感などを抱くことが通常であり、被害者の連絡先を教えてもらい示談交渉を直接行うことは困難です。
 弁護士であれば、被害者も話を聞いてもよいとなることも多く示談交渉の余地が生まれ、刑事事件に強く示談交渉の経験豊富な弁護士であれば、双方十分に納得のいく示談がまとまる可能性が見込まれ、不起訴処分で事件が終了する可能性を高めることができます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、強要などの暴力事件において、示談成立などによる不起訴処分を獲得した実績が多数あります。
 強要罪でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】‘18歳’の児童にわいせつな行為 児童買春で取調べ

2023-07-13

 出会い系サイトに18歳と偽り登録した児童にわいせつな行為を行ったとして取調べを受けた事件を参考に、児童買春罪とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住の会社員男性A(26歳)は、同市内在住の女子高校生V(17歳)と出会い系サイトで知り合い、Vの欲しがっている化粧品の購入を約束する代わりに、Vを自宅に招いてAの性器を触らせるなどのわいせつな行為を行いました。
 Vが被害にあった別の事件の捜査から、AとVのやり取りが判明し、Aは児童買春の容疑で警察の呼び出しを受け、取調べを受けました。
 警察の取調べに対し、Aは、Vが出会い系サイトで年齢を18歳と登録していたため、Vが18歳未満であるとは知らなかったと供述しています。
(事例はフィクションです。)

児童買春とは

 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(児童買春・児童ポルノ規制法)第2条では、児童買春とは、(1)児童(18歳未満の者)等に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、(2)児童に対し性交等をすること、と定めています。

 「対償」は、必ずしも金銭に限らず、アクセサリーや食事などでも、性交等の見返りとして与えるものであれば該当し得ます。なお、供与する相手方は、児童本人のほか、買春の周旋者や保護者等も対象です。
 「性交等」は、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童に自己の性器等(性器、肛門又は乳首)を触らせる行為も含みます。

 本件で、17歳の児童Vに対し、Aの性器を触らせることは「性交等」にあたり、その見返りとしてVに化粧品の購入を約束することは「対償の供与」にあたり得るため、Aに児童買春の罪が成立し得ます。
 児童買春で有罪となった場合、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられます。

児童が年齢を詐称していた場合

 Aは、Vが出会い系サイトで年齢を18歳と登録していたため、Vが18歳未満であるとは知らなかったと供述しています。

 児童買春が成立するには、性交等を行った時点で、相手が18歳未満であるであることの認識(故意)が必要ですが、「もしかしたら18歳未満かもしれない」又は「18歳未満でもかまわない」程度の認識(いわゆる「未必の故意」)であってもこれを満たします。

 出会い系サイトで年齢を偽って登録することは一般的に容易であることから、それをもって故意を否認することは通常困難と考えられます。

 なお、仮に故意がなかったことが認められたとしても、福岡県青少年健全育成条例違反(淫行)で処罰される可能性は残ります。

児童買春の刑事弁護

 児童買春は、児童に対する性的搾取を防止するという社会的法益があるため、被害者との示談が成立したとしても不起訴処分を得られるとは限りません。
 しかしながら、示談の成否は、不起訴処分略式起訴(罰金刑)の選択、正式起訴された場合でも量刑判断に影響を及ぼすため、示談を成立させることはなお重要です。

 児童買春事件の被害者は未成年者のため、通常、示談交渉は両親等の保護者と行うこととなりますが、保護者が子の被害に憤慨するなど感情的になり、被害者本人との示談交渉の場合よりも難航するおそれがあるため、刑事事件に強く、示談交渉の経験の豊富な弁護士への相談をお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、児童買春事件での相手方との示談成立により、不起訴処分略式処分(罰金刑)で事件が終了した実績が数多くあります。

 児童買春で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事例解説】取引業者からの飲食接待 収賄罪で県職員を逮捕

2023-07-07

 取引業者から飲食接待を受けたとして、県職員が収賄罪で逮捕されたという架空の事件を参考に、収賄罪とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡県の管理職職員A(53歳)は、課内で用いる文房具の仕入先の業者選定の権限を有していました。
 文房具会社の営業課長X(53歳)は、業者選定で有利な取り扱いを図ってもらおうと、Aに数万円相当の飲食接待を頻繁に行うようになりました。
 XのAへの飲食接待について、第三者から警察へ告発があり、Aは収賄の容疑で逮捕されました。警察の調べに対し、Aは収賄罪の認否を明らかにしていません。
(事例はフィクションです。)

収賄罪とは

 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する、と定められています(刑法第197条前段)。

 「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員、その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員を指します(刑法第7条)。
 福岡県の職員は、「地方公共団体の職員」として、当然これに該当します。

 「賄賂」とは、公務員がその職務に関して受ける不正の報酬としての利益を指し、金銭や物品のほか、飲食接待のようなサービス提供も含まれます。

 「職務」とは、「公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務」を指し、当該公務員が現に権限を有する職務は、これに含まれます。

 また、収賄罪の保護する法益は、公務員の職務の公正及びこれに対する社会の信頼であるとされるため、利益の授受が「職務に関し」行われることが要件となっています。

 本件で、取引業者選定の権限を有するAが、文房具会社の営業課長Xから数万円相当の飲食接待を頻繁に受けることは、AとXの私的な関係からというよりは、業者選定で有利な取り扱いを図ってもらうために、Aの「職務に関し」行われたと考えるのが自然なため、Aに収賄罪が成立する可能性が高いと言えます。

加重収賄罪の成立について

 収賄罪が成立する場合において、公務員が不正な行為を行ったときは、より罪の重い加重収賄罪が成立します(刑法第197条の3)。
 本件において、実際にAがXに便宜を図って取引業者の選定を行った場合は、「不正な行為」を行ったと言えるため、今後の捜査により被疑罪名が加重収賄罪となる可能性があります。

収賄罪の刑事弁護

 本件では、Aは収賄罪の認否を明らかにしていないとのことですが、収賄事件は、不正な行為の有無や上司の関与等の事件の全容解明のため、被疑者の取調べが厳しいものになることが予想されるため、早めに弁護士と接見し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることが重要です。

 捜査機関が押さえている証拠内容や贈賄側の供述内容など、捜査状況を的確に把握した上で対応を検討する必要があるため、刑事事件に強い弁護士に依頼し、適切な弁護活動を早く開始してもらうことをお勧めします。

 また、本件で起訴が避けられない場合も、収賄罪と異なり、加重収賄罪の法定刑は1年以上の懲役であるため、加重収賄罪で起訴された場合は、一定の事由に該当しない限り許可される「権利保釈」(刑事訴訟法第89条)の対象外となることから、その点においても、起訴前の弁護活動は非常に重要なものとなります。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、主に刑事事件を取り扱う法律事務所です。
 収賄罪でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

« Older Entries Newer Entries »

keyboard_arrow_up

0120631881 無料相談予約はこちら LINE予約はこちら