Author Archive

【事件解説】プログラムの社外持ち出しが会社に発覚 事件化阻止のための弁護活動

2023-10-02

 

 プログラムの不正な社外持ち出しが会社に発覚し、刑事告訴される可能性のある事件を参考に、背任罪の成立や事件化阻止のための弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住のA(45歳)は、コンピュータの販売やソフトウェアの開発・販売等を行っているV社の従業員として、V社の提供する顧客管理プログラムをV社との契約に基づき導入した店舗に対する、プログラムの導入・維持管理を担当し、プログラムが入ったUSBメモリを管理していました。
 Aは、私的にV社のプログラムを使用しようと企て、V社の取引先の店舗の担当者Bと共謀し、Bの管理するコンピュータにV社のプログラムを不正に導入しました。
 後日V社にそのことが発覚してしまい、AはV社から、損害賠償請求や刑事告訴の可能性を告げられています。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)

背任罪とは

 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する、と定められています(刑法第247条)。

 「他人のためにその事務を処理する」とは、他人からの信任・委託に基づいてその事務を処理することとされ、会社の従業員は、背任罪の典型的な主体になるといえます。

 「その任務に背く行為」「任務違背行為」といいます。)とは、事務処理者としてなすべきと法的に期待される行為に反する行為とされ、信任・委託されている事務の内容、事務処理者としての地位・権限などから判断されます。

 本件Aは、V社の従業員として、V社のプログラムの導入・維持管理を担当し、そのプログラムが入ったUSBメモリの管理を任されていたことから、V社から、そのUSBメモリを適切に管理することを法的に期待されていたといえます。
 それにもかかわらず、Aは、V社のプログラムを私的に使用しようと企て、取引先のコンピュータにそのプログラムを不正に導入しているため、Aは任務違背行為を行ったものと考えられます。

 なお、「財産上の損害」とは、本人の財産の価値が減少した場合に限らず、増加すべき価値が増加しなかった場合も含むとされるため、本件でAが不正に導入したV社のプログラムの導入代金相当額も、「財産上の損害」に含まれると考えられます。

 よって、Aは、自己の利益を図る目的で、V社の従業員(プログラムの導入・維持管理担当者)として任務に背く行為をし、V社に財産上の損額を加えたとして、背任罪が成立し得ると考えられます。

任務違背行為の責任を会社に問われた場合の弁護活動

 会社の従業員が行った任務違背行為は、まず会社内部での通報や調査等で発覚することが多く、警察が介入する前に、会社から責任を追及される場合が多いと考えられます。
 そのため、背任罪に該当し得る行為を犯した場合でも、早い段階で、会社との間で、被害弁償の交渉を行い、被害届提出や刑事告訴をしない内容を含む示談を締結することができれば、刑事事件化を阻止できる可能性があります。
 また、本件のような、会社の財産の外部への持ち出しといった任務違背行為の場合は、背任罪より法定刑の重い業務上横領罪(刑法第253条)が成立する可能性もありますが、その判断は難しいため、自らの犯した行為が何罪に該当し得るのか、今後の事件の見通しや、事件化阻止のために行うべき対応について、刑事事件に強く、示談交渉の経験豊富な弁護士に早い段階で相談することをお勧めします。

 なお、仮に刑事事件化した場合でも、そうした示談締結の事実は、起訴・不起訴の判断や起訴された場合の量刑判断において、有利な事情になると考えられます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、背任罪などの財産事件において、被害者との示談締結により事件化を阻止した実績が多数あります。
 自身やご家族が背任罪に該当する可能性がある行為を行い、ご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【少年事件解説】SNSで裸の画像を送らせた16歳の少年 児童ポルノ製造容疑で取調べ

2023-09-29

 SNSで知り合った女子児童に裸の画像を送らせた16歳の少年に対し、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)で取調べが行われた架空の事件を参考に、少年による児童ポルノ製造とその弁護活動・付添人活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡県春日市在住の男子高校生A(16歳)が、SNSで知り合った同市内在住の女子児童V(16歳)と親密な関係になり、Vに卑猥な姿勢の裸の画像を撮影しAのSNSアカウント宛に送信することを求め、送信された画像を自身のスマートフォンに保存していました。
 事態に気づいたVの保護者から福岡県春日警察署に被害届が提出されたことで捜査が開始され、Aは児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の容疑で同署での取調べを受けることとなりました。
(事件はフィクションです。)

児童買春・児童ポルノ禁止法(製造)とは

 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(児童買春・児童ポルノ禁止法)で、児童ポルノを製造した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する、と定められています(第7条第4項)。

 「児童」とは、18歳未満の者を指し、「児童ポルノ」とは、児童を被写体とする性的な描写のことで、例えば、性的な行為や性器を露出した写真などが該当し得ます。
 なお、「製造」には、児童ポルノを撮影する行為だけでなく、児童に児童ポルノを撮影させる行為も含まれるとされます。

 本件Aは、児童Vに卑猥な姿勢の裸の画像(児童ポルノ)を撮影させ、自身のSNSアカウント宛に送信させたことにより、たとえ同年代のAとV双方合意の上でのやり取りだったとしても、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)が成立すると考えられます。

少年の児童買春・児童ポルノ禁止法違反での弁護活動

 Aは16歳の少年のため、原則として刑事裁判や刑事罰の対象とはならず、少年事件として、少年法により取り扱われることとなります。

 捜査機関による捜査が終了し、犯罪の嫌疑が固まった場合は、全ての事件が家庭裁判所に送致され、少年審判が開始される可能性があります。

 少年審判において、少年の非行事実があるとされた場合、非行内容や少年の抱える問題性(「要保護性」といいます。)に応じて、処分を決定します(保護処分又は不処分の決定)。
 保護処分(少年法第24条第1項)は、重い順に、少年院送致、児童自立支援施設・児童養護施設送致、保護観察処分、となっています。
 保護観察処分は前2者と異なり、少年を家庭や職場等に置いたまま、保護観察官による指導監督という社会内処遇によって、少年の更生を目指すものです。

 事件が家庭裁判所に送致された後、弁護士は付添人として、少年の更生に向けた活動をし、家庭裁判所に対し適切な処分を求めることが考えられます。
 具体的には、少年の家庭や学校での普段の素行を踏まえ、少年本人への働き掛けや、ご家族と協力して、少年を取り巻く環境を整えるなどし、少年が再び非行を行う危険性がない事情などを、主張・立証していくことになります。

 また、本件のような被害者のいる事件では、弁護士は弁護人として、被害者との示談交渉を行うことも別途必要になると考えらます。
 
 どのような段階で、どのような対応をしていくべきか専門的な判断を必要とするため、少年事件の場合、できるだけ早い段階で少年事件の実績が豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

福岡県の少年事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、主に刑事事件や少年事件を取り扱っており、少年事件における付添人や審判対応の豊富な実績があります。
 ご家族が少年事件の加害者となるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事件解説】被害者の過失が大きい交通事故における加害者の弁護活動(後編)

2023-09-26

 前回に引き続き、被害者の過失が大きいと考えられる過失運転致死事件を参考に、過失運転致死罪における「過失」の認定や加害者の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 Aは、北九州市八幡西区の国道3号線をバイクで走行中、道路を横断中のVをはねてしまいました。現場は片側3車線の国道で、Vは横断歩道のない場所で急に横断を開始したようです。Vは病院に搬送されましたが、約1時間後に死亡が確認されました。
 福岡県折尾警察署は、Aを過失運転致死罪により捜査することにしました。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)

前回の前編では、過失運転致死罪における「過失」について解説しました。

過失の認定における「信頼の原則」とは

 前編で解説したように、過失を予見可能性と回避可能性を前提とした結果回避義務違反と捉えた場合、被害者が予測し難い不適切な行動をとったことにより、結果が発生してしまったと考えられる場合における過失の有無が問題となります。

 この点について、交通事故関係の判例や裁判例を中心に、「信頼の原則」という考え方が採られています。

 「信頼の原則」とは、被害者等が適切な行動をとることを信頼するのが相当である場合には、被害者等が信頼に反する不適切な行動をとった結果、被害が生じたとしても、行為者に過失責任は問わないという原則です。

 道路交通法上、「歩行者等は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の付近においては、その横断歩道によって道路を横断しなければならない。」、「歩行者等は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。」、と道路の横断に関する歩行者の注意義務が規定されています(同法第12条、第13条)

 本件において、Vは片側3車線の国道にて、横断歩道のない場所で急に横断を開始したとのことであり、道路状況などVの横断の際の詳しい状況次第では、上記注意義務に違反するようなVの横断があり、そうした横断がないことをAが信頼するのが相当であったとして、「信頼の原則」により、Aの過失の有無を争う余地も生じ得ると考えられます。

過失運転致死罪の弁護活動

 人の死亡という重大な結果が発生している過失運転致死罪においては、取調べにおいて加害者の過失の有無や程度に関わる事情を厳しく聴取されることが予想されます。
過失運転致死罪
の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金と非常に重く、過失の程度次第では、起訴され正式な裁判となり、実刑が科される可能性もあります。

 そのため、取調べで供述する内容が、自己の意に反して不利益な証拠とならないよう、取調べに際しては、刑事事件に強く、交通事故加害者の弁護活動の経験豊富な弁護士から、どのように受け答えをすればよいか等のアドバイスを事前に受けることをお勧めします。

 また、本件のように、被害者の過失が大きいと考えられる事故の場合、弁護活動としては、現場の状況や目撃証言など、被疑者に過失が認められない、又は過失の程度が極めて小さいことを示す証拠を収集して、検察官や裁判官に提示し、不起訴処分や刑の減軽が妥当であることを的確に主張することも考えられます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、交通事故加害者の弁護活動で、不起訴処分刑の減軽を獲得した豊富な実績があります。
 自身やご家族が交通事件で人を死亡させ、過失運転致死の容疑で取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事件解説】被害者の過失が大きい交通事故における加害者の弁護活動(前編)

2023-09-23

 被害者の過失が大きいと考えられる過失運転致死事件を参考に、過失運転致死罪における「過失」の認定や加害者の弁護活動について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 Aは、北九州市八幡西区の国道3号線をバイクで走行中、道路を横断中のVをはねてしまいました。現場は片側3車線の国道で、Vは横断歩道のない場所で急に横断を開始したようです。Vは病院に搬送されましたが、約1時間後に死亡が確認されました。
 福岡県折尾警察署は、Aを過失運転致死罪により捜査することにしました。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)

過失運転致死罪における「過失」とは

 Aが刑事責任を問われる可能性のある罪として、運転上必要な注意を怠ったことによりVを死亡させたとして、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷処罰法)第5条の過失運転致死罪が考えられます。

 過失運転致死罪など、刑罰法令における「過失」が何を意味するかについては、様々な考え方がありますが、結果発生を予見できる状態で、結果発生を回避する義務があるのにそれを怠ったということ、という考え方があります。

 これについて、結果発生の予見や回避が不可能であった場合まで結果発生を回避する義務を課すことは相当でないため、前提として、結果発生の予見が可能であったこと(「予見可能性」)、及び回避が可能であったこと(「回避可能性」)が必要とされます。

 本件において、Vをはねて死亡させたという結果の発生について、仮にAに予見可能性と回避可能性があったとして、結果回避義務違反が認められる場合、「運転上必要な注意を怠った」(=「過失があった」)と認定され、過失運転致死罪が成立し得ると考えられます。

次回の後編では、過失の認定における「信頼の原則」について、解説します。

過失運転致死罪の弁護活動

 人の死亡という重大な結果が発生している過失運転致死罪においては、取調べにおいて加害者の過失の有無や程度に関わる事情を厳しく聴取されることが予想されます。
 過失運転致死罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金と非常に重く、過失の程度次第では、起訴され正式な裁判となり、実刑が科される可能性もあります。

 そのため、取調べで供述する内容が、自己の意に反して不利益な証拠とならないよう、取調べに際しては、刑事事件に強く、交通事故加害者の弁護活動の経験豊富な弁護士から、どのように受け答えをすればよいか等のアドバイスを事前に受けることをお勧めします。

 また、本件のように、被害者の過失が大きいと考えられる事故の場合、弁護活動としては、現場の状況や目撃証言など、被疑者に過失が認められない、又は過失の程度が極めて小さいことを示す証拠を収集して、検察官や裁判官に提示し、不起訴処分や刑の減軽が妥当であることを的確に主張することも考えられます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、交通事故加害者の弁護活動で、不起訴処分刑の減軽を獲得した豊富な実績があります。
 自身やご家族が交通事件で人を死亡させ、過失運転致死の容疑で取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

【事例解説】正当防衛における「侵害の急迫性」について

2023-09-20

 運転手間でトラブルになり、相手を突き飛ばし負傷させた架空の傷害事件を参考に、正当防衛における「侵害の急迫性」の要件などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市内在住の自営業男性A(42歳)は、県道を自動車で走行中、男性V(48歳)の運転する自動車の割り込みに腹を立て、クラクションを鳴らしました。
 Aのクラクションに怒ったVが停車し、後続のA車両に駆け寄って来て口論となり、Vが窓からAの手首を掴んできたため、AはVを突き飛ばして転倒させ、車を発進させました。
 Vは転倒の際に全治3週間の手首の捻挫を負い、警察に被害届を提出したことで傷害事件として捜査が開始され、後日、Aは警察から取調べのための呼び出しを受けました。
(事例はフィクションです。)

正当防衛における「侵害の急迫性」の要件

 AがVを突き飛ばし転倒させたことで、全治3週間の怪我を負わせたことから、Aに傷害罪(刑法第204条)が成立すると考えられますが、Aは、手首を掴んできたVの暴行から身を守るために行った正当防衛であると主張することが考えられます。

 正当防衛の要件は、(1)急迫不正の侵害に対して(「侵害の急迫性」)、(2)自己又は他人の権利を防衛するため(「防衛の意思」)、(3)やむを得ずにした行為であること(「防衛行為の必要性・相当性」)、と定められています(刑法第36条第1項)。

 (1)「侵害の急迫性」について、「急迫」とは、相手方からの暴行などの法益侵害の危険が、現存又は切迫していること、とされます。
 侵害を予期できた場合でも急迫性は否定されないとされますが、その機会を利用し積極的に相手方に対して加害行為をする意思(「積極的加害意思」といいます。)で侵害行為を待っていたときなどは、侵害の急迫性の要件を充たさないとされます。

 「積極的加害意思」までなかったとしても、侵害の予期の程度や侵害回避の容易性などの観点から、警察などの公的機関の保護を求めずに反撃行為を行うことは相当でないとして、要件を充たさないとされる可能性があります。

 本件Aは、VがA車両に駆け寄ってきた時点で、Vから何らかの危害を加えられることも予期し得たと考えられるところ、すぐに自動車の窓や鍵を閉め、必要に応じて警察に通報するなどして、Vの暴行を容易に回避し得たともいえることから、この要件を充たさないと判断される可能性もあります。

傷害事件の弁護活動

 傷害罪で起訴され、正当防衛の主張が認められず有罪となれば、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられることとなります。

 本件は、先に述べたように、正当防衛の主張が容易に認められない可能性もあるため、被害者の怪我の程度も比較的軽微であることから、被害者との示談を成立させることにより不起訴処分で事件の終了を目指すことも、現実的な選択肢の一つと考えられます。

 弁護士であれば通常、示談交渉のために捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらえると考えられ、刑事事件に強い弁護士であれば、しっかりした内容の示談が成立する可能性が見込まれ、不起訴処分で事件が終了する可能性を高めることが期待できます。

 仮に起訴されたとしても、刑事事件に強い弁護士であれば、現場の状況や目撃証言など被疑者に有利な証拠を収集し、正当防衛の成立が認められなかったとしても、刑の減軽や執行猶予の獲得に繋げる弁護活動を行うことが期待できます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、傷害事件において、示談成立による不起訴処分を獲得している実績が多数あります。
 傷害事件で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方、正当防衛が成立するのではないかと疑問を持たれる方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

予備試験受験生アルバイト求人募集

2023-09-18

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、全国12都市にある各法律事務所にて、予備試験受験生のアルバイトを求人募集致します。

予備試験受験生アルバイトについて

 予備試験受験生が司法試験に合格するためには勉強環境及びモチベーションの維持が重要になります。特に予備試験受験後は、合格発表まで、次の行動を起こしづらかったり勉強に身が入りづらい時期でもあります。そんな時には、勉強及びモチベーション維持のために、法律事務所でのアルバイトが一つの有効な手段となります。
 あいち刑事事件総合法律事務所の事務アルバイトに採用されると、専門弁護士による刑事・少年事件の弁護活動を間近に見ることができます。予備試験の勉強で学んだ法律知識が弁護士事務所でどのように使われているのかを見ることで、知識の確認と深化定着につながります。深夜早朝アルバイトであれば、冷暖房完備の快適で静かな環境で、電話対応などの簡単な仕事以外の時間は自由に勉強等をしていただけます(深夜早朝手当も出ます)。
 司法試験合格者のアルバイトを多数受け入れ、当事務所アルバイト経験者の多くが司法試験に合格しているモチベーションの高い職場です。司法試験合格に向けて勉強やモチベーション維持をしたい方や、弁護士・検察官・裁判官を目指していて刑事事件又は少年事件に興味のある司法試験予備試験受験生は是非ご応募下さい。

予備試験受験生アルバイト求人募集情報

【事務所概要】

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、日本では稀有な、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う全国的刑事総合法律事務所です。創立以来、刑事事件・少年事件の当事者の弁護活動に従事し、重大著名事件から市民生活に密接した事件まで、数多くの事件をほぼ全分野にわたって幅広く取り扱ってきました。現在は、札幌、仙台、さいたま、千葉、東京(新宿、八王子)、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡まで全国に事務所を構えており、経験豊富な弁護士に加え、元裁判官、元検察官、元官僚等の専門領域を持ったエキスパートが集まる専門性の高い職場環境となっています。刑事・少年事件のリーディングファームとして、プロフェッショナル養成のための所内研修及び業務支援制度を整え、全国に高レベルの弁護サービス普及を目指しています。また、犯罪被害者支援や入管事件にも力を入れて取り組んでいますので、犯罪被害者支援や外国人問題に興味のある予備試験受験生も歓迎しています。

【募集職種】

・事務アルバイト
・深夜早朝アルバイト

【給与(東京の場合)】

・事務アルバイト:時給1300円+交通費
・深夜早朝アルバイト:時給1300円+深夜早朝割増(25%UP)+交通費
※時給は勤務地によって異なり、1000〜1300円となります。

【勤務地】

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、博多駅から徒歩4分の立地にあり、福岡県及び近隣県の刑事事件・少年事件を中心に取り扱っております。
 現在、弁護士1名、事務員1名の少人数体制ではございますが、その分、弁護士と事務員が綿密に連携し、様々な刑事事件・少年事件の弁護活動を行っております。専門弁護士による刑事事件・少年事件の弁護活動を間近に見ることができ、司法試験や予備試験の勉強で学んだ法律知識が実際の弁護活動でどのように使われているのかを見ることで、知識の確認と深化定着につながると思います。
 司法試験や予備試験合格に向けて、社会経験を積みつつ、勉強環境やモチベーションを維持をしたい方にとって、とても良い環境の職場だと思います。

【勤務時間】

勤務時間:週1日~、1日3時間~
※業務内容や個人の事情に応じて勤務時間は柔軟に対応いたしますのでご相談下さい。

【仕事内容】

・事務アルバイト
事務対応(電話応対、来客対応、書面作成、書類提出、記録整理等)
法律書面準備(リサーチ、資料の収集)
テキスト作成

・深夜早朝アルバイト
電話対応
テキスト作成
※上記仕事以外の時間はご自身の勉強等にあてていただいて構いません

【執務環境】

・交通費支給
・各事務所とも主要駅近く利便性抜群。
・PC、事務処理環境、インターネット等完備
・刑事、少年、外国人事件の専門性が高い職場

予備試験受験生アルバイト求人応募方法

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の予備試験受験生向けアルバイト求人募集にご興味のある方は、エントリー・説明会参加フォーム又は電子メールnoritakesaiyou@keiji-bengosi.com 宛で事務所までご応募ご質問下さい。5日間程度のうちに採用担当者からメール又は電話でご連絡させていただきます。

【事件解説】「身分なき共犯」として監護者性交等罪で起訴された事件(後編)

2023-09-17

 前回に引き続き、交際相手の未成年の娘と性交したとして、交際相手である母親とともに監護者性交等罪で起訴された事件を参考に、監護者性交等罪の成立とその弁護活動、「身分なき共犯」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 交際していた女性Bの娘V(16歳)と性交したとして、福岡市在住の男性A(45歳)が、監護者性交等罪で起訴されました。
 捜査機関の調べによると、AとBは出会い系サイトで知り合って交際を開始し、Aは、Bの娘Vが18歳未満だと知りながら性交したいと考え、Bに依頼してVに性交に応じるよう説得させ、Vと性交するようになったとのことです。
 A、Bは起訴内容を認めています。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)

前回の前編では、監護者性交等罪の成立について解説しました。

「身分なき共犯」について

 監護者性交等罪は、犯人が「監護者」であることが成立要件となっていますが、このように、犯人が一定の身分を有することが成立要件である犯罪を「真正身分犯」と呼び、「身分を有しない者」が行っても、犯罪は成立しないこととなります。

 保護者の交際相手の立場であっても、「監護者」と認められる可能性はあるものの、本件Aは、居住状況、生活状況、経済的状況などから、Vの「監護者」とまでは認められなかったようです。よって、Aに監護者性交等罪は成立し得ないとも思われます。

 しかし、「身分を有する者」の犯行に「身分を有しない者」が加担した場合は、「身分を有しない者」にも当該犯罪の共犯が成立するとされます(刑法第65条第1項)

 本件では、Vの「監護者」と認められる母親のBについて、Aとの性交に応じるようVを説得したという役割の大きさなどから、監護者性交等罪が成立し得ることを前提に、Bの犯行に「身分を有しない者」であるAが加担したとして、「身分を有しない者」であるAにも監護者性交等罪の共犯が成立し得るとして、起訴されたものと考えられます。

監護者性交等罪の弁護活動

 監護者性交等罪は、法定刑が5年以上の有期拘禁刑(拘禁刑の施行までは懲役)のため、起訴されると正式な裁判となります。

 被害者が未成年者である性犯罪の弁護活動では一般的に、不起訴処分等を目指して、被害者の両親等の保護者との示談を目指すことが重要となりますが、監護者性交等罪では被疑者が監護者の立場にあるため、示談を行うことがそもそも想定できない場合があります。

 このような場合、不起訴処分や刑の減軽を得るために、真摯な反省とともに再犯防止の意欲や取組みを、検察官や裁判官に具体的に示すことが特に重要になると考えられます。
 性犯罪再犯防止のカウンセリング等を受ける意欲を示すことや、被害者やその家族との元々の関係性に応じて、離婚や交際の解消、離縁や別居等により、被害者である児童が安心して生活できるよう環境調整を行っていることを示すことなどが考えられます。
 被害者の今後の生活環境や家族関係に関わることであるため、弁護活動においては、被害者とその家族の心情に配慮した調整が必要となります。

 このように、監護者性交等罪の刑事弁護は、通常の性犯罪の場合とは異なる対応が求められることが想定されるため、刑事事件に強く、被害者が未成年者である場合を含む、様々な性犯罪の刑事弁護の経験豊富な弁護士への相談をお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、被害者が未成年者である様々な性犯罪において、不起訴処分や刑の減軽などを獲得した実績があります。
 ご家族が監護者性交等罪などで逮捕されご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事件解説】「身分なき共犯」として監護者性交等罪で起訴された事件(前編)

2023-09-14

 交際相手の未成年の娘と性交したとして、交際相手である母親とともに監護者性交等罪で起訴された事件を参考に、監護者性交等罪の成立とその弁護活動、「身分なき共犯」について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 交際していた女性Bの娘V(16歳)と性交したとして、福岡市在住の男性A(45歳)が、監護者性交等罪で起訴されました。
 捜査機関の調べによると、AとBは出会い系サイトで知り合って交際を開始し、Aは、Bの娘Vが18歳未満だと知りながら性交したいと考え、Bに依頼してVに性交に応じるよう説得させ、Vと性交するようになったとのことです。A、Bは起訴内容を認めています。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)

監護者性交等罪について

 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、5年以上の有期拘禁刑に処する、と定められています(刑法第179条)。

 監護者性交等罪は、被害者が18歳未満であり、精神的・経済的に監護者に依存している状況においては、そのような関係性を利用して性交等をした場合、不同意性交等罪(刑法第177条)の成立要件に該当しない場合でも、被害者の自由な意思決定に基づくものではないと考えられることから、不同意性交等罪と同等の悪質性があるものとして、これと同様に処罰するものとされます。

 「監護する者」(「監護者」)とは、同居の両親等の法律上の監護権(民法820条)を有する者に限られず、事実上、現に18歳未満の者を監督・保護する者とされ、同居の有無等の居住状況、身の回りの世話等の生活状況、生活費の負担等の経済的状況などを考慮して判断されます。

 「影響力」とは、監護者が被監護者の生活全般にわたり、衣食住などの経済的な観点や生活上の指導・監督などの精神的な観点から、現に被監督者を監督し、保護することによる生じる影響力とされ、行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で性交等をした場合、監護者性交等罪が成立し得ます。

次回の後編では、「身分なき共犯」について、解説します。

監護者性交等罪の弁護活動

 監護者性交等罪は、法定刑が5年以上の有期拘禁刑(拘禁刑の施行までは懲役)のため、起訴されると正式な裁判となります。

 被害者が未成年者である性犯罪の弁護活動では一般的に、不起訴処分等を目指して、被害者の両親等の保護者との示談を目指すことが重要となりますが、監護者性交等罪では被疑者が監護者の立場にあるため、示談を行うことがそもそも想定できない場合があります。

 このような場合、不起訴処分や刑の減軽を得るために、真摯な反省とともに再犯防止の意欲や取組みを、検察官や裁判官に具体的に示すことが特に重要になると考えられます。
 性犯罪再犯防止のカウンセリング等を受ける意欲を示すことや、被害者やその家族との元々の関係性に応じて、離婚や交際の解消、離縁や別居等により、被害者である児童が安心して生活できるよう環境調整を行っていることを示すことなどが考えられます。
 被害者の今後の生活環境や家族関係に関わることであるため、弁護活動においては、被害者とその家族の心情に配慮した調整が必要となります。

 このように、監護者性交等罪の刑事弁護は、通常の性犯罪の場合とは異なる対応が求められることが想定されるため、刑事事件に強く、被害者が未成年者である場合を含む、様々な性犯罪の刑事弁護の経験豊富な弁護士への相談をお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、被害者が未成年者である様々な性犯罪において、不起訴処分や刑の減軽などを獲得した実績があります。
 ご家族が監護者性交等罪などで逮捕されご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事件解説】覚醒剤を麻薬と誤認して所持した被疑者を麻薬取締法違反で起訴

2023-09-11

 覚醒剤取締法違反(所持)で逮捕されていた被疑者が、覚醒剤を麻薬と誤認していたことなどから、罪名が切り替えられ麻薬取締法違反(所持)で起訴された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 福岡県宗像市内の自宅で覚醒剤を所持していたとして、覚醒剤取締法違反(所持)の容疑で逮捕されていた会社員男性A(32歳)が、麻薬取締法違反(所持)で起訴されました。
 Aは、覚醒剤の成分が入った錠剤0.2グラムを所持していたとして覚醒剤取締法違反(所持)の容疑で逮捕されていました。Aは取調べにおいて、「錠剤は以前大麻を購入した際に、おまけでもらったものであり、覚醒剤とは知らなかったMDMA(合成麻薬)だと思っていた。」と供述していたとのことです。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)

覚醒剤取締法違反(所持)と麻薬取締法違反(所持)について

 「覚醒剤」とは、「覚醒剤取締法」において、フエニルアミノプロパン及びフエニルメチルアミノプロパン、又は同種の覚醒作用を有する物などと定義されています。
 覚醒剤の所持は重大犯罪であり、10年以下の懲役に処するとされています(同法41条の2第1項)。

 「麻薬」とは、「麻薬及び向精神薬取締法」(「麻薬取締法」)において規定される麻酔作用を持つ薬物の総称であり、ジアセチルモルヒネ等(ヘロイン)、コカイン、モルヒネなど、76種の薬物が指定されています。
 麻薬の所持は、ジアセチルモルヒネ等の場合は特に重く10年以下の懲役、それ以外の麻薬の場合は7年以下の懲役に処するとされています(同法第64条の2、第66条)。
 本件で、Aが誤認していたと主張するMDMA(合成麻薬)の所持は、それ以外の麻薬所持の場合にあたり、7年以下の懲役の対象となります。
 

覚醒剤を麻薬と誤認して所持した場合に成立し得る罪

 本件Aは、法定刑が7年以下の懲役の麻薬取締法違反(所持)(「軽い罪」)の認識で、法定刑が10年以下の懲役の覚醒剤取締法違反(所持)(「重い罪」)を犯していることになりますが、この場合、Aに何罪が成立し得るのか問題となります。

 「重い罪」に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその「重い罪」に当たることとなる事実を知らなかった者は、その「重い罪」によって処断することはできない、と規定されています(刑法第38条第2項)。

 Aが、対象薬物が覚醒剤であると本当に知らなかったのか、関係者の証言や客観的証拠も踏まえて事実認定されることとなりますが、その立証ができない場合、同条により「重い罪」である覚醒剤取締法違反(所持)は成立しないこととなります。

 しかし、覚醒剤取締法違反(所持)麻薬取締法違反(所持)は、薬物の濫用による保健衛生上の危害を防止するために、禁止された薬物の所持に対する取締規定である点で共通していること、取締りの方法、対象薬物の有害性や外観等が類似していることから、罪名の異なる犯罪ではありますが、実質的に重なり合う犯罪であると考えられます。

 このような場合、「重い罪」が成立しないとしても、「重い罪」と「軽い罪」が実質的に重なり合う限度で「軽い罪」が成立し得るとされることから、本件では、「軽い罪」である麻薬取締法違反(所持)が成立し得るとされるため、罪名が切り替えられ麻薬取締法違反(所持)で起訴されたと考えられます。

薬物事件で故意を否認する場合の弁護活動について

 薬物事件において、対象薬物であることを知らなかったとして故意を否認する場合は、弁護活動としては、被疑者(被告人)の主張に合理性が認められるよう、被疑者(被告人)から事件の経緯を聴き取り、客観的な証拠を収集した上で、嫌疑不十分による不起訴処分などを求めることが考えられます。

 このような否認事件の場合は、捜査機関による取調べが厳しくなる可能性が高くなるため、被疑者(被告人)と綿密な接見を行い、自己に不利な供述をしないよう取調べ対応についてのアドバイスを行うことが考えられます。

 また、薬物事件では、逃亡や罪証隠滅の恐れがあるとして、勾留が決定・延長され身体拘束が長期化したり、接見等禁止決定が付いたりする可能性が高いため、身体拘束からの解放や接見等禁止決定の解除に向けた弁護活動も重要となってきます。

 事件の内容によって対応も様々に異なるため、刑事事件に強く、薬物事件の刑事弁護の経験豊富な弁護士への相談をお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、覚醒剤所持などの薬物事件で、不起訴処分を獲得した実績があります。
 ご家族が覚醒剤などの薬物所持の容疑で逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

【事例解説】致死量未満の睡眠薬大量摂取による嘱託殺人未遂事件(後編)

2023-09-08

 前回に引き続き、自らの殺害を依頼された配偶者に睡眠薬を大量摂取させたものの、致死量未満のため殺害に至らなかった架空の事件を参考に、嘱託殺人罪の成立と未遂犯・不能犯の区別について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

参考事件

 福岡市在住の男性A(65歳)は、進行性の難病を患い数年前から寝たきりの妻V(64歳)と二人で生活していましたが、Vは「もう生きることが辛い。Aにこれ以上迷惑をかけるのも嫌だから殺してくれないか。」とAに懇願するようになりました。
 Aは都度拒んでいたものの、Vに連日懇願されたことから意を決し、Vを殺すために睡眠薬を大量に摂取させましたが、致死量を勘違いし、摂取させた睡眠薬の量は、成人女性の通常の致死量の10分の1程度であったため、Vは数日後に目を覚ましました。
 Vに懇願されて行ったこととはいえ、罪の意識に苛まれたAは警察に自首し、嘱託殺人未遂の容疑で取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)

前回の前編では、嘱託殺人罪について解説しました。

未遂犯と不能犯について

 AがVに服用させた睡眠薬の量は、成人女性の通常の致死量の10分の1程度であり、Vが死亡する可能性は相当低かったと考えられますが、このような場合でも嘱託「殺人未遂」罪が成立するのでしょうか。

 「未遂」とは、犯罪の実行に着手したが、これを遂げなかった場合、と規定されています(刑法第43条)。
 未遂犯のうち、「犯罪の実行」に着手したつもりが、犯罪の結果が客観的に元々発生し得なかったことからこれを遂げなかった場合は「不能犯」と呼ばれ、不可罰とされます。
 未遂犯不能犯は、実行行為に、犯罪の結果が発生する危険が存在していたか否かにより区別されると考えられます。例えば、殺害の意図で、毒物と誤信して砂糖を飲料に混ぜて摂取させたような事例では、死の結果が発生する危険は存在しないため、不能犯が成立することとなります。

 本件Aの行為は、成人女性の一般的な致死量の10分の1程度の量とはいえ、薬物である睡眠薬を大量に摂取させることにより、Vの身体の状態によっては、死の結果が発生する危険が全くないとはいえない、即ち、嘱託殺人罪の結果発生の危険が存在していたと認められ、嘱託殺人未遂罪が成立する可能性があると考えられます。

 なお、判例では、殺害の意図をもって被害者の静脈内に注射された空気の量が致死量以下であっても、被害者の身体的条件その他の事情の如何によっては、死の結果発生の危険が絶対にないとはいえないため、不能犯との認定は行わず、殺人未遂罪の成立を認めたものがあります。

嘱託殺人事件の刑事弁護

 嘱託殺人罪は、「人を殺す」という点では殺人罪と変わらないため、被害者から行為者への殺害依頼が存在したのか、その依頼が被害者の真意に基づくものであったのかが、取調べにおいて厳しく追及される可能性が高いです。
 また、(3)嘱託殺人よりも (4)承諾殺人の方が一般に量刑相場が重いこともあり、加害者から被害者に対し、殺害への承諾の働きかけがなかったなど、併せて追及されることが考えられます。
 取調べで供述する内容は、裁判で証拠として用いられることとなるため、取調べに際しては、刑事事件に強い弁護士から、どのように受け答えをすればよいか等のアドバイスを事前に受けることをお勧めします。

 なお、本件Aのように、事件が捜査機関に発覚する前に自首したときは、刑が減軽される場合があるほか、逃亡・罪証隠滅の恐れがないとして、逮捕を回避する可能性を高めることも期待できます。
 自首を検討している場合、自首の成立要件が満たされているか、自首した後の刑事手続きの見通しなどについて、あらかじめ刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、主に刑事事件を取り扱う法律事務所で、様々な刑事事件における取調べ対応の豊富な実績があります。
 嘱託殺人罪で自身やご家族が取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

« Older Entries Newer Entries »

keyboard_arrow_up

0120631881 無料相談予約はこちら LINE予約はこちら