堕胎罪と殺人罪について福岡県の刑事事件に強い弁護士が解説
医師であるAさんは、妊娠9か月のBさん(22歳・女性)の依頼を受け、堕胎手術を行いました。
これにより胎児Vが排出されましたが、この時Vは生命機能を有していたため、やむなくAさんはVを窒息死させました。
Aさんの行為は殺人罪にあたるでしょうか。
(大判大正11年11月28日刑集1巻705頁の事案を基に作成)
《 殺人罪 》
前回、人工妊娠中絶と業務上堕胎罪についてお話ししました。
では、胎児が排出され、生命機能を有していた場合に、これを殺害することは刑法第199条の殺人罪にあたるでしょうか。
人を殺した場合には殺人罪が成立しますが、この「人」に母体から排出された胎児が含まれるかが問題となります。
胎児とは、受精卵が母体に着床した後、人になるまでの生命体をいいます。
胎児が人になるのは、胎児の身体の一部が露出したときか、全部が露出したときかという争いがありますが、全部露出した場合に「人」に当たることに争いはありません。
そうすると、上のVはBさんから排出され、全部が露出した時点で胎児ではなく人となりますから、これを殺すことは殺人罪に当たるわけです。
では、堕胎罪と殺人罪との関係はどうなるでしょうか。
上の事案のもとになった裁判例では、堕胎罪と殺人罪の両方を成立させ、併合罪(確定裁判を経ていない2個以上の罪)としました。
併合罪となると、有期の懲役・禁錮刑を科す場合には、重い方の刑の1,5倍が長期となります。
業務上堕胎罪の最長刑は5年の懲役であり、殺人罪の最長刑は20年の懲役ですので、殺人罪の方が重いです。
もっとも、それぞれの罪の長期の合計を超えることはできないため、20年の1,5倍の30年ではなく、25年の懲役が最長刑となります。
業務上堕胎罪と殺人罪を犯してしまった場合には、上のような重い刑罰が科されることがあります。
このような重い刑罰を少しでも軽減することをお考えの方は、刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。
早い段階での弁護活動が、刑罰の軽減につながることがあります。
殺人罪、業務上堕胎罪でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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