【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(会社の預金口座から売上金などを横領したケース)

【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(会社の預金口座から売上金などを横領したケース)

今回は、会社の預金口座から売上金などを横領したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:会社の預金口座から売上金などを横領したケース

勤め先の預金口座から売上金など合わせて1000万円を横領したとして、那珂川市にある会社の執行役員Aさんが業務上横領の疑いで逮捕されました。
警察によりますと、Aさんは、執行役員を務めている会社の預金口座からインターネットバンキングを使って、合わせて1000万円を自分の口座に振り込み、横領した疑いが持たれています。
警察の調べに対して、Aさんは「借金の返済や遊興費に使った」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,業務上横領罪について

〈業務上横領罪〉(刑法253条)

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

業務上横領罪は、刑法に定められた通常の横領罪を業務者という身分を有する者が犯した場合に成立する犯罪です。
そのため、まずは横領罪について解説致します。
横領罪は、①自己の占有する他人の物を②横領した場合に成立します。
また、横領罪は故意犯であるため③故意(刑法38条1項)と、条文上の記載はありませが、④不法領得の意思が必要となります。
横領罪窃盗罪などとは異なり、既に行為者のもとに他人が所有権を有する物が存在しているため、他人の占有を侵害する犯罪ではありません。
そのため、横領罪の保護法益は、第一次的には所有権であり、また、横領行為は物を預けた人に対する裏切り行為といえるため、第二次的には委託信任関係であると考えられています。
①「自己の占有する他人の物」にいう、「」とは財物を意味し、窃盗罪における財物と同じですが、横領罪の場合は不動産も含まれます。
占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力を言い、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態を言います。
法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人の物を処分し得る状態を言い、法律上の支配が問題となる場面は不動産の占有と銀行預金の占有です。
不動産の場合は、不動産の所有権の登記名義人は、当該不動産を実際に居住するなど事実上支配していなくても、売却など自由に処分できる立場にあるため、法律上支配していると言えます。
他人から預かった金銭を自分の口座で管理している場合は、金銭を自分の財布に入れて実際に管理しているわけではないため事実上支配しているとは言えませんが、その金銭はいつでも自分の口座から引き出すことができ、自由に処分できる立場にあるため、他人の金銭に対する法律上の支配が認められます。
また、その占有は他人からの委託信任関係を原因とすることが必要となります。
仮に、その占有が委託信任関係によらずに開始した場合、その物は誰の占有にも属していない、あるいは偶然自分の占有に属したことになり、その場合は遺失物等横領罪刑法第254条)が成立します。
そのため、横領罪における占有は他人からの委託信任関係が必要となります。
委託信任関係委任民法643条以下)などの契約に基づく場合のほか、取引上の信義則に基づく場合などがあります。
②「横領」とは、不法領得の意思を発現する一切の行為を言います。
横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、その物の経済的用法に従って、所有者でなければできないような処分をする意思を言います。
横領行為は、費消、着服、拐帯などの事実行為のみならず、売却、貸与、贈与などの法律行為も含まれます。

以上が横領罪の成立に必要な要件となり、業務上横領罪は、業務者という身分を有する者が横領行為を行った場合に成立します。
業務者とは、委託を受けて他人の物を保管・管理する事務を反復又は継続的に行う者を言い、質屋や運送業者などがその典型ではありますが、職務上公金を管理する公務員や会社や団体などの金銭を管理する会社員や団体役員なども業務者に含まれます。
上記の事例で言えば、Aさんは、執行役員を務めており、会社から委託を受けて会社の金銭を管理する事務を反復又は継続的に行う業務者の立場にあり、会社の預金口座からインターネットバンキングを使って合計で1000万円を自分の口座に振り込み、借金の返済や遊興費に使い「横領」しているため、Aさんには業務上横領罪が成立することが考えられます。

2、執行猶予付き判決を求める弁護活動

業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役刑であり、執行猶予付き判決を得るためには、判決により言い渡される刑が3年以下の懲役である必要があります(刑法第25条第1項柱書)。
執行猶予が付かなかった場合、刑務所に服役することになりますが、そうなれば勤め先を解雇になる、被疑者・被告人が学生の場合には退学処分になるなどの不利益が生じることが考えられます。
執行猶予による不利益を回避するためには、被害者との示談を成立させられるかが重要なポイントになります。
もっとも、事件の被害者は、加害者に対して強い怒りや処罰感情を有していることも多く、加害者から直接連絡されることを拒み、示談交渉に応じてもらえない可能性もあります。
しかし、弁護士であれば、被害者に対して、加害者が反省・謝罪の意思を持ち、被害弁償をする意思を有していることなど冷静かつ丁寧に説明することにより、示談交渉に応じてもらい、示談の成立に期待が持てます。
執行猶予を獲得するためにも、示談交渉は法律の専門家であり交渉のプロである弁護士に依頼することがオススメです。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県那珂川市内で業務上横領罪の当事者となりお困りの方、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に関する知識・経験が豊富な弁護士が在籍しており、これまでに業務上横領罪をはじめとするさまざまな刑事事件・少年事件を取り扱ってきました。
業務上横領罪の当事者となりお困りの方は初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。

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