【事例解説】窃盗罪とその弁護活動(スーパーの売り場から商品を持ち出し会計前に店内で費消したケース)

【事例解説】窃盗罪とその弁護活動(スーパーの売り場から商品を持ち出し会計前に店内で費消したケース)

今回は、スーパーの売り場からカップ焼酎を持ち出してスーパー内のトイレに持ち込み、会計を済ませる前にトイレ内で飲んだというニュース記事を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:スーパーの売り場から商品を持ち出し会計前に店内で費消したケース

スーパーの売り場から、代金を支払うことなくカップ焼酎1点をトイレに持ち込み、飲んだとしてAさんが窃盗の疑いで逮捕されました。
この店では、カップ焼酎の盗難が相次いでいて、警察が関連を調べています。
窃盗の疑いで逮捕されたのは、福岡県小郡市のAさんです。
Aさんは、小郡市のスーパーで、カップ焼酎1点を盗んだ疑いが持たれています。
商品の棚卸をしていた店長が、カップ焼酎の数量が合わないことに気づき、防犯カメラを確認したところ、Aさんがカップ焼酎を盗んだとみられる映像が確認されたということです。
Aさんは、代金を支払うことなく売り場のカップ焼酎をトイレに持ち込んで個室内で飲み、容器をトイレに放置していたとみられています。
取り調べに対し、Aさんは、容疑を認めた上で「夫が家計を管理していてお金が無かった」「今でも酒が好き」などと話しているということです。
RKBオンライン 2024/04/03 15:42の記事を参考にして、地名や内容を一部変更して引用しています。)

1,窃盗罪について

〈窃盗罪〉(刑法235条)

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪は、①他人の財物を②窃取した場合に成立します。
また、上記の他に③故意刑法38条1項)と条文上明記されてはいませんが④不法領得の意思が必要になります。
①他人の「財物」とは、所有権の対象であれば広く保護の対象となります。
しかし、経済的にも主観的にも価値が認められないような場合には、保護の対象となりません。
判例では、メモ紙1枚(最高裁判決昭和43年3月4日)やちり紙13枚(東京高裁判決昭和45年4月6日)などが財物性を否定されています。
②「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことを言います。
上記の事例では、Aさんはスーパーの売り場からカップ焼酎を持ち出して、トイレに持ち込み飲んだ時点で、占有者であるスーパーの店長またはオーナーの意思に反してカップ焼酎に対する占有者の占有を排除し、カップ焼酎を自身の占有に移しているため、「窃取した」と言えます。
故意とは、犯罪事実の認識・認容を言い、窃盗罪の場合は他人の財物を窃取することを認識し、窃取することになっても構わない(認容)していることを言います。
不法領得の意思とは、Ⓐ権利者を排除して他人の物を自己の所有物として(権利者排除意思)、Ⓑその経済的用法に従いこれを利用・処分する意思(利用処分意思)を言います。
Ⓐの権利者排除意思は、窃盗罪使用窃盗(例えば、他人の自転車を数分間勝手に乗り回すことなど)を区別するために必要とされます。
Ⓑの利用処分意思は窃盗罪毀棄隠匿罪との区別のために必要とされます。
例えば、会社の同僚を困らせる目的で、仕事で使うパソコンを持ち帰った場合は、窃盗罪ではなく器物損壊罪刑法261条)の成立が検討されることになります。

2,身柄拘束の解放、不起訴処分獲得に向けた弁護活動

窃盗罪で逮捕・勾留された場合、身柄を拘束されて捜査機関の取調べを受けることになります。
勾留による身柄拘束は、原則として10日間、さらに必要があると判断された場合には10日を超えない範囲で延長が認められるため、最長で20日間、逮捕の時から数えると最長で23日間身柄を拘束されることになります。(刑事訴訟法208条
逮捕に対する不服申立手続きは法律上用意されていませんが、勾留に対する不服申立手続きは準抗告刑事訴訟法429条1項)と勾留取消請求刑事訴訟法207条1項本文、87条1項)の2種類があります。
準抗告:被疑者において、そもそも勾留を認める理由が存在しないことを裁判所に申し立てること
勾留取消請求:被疑者を勾留した当初は勾留の理由が存在したが、後発的な事情の変化により被疑者の勾留を認める理由が存在しなくなったため、勾留を取り消すよう裁判所に申し立てること
被疑者の勾留が認められるのは、被疑者が定まった住居を有しない場合、被疑者による証拠隠滅又は逃亡のおそれが認められると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
そのため、早期の身柄解放に向けた弁護活動としては、それらを否定し得る客観的な事情や証拠の収集活動を行うことが挙げられます。
例えば、報道の通りであるとすれば、Aさんがカップ焼酎を盗んだとみられる映像が記録されている防犯カメラは、既に捜査機関により押収されているという事情は、Aさんによる証拠隠滅のおそれを否定する客観的な事情になります。
そして、Aさんには配偶者がいるため、配偶者に身元引受人になってもらえれば、Aさんの逃亡のおそれを否定する客観的な事情にもなります。
また、Aさんには定まった住居が有しているため、住居不定の要件も否定できます。
このような弁護活動を行うことで、被疑者の早期の身体解放を目指します。
窃盗罪は、財産事件であり被害者が存在する犯罪でもあります。
そのため、被害者の方との示談交渉を被疑者に代わって行います。
示談交渉は、事件の加害者と被害者の当事者同士で行うこともできますが、当事者同士での交渉は通常は拗れて上手くいかないことがほとんどです。
また、スーパーやコンビニ、書店などは示談を拒否している場合が多く、示談交渉が難航することが考えられます。
そのため、弁護士が被疑者に代わって、被害者の方が不快にならないよう最大限配慮して、被疑者の謝罪の弁を述べ、被害弁償を行うなど慎重を期した粘り強い交渉を行い、示談の成立を目指します。
また、示談の内容として、宥恕条項(加害者を許し、刑事処罰を望まないことを意味する条項)や既に被害届の提出や刑事告訴がなされていればその取下げや取消しの約定を加えた内容での示談を成立させることが必要不可欠となります。
そして、示談の成立は、被疑者の身柄拘束からの早期解放においても重要な意味を持つだけでなく、被疑者が逮捕されてから起訴されるまでの間に示談を成立させることができれば、起訴猶予による不起訴処分の獲得も期待できます。
示談の成立は逮捕されてから起訴されるまでの間に成立させる必要があるため、窃盗罪で逮捕されてしまった場合には、少しでも早く弁護士に依頼することがオススメです。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県小郡市で窃盗罪の当事者となり在宅で捜査を受けている方、またはご家族等が窃盗罪の当事者となり身柄を拘束されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所であり、刑事事件・少年事件における豊富な経験と実績がございます。
そのため、窃盗罪で在宅捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、窃盗罪でご家族等が身柄を拘束されている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
お気軽にご相談ください。

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