【事件解説】ひき逃げ事件の容疑者を緊急逮捕

 ひき逃げ事件の容疑者が緊急逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 北九州市在住の会社員男性Aは、同市内の国道で自動車を運転していたところ、道路を横断中のVに衝突し、全治3か月の怪我を負わせたのにそのまま逃走した疑いで、福岡県折尾警察署に、道路交通法違反(ひき逃げ)自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで緊急逮捕されました。
 目撃者の証言する車の車種、色やナンバーの情報から、事故現場より帰宅途中のAの車が特定され、Aが緊急逮捕されるに至ったとのことです。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)

ひき逃げ事件で成立し得る罪

 人身事故を起こした場合、直ちに車両の運転を停止して、負傷者の救護を行う義務(救護義務)警察官に事故を報告する義務(報告義務)があります(道路交通法第72条第1項)。

 人身事故を起こし、救護義務報告義務を怠り逃走することを一般的にひき逃げと呼びますが、本件では、Aの運転によりVが負傷したと考えられるため、Aには、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる可能性があります(道路交通法第117条第2項)。

 また、本件で、Vの負傷が、Aが運転上必要な注意を怠ったことに起因するものであれば、別に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷処罰法)第5条の過失運転致傷罪も成立し、併合罪として処罰される可能性があります。

緊急逮捕とは

 逮捕の種類には、「現行犯逮捕」や裁判官の令状による「通常逮捕」の他に、本件のような「緊急逮捕」があります。

 緊急逮捕については、(ア)検察官、検察事務官又は司法警察職員は、(イ)死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を、(ウ)犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、(エ)急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる、と要件が定められています(刑事訴訟法第210条第1項)。

 本件では、以下の通り各要件を充足するとして、Aを緊急逮捕したと考えられます。

(ア)について、逮捕したのは折尾警察署の警察官(司法警察職員)です。
(イ)について、道路交通法違反(ひき逃げ)だけでも、長期10年の懲役にあたる罪です。
(ウ)について、Aの車の車種、色やナンバーと目撃者の証言が一致したことから、車の損傷の状況も併せて考慮すると、要件を充たし得ると考えられます。
(エ)について、Aはひき逃げ、つまり罪を犯し逃走していることから、すぐに身体を拘束しないと逃亡の可能性が高いとして、要件を充たし得ると考えられます。

ひき逃げ事件の弁護活動

 本件では、被害者Vが全治3か月の重傷を負っていることもあり、Aが起訴され実刑となる可能性もあります。

 弁護活動としては、取調べ対応や身体拘束からの解放に向けてのもののほか、Aに有利な証拠の収集を行いますが、その一つにVとの示談交渉が考えられます。

 本件は自動車事故のため、弁護士は、Aが加入している自動車保険会社とも連携しながら示談交渉を図り、示談の成立により量刑判断に有利な影響を及ぼす可能性を高めることを狙います。
 なお、保険金で完全な賠償を行える場合でも、謝罪とともにA個人からの見舞金等の支払いを別途行うことで誠意を示し、示談書に「重い処分を求めない」旨の宥恕条項を入れてもらえることも考えられるため、交通事故関係の刑事事件の経験豊富な弁護士への依頼をお勧めします。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、交通事故関係の刑事事件も多数取り扱い、被害者との示談交渉を含む弁護活動の豊富な実績があります。
 ひき逃げ事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

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