逮捕前の業務上横領罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡市中央区にある小売店で働く店長のAさんは、ギャンブル等の遊興費に多額のお金を費やした上に、住宅ローンなどの支払いも3か月間滞り、銀行から支払いの催促を求められていました。Aさんは、親や妻から消費者金融や闇金にだけは手を出すな、と言われていたことからお金の宛がなく、最終的に、会社のお金を横領して何とか現状を乗り切ろうと考えました。Aさんはお店の売上金集計して会社に報告することになっていたところ、売上金を少なく申告してその差額を自分の懐にいれてるということを繰り返し、9か月間で合計約120万円を横領しました。そうしたところ、Aさんは、不審に感じた会社の会計監査から突然、事情を聴かれ、売上金を横領したことを認めました。Aさんは全額、一括で返済しなければ福岡県中央警察署に業務上横領罪で刑事告訴すると言われています。
(フィクションです。)
~ 業務上横領罪 ~
業務上横領罪は刑法253条に規定されています。
刑法253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
単純な横領罪との違いは「業務上」の横領かどうかという点と、法定刑が異なることです(単純横領罪は5年以下の懲役)。
「業務」とは、「社会生活上の地位に基づいて反復・継続して行われる事務」をいうとされています。なお、「業務」は報酬、利益を目的とする事務でなくてもよいとされています。
横領罪は、物の所有者と占有者(Aさん)との間にある信頼関係(委託信任関係)を破った点を非難される罪であるところ、業務上横領罪は、物の占有が業務上の信頼関係に基づくものであるため、横領罪よりもさらに刑が加重されているのです。
~ 窃盗罪との違い ~
窃盗罪と横領罪との違いは、その物に対する支配が及んでいるのか及んでいないのか、という点にあります。及んでいる場合が横領罪、及んでいない場合が窃盗罪です。
例えば、店の金庫の中に100万円が置いてあったとします。
そのお金の管理を任せれている(つまり、お金に対する支配を及ぼしている)人(例えば店の店長)が勝手に現金を持ち出したなどという場合は横領罪が成立します。
反対に、お金の管理を任せれていない(つまり、お金に対する支配がない、権利がない)人(例えば店の従業員)が勝手に現金を持ち出したなどという場合は窃盗罪が成立します。
なお、窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
~ 難しい横領の意義、既遂時期 ~
一言で「横領」といっても、個別具体的事案や証拠関係によって、何を横領行為ととらえるのか、どの時点で横領したと認めるのか、つまり、横領の既遂時期を確定するのかは、事案が複雑になればなるほど難しくなってきます。ちなみに、「横領」とは不法領得の意思を実現する行為といわれています。そして、不法領得の意思が客観化されたときに既遂に達すると言われていますが、この判断も、やはり個別具体的事案やその証拠関係によって異なるでしょう。今回の事例の詳細は不明ですが、少なくとも、Aさんが売上金を他に費消した時点(例えば、住宅ローンの支払いに使った時点(それが証拠上認められた場合))が横領となり、かつ横領の既遂に達するものと考えられます。
~ 逮捕を回避するなら ~
なによりもまず、示談交渉をすることが先決です。そして、円滑、円満に示談を成立させるためには弁護士に示談交渉を依頼されることをお勧めいたします。
確かに、弁護士費用は安いものではありませんし、弁護士費用とは別に示談金を準備しなければならず、特にお金に困っている方にとっては弁護士に依頼するかどうか悩まれるところではないでしょうか?
しかし、弁護士に示談交渉を依頼すれば、交渉しだいでは支払期限に関して先延ばししてもらったり、支払い方法に関して分割を認めてもらうなど、様々な条件について少しでも有利に交渉を進めてくれます。そして何より、示談が成立させ相手方から刑事告訴しないと約束してもらえれば、
逮捕されない
という安心感を得ることが最大のメリットではないでしょうか?
まずは、こうしたことを踏まえて、弁護士に依頼されるかどうか判断されてみてください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は,まずは,0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間,無料法律相談,初回接見サービスの受け付けを行っております。
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