通貨偽造罪・同行使罪で逮捕
通貨偽造罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県飯塚市に住む少年A君(16歳)は、ビリビリに破れてしまった数枚の1万円札を貼り合わせて1枚の1万円札にし、これをコンビニの店員に手渡して商品を買いました。ところが、その直後、偽札であることに気付いた店員が警察に通報し、防犯ビデオ映像の解析などから犯人がA君であることが特定されてしまいました。そこで、A君は福岡県飯塚警察署の警察官に通貨偽造罪及び偽造通貨行使罪で逮捕されてしまいました。警察から逮捕の通知を受けたAさんの母親は、刑事事件に強い弁護士にA君との接見を依頼しました。
(事実を基にしたフィクションです。)
~ 通貨偽造罪 ~
通貨偽造罪は刑法148条1項に規定されています。
刑法148条1項
行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
見てお分かりいただけるように、通貨偽造罪は
無期懲役
が規定されているほか、有期懲役刑も
最低が3年
ですから、他の罪を比べてかなり重たい罪であることが分かります。ちなみに、強盗罪は5年以上の有期懲役ですが、その強盗罪ですら無期懲役の規定はありません。
= 行使の目的 =
「行使」とは、偽造・変造した通貨を真正な通貨として流通に置くことをいいます。つまり、通貨偽造罪が成立するには、偽造した通貨を真正な通貨として流通に置く目的で通貨を偽造することが必要ということになります。
A君は、商品を買う目的で偽札をコンビニの店員に手渡していますから「行使の目的」ありとされるでしょう。
= 通用する貨幣、紙幣又は銀行券 =
「通用する」とは、強制通用力を有していることを意味します(※通用する通貨か否かは日本銀行のホームページなどで確認することができます)。貨幣、紙幣、銀行券を総称して「通貨」といいます。「貨幣」とは政府が発行する硬貨、「紙幣」とは政府が発行する貨幣代用証券(現在は流通してない)、「銀行券」とは日本銀行が発行する貨幣代用証券、すなわち日本銀行券を意味します。千円札はもちろん銀行券です。
= 偽造 =
「偽造」とは、通貨発行権者(政府・日本銀行)でない者が、真正の通貨の外観を有するものを作ること、「変造」とは、通貨発行権者でない者が、真正な通貨に加工して、別個の、真正な通貨と紛らわしい外観を有する物を作ることをいいます。
「偽造」と「変造」の違いが分かりにくいですが、「変造」は常に真正な(本物の)通貨が材料となる点を抑えてください。簡単に言えば、本物の千円札に0を一個加えて1万円札にする行為は「偽造」ではなく「変造」となります。本件は「偽造」に当たるでしょう。
「偽造・変造」というためには、一般人が誤解する程度に似ているものである必要があります。そのため、一見して偽物とわかる偽札を作った程度では「偽造・変造」には当たらず「模造」となり、通貨及証券模造取締法で処罰されることとなります。
本件で、A君に通貨偽造罪が成立するかどうかも、この「偽造・変造」の程度にかかってくるものと思われます。
~ 偽造通貨行使罪 ~
偽造・変造した通貨を行使すれば通貨偽造行使罪に当たります。通貨偽造行使罪は刑法148条2項に規定されています。
刑法148条2項
偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使のも目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項(刑法148条1項)と同様とする。
ちなみに、通貨を偽造し、これを行使した場合は、通貨偽造罪と偽造通貨行使罪の両方が成立しますが、両者は手段と結果の関係にあり一罪として処理されます(牽連犯罪、刑法54条1項後段)。
~ 詐欺罪は成立しないの? ~
A君のように、相手方に偽札を手渡し、偽札を本物だと信じ切った人から商品を受け取る行為は詐欺罪(刑法246条、10年以下の懲役)に当たるかのようにも思えます。しかしながら、判例は、偽造通貨を行使する際には一般的に詐欺行為を伴い、偽造通貨行使罪は詐欺罪を当然に予定しているとして、別途詐欺罪は成立せず、偽造通貨行使罪一罪のみが成立すると判断しています。
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