銃刀法違反で逮捕
福岡県田川郡香春町に住むAさんは,深夜,アルバイトから帰宅途中路上を歩いていたところ,福岡県田川警察署の警察官の職務質問に遭いました。Aさんは,警察官から職務質問と同時に所持品検査も求められました。そして,警察官がAさんの衣服の上から手を押し付けるようにしてポケットの中身などを確認したところ,Aさんのズボンの後ろポケットの中から「はさみ」を発見されてしまいました。Aさんは「はさみ」を警察官に提出しました。その後,Aさんは銃砲刀剣類所持等取締法違反の被疑者として田川警察署に出頭するよう要請されました。
(フィクションです)
~ 銃刀法違反 ~
銃刀法は,正式名称「銃砲刀剣類所持等取締法(以下,法)」といいます。法は,銃砲,刀剣類等の所持,使用等に関する危害予防上必要な規制について定める法律です(法1条)。
= 刀剣類,刀剣類に関する規制 =
法2条2項では,「刀剣類」を
刃渡り15センチメートル以上の刀,やり及びなぎなた,刃渡り5.5センチメートル以上の剣,あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフ(略)
と定義しています。そして,刀剣類については,所持の動機目的を問わず,何人も,その所持許可ないし登録のない刀剣類の所持を禁止されており(法3条1項1号),これに罰則を設けています(法31条の16第1項1号)。
法3条 何人も,次の各号のいずれかに該当する場合を除いては,銃砲又は刀剣類を所持してはならない
1号 法令に基づき職務のため所持する場合
法31条の16 次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1号 第3条第1項の規定に違反して銃砲(略)又は刀剣類を所持した者
= 刃物,刃物に関する規制 =
法は,「刀剣類」に該当しない刃物であっても,刃体の長さが6センチメートルを超える刃物を規制の対象としてます。すなわち,法22条は,
何人も,業務その他正当な理由による場合を除いては,内閣府省令で定めるところにより計った刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし,内閣府省令で定めるところにより計った刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で,政令で定める種類又は形状のものについては,この限りではない。
とし,その違反に対する罰則を設けています。
法31条の18 次の各号のいずれかに該当する者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
3号 第22条の規定に違反した者
* 「業務その他正当な理由による場合」とは *
「業務その他正当な理由による場合」とは,研磨,修理,鑑定,売買等携帯・運搬することが社会通念上正当と認められる場合をいいます。犯罪を実行するための携帯等はもとより,「ただ何となく」など特段の事由なく携帯等することは「正当な理由による場合」とはいえません。また,「護身用のため」であっても同様です。
* 刃体の長さの計り方 *
法22条では,「内閣府省令で定めるところにより」としています。内閣府省令とは「銃砲刀剣類所持等取締法施行規則」を指し,計り方についてはその101条に規定されています。
~ Aさんの場合 ~
Aさんは「はさみ」を携帯していました。なお,本件の「はさみ」がそのような外観,形状をしているか分かりませんが,ねじがある「はさみ」の刃体の長さの計り方については,銃砲刀剣類所持等取締法施行規則101条2項2号で
切先とねじの中心とを結ぶ直線の長さを計る。
とされています。今回は,この計り方によって,Aさんが携帯していた「はさみ」の刃体が8センチメートルをこえると判断された可能性があります。
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