自宅内での盗撮は犯罪??
福岡県北九州市のアパートに一人暮らしのAさんは,自宅アパートにデリヘル嬢Vさん(19歳)を呼び,そこで性的サービスを受けました。そして,Aさんは,Vさんの裸やVさんが性的サービスを行う場面を撮影するため,VさんがAさん方に入る前に部屋の片隅に小型カメラを設置し,同カメラを起動させて上記場面を撮影しました。ところが,Aさんが性的サービスを受けた後,シャワーを浴びている最中,Vさんが部屋に一人になった際,偶然,Vさんが上記小型カメラを見つけました。VさんがAさんを問い詰めると,Aさんは盗撮したことを認めたました。Vさんが部屋を出た後店の店長に相談したらしく,Aさんは店長から「罰金100万円を払わなければ警察に被害届を出す」と言われました。
(フィクションです)
~ Aさんの行為は犯罪? ~
= 検討1 =
Aさんの行為は,福岡県迷惑行為防止条例6条2項各号,6条3項各号に当たることが考えられます。
しかし,6条2項は
公共の場所,公共の乗物,公衆の目に触れるような場所
における盗撮行為を禁じています。Aさんの自宅部屋は「公共の場所,公共の乗物,公衆の目に触れるような場所」とは言い難いことから,Aさんの行為は6条2項には該当しないでしょう。
次に,6条3項は,
公衆便所,公衆浴場,公衆が利用することができる更衣室,その他の公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
における盗撮行為を禁じています。ここでも,Aさんの自宅部屋は「公衆便所,公衆浴場,公衆が利用することができる更衣室,その他の公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」とは言い難いことから,Aさんの行為は6条3項にも該当しないでしょう。
= 検討2 =
次に,盗撮行為といえば,軽犯罪法23号(窃視の罪)に当たることが考えられます。
ただ,同号でも,
人の住居,浴場,更衣室,便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所
における盗撮行為(条文上は「ひそかにのぞき見る行為」を禁じていますが,判例上,カメラを設置する行為もこれに含まれると解されています)を禁じています。Aさんの自宅部屋は「人の住居,浴場,更衣室,便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所」とは言い難いことから,Aさんの行為は軽犯罪法23号にも該当しないでしょう。
~ その他の犯罪など ~
Aさんが今回撮影した動画を,ネット上などに公開するなど公に向けて流出した場合は,わいせつ物頒布等罪が成立する可能性があります。
刑法175条1項
わいせつな文書,図画,電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し,又は公然と陳列した者は,2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し,又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も,同様とする。
また,有償で頒布する目的で,わいせつ物を所持するなどした場合も同様に処罰されます。
刑法175条2項
有償で頒布する目的で,前項の物を所持し,又は同項の電磁的記録を保管した者も,同項と同様とする。
なお,Aさんの行為は民法上の不法行為に当たる可能性がありますから,刑事上の責任は負わないとしても,民事上の責任を負う可能性はあります。
今回,Aさんの行為は犯罪に該当しませんから,「警察に被害届」を出すと言われても慌てる必要はありません。しかし,相手方があまりに執拗な態度を取る場合などは「手切れ金」として事実上の弁償をする必要があるでしょう。そのような場合は,交渉を適切・円滑に運ぶためにも当事者間に弁護士が入る意味はあると思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,盗撮などの刑事事件を専門の法律事務所です。盗撮などでお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。