家族の指輪を盗んで転売する行為が犯罪になるのか?弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士が解説します。
事例
筑紫野市に家族と住んでいる会社員のAさんは、一緒に住んでいる母親の部屋にあるタンスの引き出しから高級そうな指輪を盗み出し、リサイクルショップで転売しました。
それからしばらくして指輪がなくなっていることに気付いた母親は、福岡県筑紫野警察署に窃盗の被害届を提出したようです。
(フィクションです。)
Aさんのように、家族の指輪を盗んだ場合、Aさんは刑事罰に問われるのでしょうか?
窃盗罪
他人の物を盗むと「窃盗罪」が成立します。
そこで窃盗罪の条文をみてみましょう。
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
母親は「他人」ではないので窃盗罪に該当しないのでは?と思った方がいるかもしれませんが、ここでいう「他人」とは、自分以外の者という意味であり、血の繋がりは関係ありません。
よって窃盗罪の条文だけを読み解くと、母親の指輪を盗んだAさんの行為は窃盗罪に該当するでしょう。
親族相当例
「親族相当例」とは、一定の親族間で特定の罪を犯した場合に、その人の刑を免除したり、被害者等からの告訴がなければ起訴できないこととしたりする特例のことで、刑法第244条に規定されています。
配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
~以下省略前~
この規定は「法は家庭に入らず」という思想の下、犯罪自体は成立するが、刑罰を免除するというのが判例・通説の考え方です。
つまり、Aさんの行為は窃盗罪に抵触するでしょうが、刑罰を受けることはないということです。
指輪が他人の物だったら…
では、Aさんが盗んだ指輪が母親の物ではなく、他人の物だった場合はどうでしょうか。
そこで問題となるのがAさんが「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で」窃盗の罪を犯したのかどうかです。
この点については様々な考え方がありますが、判例・通説は、所有者、被害者双方との間に親族関係が必要であるとしています。
つまり今回の被害者である母親とは親族関係がありますが、指輪の所有者とは親族関係がありませんので、Aさんは、刑法244条1項の適用を受けず、刑罰を受ける可能性が高いでしょう。
刑事事件にお困りの方は
以上のように、同居している家族から物を盗んでしまうと、刑罰を受けない場合もありますが、一定の場合には刑罰を受ける可能性があります。
仮に、刑罰を受ける可能性がある場合においては、適切に対処する必要がありますので、早期に弁護士に相談し、適切な対処をするべきです。