交際相手の居住するアパートに放火したとして現住建造物等放火罪で逮捕された事件を参考に、現住建造物等放火罪とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
北九州市在住の自営業男性A(23歳)は、交際中のVが賃借して居住する同市内の木造2階建てアパートの一室にて、Vの外出中に留守を預かっていたところ、クローゼットに掛けているVの洋服にライターで放火しました。
洋服が焼け落ち、床の一部に火が燃え移ったため、Aは慌てて消火しようとしましたが火が燃え広がってしまったところ、駆け付けたアパートの管理人が消火器で鎮火しました。
Aは、管理人に現住建造物等放火の容疑で現行犯逮捕され、通報により臨場した警察官に引き渡されました。
警察の調べに対し、Aは、Vとの喧嘩の腹いせで洋服を燃やそうと思ったが、アパートまで燃やすつもりはなかったと、現住建造物等放火の容疑を否認しているとのことです。
(事例はフィクションです。)
現住建造物等放火罪とは
放火して、現に人が住居に使用する建造物を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する、と定めています(刑法第108条)。
なお、法定刑の下限が5年以上の懲役であることから、有罪になると執行猶予が付くことのない、非常に重い罪と言えます。
「放火」とは、目的物に点火することです。直接目的物に点火する場合だけでなく、紙類等の着火しやすい物を媒介物として、目的物に点火する場合も含みます。
「焼損」とは、火が媒介物を離れて、目的物が独立して燃焼を継続するに至った状態を指します。
本件Aの容疑は、クローゼットに掛けている洋服を媒介物として、「現に人が住居に使用する建造物」であるアパートに「放火」し、その床に火を燃え移らせ「焼損」したという、現住建造物等放火罪です。
現住建造物等放火罪の故意
Aは、Vの洋服を燃やそうと思ったが、アパートまで燃やすつもりはなかったとして、現住建造物等放火罪の故意(罪を犯す意思)を否認していますが、故意は、積極的に結果の発生を意図する場合だけでなく、結果が発生するかもしれない、又は発生してもかまわない、という認識がある場合でも認められます(これを「未必の故意」といいます。)。
現住建造物等放火罪で起訴された場合、犯行動機を含むAの供述内容のほか、Vの室内の物の配置、放火の態様、犯行後のAの言動などの客観的証拠から、現住建造物等放火罪の故意の有無が裁判で審理されることになります。
現住建造物等放火罪の弁護活動
現住建造物等放火罪は、法定刑に死刑又は無期懲役を含む罪であるため、起訴された場合、通常、裁判官3名と国民から選ばれた裁判員6名の合議による裁判員裁判の対象となります。
裁判員裁判の審理が行われる場合、弁護人は、法律の専門家ではない裁判員に、平易な言葉や説明でAの主張の内容を理解してもらう必要があります。
本件では、Aに現住建造物等放火罪の未必の故意と言えるほどの認識は無かったことを、客観的証拠に基づき裁判員に理解してもらえるよう主張することが考えられます。
また、裁判員裁判での審理の前には、事件の争点や証拠を整理して審理の計画を立てる「公判前整理手続」が必ず開かれる点も、通常の刑事事件の裁判とは異なります。
以上のことから、裁判員裁判の対象事件については、刑事弁護に強く、裁判員裁判の経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。
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ご家族が現住建造物等放火罪で逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。