統合失調症と自動車運転②~主な罰則について~

統合失調症と自動車運転②~主な罰則について~

統合失調症と自動車運転にについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県小郡市に住むAさんは統合失調症に罹患しており、医師から自動車の運転を控えるよう言われていました。ところが、ある日、Aさんは医師の指示を無視して車を運転していたところ、前方で信号待ちのため停止していたVさん運転の車に自車を衝突させてしまいました。Aさんは車から降り、Vさんに謝罪し、自ら110番通報して現場に警察官が来るのを待ちました。そして、Aさんは現場に駆け付けた小郡警察署の警察官による実況見分や事情聴取などを受けたところ、道路交通法違反(過労運転等の罪)の被疑者として検挙されてしまいました。今後のことが不安になったAさんは、刑事事件専門の弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです。)

~ 前回のおさらい ~

前回の「統合失調症と自動車運転~免許の可否~」では、統合失調症に罹患されている方でも、

医師が「自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈していない」旨の診断を行った場合(当該診断を行った理由が、自動車等の安全な運転に必要な能力を欠く状態となるおそれはあるが、そのような状態に陥った際は、自動車等の運転ができない状態であると判断されることによるものである場合を除く。)

は、

運転免許を取得できることなどをご説明しました。
ですが、運転免許を取得する際はもちろん、取得した後でも気を付けるべき点は多数あります。
今回は、運転免許を取得する際や取得した後で関係する主な罰則についてご紹介します。

~ 運転免許を取得する際(質問票へ正しく記載しよう) ~

運転免許の取得の申請をする際は(病気の有無にかかわらず誰でも)

免許申請書

と同時に、

質問票

も窓口に提出しなければなりません。
この質問票には、一定の病気の有無などに関する「はい」か「いいえ」かで応える簡単な質問5つが記載されていますが、虚偽事項を記載した場合は、

1年以下の懲役又は30万円以下の罰金

に処せられる可能性があります。また、運転免許更新時も同様に質問票の提出が求められます。なお、記載事項の是正を求められたにもかかわらずこれに応じない場合はそれ以降の手続きは進みませんから注意が必要です。

~ 運転免許を取得した後(症状が出た際は運転を控えよう) ~

運転免許を取得した後も油断してはいけません。
特に、統合失調症などの病歴を有している場合は特に注意が必要です。

なお、道路交通法66条では

何人も、前条第1項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない

と規定されています。

「病気」にはもちろん統合失調症も含まれると解されます。しかし、病気を有するからといって直ちに本条違反となるわけではなく、その病気が

正常な運転に影響を及ぼす程度

のものである必要がありますから、これに至らない限りは本条違反に問われることはありません。
本条に違反した場合の罰則は、「薬物」の影響による運転の場合は

5年以下の懲役又は100万円以下の罰金

その他の場合は、

3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

です。

次回は、運転免許の取消しや人身事故を起こした場合の罪、罰則についてご紹介していきたいと思います。

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