少年事件と不処分

少年事件と不処分

福岡県大牟田市に住むA君(16歳)は,試験勉強や部活の成績が不調であること等でストレスが溜まっていました。そして,ある日,コンビニ寄った際,誰にも見つからないだろうと思って本棚にあった漫画本1冊を手に取り,お金を支払わず店外へ出ました。そうしたところ,Aさんはコンビニ店長に呼び止められました。Aさんは店内の事務室に連れていかれ,駆け付けた福岡県大牟田警察署の警察官に窃盗罪で事情を聴かれることになりました。捜査の結果,Aさんはこの件以外にも他のコンビニ等で漫画本を万引きしていたことが判明しました。その後,Aさんの事件は,家庭裁判所へ送致されてしまいました。Aさんの両親は少年事件に強い弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

少年(20歳に満たない者)事件では,警察,検察での捜査が終わると,事件は家庭裁判所へ送致されます(送られます)。逮捕,勾留され身柄を拘束されている場合は通常,少年鑑別所に収容され,担当技官による面接や心理検査などを受けます。また,同時に家庭裁判所調査官の調査も受けます。身柄を拘束されていない場合は,稀に少年鑑別所に収容されることもありますが,通常は,収容されないまま家庭裁判所調査官の調査を受けるなどします。調査を受けた結果,結果は家庭裁判所に報告され,少年審判などに活かされます。

ただし,少年審判は必ず開かれるとは限りません(審判不開始決定)。また,仮に開かれたとしても保護処分(保護観察,少年院送致等)が下されない場合もあります(不処分決定)。以下,ご紹介いたします。

~ 審判不開始決定 ~

審判不開始決定とは,少年鑑別所や家庭裁判所調査官による調査の結果,審判に付することができず,又は審判に付するのが相当でないと認めるときに,少年審判を開始しない旨の決定をいいます。

= 「審判に付することができず」 =

「審判に付することができず」とは,非行事実の存在の蓋然性がない場合や少年の所在が不明であり,審判することができない場合などが当たります。「非行事実の存在の蓋然性がない場合」とは,少年の行為が非行の構成要件に該当しない場合や証拠上非行事実の存在の蓋然性すら認められない場合,すなわち,成人でいえば「嫌疑なし」の場合をいいます。この場合は,少年自身を少年事件の手続から解放する必要がありますし,少年に適切な処分を下すことができないからです。

= 「審判に付するのが相当でない場合」 =

「審判に付するのが相当ではない場合」とは,事案が軽微であったり,家庭裁判所に送致された段階では少年が十分に反省しており要保護性(矯正施設による保護の必要性)がなくなったりしている場合をいいます。少年審判の一番の目的は「少年の更生」にありますから,審判開始前に少年が更生していると認められる場合は少年審判を開くことは不要であるからです。

= 審判不開始決定の効果 =

少年審判は開かれません。少年審判が開かれないということは保護処分を受けることはありません。

~ 不処分決定 ~

不処分(決定)とは,家庭裁判所における少年審判の結果,保護処分に付することができないとき,又は保護処分に付するまでの必要がないと認めるときに,保護処分に付さない旨の決定のことをいいます。

= 「保護処分に付することができないとき」 =

「保護処分に付することができないとき」とは,非行事実の存在が認められない場合などが当たります。「非行事実の存在が認められない場合」とは,少年の非行事実の存在について,合理的疑いを超える心証が得られない場合をいいます。成人でいえば「無罪判決」に相当します。

= 「保護処分に付するまでの必要がないと認めるとき」 =

「保護処分に付するまでの必要がないとき」とは,審判までに少年が更生し,要保護性がなくなった場合や試験観察期間中の少年の生活態度からさらに保護処分を行う必要がなくなった場合などが当たります。調査や審判の過程で,調査官などによる教育的な働きかけによって,少年の問題点が改善され,要保護性がなくなった場合をいいます。

= 不処分決定の効果 =

保護処分を受けることはありません。

~ 審判不開始決定,不処分決定を受けるための弁護活動 ~

付添人(弁護人)としては,調査の過程で,少年に対して教育的な働きかけを行っていき,少年の事件に対する反省を深めさせたり,生活環境を整えていったりしていきます。そして,その結果を,家庭裁判所調査官に書面などで報告します。家庭裁判所調査官は,その報告書や自ら調査した結果などをもとに,家庭裁判所に対し,処分に関する意見を上申することができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。少年事件でお困りの方はフリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談等を24時間受け付けております。

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