詐欺罪の受け子と接見等禁止
大学生のAさん(20歳)は親と喧嘩をしたことで家出をし,全国各地のネットカフェで寝泊まりしながら生活していました。そして,その間の生活費等は,特殊詐欺組織の受け子役で得た報酬等で賄っていました。
そして,ある日,Aさんが所属する特殊詐欺組織が組織が福岡県中間市に住むお年寄りVさんに対しオレオレ詐欺を実行しました。Aさんは指示されたとおり,Vさん方へ行き,Vさんからお金を受け取ろうとしたところ,現場に張り込んでいた福岡県折尾警察署の警察官に詐欺未遂罪の現行犯人として逮捕されました。その後,Aさんは勾留され,接見等禁止決定が出ました。勾留の通知を受けたAさんのご両親はAさんと面会しようとしましたが,接見等禁止が付いていたので面会することができませんでした。そこで,Aさんのご両親は,接見等禁止の解除を弁護士に依頼しました。
(フィクションです)
~ オレオレ詐欺(特殊詐欺) ~
オレオレ詐欺とは,特殊詐欺の犯行態様の一つです。特殊詐欺には,オレオレ詐欺のほか,架空請求詐欺,還付金等詐欺などがあります。特殊詐欺は捜査機関の摘発を免れるため,複数の者が役割を分担して組織的に行われています。オレオレ詐欺の場合,Vさんのような被害者に電話をかける役割のことを「かけ子」,Aさんのように実際に被害者から現金等を受け取る役割のことを「受け子」と呼ばれています。
~ 特殊詐欺と詐欺罪 ~
特殊詐欺は,申すまでもなく刑法246条1項の詐欺罪に当たります。
刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。
オレオレ詐欺の場合,「欺く」行為をする役割を担うのは,Aさんのような「受け子」ではなく「かけ子」です。しかし,詐欺罪の成立には「欺く」行為の他に財物を「受け取る」行為(その裏の意味として「交付させる」行為)が必要です。Aさんは,この「受け取る」行為を担ったとして詐欺未遂罪に問われています。このように,犯罪の一部の行為しか担っていない場合でも,その罪の全部の責任を問われることを「一部実行全部責任」と呼ばれています。
* 「受け子」の刑の重さは? *
「受け子」は主犯格から指示を受けているなど従属的な立場に立たされている場合が多いと思われます。また,主犯格に比べ報酬は低いでしょう。したがって,主犯格よりかは刑は軽くなると思われます。ただし,事案にもよりますが,必ず執行猶予が約束されているわけではありません。組織との関係が深い場合,常習性が認められる場合などは実刑となることも十分予想されます。
~ 被疑者段階における接見等禁止 ~
被疑者段階における接見等禁止とは,原則として検察官の請求を受けた裁判官が,被疑者が逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると認めた場合に,勾留されている被疑者と弁護人又は弁護人となろうとする者以外の者との接見等を禁じることをいいます。裁判官が「公訴の提起があるときまで」と接見等禁止の期間を決めて禁じることが通常のようです。このような裁判官の決定が出てしまうと,ご家族の方は被疑者と面会することができません。
* 一刻でも早く面会したい場合は? *
弁護人であれば,接見等禁止が出されても自由に面会することができます。したがって,間接的にはなりますが,まずは弁護人に被疑者の方との面会を依頼することが考えられます。
直接の面会をご希望の場合は,接見等禁止を解除するしかありません。接見等禁止を解除するには,その判断が間違っていたとして不服申し立てをするか,検察官あるいは裁判官に意見書などを提出するなどして接見等禁止を解除してもらうよう促すしかありません。その場合でも,手続は弁護人に依頼しましょう。
* 起訴後の接見等禁止もあり得る *
先ほど,通常,接見等禁止の期間は検察官の「公訴の提起があるまで」つまり,起訴されるまでという話をしましたが,起訴後でも接見等禁止が出される可能性はあります。特に,特殊詐欺などの組織性の高い犯罪,余罪が多数認められる犯罪などは注意が必要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,詐欺罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。ご家族の方が詐欺事件などで逮捕され,面会できない等お悩みの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。初回接見・無料法律相談のご予約を24時間受け付けております。