逮捕前に自首

逮捕前に自首

強制わいせつ罪と自首について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県久留米市に住むAさんは、仕事でストレスが溜まっていたため、女性に対しわいせつな行為してストレスを発散しようと思いました。そこで、Aさんは、仕事終わりに歩いて帰宅途中、前方を歩いていた女性Vさん(25歳)に背後から近づき、いきなり両手でVさんの両胸を揉みました。Aさんは、Vさんが「誰か助けて~!!」と大声を出したことから、「誰かに見つかるかもしれない」と思って慌ててその場から走って逃げました。自宅に帰りつき冷静になって大変なことをしたと思ったAさんは、すぐにでも警察に自首したいおt考えましたが勇気が出ず、インターネットで自首に詳しい弁護士を探し当てて弁護士に今後のことにつき相談することにしました。
(フィクションです。)

~ 強制わいせつ ~

強制わいせつ罪は刑法176条に規定されています。

刑法176条
 13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は,6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした者も,同様とする。

「暴行」とは一般に、人の身体に対する不法な有形力の行使をいいますが、強制わいせつ罪の「暴行」の程度は、被害者の犯行を著しく困難ならしめる程度であることが必要とされています。わいせつな行為とは、徒らに性欲を興奮又は刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するような行為をいうとされています。したがって、

・陰部に手を入れる
・乳房を弄ぶ

などの行為はこれに当たるでしょう。また、暴行それ自体がわいせつな行為(暴行=わいせつな行為)であってもよいとされています。
本件のように、Vさんの背後からVさんの胸を両手で揉む行為は「暴行」に当たる一方で「わいせつな行為」にも当たります。こうした場合にも、強制わいせつ罪に問われる可能性があるのです。

また、わいせつな行為を行った機会にVさんが怪我をしていたら強制わいせつ致傷罪に問われる可能性があります。
同罪は「3年以上の懲役」と大変重たい罪です。
しかし、同罪は結果的加重犯といい、AさんがVさんに怪我を負わせることを意図していなくても問われるおそれのある罪です。
たとえば、VさんがAさんを捕まえるため追いかけた際、怪我をしたという場合でも強制わいせつ致傷罪に問われるおそれがあります。

~ 自首 ~

Aさんは自首を検討しているようです。

自首とは、捜査機関に犯罪事実又は犯人が発覚する前に、犯人が自ら進んで自己の犯罪事実を捜査機関に申告し、その処分を委ねる意思表示のことをいうとされています。
 
「捜査機関」とは,主に検察官,警察官のことをいいます。
「自首」というためには、捜査機関に犯罪事実又は犯人が発覚する前に申告することが必要です。
ただし、「犯罪事実又は犯人」とされていますから、犯罪事実は発覚していても,まだ犯人が誰であるか発覚していない段階でも自首に当たる可能性はあります。

自首の方法としては自ら申告する場合のほか、他人を介して自己の犯罪事実を申告させることもできます。また,書面による申告も有効と解されています。ただし,こうした場合は、犯人がいつでも捜査機関の支配下にいることが条件となると解されています。
なお、自首というためには「捜査機関に処分を委ねること」、つまり、犯罪事実を認めていることが前提です。書面のみを提出して所在不明となった場合,氏名を秘匿している場合などは,処分を委ねる意思がないものとみなされるでしょう。

このように、「自首」を主張するためにはいくつかのハードル(要件)を超えなければならないことが分かります。
自首の要件を満たさないのに捜査機関に申告しても、それは「自首」ではなく単なる「出頭」にしか当たりません。

「自首」の最大の特徴は、

必ず減刑されること

です。
しかし、減軽といっても、その対象は法定刑(強制わいせつ罪であれば6月以上10年以下の懲役、強制わいせつ致傷罪であれば3年以上の懲役)であって、実際の「量刑」は法定刑が減軽された後の範囲で決せられます。したがって、自首に当たるからといって必ずしも執行猶予が確約されたわけではなく、やはり実刑に処せられることもあります。

もう一つの特徴としては、逮捕を免れる可能性があるということです。これは「自首」ではなく「出頭」に当たる場合でも同様です。
罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがないと判断されやすいからです。
ただし、反対に、そのおそれがやはりあるとして逮捕される可能性もあります。
ですから、捜査機関に申告する前に、弁護士とよく相談して様々なアドバイスを受け、対策を取る必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが、24時間体制で、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。

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