共同正犯と幇助犯との区別①

共同正犯と幇助犯との区別①

北九州市戸畑区に住むAさんは,ある牛丼チェーン店で店長をしていました。Aさんは、休日、パチンコ店でパチンコをしていると中学の同級生Bさんに会いました。お互い十数年ぶりの再開だったことから会話が弾み、AさんとBさんはパチンコ店を出て居酒屋へ行きました。そして、Aさんは、居酒屋で酒を飲んでいると、Bさんから「最近どう?」「うさわでは戸畑店の店長をしているんだって?」と言われました。Aさんは、「そうだよ。」「でも、残業代も丸々出してくれないわりに仕事は忙しい。」「正直やってやれないよ。」と言いました。すると、Aさんは、Bさんから「俺は先日、会社をクビになったばかりでお金に困っている。」「お前のところのお店の売上金でも一ついただかないかい?」と言われました。Aさんは、はじめ聞いて驚きましたが、「どうせ辞めようと思っていたし、お店に未練はない」と気持ちを切り替え、Bさんに「わかった。」「店の裏口と金庫の鍵を開けておくよ。」「おれが犯行に加担したことが分からないように出入口のガラス戸をバールで壊しといてな。」と言いました。その後、Bさんは、Aさんから指定された日時に戸畑店へ行き、店の裏口から中へ入って金庫から現金50万円を盗りました。Aさんは、逃げてきたBさんと落ち合い、「お礼」として半分の25万円を受け取りました。しかし、AさんとBさんは、福岡県戸畑警察署に建造物侵入、窃盗罪で通常逮捕されてしまいました。 
(フィクションです。)

~ はじめに ~

共犯の刑事事件において、共同正犯が成立するのか幇助犯が成立するのか争われることがよくあります。
今回は、建造物侵入、窃盗罪の事例を取り上げ、Aさんに同罪の共同正犯が成立するのか幇助犯が成立するのか検討していきたいと思います。

~ 共同正犯とは ~

共同正犯は刑法60条に規定されています。

刑法60条
 2人以上共同して犯罪を実行した者は,すべて正犯とする。

共同正犯が成立するためには,主観的要件としての「共同実行の意思(意思の連絡=共謀)」,客観的要件としての「共同実行の事実」が必要です。「共同実行の意思」とは,共同して実行行為をしようという意思のことをいいます。共同加功の意思ともいわれます。「共同実行の意思」は,2人以上の行為者全員が相互に持たなければなりません。したがって,甲がVに暴行を加えている間,甲の知らない間に乙がVの財布を盗んだという場合,窃盗罪(あるいは暴行罪)の共同正犯は成立しません。「共同実行の事実」とは,共謀した行為者が実行行為を分担することであり,共同加功とか行為の分担ともいわれています。

* 正犯とは *

犯罪(基本的構成要件)に該当する行為(実行行為)を行う者

* 共謀共同正犯 *

ところで,共同正犯の場合、役割分担が決められており、一部の者は犯罪に当たる行為(実行行為)を分担しない、という場合もよくあります。しかし、共犯者間で特定の犯罪を犯す意思があり、自己の犯罪を実現する意思で他者の行為を利用した(または他者から利用された)という関係が認められる場合には、実行行為を分担しない者も同様に正犯とされます。これ共謀共同正犯といいます。

~ 幇助犯とは ~

幇助犯に関しては刑法62条、刑法63条に規定されています。

刑法62条1項
 正犯を幇助した者は、従犯とする。
刑法63条 
 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

幇助犯が成立するには、「人を幇助すること」、「被幇助者が犯罪を実行すること」の2つの要件がそろうことが必要です。

* 幇助とは *

幇助とは実行行為以外の行為をもって正犯を援助し、その実行行為を容易にすることをいいます。上でご説明いたしましたが、幇助は、すでに犯罪実行の決意のある者の犯行を容易にする点が教唆と異なるところです。そのため、正犯者より責任が軽いと考えられており、幇助犯の刑は正犯の刑を減軽する(必要的減軽)とされています(刑法63条)。

~ 共同正犯と幇助犯を区別する利益 ~

共同正犯は全て「正犯」とされる一方、幇助犯は「従犯」とされ、

必ず減軽される

という点が両者を区別する利益となります。本件でBさんに建造物侵入、窃盗罪(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が科されるとしたら、Aさんはどうなのでしょうか?仮に、Aさんに建造物侵入、窃盗罪の幇助犯が成立したとなれば、5年以下の懲役又は25万円以下の罰金、の範囲で処罰されることになります(刑法68条3号、4号参照)。

~ おわりに ~  

今回は、共同正犯幇助犯の内容などについてみてきました。次回は、具体的にいかなる基準で共同正犯幇助犯が区別されるのかみていきたいと思います。

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