【交通違反】ながら運転②-1~ハンズフリー編

【交通違反】ながら運転②-1~ハンズフリー編

ながら運転ついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

前回の「ながら運転①」では、ながら運転やながら運転の罰則、運転中のスマフォ使用がながら運転に当たることなどをご説明しました。ただ、運転中の行為はこれだけに限るものではありません。①運転中にハンズフリーの通話装置で電話をする、②運転中にカーナビげーションを操作するなど様々なケースが想定できます。そこで、今回は、多くの方が関心をお持ちであろうこの①、②の行為がながら運転に当たるのか検討してみたいと思います。
(フィクションです。)

~ ながら運転に関する規定 ~

まず、検討する前に、前回同様、ながら運転に関する道路交通法上の規定を確認することとします。
はじめに、道路交通法71条は「運転者の遵守事項」を規定しており、ながら運転についてはその5号の5に規定されています。

道路交通法71条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
1~5の4 (略)
5号の5
 自動車又は原動機付自転車(自動車等)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。118条第3の2において「無線通話装置」という。)を通話(略)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(略)に表示された画像を注視しないこと。
6 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めた事項

つまり、

ア、携帯電話装置等を通話のために使用すること
イ、画像表示用装置に表示された画像を注視すること

が禁止されています。
携帯電話用装置とは主に「ガラケー」のこと、無線通話装置とは「スマートフォン」のことと考えられたらよろしいかと思います。
また、画像表示用装置とは主に「ガラケー、スマートフォン、タブレット、カーナビゲーションの画面」のことと考えられたらよろしいかと思います。

~ ①についての検討(結論その1:道路交通法71条5号の5違反には当たらない) ~

では、ハンズフリー通話装置についてはどうでしょうか?
この点、道路交通法71条5号の5では「その他の無線通話装置」のことを、

「その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。」

としています。
したがって、ハンズフリー装置は「その他の無線通話装置」には当たらず、運転中に通話のために使用したとしても道路交通法71条5号の5違反に問われる可能性はありません。

~ ①についての検討(結論その2:道路交通法71条6号違反に当たる可能性がある)

しかし、道路交通法71条6号では、運転者は

「前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めた事項」

を遵守しなければならないとされています。
そして、この規定を受けて、各都道府県の公安委員会は「●●(都道府県の名称が入る)道路交通法施行規則」を設けています。福岡県では「福岡県道路交通法施行規則」が設けています。
そして、その14条8号に次の規定が設けられています。

福岡県道路交通法施行規則
14条 法第71条第6号に規定する車両等の運転者が守らなければならない事項は、次に掲げるものとする。 ※法=道路交通法

 8号 大きな音量で、カーラジオ等を聞き、又はイヤホン等を使用して音楽を聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両を運転しないこと。ただし、公共目的を遂行する者が当該目的のための指令等を受信する場合は、この限りでない。

これからすると、ハンズフリーのイヤホンの音の状況によっては道路交通法71条6号違反に問われる可能性がなくはありません。
ちなみに、罰則は5万円以下の罰金です(道路交通法120条1項9号)。

もっとも、捜査機関が同号違反を立証することは極めて難しいと思われます。
したがって、実際問題としてハンズフリーの通話で検挙され処罰されるケースは少ない、と思われます(強引に青切符を切れられる場合は考えられますが、納得がいかない場合は安易に書類にサインしてはいけません)。

しかし、ハンズフリー通話中の運転は、通常の運転に比べて注意力が散漫となると思われます。
そして注意力が散漫となった結果、交通事故を起こせば過失運転致死傷罪(7年以下の懲役又は禁錮若しくは100万円以下の罰金)などの罪に問われるおそれもあります。
運転には十分注意する必要があります。

次回は②-2について検討します。

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