【刑事事件】北九州市戸畑区で動物虐待

【刑事事件】北九州市戸畑区で動物虐待

動物虐待刑事事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

北九州市戸畑区に住むAさんは、隣近所であるVさん方の犬が毎晩数時間にも渡って泣き続けるためなかなか寝付けることができず悩まされていました。そこで、Aさんはいっそのこと殺してしまえと思い、自宅から鈍器のようなものを持ち出してVさん方敷地内に立ち入り、鈍器のようなものを犬にめがけて数回振り下ろして殴打し、犬を殺しました。数日後、Aさんは、自宅に来た福岡県戸畑警察署の警察官に任意同行を求められ、器物損壊罪、動物愛護法違反(動物虐待の罪)で逮捕されてしまいました。Aさんは、普段から犬の鳴き声を巡ってVさんとトラブルになっていたことなどから警察に目をつけられたようです。Aさんの家族が刑事事件専門の弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです)

~ 動物虐待と刑事犯罪 ~

いわゆる動物虐待を行った場合は刑法の器物損壊罪、動物愛護法(正式名称、動物の愛護及び管理に関する法律)に問われる可能性があります(なお、両罪は。

まず、器物損壊罪は刑法261条に規定されています。

刑法261条
 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

刑法上は動物は「物」に当たります。「損壊」とは動物以外への毀棄をいいます。「傷害」とは動物に対する毀棄をいいます。動物を傷つけた場合のみならず、殺した場合も「傷害」に当たりますから、傷害罪(刑法204条)の傷害とは意味が異なります。

次に、動物愛護法です。動物愛護法44条には以下の規定が設けられています。

1 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管す る愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにお いて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、100万円以下の罰金に処する。
3 愛護動物を遺棄した者は、100万円以下の罰金に処する。

なお、「愛護動物」とは、4項で

1号 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
2号 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬は虫類に属するもの

とされています。
一概に動物「虐待」といいますが、単に、殺す、傷つける(44条1項)だけではなく、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと(いわゆるネグレクト、44条2項)、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにお いて飼養し、又は保管すること(44条3項)なども「虐待」とされることに注意が必要です。

~ 求刑を超える判決 ~

先日、9月17日、富山地方裁判所高岡支部で、近くに住む男性が飼っていた猫を連れ去って虐待死させた男性に対し、

懲役8月 保護観察付執行猶予4年

の判決が言い渡されています。
「懲役6月」という検察側の求刑を超える判決でした。報道によると、裁判官は「動物愛護への意識の高まりを考えると求刑はやや軽い」「動物は法律上は人として扱われないがまぎれもなく家族の一員」と述べたそうです。
判決結果が検察の求刑を超えることは

異例

です。動物虐待に対する裁判所の厳しい姿勢が見られました。

動物虐待は絶対にやめましょう。

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