覚せい剤営利目的輸入罪と関税法違反②

2019-04-15

覚せい剤営利目的輸入罪と関税法違反②

ドイツ国籍を有するAさんは,中国上海市において,氏名不詳者から紙箱等が入った茶色ソフトケースを日本へ運ぶことを依頼されてこれを引受けました。そして,Aさんは,受け取った同スーツケース内の紙箱に覚せい剤などの違法薬物が隠されているかもしれないと認識しつつ,営利目的で,これを本邦に輸入しようと企てました。Aさんは,上海空港において,同スーツケースを機内預託手荷物として福岡空港行きの航空機に搭乗しました。その後,Aさんは福岡空港で航空機を降りた後,同空港内の税関検査場において手荷物検査を受けていたところ,同スーツケースの紙箱内から覚せい剤約5000グラムを発見されてしまいました。そこで,Aさんは,福岡空港警察署の警察官に,覚せい剤取締法違反(営利目的輸入罪)及び関税法違反(禁制品輸入未遂罪)で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ 前回の内容 ~

前回の覚せい剤営利目的輸入罪関税法違反①では,覚せい剤取締法(営利目的輸入の罪)と関税法(禁制品輸入未遂罪)の内容,また,それぞれの輸入の既遂時期,刑の内容などについてご説明いたしました。それでは,両罪が成立するとして,量刑(刑の種類,刑の重さ)はどの程度になるのでしょうか??

~ 実際は1個の行為として処罰される ~

まず,覚せい剤取締法(営利目的輸入の罪)と関税法(禁制品輸入未遂罪)が成立するとして,両方の刑を同時に合算して科されるのでしょうか?つまり,覚せい剤取締法(営利目的輸入の罪)の法定刑は「無期若しくは3年以上の懲役に処し,又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金」,関税法(禁制品輸入未遂罪)は「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し,又はこれらの併科」でしたが,例えば,懲役刑については最高で30年,罰金刑については最高で2000万円の刑が科されることになるのでしょうか?

この点,最高裁判所(昭和58年9月29日)は,

外国から航空機によって覚せい剤を(日本国内)に持ち込み,これを携帯して通関線を突破しようとする一連の動態は,(略)自然的観察のものとにおいては,社会見解上一個の覚せい剤輸入行為と評価すべきものであり,(略)それが両罪に同時に該当するのであるから,両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあると解するのが相当である

としています。

* 観念的競合とは *

観念的競合とは,1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合をいいます。そして,観念的競合となれば,科刑の上は1個の行為と評価され,触れる罪名のうち最も重い刑により処断されます。どの刑が「最も重い刑」かは刑法10条によって決められます。

* 刑法10条 *

まず,①刑の重さは刑種(死刑→懲役刑→罰金刑→拘留→過料(刑法9条))で決められます(刑法10条1項)。②刑種が同じ場合は,長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし,長期又は多額が同じであるときは,短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とします。

これを本件に当てはめてみましょう。まず,刑種(懲役刑,罰金刑)については同じですが,覚せい剤取締法(営利目的輸入の罪)には無期懲役の定めがあり,かつ,有期懲役の刑の上限は20年(3年以上の刑)と関税法(禁制品輸入未遂罪)よりも重い刑であることが分かります。したがって,本件では,「無期若しくは3年以上の懲役に処し,又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金」の範囲内で処断される(科刑される,刑を受ける)ことになります。

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福岡空港警察署までの初回接見費用:34,500円)

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