準強制わいせつ罪と示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡市中央区にに住む会社員のAさんは、同区内にある公園に通りかかった際、公園のベンチで横たわっている女性Vさんを見つけました。AさんはVさんの様子が気になってVさんに近づくと、明らかにVさんから酒臭がし、Vさんの全身が真っ赤に火照っていたことから、Vさんが酒に酔っているのだろうということが分かりました。ところが、Aさんは、Vさんの胸元が開いており、今にもVさんの乳房が見えそうだったことから劣情を催し、周囲に人もいなさそうだったことから右手をVさんの上着の中に入れ、Vさんの胸を触りました。そうしたところ、Vさんが意識を取り戻したことから、AさんはVさんから「何やっているんですか」などと声をかけられてしまいました。そして、AさんはVさんに腕を掴まれ、「慰謝料払ってください」「示談しなければ警察に被害届提出しますよ」と言われました。Aさんは連絡先を渡し、10日後にVさんから連絡をもらうことになりました。Aさんはその間、弁護士に示談について相談することにしました。
(フィクションです。)
~ 準強制わいせつ罪 ~
準強制わいせつ罪は刑法178条1項に規定されています。
刑法178条1項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。
「176条」は強制わいせつ罪の規定です。「例による」とは、法定刑をその罪と同様とする、という意味です。ですから、「第176条の例による」とは、法定刑を強制わいせつ罪と同様、6月以上10年以下の懲役とする、ということになります。「準」とついていますから、一見すると強制わいせつ罪よりも刑の重さが軽そうですが、実は変わりませんから注意が必要です。
「心神喪失」とは、精神上の障害によって正常な判断を失っている状態をいいます。具体的には、熟睡、泥酔・麻酔状態・高度の精神病などがこれに当たります。
「抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由によって心理的・物理的に抵抗することが不可能又は著しく困難な状態をいいます。睡眠中、泥酔中、麻酔中、催眠状態など、心神喪失以外の理由でわいせつな行為をされていることを認識していない場合がこれに当たります。
「(心身喪失・抗拒不能に)乗じる」とは既存の当該状態を利用することをいいます。当該状態を作出した者とわいせつ行為をした者が同一であることは必要ではありません。ただし、この場合、本罪が成立するには、わいせつ行為をした者が、被害者が当該状態にあることを認識しておく必要があるでしょう。本件では、AさんがVさんを泥酔状態にさせたわけではありませんが、Vさんが当該状態にあることを認識しつつわいせつ行為に及んでいることが認められますから、Aさんの行為は「心神喪失に乗じ」、「わいせつな行為」をしたことに当たる可能性が高いでしょう。
「(心神喪失・抗拒不能)にさせる」手段には制限はありません。麻酔薬、睡眠薬の投与・使用、催眠術の施用、欺罔などはいずれもその手段となり得るでしょう。
~ 準強制わいせつ罪と示談 ~
罪を認める場合は、一刻も早く被害者と示談交渉を進めることが肝要です。
示談させることができれば、被害者に「捜査機関に被害届を提出しない」ことをお約束していただくことも可能です。
そうすると、事件のことが捜査機関に発覚することはなく、その結果、逮捕という最悪の事態を免れることもできます。
ただし、示談交渉は弁護士にお任せください。
本件のように、被害者が示談交渉に積極的な場合でも、被害者に代理人弁護士が付けば法律の素人であるあなたはその弁護士の言うがままに交渉に応じなくてはならないおそれもあります。
少しでも有利に示談交渉を進めるためには弁護士に依頼する方が無難といえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、弊所までお気軽にご相談ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。