【刑事事件】いたずら通報で逮捕?~福岡県嘉麻市
いたずら通報と刑事事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県嘉麻市内に住むAさんは、いたずら目的で、「自宅に泥棒に入られた。」「財布と現金がなくなっている。」との110番通報をしました。これを受けて福岡県嘉麻警察署の警察官がAさん宅を訪ね、Aさんから事情を聴いたり、実況見分を実施しましたが特に不審な点は認められませんでした。そこで、警察官が改めてAさんに被害事実を確認したところ、Aさんは偽の申告だったことを認めました。Aさんは軽犯罪法違反の被疑者として事情を聴かれることになりました。Aさんは警察官に「実際に警察官が来るのかどうか見てみたかった。」などと話しています。
(フィクションです。)
~ いたずら通報で軽犯罪法違反 ~
軽犯罪法の1条では、1号から34号までに規定する者を「拘留又は科料」に処すると定めています。そして、16号には、
虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者
と「虚偽申告の罪」を規定しています。いたずら目的の通報はこの虚偽申告の罪に当たる可能性があります。
「虚構の」とは、存在しない事実を存在するように装うことをいいます。すなわち、根も葉もないことをいいます。したがって、「虚偽」あるいは「不実」というのとは異なります。実在する事実に若干の変更を加える程度では足りません。言い換えれば、基本的事実関係が存在すれば、多少大げさに述べても「虚構」とはいえません。
「犯罪又は災害の事実」とは、犯罪又は災害が発生したこと自体に関するものをいいます。「事実」というだけあって、犯罪又は災害の発生については、事実といえるだけの具体性をもった内容の申告がなされることを要します。すなわち、犯罪又は災害の概要のほか、概略の日時、場所等が明示により、あるいは暗黙のうちに分かるものでなければなりません。
「申し出る」とは、自発的に申告することをいいます。申告の方法は問いません。ただし、自発的に申告することを要しますから、公務員の質問に対して虚偽の答弁をする場合は含まれません。
以上から、Aさんは軽犯罪法違反に問われる可能性があります。
また、いたずら通報が悪質な場合は、場合によっては先日★うその110番遊びで偽計業務妨害罪★でご紹介した「偽計業務妨害罪」に問われることもあります。
~ 軽犯罪法違反で逮捕? ~
では、軽犯罪法違反のみをもって逮捕されることはあるのでしょうか?
この点、通常逮捕について規定した刑事訴訟法199条は次のように定めています。
刑事訴訟法199条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。
ただし、30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
つまり、ただし書き以下は
30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪
については、
原則、逮捕できない
ことを定め、例外として、
被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合
には逮捕できる、としています。
軽犯罪法違反の罰則は「拘留又は科料」ですから、
・逮捕の理由(罪を犯したを疑うに足りる相当な理由)
・逮捕の必要性(逃亡、罪証隠滅のおそれ)
・住居不定又は正当な理由のない不出頭
という条件を満たせば逮捕されることはあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見(ご案内はこちら→★初回接見のご案内★)、無料法律相談(ご案内はこちら→★無料法律相談のご案内★)の予約を受け付けております。