強盗・強制性交等の罪で逮捕
Aさんは,深夜,福岡県嘉麻市の路上で,Vさん(22歳)の後を付け,Vさんが一人で住んでいるアパートの部屋の鍵を開けようとしたところでVさんの口を右手で抑え,「死にたくなければオレの言う通りにしろ」などと言いました。VさんはAさんに言われるがまま部屋の鍵を開け,AさんはVさんの部屋の中に入り,玄関ドアの鍵を閉めました。そして,予め持ってきていたナイフ(刃体の長さが6センチメートルを超える刃物)をVさんに突きつけながら,Vさんを床に押し倒し,Vさんと性交しました。その後,Aさんは,テーブルの上に財布が置かれてあるのを見つけました。Aさんは「パチンコで負けてしまったし,お金もないので盗ってやろう」と思って,財布の中から1万円札2枚を引き抜き,Vさんの部屋を後にしました。後日,Aさんの犯行であることが判明し,Aさんは福岡県嘉麻警察署に強盗・強制性交等罪で逮捕されました。
(フィクションです)
~ 強盗・強制性交等の罪(刑法241条1項) ~
刑法241条1項
強盗の罪若しくは未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第179条2項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき,又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは,無期又は7年以上の懲役に処する。
平成29年刑法改正で,従来の強姦罪に代わり強制性交等罪が新設されたことは有名ですが,それに伴って刑法241条(改正前の強盗強姦罪)も改正されました。
改正前の強盗強姦罪では,強姦の後に強盗の犯意(意思)を生じて強盗をした場合,強盗強姦罪(無期又は7年以上の懲役)は成立せず,強姦罪と強盗罪の併合罪として5年以上30年以下の有期懲役にとどまり,強盗強姦罪との法定刑に大きな差がありました。
そこで,改正法では,同一機会に強盗(若しくはその未遂)と強制性交等(若しくはその未遂)が行われた場合には,その先後を問わず,改正前の強盗強姦罪と同じ法定刑で(つまり,強盗・強制性交等の罪=無期又は7年以上の懲役)で処罰できるようになりました。
= 強盗・強制性交等の罪が成立する場合とは? =
刑法241条1項をまとめると,強盗・強制性交等罪は以下の場合に成立します。
1 強盗+強制性交等の罪(ただし,監護者性交等罪(刑法179条2項)を除く)又はその未遂罪
2 強盗未遂+強制性交等の罪又はその未遂罪
3 強制性交等の罪+強盗又はその未遂罪
4 強制性交等の罪の未遂罪+強盗又はその未遂罪
・「強盗」とは
「強盗」には,刑法236条の「強盗」だけでなく,刑法238条の「事後強盗」や刑法239条の「昏睡強盗」も含まれます。
・「強制性交等の罪」とは
「強制性交等の罪」には,刑法177条の「強制性交等の罪」だけでなく,刑法178条2項の「準強制性交等の罪」が含まれます。ただし,規定にもあるように,刑法179条2項の「監護者性交等の罪」は,強盗と同一機会に犯されることが想定しがたいため除かれます。
・「~を犯した者が,~をも犯したとき」とは
これは,強盗行為と強制性交等の行為とが同一の機会になされる必要があることを意味しています。同一機会になされたかどうかは,強盗行為と強制性交等の行為との時間的,場所的関係などから判断されます。
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