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【事例解説】監禁罪とその弁護活動(飲食店で知り合った女性を自宅に連れ込み監禁したケース)
【事例解説】監禁罪とその弁護活動(飲食店で知り合った女性を自宅に連れ込み監禁したケース)
今回は、飲食店で知り合った女性を自宅に連れ込み監禁したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:飲食店で知り合った女性を自宅に連れ込み監禁したケース
福岡市西区にある自宅マンションに、飲食店で知り合った女性Vさんを監禁したとして、福岡県警西警察署は、Aさんを監禁の疑いで逮捕しました。
監禁の疑いで逮捕されたのは、福岡市西区に住む会社員Aさんです。
警察によりますと、Aさんは、飲食店で知り合ったVさんを自宅マンションに連れ込み監禁した疑いが持たれています。
Vさんから「Aさんから部屋から出たら痛い目に合わせると言われている。助けてほしい。」という旨の連絡を受けた友人が警察に通報し、事件が発覚しました。
その後、駆け付けた警察官がAさんから事情を聴き、その場で現行犯逮捕しました。
警察の調べに対し、Aさんは「部屋から出たら痛い目に合わせるなどと脅すようなことは言っていない」などと供述し、容疑を否認しています。
(事例はフィクションです。)
1,監禁罪について
〈監禁罪〉(刑法220条後段)
不法に人を…監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
監禁罪とは、不法に人を監禁した場合に成立する刑法の犯罪です。
「不法に」とは、違法にという意味であり、例えば被害者が監禁されることを承諾しているなど違法性が排除される事情が無ければ、当該監禁行為は「不法に」監禁したものと考えられます。
「監禁」とは、一定の場所から脱出できないようにして被害者の場所的移動の自由を奪うことをいいます。
場所的移動の自由とは、逮捕・監禁罪の保護法益であり、被害者が移動しようと思えば移動できる自由をいいます。(可能的自由説)
また、可能的自由説からは、被害者に意思能力は不要であり、被害者に場所的移動の自由が奪われていることの認識も不要であると考えられています。
そのため、被害者が監禁されていることを理解できない幼児や認知症などの精神疾患を患っており意思能力が欠如している場合でも監禁罪は成立します。
一定の場所は、必ずしも壁などによって囲まれた場所であることは必要ではありません。
また、脱出についても、脱出が全く不可能でなくても著しく困難であればいいとされています。
脱出できたか否か、脱出がどの程度困難であったかなどは、物理的障害の有無や程度、被害者の年齢や性別など具体的事情の下で、一般人を基準にして客観的に判断されます。
被害者を自分が運転する第2種原動機付自転車の荷台に乗せたまま1キロメートルほど走行した事件では、後部荷台に外囲いなどはなかったものの監禁罪の成立を認めています。(最高裁判例昭和38年4月18日)
監禁の方法としては、暴行・脅迫を用いて被害者を部屋に閉じ込めるなど被害者を外部への場所的移動を不可能・困難にする場合や、被害者を騙して睡眠薬を飲ませて眠らせることで室内に留め置いた場合などが監禁罪になり得ます。
脅迫による監禁とは、被害者を脅迫することによって被害者に恐怖心による心理的拘束を加えて脱出を不可能または困難にすることをいいます。
上記の事例のように、AさんはVさんに対して「部屋から出たら痛い目に合わせる」などの脅迫し、Vさんに恐怖心による心理的拘束を加えて脱出を不可能または困難にしているため、Aさんに監禁罪が成立することが考えられます。
2,否認事件における弁護活動
上記の事件のように、被疑者が容疑について否認しており、逮捕によって身柄拘束を受けている場合の弁護活動としては取調対応についてのアドバイスをすることが考えられます。
逮捕により身柄拘束を受けている被疑者は、捜査機関からの取調べを受けることになりますが、取調室という密室で一人きりで取調べを受けなければならないこと、家族や友人など外部との接触がとれなくなることなどから不安や恐怖を抱え、冷静な状態で取調べに臨むことが難しくなることがあります。
また、やみくもに黙秘権を行使すれば取調官の取調べが厳しくなったり、勾留を匂わせて被疑者の不安や恐怖を煽り立てて被疑者に自白を誘導するような取調べが行われることも考えられます。
そして、取調べにおける被疑者の供述は、その後裁判が開かれた場合には証拠して重要な役割を果たすことになるため、取調べでは慎重な供述が求められます。
もっとも、先述した被疑者の精神状態や適切な黙秘権の行使については、刑事事件についての専門的な知識や経験が要求されると言えます。
そこで、弁護士が被疑者と接見し、適切な黙秘権の行使など取調対応についてアドバイスいたします。
また、弁護士は身柄拘束を受けている被疑者のご家族などからの伝言を預かり被疑者に伝えることができるため、被疑者との接見は被疑者の不安や恐怖の解消にも繋がります。
もし被疑者に対して違法または不当な取調べが行われた場合には、被疑者が適切に黙秘権を行使することが難しくなります。
そのような違法または不当な取調べが行われたとの報告を受けた場合には、然るべき機関(警察の場合には捜査官や警察署長)に対して抗議します。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内においてご家族等が監禁罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験し、当該分野において高い実績を誇ります。
ご家族等が監禁罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
【事例解説】建造物侵入罪とその弁護活動(公民館にある女性用トイレに侵入したケース)
【事例解説】建造物侵入罪とその弁護活動(公民館にある女性用トイレに侵入したケース)
今回は、福岡市内にある公民館の女性用トイレに侵入したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:公民館にある女性用トイレに侵入したケース
福岡市内の公民館にある女性用トイレに正当な理由なく侵入したとして、建造物侵入の疑いで福岡市内に住む会社員のAさんが逮捕されました。
警察によりますと、福岡市内の公民館から「男性が女性用トイレに入っていた」と届け出があり、公民館の館長や目撃者の徴取を行うなどの捜査を行い、Aさんを特定し逮捕に至りました。
警察の調べに対し、Aさんは「女性が用便する音を聞くために女性トイレに入った事に間違いはありません」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)
1,建造物侵入罪について
〈建造物侵入罪〉(刑法130条前段)
正当な理由がないのに、…人の看守する…建造物…に侵入し…た者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
建造物侵入罪は、正当な理由がないのに、人の看守する建造物に侵入した場合に成立する刑法の犯罪です。
「人の看守する」とは、他人が事実上管理・支配しているという意味であり、例えば、管理人や監視員が置かれているとか、施錠されている場合がこれに該当します。
「建造物」とは、住宅・邸宅以外の工作物で、屋根があり壁や柱で支えられて土地に定着し、人が出入りできる構造のものを言います。
例えば、官公庁の庁舎、学校の校舎、工場、駅舎、神社などが「建造物」に該当します。
「侵入」とは、管理権者の意思に反する立ち入りを言います。
そのため、管理権者の承諾がある場合には、管理権者の意思に反する立ち入りとは言えず「侵入」には該当しないことになります。
もっとも、立ち入りについて承諾があったとしても、その承諾の範囲外の場所に立ち入れば、その部分については承諾が無いと言えるため、「侵入」に該当します。
過去の裁判例では、銀行のATMを利用する他の客のカードの暗証番号などを盗撮する目的で、銀行員が常駐しないX銀行支店出張所に営業中に侵入した場合には、X銀行支店の支店長の承諾を欠くとして、建造物侵入罪が成立するとしました。(最高裁判決平成19年7月2日)
また、建造物侵入罪において承諾し得る看守者は、当該建造物の管理権者です。
上記の事例で言えば、「人の看守する」公民館の管理権者である館長が公民館への立ち入りを承諾し得る看守者であり、男性であるAさんが女性用トイレに入ることについて承諾は無かったと言えるため、Aさんの公民館の女性用トイレへの立ち入りは「侵入」に該当し、建造物侵入罪が成立することが考えられます。
2,身柄拘束からの解放に向けた弁護活動
逮捕・勾留による身柄拘束は、最長で23日間続き、その間に警察と検察の取調べが行われます。
被疑者勾留は原則10日、延長が認められればさらに10日を超えない範囲で身柄を拘束されます。
そのため、被疑者勾留は、延長が認められなかったとしても10日間は警察署の留置施設にて身柄を拘束される可能性があります。
そうなれば、上記の事例のように、被疑者がどこかに勤めている場合には、その間勤め先を無断欠勤することになりますが、10日も無断欠勤を許してくれる勤め先はあまりなく、懲戒解雇などの不利益を被ることになります。
そこで、弁護士は被疑者の早期の身柄解放に向けた弁護活動を行います。
そもそも、被疑者勾留が認められるのは、被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文、60条1項各号)
そのため、それらのおそれを否定し得る客観的な証拠や事情の収集活動を通じて早期の身柄解放の実現を目指します。
例えば、被疑者と被害者とが面識がない場合、被疑者が被害者の住所や連絡先を知らず、被害者を威迫するなどして証拠の隠滅を図るおそれは低く、証拠隠滅のおそれを否定し得る客観的な事情と言えます。
また、被疑者に養っている家族がいる場合や定職についている場合には、それらを捨ててまで逃走することは一般的に見て考え難いため、そのような事情は被疑者の逃亡のおそれを否定し得る事情となります。
以上のような弁護活動を行い、被疑者の早期の身柄解放の実現を目指します。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において建造物侵入罪の当事者となりお困りの方、あるいはご家族等が建造物侵入罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件・少年事件を専門的に取り扱っている法律事務所であり、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験し、当該分野において高い実績を誇ります。
建造物侵入罪の当事者となり捜査機関の捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が建造物侵入罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
【事例解説】威力業務妨害罪とその弁護活動(飲食店で迷惑行為を行う動画を撮影しSNSに投稿して店の業務を妨害したケース)
【事例解説】威力業務妨害罪とその弁護活動(飲食店で迷惑行為を行う動画を撮影しSNSに投稿して店の業務を妨害したケース)
今回は、飲食店において水の入ったピッチャーのふたを舐めるなどの迷惑行為を行う様子を動画で撮影し、それをSNSに投稿して店の業務を妨害したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:飲食店で迷惑行為を行う様子を動画で撮影しSNSに投稿して店の業務を妨害したケース
福岡市中央区にある飲食店において、迷惑行為を行う様子の動画がSNSに投稿された事件で、福岡県警察中央警察署は、福岡市在住の大学生Aさんら3人を威力業務妨害の疑いで逮捕しました。
中央警察署の発表によりますと、Aさんらは、水の入ったピッチャーのふたを舐めるようなしぐさをする様子をスマートフォンで動画を撮影し、SNSに投稿したところ、投稿された動画が拡散された動画により店側に苦情の対応などをさせて業務を妨害した疑いが持たれています。
警察の調べに対し、Aさんらは動画の撮影と投稿を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)
1,威力業務妨害罪について
〈威力業務妨害罪〉(刑法234条)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
刑法に定められた威力業務妨害罪は、①威力を用いて②人の③業務を④妨害した場合に成立します。
①「威力」とは、人の意思を制圧するような勢力を言い、暴行・脅迫を用いる場合のみならず、それに至らない程度の威迫行為を用いる場合にも「威力」に該当します。
過去の裁判例では、猫の死骸を事務所の机の引き出し内に入れておいて被害者に発見させた場合(最高裁判決平4年11月27日)や教室で授業中の大学講師に対して大きな声で質問し続けた場合(大阪高等裁判所判決昭和58年2月1日)などが、「威力」に該当するとしています。
②「人」には、自然人のみならす法人も対象となります。
③「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務又は事業を言います。
④「妨害」とは、業務の平穏かつ円滑な遂行を害するおそれのある行為を言い、実際に業務遂行の妨害したことは必要となりません。
2,身柄解放・不起訴処分獲得に向けた弁護活動
威力業務妨害で逮捕・勾留されると、最長で23日間、身柄を拘束されて捜査機関による取調べを受け、検察官により起訴・不起訴が判断されます。
そこで、まず、早期の身柄解放に向けた弁護活動を行います。
被疑者段階における勾留が認められるのは、被疑者が定まった住居を有しない場合、被疑者による証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文、60条1項各号)
そのため、弁護活動としては、それらの要件を否定し得る客観的な事情や証拠の収集・主張していくことが考えられます。
例えば、被疑者が定まった住居を有しない場合には、ご家族や親族の方にお願いして被疑者の身柄を引き受けてもらうなど環境調整を行い、被疑者の住居不定や逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情となるため、それらを捜査機関や裁判所に対して主張していきます。
また、上記の事例のように、犯罪行為に使われたスマートフォンやパソコンなどの電子端末が捜査機関に既に押収されている場合には、被疑者による証拠隠滅は困難であるため、剃証拠隠滅のおそれを否定し得る客観的な事情であると言えるでしょう。
以上のような弁護活動を行い早期の身柄解放を目指します。
威力業務妨害罪は、被害者が存在する犯罪でもあるため、被害者との示談交渉が重大な弁護活動の1つでもあります。
示談交渉は加害者側と被害者側の当事者同士でも行うことはできますが、当事者同士での示談交渉は拗れて上手くいかない可能性があります。
そこで、弁護士が加害者の立場から、被害者に対して反省・謝罪の意思を示し、被害の弁償を行うことで示談の成立を目指します。
示談が成立し被害者が加害者側を許していれば、起訴猶予による不起訴処分の獲得が期待できます。
そのため、反省・謝罪の意思を示し被害弁償を行うだけでなく、宥恕条項(加害者の謝罪を受け入れ加害者に対する刑事処罰を望まないことを意味する条項)や被害届の取下げや刑事告訴の取消などの約定を加えた内容での示談を成立させることが必要不可欠です。
また、示談が成立すれば、不起訴処分の獲得が期待できるだけでなく、捜査機関や裁判所から被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれは低いと考えられ、早期の身柄解放も期待できます。
もっとも、示談は、逮捕されてから起訴・不起訴が決められるまでの間に成立させていることが重要であり、起訴されてしまうと前科が付く可能性があり、職場からの解雇や転職活動、婚姻関係の解消(離婚)など、その後の人生に多大な影響を及ぼすことが懸念されます。
そのため、威力業務妨害罪で逮捕・勾留により身柄を拘束されてしまった場合や、身柄拘束を受けない在宅事件として捜査が進んでいる場合には、少しでも早く弁護士に相談することをオススメします。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において威力業務妨害罪の当事者となり在宅事件で捜査を受けている、あるいはご家族等が威力業務妨害罪の当事者となり身柄を拘束されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件に特化した弁護士が在籍しております。
そのため、威力業務妨害罪の当事者で在宅事件として捜査を受けているなど身柄を拘束されていない方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が威力業務妨害罪の当事者となり身柄を拘束されている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
お気軽にご相談ください。
【事例解説】有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪とその弁護活動(交通違反切符に知人の名前でサインしたケース)
【事例解説】有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪とその弁護活動(交通違反切符に知人の名前でサインしたケース)
今回は、複数回にわたり交通違反の切符に知人の名前を書いたというニュース記事を参考にして、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:交通違反切符に知人の名前でサインしたケース
交通違反の切符に知人の名前を書くなどした疑いで、北九州市在住のAさんが逮捕されていたことが分かりました。
有印私文書偽造などの疑いで逮捕されたのは、北九州市小倉北区在住のAさんです。
警察によりますと、Aさんは、北九州市小倉南区で軽乗用車を運転した際に、運転免許証の不携帯で警察から取り調べを受けたところ、知人男性の名前をかたり、交通違反の切符にその知人男性の名前を書くなどした疑いです。
名前をかたられた知人男性が、運転免許の更新を行った際、身に覚えのない違反があることに気づき事件が発覚したということです。
Aさんは、複数回にわたって軽乗用車を運転した際の運転免許の不携帯や、携帯電話の使用で、警察に違反切符を切られていて、その時にも同じ知人男性の名前をかたるなどしていて、警察はAさんを追送致しています。
警察の調べに対し、Aさんは、「警察官をだましたことは間違いありません」と容疑を認めていて、知人男性の名前をかたった理由について「本当の名前を話すと、熊本県で窃盗をしたことがばれると思った」などと話しているということです。
Aさんは、今回の事件で逮捕された後、熊本県警に窃盗の疑いで逮捕されています。
(TNCテレビ西日本 3/19(火)18:44配信のニュース記事を参考にして、地名や内容を一部変更し引用しています。)
1,有印私文書偽造罪について
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。(刑法159条1項)
有印私文書偽造罪をはじめとする文書偽造の罪(刑法154条以下)は、文書に対する公共の信用を保護法益とします。
文書偽造の罪は、文書を偽造若しくは変造することで文書に対する公共の信頼を侵害する犯罪です。
有印私文書偽造罪は、①行使の目的で②他人の印章若しくは署名を使用して、③権利、義務に関する文書または図画若しくは事実証明に関する文書または図画を④偽造した場合に成立します。
②他人の「印章」とはハンコを指しますが、人の同一性を示すものであれば必ずしも氏名である必要はありません。
「署名」とは、氏名その他を呼称するものを言います。
③権利・義務に関する文書とは、権利・義務の発生、変更、消滅の効果を発生させることを目的とする意思表示を内容とする文書を言います。
借用証書や売買契約書などがこれに当たります。
事実証明に関する文書とは、社会生活に交渉を輸有する事項を内容とする文書を言います。
郵便局への転居届や履歴書がこれに当たります。
④偽造とは、文書の名義人と作成者との人格の同一性を偽って文書を作成することを言います。
名義人とは文書から見て取れる作成者をいい、作成者とは文書作成に関する意思主体、すなわち文書に表示された意思が自己のものとして帰属することを表示した者を言います。
上記の事例で言えば、Aさん交通事件原票の供述欄に知人男性の名前で署名しているところ、交通事件原票の名義人は知人男性ですが、作成者はAさんであるため、Aさんは名義人と作成者との人格の同一性を偽ったと言え「偽造」したと言えます。
そして、偽造行為を①行使の目的で行う必要があります。
2,偽造私文書行使罪について
前2条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。(刑法161条1項)
偽造した文章を行使した場合に成立するところ、「行使」とは、偽造された文書を真正な文書または内容が真実な文書としてこれを他人が認識し得る状態に置くことを言います。
3,その弁護活動について
有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪で逮捕・勾留された場合、捜査機関による取調べを受けることになります。
被疑者段階における勾留は原則10日間、必要があると判断された場合には10日を超えない範囲でさらに延長されます。(刑事訴訟法208条)
被疑者の勾留が認められるのは、被疑者が住居不定、被疑者に証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文。60条1項各号)
そのため、弁護士はこれらの要件を否定し得る客観的な事情や証拠の収集活動を行うことで早期の身柄解放を目指します。
例えば、被疑者に家族がいる場合、ご家族が身元引受人となり被疑者を監督することを約束してもらうことで、被疑者の裁判所や捜査機関への出頭の機会が確保され被疑者の逃亡のおそれが無いことを主張することなどが挙げられます。
また、有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪の保護法益である文書に対する公共の信用は、社会や国家の利益に対する犯罪と言われ、被害者がいない犯罪でもあります。
しかし、被疑者が他人の名義を冒用(勝手に使うこと)した場合、被冒用者に対する被害が発生している可能性があります。
上記の事例で言えば、Aさんに氏名を冒用された知人男性には反則金の支払いなど間接的に被害が生じています。
弁護活動としては、文書偽造による被害が軽微である、間接的な被害者に対して被害弁償や謝罪などを行い示談が成立しているとの事情があれば、それらを主張することで起訴猶予による不起訴処分や早期の身柄解放を目指します。
また、もし起訴されてしまったとしても、被告人は罪を認めて反省しているなどの事情を公判で主張することで、減軽や執行猶予付き判決の獲得を目指します。
4,まずは弁護士に相談を
北九州市において有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪で逮捕されてしまった場合あるいは在宅事件として捜査機関の捜査を受けている場合には、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪でご家族等が身柄を拘束されてしまっている方に対しては初回接見サービス(有料)を、在宅事件で捜査機関の捜査を受けている方には初回無料でご利用いただける法律相談を、それぞれご提供しております。
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【事例解説】住居侵入罪とその弁護活動(のぞきを目的として女性の住宅に侵入したケース)
【事例解説】住居侵入罪とその弁護活動(のぞきを目的として女性の住宅に侵入したケース)
今回は、私生活をのぞき見る目的で女性宅に侵入したというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律福岡支部が解説致します。
事例:のぞきを目的として女性の住宅に侵入したケース
女性の住宅に侵入した罪で起訴された福岡県春日市の職員Aさんが、18日付で懲戒免職処分を受けました。
懲戒免職処分を受けたのは、住居侵入の罪で起訴された福岡県春日市在住の公務員Aさん(43)です。
Aさんは先月14日、市内の30代女性Vさんの住宅に侵入した疑いで現行犯逮捕。
その後、Vさんの私生活をのぞき見る目的で、合い鍵を使って侵入したとして住居侵入の罪で起訴されていました。
(テレビ愛媛 3/18日 21:40配信の記事を参考にし、地名や内容を変更し引用しています。)
1,住居侵入罪について
〈住居侵入罪〉
「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」(刑法130条)
刑法130条は、正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看取する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した場合(前段)と、要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった場合(後段)に分け、前段を住居等侵入罪、後段を不退去罪としてそれぞれ処罰することを規定しています。
前段の住居侵入罪は、一般的には不法侵入という言葉で広く社会で使われており、侵入した場所によって成立する犯罪の名前が異なります。
例えば、正当な理由がないにもかかわらず、他人の管理下にある建物のうち住居・邸宅以外のものに侵入した場合には、建造物侵入罪が成立することになります。
住居侵入罪は、①正当な理由がないのに、②人の③住居若しくは④人の看取する⑤邸宅、建造物もしくは艦船に⑥侵入した場合に成立する犯罪です。
住居侵入罪の保護法益は住居権、すなわち住居に誰を立ち入らせ誰の滞留を許すかを決める自由であり、各要件に該当するか否かを判断するうえで重要となります。
②の「人の」とは犯人自身がその住居の居住者ではないことを意味します。
③「住居」とは、人が起臥寝食に利用する場所のことを言います。
起臥寝食とは起きたり寝たり食べたりすることを言うので、分かりやすく言えば、人が生活するために使う場所のことであり、具体的には家やマンション、さらに一時的に利用するホテルの部屋であっても「住居」に含まれます。
④「人の看取する」とは、犯人以外の人が事実上管理することを言います。
例えば守衛や監視人を置くことで立ち入りを禁止する場合のように、侵入を防止する人的・物的設備を施されている状態がこれに当たります。
⑤「邸宅」とは居住用の建造物で住居以外のものを言い、空き家などがこれに当たります。
「建造物」とは、住居用以外の建物を言い、学校、遊園地などのテーマパークなどがこれに当たります。
「艦船」とは、軍船及び船舶のことで人が侵入できる構造のものをいい、船着場にとまっている漁船や小型フェリーなどがこれに当たると考えられます。
⑥「侵入」とは、住居権者の意思に反する立ち入りを意味します(⑤に侵入する場合には管理権者の意思に反する立ち入り)。
違法な目的を隠して住居や建造物に侵入した場合、その目的を住居権者や管理権者が知っていれば立ち入ることを承諾していなかったであろうと言える場合には、130条前段の犯罪が成立します。
過去には、ATM利用客のカードの暗証番号を盗撮する目的でATMが設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入った場合,その立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客と異なるものでなくても,建造物侵入罪が成立するとした裁判例があります。(最高裁平成19年7月2日 事件番号 平成18(あ)2664)
最後に、①「正当な理由がないのに」とは、侵入の違法性を排除する理由がないことを意味します。
立ち入りに対して住居権者の承諾がある場合には、そもそも「侵入」に当たらず住居侵入罪は成立しないので、この要件は、住居権者の意思に反する立ち入りであることを前提に、例えば刑事訴訟法に基づく捜索のための立ち入りなど「侵入」を正当化する理由がないことを言います。
2,のぞきにおける住居侵入罪とその弁護活動
のぞき目的での「侵入」に「正当な理由」があるわけではなく、のぞいた対象は住居侵入罪にいう「住居」に該当するため、住居侵入罪が成立する可能性が高いです。
また、のぞき行為は都道府県の迷惑防止条例や軽犯罪法に違反し、処罰の対象となります。
福岡県の迷惑防止条例では、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由なく、住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるよう な場所で当該状態にある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影することを禁止しており(6条3項1号)、これに違反した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の刑が科されます(11条1項)。
軽犯罪法では、正当な理由なく、人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者には、拘留又は科料が、もしくは併科されます。(1条23号、2条)
迷惑防止条例と軽犯罪法の両方で正当な理由がないのぞき行為を禁止していますが、その違いは、のぞき行為を公共の場所又は公共の乗物で行ったどうかにあることが考えられます。
上記の事例で言えば、AさんはVさんの自宅をのぞき見る目的で侵入しているため、軽犯罪法の処罰の対象となる可能性があります。
住居侵入罪で逮捕・勾留された場合、最長で23日間、身柄を拘束されることになります。
その間に警察と検察の取調べを受け、起訴するか不起訴になるかが検察官によって判断されます。
そこで、弁護士に依頼するメリットの一つとして取調べ対応へのアドバイスが挙げられます。
弁護士であれば、身柄を拘束されている被疑者に対して、どのように取調べに臨めば良いかなど法律の専門家として適切かつ丁寧なアドバイスを授けることができます。
また、住居侵入罪は被害者が存在する犯罪でもあります。
そこで、被害者との示談交渉を行うことが考えられます。
示談交渉は加害者と被害者の当事者同士で行うこともできますが、通常、当事者同士での示談交渉は成立する可能性が低いです。
加害者が被害者に示談を迫れば捜査機関側からは証拠を隠滅するのではないかと疑われかねず、そもそも捜査機関側が被害者の連絡先を教えないことも考えられます。
しかし、弁護士が間に入れば、被害者に丁寧な説明ができ、安心して頂ける期待も高まります。
それにより、示談交渉の成立に向けた第一歩を踏み出すことができます。
また、示談と一口に言っても、加害者の一方的な主張だけを聞き入れてもらう交渉では成立は難しいと言えます。
被害者の意向を加味しながら、宥恕条項(加害者の謝罪を受け入れて、加害者の刑事処罰を求めないこと)などの条項を加えた示談を成立させる必要があります。
特に身柄を拘束されている事件の場合には、逮捕されてから起訴されるか否かの判断まではわずか23日間しかありません。
そのため、示談交渉は速やかに行い成立させることが必要不可欠です。
以上より、刑事弁護はスピードが大事です。
住居侵入罪で逮捕・勾留により身柄を拘束されてしまった場合には、一刻も早く弁護士に依頼することが重要となってきます。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において住居侵入罪の当事者となってしまった方、または親族が当事者となり逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、お気軽にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事弁護の経験や実績が豊富な刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、初回無料でご利用いただける法律相談、逮捕・勾留により身柄を拘束された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービス(有料)をご提供しております。
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被疑者が正当防衛を主張する場合の弁護活動(電車内で高校生に因縁をつけ土下座させた上に暴行を加えて重傷を負わせたケース)
被疑者が正当防衛を主張する場合の弁護活動(電車内で高校生に因縁をつけ土下座させた上に暴行を加えて重傷を負わせたケース)
今回は、電車内で喫煙していたAさんが男子高校生Vさんに喫煙を注意されたことに逆上し、Vさんに因縁をつけ土下座させ蹴る殴るなどの暴行を加えたというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:電車内で高校生に因縁をつけ土下座させた上に暴行を加えて重傷を負わせたケース
JR宇都宮線内で喫煙を注意した高校生を暴行し、傷害、強要などの罪に問われた元ホストクラブ従業員Aさんの判決公判が19日、宇都宮地裁栃木支部で開かれ、裁判長は懲役2年(求刑懲役3年)の実刑判決を言い渡した。
Aさんは今年1月23日、電車の優先席で寝転んで喫煙。男子高校生Vさんが注意すると、「くそがき、おまえ、俺にしゃべりかけられる分際とちゃうんや」「ぶっ殺すぞ、こら。けんか売ってるんじゃねえぞ」と因縁をつけ、土下座させた。Vさんの頭を踏み付けた上、蹴る殴るの暴行を加え、頬骨(きょうこつ)骨折など全治6カ月の重傷を負わせた。
また、送検後、検察官の取り調べに対して「あんまり人をばかにしたしゃべり方すんなよ」「カメラ関係あるか。俺、暴れるときまじで暴れるぞ」「女には手上げへんけど、男には手上げるからな」と脅迫し、公務執行妨害でも起訴された。
弁護側は「大々的に報道され、社会罰も受けている」と執行猶予を求めたが、裁判長は「感情に任せた犯行で、一方的で執拗(しつよう)。動機、経緯に酌量の余地はない」と量刑理由を説明した。
100万円を準備し、被害弁償の意向を持っていることや、交際相手が更生に協力する意向があることなど、「酌むべき事情を考慮しても、執行猶予は相当ではない」と実刑を選択した。
(日刊スポーツ 2022年7月19日13時8分の記事を一部変更し引用しています。)
1, 傷害罪
「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法204条)
傷害罪は「人の身体を傷害した」場合に成立する犯罪で、「傷害」するとは、人の身体の生理的機能を侵害することを言います。
簡単に言うと、人に怪我を負わせたりすることで、上記の事例ではAさんはVさんに対して蹴る殴るなどの暴行を加えて骨折の怪我を負わせているため「傷害した」に該当し、傷害罪が成立したと言えます。
2, 強要罪
「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。」(刑法223条1項)
強要罪は意思決定の自由を保護法益として、その自由を侵害することを処罰する犯罪です。
➀人の生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対して、②脅迫や暴行を用いて、③人に義務のないこと行わせ又は権利の行使を妨害した場合に成立します。
②の脅迫は「殺すぞ」や「殴るぞ」などの害悪を告知することで、暴行は殴る蹴るなどの人の身体に対する不法な有形力の行使を言います。
③の義務のないことを行わせるとは土下座させる行為などがその典型で、権利の行使を妨害するとは債権の回収をさせないことなどがこれに当たります。
3, 公務執行妨害罪
「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法95条1項)
公務執行妨害罪は、公務の執行を保護法益とし、また抽象的危険犯(現実に結果が発生することは要せず結果が発生するおそれがあれば足りる)であるため、現実に公務の執行が妨害されることを要せず、公務の執行が妨害される危険があれば成立します。
4, 弁護活動
上記の事例ではAさんは正当防衛の成立を主張していますが、正当防衛は成立するのでしょうか。
正当防衛とは、犯罪に該当する行為を行ってしまった場合でも、正当防衛であると認められれば、違法性が排除され犯罪が成立しなくなることを言います。
<正当防衛>
「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」(刑法36条1項)
正当防衛とは、①急迫不正の侵害が対して、②自己又は他人の権利を防衛するため、③やむを得ずにした行為である場合に成立します。
➀の「急迫」とは、法益の侵害が現に存在し又は間近に押し迫っていることを言い、過去の侵害行為、例えば一週間前に殴られたことに対して殴り返す場合などには急迫性は否定されます。
また、「不正」とは、違法であることを言います。
②の要件は自分や第三者の権利を「防衛するため」、つまり当該行為は防衛の意思をもってなされる必要があります。
防衛の意思とは、急迫不正の侵害を認識しそれを避けようとする単純な心理状態をいいます。
ここで問題となるのは、防衛者が攻撃の意思を有していた場合に防衛の意思が否定されるのかということです。
判例通説では、行為者が攻撃の意思を持っていたとしてもただちに防衛の意思は否定されないとしています。
それは、攻撃することが防衛になることがあると考えられます。
しかし、侵害行為に対して、その機会を利用して積極的に加害を加える意思で防衛行為に及んだ場合には急迫性が否定され、正当防衛は成立しないことになります。
これは、正当防衛が緊急時に国家機関(例えば警察など)に助けを求めることが難しいなどの事情がある場合に、例外的に私人による自救行為を許容することを趣旨としているため、侵害を予期してその機会を利用して積極的に攻撃を加えることは、もはや防衛の意思から防衛行為に出たとは言えないとえるためです。
③の「やむを得ずにした行為」とは、防衛行為の相当性、すなわち防衛行為が社会的見て必要かつ相当であることを要します。
例えば、素手で一発殴るという侵害行為に対して金属バットで複数回殴り返すなどの行為は、防衛行為としての相当性を欠き正当防衛が成立しません。
なお、防衛行為の相当性を欠くが他の要件は満たすという場合には、過剰防衛(刑法36条2項)の成立が別途検討されることになります。
上記の事例で言えば、VさんはAさんに対して電車内での喫煙を注意しただけであり、そもそもVさんのAさんに対する「急迫不正の侵害」が存在しないため、Aさんに正当防衛は成立しないと考えられます。
以上より、被疑者が正当防衛を主張する場合の弁護活動としては、正当防衛の各要件の充足性を示すための客観的な証拠や事情の収集活動が主たる活動になると言えます。
例えば、相手方が攻撃してくることを予想して武器を持たずに相手方が居る場所に向かったが相手が凶器を持っていたなどの場合には、侵害を予期していたとは言えず、急迫性は肯定する客観的な事情と言えます。
弁護士による弁護活動としては、そのような客観的な事情や証拠の収集活動を行うことになります。
また、正当防衛が成立するか否かは判決により決まるため、たとえ自分で正当防衛に当たる行為をしたと思っていても、逮捕や勾留により身柄を拘束されるおそれがあります。
逮捕・勾留による身柄拘束は最長で23日間の間続き、その間に警察と検察による取調べを受けることになります。
逮捕・勾留による被疑者の身柄拘束が認められるのは、被疑者に証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合になります(刑事訴訟法207条1項、60条1項)。
そのため、弁護士による弁護活動としては、それらを否定する客観的な事情や証拠の収集活動を通じて被疑者の早期の身柄解放を目指します。
5, まずは弁護士に相談を
福岡県内において正当防衛の成立を争いたいなどをご希望の方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、正当防衛の成立を争いたい方に対しては初回無料の法律相談や身柄拘束中の方のご家族等の方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
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裁判員裁判の対象となる現住建造物等放火罪で逮捕
裁判員裁判の対象となる現住建造物等放火罪で逮捕
現住建造物等放火罪と裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
参考事件
福岡県嘉麻市に住んでいる大学生のAさんは、住んでいるアパートを燃やしての自殺を計画し、アパートのカーテンにライターで火を付けました。
火はカーテンから部屋の壁に燃え移って煙が上がったため、アパートの住人が燃えていることに気付き、119番通報しました。
駆け付けた消防隊の消火活動で火は消し止められ、捜査によって火災の原因がAさんの放火であることがわかりました。
その後、Aさんは嘉麻警察署に現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)
現住建造物等放火罪
放火の罪は刑法に定められており、現住建造物等放火罪は「放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と刑法第108条に定められています。
この場合の「建造物」は、屋根があり壁または柱によって支えられ土地に定着し、その内部に人が出入りし得る家屋、またはこれに類似する建造物と定義されています。
「焼損」とは火が媒介物を離れても、建造物などの一部が独立しても燃え続ける状態で、参考事件の場合はカーテンに付いた日が壁に燃え移り、そのまま独立して燃え始めると焼損したと言えます。
また、「現に人が住居に使用」しているとは、犯人以外の人が起臥寝食の場所として日常使用することを意味しており、犯人以外の人が住居に使用している建造物であれば、仮に放火当時に人が現在していなくても現住建造物等放火罪は成立します。
ちなみに、「現に人がいる」とは犯人以外の人間が建造物内に現存することを指します。
これらのことから、Aさんには現住建造物等放火罪が適用されました。
現住建造物等放火罪の刑罰は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」です。
「死刑又は無期の懲役」の刑罰に当たる事件の場合、起訴されると裁判員裁判が開かれます。
裁判員裁判制度
裁判員裁判とは、ランダムで選ばれた一般の国民が裁判員となり、裁判に参加する形式の裁判です。
一般の方が裁判員となることから、裁判の前に裁判官、検察官、弁護士が事件の争点を明確にする公判前整理手続をとります。
また、裁判員裁判での弁護士は、裁判員の選任手続きにも弁護士は立ち合います。
これは弁護士のチェックを通し、被告人に不利または不公平な裁判をするおそれのある裁判員の選出を阻止して公平な裁判に行うためです。
このように、裁判員裁判は通常の事件とは勝手が違う裁判になります。
裁判員裁判の対応もスムーズに行えるよう、参考事件のような放火事件の場合、裁判員裁判制度にも詳しい弁護士に、弁護活動を依頼することが重要です。
裁判員裁判に詳しい弁護士
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件と少年事件に特化している法律事務所です。
当事務所では、初回無料の法律相談、逮捕された方のもとに弁護士が直接伺う初回接見サービスを実施しております。
どちらのご予約も、24時間、年中無休で電話対応いたします。
裁判員裁判の対象となる事件を起こしてしまった、または現住建造物等放火罪の容疑でご家族が逮捕されてしまった、そのような場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、是非、ご相談ください。
住居侵入窃盗(侵入盗)とその弁護活動(知人の家に侵入し物を盗んだケース)
住居侵入窃盗(侵入盗)とその弁護活動(知人の家に侵入し物を盗んだケース)
今回は、福岡県宇美町在住の公立中学校の教員Aさんが知人Vさんの住宅に侵入し物を盗んだというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:知人宅に侵入し物を盗んだケース
窃盗の疑いで逮捕されたのは、福岡県志免町に住む公立中学校の教員Aさんです。
Aさんはおととし8月、福岡県宇美町の知人男性Vさんの住宅に侵入し、着物など7点、あわせて115万円相当を盗んだ疑いが持たれています。
警察によりますと、Vさんの住宅付近の防犯カメラに映った車の映像などから、Aさんの関与が浮上したということです。
取り調べに対し、Aさんは、「間違いありません」と容疑を認めているということです。
(RKBオンライン 2024/03/01 14:09の記事を一部変更し引用しています。)
1,住居侵入窃盗(侵入盗)とは
住居侵入窃盗(侵入盗)とは、窃盗犯の手口の一つであり、空き巣や事務所荒らしなどがその典型例です。
刑法上は、住居侵入罪(130条前段)と窃盗罪(235条)の別の犯罪が成立しますが、住居侵入が窃盗を行うための手段として行われた場合、両罪は牽連犯(刑法54条後段)としてその最も重い刑により処断されることになります(刑法54条)。
2,牽連犯とは
牽連犯とは、「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名にふれる」場合をいいます(刑法54条後段)。
複数の行為の間に手段と目的、又は原因と結果の関係(牽連関係)が認められる場合には牽連犯が成立しますが、複数の行為に牽連関係が認められるかどうかの判断基準として、ある犯罪が手段若しくは結果とが経験上通常、手段と目的又は原因と結果の関係にあるか否かによって判断されます(客観説 大判明42.12.20)。
牽連犯として認められたものとして、住居侵入と窃盗の他に住居侵入と殺人、住居侵入と強盗、住居侵入と放火などが挙げられます。
反対に、牽連犯として認められないものとして、監禁と傷害、殺人と死体遺棄、強盗殺人と証拠隠滅のためにした放火などが挙げられます。
牽連犯が成立した場合の効果として、「その最も重い刑により処断する」とありますが、これは複数の犯罪を行った場合でも科される刑罰はそのうちの最も重い刑しか科されないことを意味し、科刑上一罪として処理されます。
住居侵入窃盗の場合では、住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金であり、窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金であるため、その最も重い刑である窃盗罪の法定刑の範囲で刑罰が科されることになります。
そのため、上記事例におけるAさんが有罪となった場合、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金の範囲で刑罰が科されることになります。
3,住居侵入窃盗とその弁護活動
住居侵入窃盗で逮捕・勾留された場合、最長で23日間、身柄を拘束されて警察と検察の取調べを受けることになります。
逮捕・勾留により身柄を拘束されている被疑者は一人で精神的・肉体的に大きな不安を抱えるため冷静な状態で取調べに臨むことが難しくなります。
そこで、弁護士による取調べ対応などの弁護活動が重要となります。
弁護士が接見に向かえば、被疑者はどのように取調べに臨めばいいか、何を話すべきかなどの丁寧かつ適切なアドバイスを受けることができるため、被疑者の不安の解消の一助となるでしょう。
また、勾留による被疑者の身柄拘束が認められるのは、被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれが認められるからです(刑事訴訟法207条1項、60条1項)。
そこで、被疑者の早期の身柄解放に向けた弁護活動としては、証拠隠滅や逃亡のおそれを否定し得る客観的証拠や事情の収集活動を行います。
たとえば、被疑者が犯してしまった犯罪の証拠となる物は既に捜査機関に押収されているため証拠隠滅は不可能であるという客観的事情を主張することで証拠隠滅のおそれを否定し得るでしょう。
そして、住居侵入窃盗は被害者が存在する犯罪であるため、被害者との示談交渉を進め示談を成立させることも重要な弁護活動と言えます。
被害者との示談が成立していれば、早期の身柄解放や起訴猶予による不起訴処分を得られる可能性が高くなり、前科の回避や身柄解放後の日常生活への支障を最小限に抑えることができます。
以上より、逮捕・勾留から起訴されるまでの23日間に、一刻も早い刑事弁護活動を受けることが重要となります。
仮に起訴されてしまった場合でも、被害者との示談が成立しているなどの事情があれば執行猶予付き判決を得られる可能性が高くなるため、どちらにせよ刑事弁護はスピードが大事であることに変わりはありません。
そのため、住居侵入窃盗(侵入盗)で逮捕・勾留されてしまった場合には、刑事事件に特化した弁護士による適切かつ適切なサポートを受けることがなによりも重要となります。
4,まずは弁護士に相談を
福岡県内において住居侵入窃盗でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、住居侵入窃盗でお困りの方には初回接見サービス(有料)をご提供しております。
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キャンプで使用したナイフをそのままに、銃刀法違反の適用
キャンプで使用したナイフをそのままに、銃刀法違反の適用
銃刀法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
参考事件
福岡県福岡市に住んでいる大学生のAさんは、刃渡り7センチメートルほどのナイフを持ってキャンプに行きました。
キャンプから帰って来た次の日、キャンプに持って行ったバッグそのままで出かけた際に、警察に呼び止められ職務質問を受けることになりました。
その際Aさんは、バッグに入れたままのナイフを警察に見つかってしまいました。
前日にキャンプに言っていたとAさんは説明しましたが、銃刀法違反の疑いで早良警察署にAさんは連行されることになりました。
(この参考事件はフィクションです。)
鉄砲刀剣類所持等取締法
銃刀法は、銃砲、刀剣類等の所持、使用等に関する危害予防上必要な規制について定めているもので、正式名称を「鉄砲刀剣類所持等取締法」と言います。
銃刀法第22条には、「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。」と定められています。
ここでいう「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて、継続・反復して行う事務又は事業のことです。
そのため職業だけでなくボランティア活動など、非営利な活動でも「業務」にあたります。
「携帯」とは、刃物を手に持っている状態(自宅などの住居以外)や、刃物を身体に帯びるなどして使用できるようにしている状態の他、バッグに入れている状態や自動車などに積んでいる状態も「携帯」と判断されます。
また、「正当な理由」は、刃物の修理や購入して持ち帰る途中、キャンプやイベントで使用する目的での所持などがあげられます。
人に見せるために持ち歩く、護身用に携帯する行為も「正当な理由」になりません。
参考事件のAさんの場合、キャンプに行く途中であれば銃刀法違反になりませんでした。
しかし、キャンプから帰った後のナイフをそのままにし、不必要に携帯していたため、Aさんには銃刀法違反が成立しました。
この場合、Aさんの法定刑は銃刀法31条の18第2項第2号の「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が適用されます。
事情聴取の対策
Aさんのように警察署へ連行されると、警察官の事情聴取を受けることになります。
事情聴取は事件の内容次第で時間が変化し、長時間拘束されたり複数回行われたりすることもあります。
事情聴取でどれだけ適切な対応ができるかで、最終的な処分も変わってきます。
しかし、事情聴取に慣れているという人は多くなく、どのような受け答えが事情聴取で適切かは専門知識がなければわからないでしょう。
事情聴取の前には弁護士に相談し、適切な受け答えをするためのアドバイスを受けることがお勧めです。
銃刀法違反で事件を起こしてしまった場合、刑事事件に詳しい弁護士に相談しましょう。
銃刀法違反に詳しい弁護士
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件および少年事件を中心に扱っている弁護士事務所です。
当事務所は、初回であれば無料でご利用いただける法律相談の他、逮捕された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービスを実施しています。
ご予約はフリーダイヤル「0120-631-881」にて、土日祝含め24時間体制で受け付けております。
銃刀法違反事件の当事者となってしまった方、または銃刀法違反の容疑でご家族が逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、お気軽にご相談ください。
【事例解説】堕胎罪とその弁護活動(妊娠中の女性が服薬により意図的に堕胎した架空の事例に基づく解説)
この記事では、架空の事例を基に、堕胎罪とその弁護活動について、解説します。
堕胎罪とは
堕胎罪は、妊娠中の女性が自らの意思で胎児を堕胎した場合に適用される罪で、1年以下の懲役に処される可能性があります(刑法第212条)。
堕胎した胎児がどれくらい発育していたかについては特に定めがないため、妊娠を認識していて、胎児を堕胎する目的で何かしらの方法で堕胎した場合、堕胎罪が成立し得ます。
妊婦自身が薬を飲んだり腹を叩いたりして堕胎する場合は勿論のこと、それを他人に手伝わせた場合も含まれると考えられます。
なお、第三者が堕胎させた場合は同意堕胎罪や業務上堕胎罪、不同意堕胎罪など、別の犯罪が成立し得ます。
※医師が行う人工妊娠中絶は、本来であれば妊婦が堕胎罪・ 医師は業務上堕胎罪が成立し得ますが、母体保護法14条等で定められた要件を満たした場合は合法的に行えます。
事例紹介:妊娠中の女性が服薬により意図的に堕胎したケース
福岡県在住の会社員Aさんは、望まない妊娠をしてしまい、誰にも相談できずに悩んでいたところ、インターネットで見つけた薬を使用し、胎児をおろそうとしました。
しかし、薬の副作用で卒倒して救急搬送され、一命を取り留めましたが胎児は死亡していました。病院で、Aさんは医師に服薬の目的を伝えたところ、警察に連絡がいき、Aさんは堕胎罪で警察の捜査を受けることになりました。
(事例はフィクションです。)
堕胎罪の弁護活動
堕胎罪に関する刑事責任を判断する際、妊娠の経緯、被告人の心理状態、社会的背景、堕胎の方法とその動機など、多くの要因を考慮に入れる必要があります。
また、被疑者(被告人)が、社会的、経済的、心理的な圧力の下で決断を迫られたなどの事情の有無や、適切な医療や支援を受ける機会を持っていたかどうかなども、重要な考慮事項になると考えられます。
弁護士は、法的な知識と経験を活かして、被疑者(被告人)の権利を守り、適切な法的支援を提供します。また、堕胎罪のようなデリケートな事件では、弁護士は個々の事情を理解し、被疑者(被告人)に寄り添った弁護活動を行う必要があります。
具体的には、取調べに際し、適切なアドバイスを提供することで、被疑者が不利な発言をしてしまうリスクを減らすこと、被疑者の状況から、堕胎を選択せざるを得なかった状況を捜査機関や検察官に的確に主張することなどが考えられます。
福岡県の堕胎罪に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件における弁護活動の豊富な実績があります。
福岡県での堕胎罪で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。