暴行罪 素手VS刃物でも正当防衛? 逮捕されたら福岡県の刑事弁護士
Aさんは,自分よりも体格の優れたVさんが,「殴られたいのか」と言って近づいてきたので,とっさに落ちていたカッターナイフを拾い,これを振り回して防御しました。Aさんは,福岡県八幡東警察署に暴行罪で逮捕されたので,Aさんの家族から初回接見依頼を受けた弁護士に正当防衛を主張できないか聞いてみました。
(フィクションです)
~ 暴行罪と正当防衛(刑法第36条第1項) ~
ある行為が犯罪だと認定するためには,その行為が構成要件に該当し,違法性があり,行為者に有責性がなければならないとされています。
構成要件とは,刑法で定められた犯罪が成立するための要件のことで,暴行罪であれば
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき
とされています。つまり,暴行罪の構成要件は「暴行」があったことと「人を傷害するに至らなかったこと」となるわけです(傷害した場合は傷害罪が成立します)。暴行罪にいう暴行とは,人の身体に対する不法な有形力の行使をいい,人の身体に向かって刃物を振り回す行為はまさにこれに当たると考えていいでしょう。また,Vさんは怪我をしていないようですから,Aさんの行為は暴行罪の構成要件に該当することになります。
次に,Aさんの行為に違法性はあるでしょうか?違法性の本質については様々な考え方がありますが,違法性とは簡単にいえば,その行為が社会的(又は法的に)に許されないこと(行為)だと考えておけばいいでしょう。日常生活において,一見してある行為が犯罪に該当するように見えても,「それは許されるだろう~」とか「それは仕方ないだろう~」「やむを得ないだろう~」という場面は多々あると思います。正当防衛が問題となる場面も,まさにこの違法性があるかどうかの判断に関わってきます。正当防衛は,急迫不正の侵害に対して,自己又は他人の権利を防衛するため,「やむを得ずにした行為」は罰しないとしています。
では,Aさんのように,素手のVさんに対して刃物を用いて反撃した場合でも「やむを得ずにした行為」と言えるでしょうか。この点,判例は,単に用いられた武器を比較するのではなく,用いられた武器を含めて防衛手段がどのようになされたのかを基礎にして「やむを得ずにした行為」と言えるかどうかを判断していると考えられます。Aさんがカッターナイフで切りつけるなどの攻撃的な反撃に出るのではなく,構えたり,振り回したりといった防御的にな行動にとどまっている場合には,なお「やむを得ずにした行為」と言え,正当防衛に当たり,違法性が阻却される,つまり犯罪として成立しない可能性もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,暴行罪をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。暴行罪で疑いをかけられたが,正当防衛の主張をご検討中の方,その他お困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。