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【事例解説】偽計業務妨害罪とその弁護活動(バスの運行会社のコールセンターに無言電話をかけ会社の業務を妨害したケース)

2024-07-11

【事例解説】偽計業務妨害罪とその弁護活動(バスの運行会社のコールセンターに無言電話をかけ会社の業務を妨害したケース)

今回は、バスの運行会社のコールセンターに無言電話をかけ続け、対応に当たる職員らの業務を妨害したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:バス会社のコールセンターに無言電話をかけ会社の業務を妨害したケース

2024年2月から約1か月の間に、およそ500回も無言電話をバスの運行会社Vにかけ続けて業務を妨害したとして、福岡市中央区在住の会社員Aさんが偽計業務妨害の疑いで逮捕されました。
警察によりますと、Aさんは約1か月の間、自分のスマホを使って福岡市中央区のVの営業所におよそ500回にわたり無言電話をかけ続け、転送先であるコールセンターで対応に当たる職員らの業務を妨害した疑いが持たれています。
警察の調べに対し、Aさんは「仕事でストレスを抱えていて、その発散目的でやった。」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,偽計業務妨害罪について

〈偽計業務妨害罪〉(刑法233条後段)

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

偽計業務妨害罪は、刑法信用毀損罪とともに定められており、虚偽の風説を流布または偽計を用いることにより、人の信用を毀損した場合には信用毀損罪が、業務を妨害した場合には偽計業務妨害罪が成立することになります。
虚偽の風説を流布」とは、客観的真実に反する噂や情報を不特定又は多数人に伝播させることをいいます。
例えば、そのような事実は無いのに、「あのスーパーで取り扱っている生鮮食品はすべて消費期限が切れている」という噂を、不特定又は多数人に広めた場合などが「虚偽の風説を流布」に該当します。
偽計」とは、人を欺き、あるいは人の錯誤・不知を利用したり、人を誘惑したりするほか、計略や策略を講じるなど、威力以外の不正な手段を用いることをいいます。
人を欺き、あるいは人の錯誤・不知を利用する「偽計」には、例えば、インターネットの掲示板に虚偽の犯行予告を書き込んだ場合などが挙げられます。
計略や策略を講じるなど威力以外の不正な手段を用いるものとしては、上記の事例のように比較的短期間で多数回の無言電話をかけ続けることなどが挙げられます。
業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づいて反復・継続して行う事務又は事業をいいます。
そして、「妨害」の結果は実際に業務が妨害されることは必要ではなく、業務の平穏かつ円滑な遂行が妨害されるおそれのある行為がされれば、偽計業務妨害罪は成立します。
このように、犯罪の結果が実際に発生しなくても、結果が発生するおそれがあれば犯罪の成立が認められる犯罪のことを抽象的危険犯といい、偽計業務妨害罪現住建造物等放火罪などがあります。

2,偽計業務妨害事件における示談交渉

偽計業務妨害罪は被害者が存在する犯罪なので、被害者との間で示談交渉を試みます。
被疑者が罪を認めている等の事情があれば、被害者に対する謝罪や弁償等を行うことで示談交渉を進めることができます。
示談交渉はただ被害の弁償や謝罪を行えばいいという訳ではなく、被害者側の意向をくみ取りながら宥恕条項(被害者を許し、刑事処罰を望まないことを意味する条項)や被害届や刑事告訴をしている場合には被害届の取下げや刑事告訴の取消しといった約定を加えた示談を成立させる必要があります。
そして、示談交渉は当事者同士でも行うことができますが、当事者同士での交渉は拗れることが多く、また、上記の事例のように、被害者が会社などの場合は業務が妨害されたことで会社が被る損害の額が大きくなる可能性があり、示談交渉が難航するおそれがあります。
そこで、法律の専門家で示談交渉に関するノウハウが豊富な弁護士に依頼して、少しでも有利な結果が実現できるような示談交渉を試みることが肝要です。

3、まずは弁護士に相談を

福岡県内において偽計業務妨害罪の当事者となってしまった方、あるいはご家族等が偽計業務妨害罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に特化した弁護士が在籍しており、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験してきました。
偽計業務妨害罪の当事者となりお困りの方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が偽計業務妨害罪の当事者なり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。

【事例解説】特殊詐欺(受け子)とその弁護活動(高齢の女性から現金やキャッシュカードなどを騙し取ったケース)

2024-07-08

【事例解説】特殊詐欺(受け子)とその弁護活動(高齢の女性から現金やキャッシュカードなどを騙し取ったケース)

事例:高齢の女性から現金やキャッシュカードなどを騙し取ったケース

福岡市在住の70代女性Vさんが現金50万円とキャッシュカードなどをだまし取られた事件で、22歳の受け子のAさんが詐欺の疑いで逮捕されました。
逮捕されたのは、福岡県北九州市に住む無職のAさんです。
Aさんは何者かと共謀し、福岡市のVさんに息子を装って「お金が必要」とうその電話をかけ、その後、弁護士事務所の職員をかたってVさんの家を訪れ、現金50万円とキャッシュカード1枚、それに預金通帳1通をだまし取った疑いが持たれています。
警察は捜査に支障があるとして男の認否を明らかにしていませんが、共犯者がいるとみて調べています。
(事例はフィクションです。)

1,詐欺罪について

〈詐欺罪〉(刑法246条)

1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪は、人を①欺いて②財物(1項)または財産上の利益(2項)を③交付させた場合に成立します。
①「」く行為(欺罔行為)とは、財物または財産上の利益を得るために、真実とは異なる事実を告げて交付行為者の認識と事実が異なる状態(錯誤)を生じさせる行為を言います。
②「財物」は、有体物のほか、管理可能性があるものであれば「財物」に該当します。
財産上の利益」は、「財物」以外の財産上の利益を言い、債務の免除を受ける行為や財産的価値のある役務の提供を受ける行為(タクシーによる運送サービス等)がこれに該当します。
③「交付させ」る行為とは、被害者の錯誤に基づく財産的処分行為によって財物または財産上の利益を犯人自身または第三者に移転させることを言います。
第三者の範囲には、犯人の道具として行動する者や犯人の代わりに財物または財産上の利益を受領する者などが含まれます。
そのため、上記の事例のように、特殊詐欺の受け子として指示役の指示に従い被害者から財物または財産上の利益を受け取った場合には、詐欺罪が成立し、その刑罰が科されることになります。
そして、欺罔行為→被害者の錯誤→錯誤に基づく交付行為→財物または財産上の利益が、それぞれ原因と結果の関係を有している必要があります。
例えば、お金に困った犯人が欺罔行為を行ったが、被害者がその事情を知っており、錯誤に陥ることなく憐みの感情など別の理由によってお金を渡した場合、欺罔行為と被害者の交付行為には原因と結果の関係を有していないため、詐欺罪は既遂とならず、詐欺未遂罪が成立することになります。
また、詐欺罪は、単に嘘をついたことを処罰するのではなく、嘘をつき被害者の財産を侵害したこと処罰するものであるため、被害者に財産上の損害が発生したことも必要となります。
財産上の損害が発生したと言えるかどうかは、経済的に評価して損害が発生したかどうかを実質的に判断し、判断基準としては、被害者が取引上の交換目的あるいは交付目的を達成できなかった場合に、財産的損害の発生を認めることになります。
過去の裁判例では、価格相当の商品を提供したとしても、事実を知ればお金を払わないといえるような場合において、商品の性能等につき真実に反する誇大な事実を告知して相手方を誤信させてお金を受け取った場合には、財産的損害の発生を認め、相手方に対する詐欺罪が成立するとしたものがあります。(最高裁判決昭和34年9月28日

2,取調対応・接見禁止の一部解除・早期の身柄解放などに向けた弁護活動

(1)取調対応

上記の事例のような共犯事件の場合、捜査機関による取調べにおいて、被疑者が実際にはやっていないことや身に覚えがないことについても、被疑者がやったのではないかと疑われることがあります。
取調べにおいて話した内容は供述調書となり、被疑者が署名すれば、それは重要な証拠となり、裁判になれば大きな役割を果たすことになります。
そのため、弁護士が取調べ対応についてアドバイスを致します。
例えば、やみくもに黙秘権を行使すれば、捜査機関側にあまり良い印象を与えず、厳しい言動で詰問されることや取調べが長引くことが懸念されます。
そこで、弁護士が頻繁に面会に向かい、適切な黙秘権行使の方法や、違法または不当な取調べが行われた際にはしかるべき相手に抗議するといった弁護活動を行うことが考えられます。

(2)接見禁止の一部解除

共犯事件の場合、被疑者に接見を認めた場合、捜査機関が把握していない共犯者や事件関係者が被疑者と面会したり、他の身柄を拘束されている共犯者と面会したりすることで、犯罪の証拠を隠滅したり、他の共犯者と口裏を合わせて供述をして捜査をかく乱させることなどが懸念されることから、被疑者に対して接見禁止処分が付されることがあります。
接見禁止処分とは、被疑者に逃亡または証拠隠滅のおそれがあると判断された場合に、弁護人または弁護人となろうとする者以外との面会ができなくなることを言い、検察官の請求または裁判所の職権ですることができます。(刑事訴訟法81条
接見禁止になった被疑者は、家族や友人、恋人などと面会することができず、一人で取調べに臨むことになるなど、精神的にも身体的にも多大な苦痛を抱えることになります。
そこで、接見禁止の一部解除に向けた弁護活動を行います。
被疑者の接見禁止を行うのは裁判所ですが、裁判所は事件の全体像や捜査機関の捜査状況などを全て把握しているわけではないため、一律に接見禁止にしていることがあります。
そのため、事件について無関係な家族や友人、恋人なども面会することができなくなります。
しかし、捜査機関の捜査状況や被疑者による証拠隠滅のおそれを否定し得る客観的な事情や証拠を収集等の弁護活動が功を奏せば、接見禁止の一部解除の獲得が十分に期待できます。

(3)早期の身柄解放

被疑者段階での身柄拘束が認められるのは、被疑者が定まった住居を有しない場合、被疑者による証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
そこで、身柄解放の弁護活動としては、それらを否定し得る客観的な事情や証拠の収集・主張していくことが考えられます。
被疑者と同居している、あるいは身元を引き受けてもらえる家族・親族がいれば、被疑者の住居不定や逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情となるでしょう。
また、上記の事例のように、犯罪にスマホやパソコンなどの電子端末を使用しており、それらが捜査機関に既に押収されていれば、証拠隠滅のおそれを否定し得る客観的となるでしょう。
以上のような活動を通じて、被疑者の早期の身柄解放を目指します。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県北九州市において家族・親族が特殊詐欺の当事者となってしまった方、家族・親族が特殊詐欺の当事者となり身柄を拘束されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に対する豊富な実績や経験を持った弁護士が在籍しております。
家族・親族が特殊詐欺の当事者となりまだ警察には発覚していないが自首を検討しているなどの事情がある方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
家族・親族が特殊詐欺の当事者となり身柄を拘束されている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
お気軽にご相談ください。

【事例解説】器物損壊罪とその弁護活動(電車内で女子高生のスカートをカッターナイフで切り裂いたケース)

2024-07-05

【事例解説】器物損壊罪とその弁護活動(電車内で女子高生のスカートをカッターナイフで切り裂いたケース)

今回は、電車内で女子高生のスカートをカッターナイフで切り裂いたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:電車内で女子高生のスカートをカッターナイフで切り裂いたケース

電車内で通学中の女子高生Vさんの制服のスカートをカッターナイフで切り裂いたとして、福岡市在住のAさんが逮捕されました。
Vさんが学校に到着後、スカートが切られていることに気付き、警察に通報したことで事件が発覚しました。
その後、電車内に設置されていた防犯カメラの映像からAさんの犯行を特定し、逮捕に至りました。
警察の調べに対し、Aさんは「困った姿をみて楽しみたいからやった。」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,器物損壊罪について

〈器物損壊罪〉(刑法261条)

前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪は、他人の物を損壊し、又は傷害した場合に成立します。
他人の物」とは、前3条に規定するもの以外のすべての他人の物、すなわち同じく刑法に定められた公用文書等毀棄罪私用文書等毀棄罪建造物等損壊罪の客体となる物以外の他人の物すべてが器物損壊罪の客体となります。
土地や動植物が含まれるだけでなく、例えば公職選挙法に反する選挙ポスターなど法律上違法なものであっても、刑法上保護に値するものであれば、「他人の物」に含まれることになります。
損壊」とは、その物の効用を害する一切の行為をいいます。
そのため、上記の事例におけるVさんのスカートが切り裂かれたという物理的な損壊だけでなく、その物の効用が害されたといえる場合には、「損壊」に該当します。
過去の裁判例で、効用を侵害して「損壊」に当たるとしたものは、食器に放尿する行為(大審院判決明治42年4月16日)や自動車のドアハンドルの内側やフェンダーの裏側に人糞を塗り付ける行為(東京高裁判決平成12年8月30日)などがあります。
また、器物損壊罪における「傷害」とは、傷害罪における「傷害」とは異なり、動物を客体とする場合を指し、動物の肉体や健康を害し、さらに死亡させる場合も含まれます。

2,器物損壊罪における弁護活動

器物損壊罪は被害者がいる犯罪であり、親告罪でもあります。

〈親告罪〉(刑法264条)

261条…の…罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

そこで、考えられる弁護活動としては、被害者との示談交渉を試み、示談の成立を目指します。
示談と一口に言っても効果はさまざまであり、ただ加害者が被害者に対して反省・謝罪の意思を伝えて被害の弁償をするだけでなく、器物損壊罪のような親告罪の場合には、告訴の取消しを内容に加えた示談を成立させることが必要不可欠と言えます。
もっとも、示談交渉は事件の当事者同士でも行うことはできますが、被害者は加害者から連絡されることを避け、加害者が被害者に直接連絡したとしても、被害者が恐怖感を抱いたり感情的になって交渉が難航し、事件の早期解決に繋がらないことも少なくありません。
しかし、交渉のプロである弁護士ならば、多くの示談交渉の経験を有するため、どのように示談交渉を進めればいいのかなど、豊富なノウハウを有しています。
したがって、事件の早期解決を望むのであれば、示談交渉に優れた弁護士に依頼して適切なサポートを受けることをオススメします。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において器物損壊罪の当事者となってしまった方、あるいはご家族等が器物損壊罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に特化した法律事務所であり、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験しており、示談交渉についても豊富なノウハウや実績がございます。
器物損壊罪の当事者となり在宅捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が器物損壊罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をそれぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。

【事例解説】大麻取締法違反とその弁護活動(職務質問で大麻を所持していることが発覚したケース)

2024-07-02

【事例解説】大麻取締法違反とその弁護活動(職務質問で大麻を所持していることが発覚したケース)

今回は、警察官から職務質問を受け、大麻を所持していたことが発覚して逮捕されたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:職務質問で大麻を所持していることが発覚したケース

福岡県春日市の路上で警察官から職務質問を受け、その後の調べで大麻を所持してしたことが判明し、その後、警察に大麻取締法違反で逮捕されました。
逮捕されたのは、春日市在住の公務員Aさんです。
警察の調べに対し、Aさんは「間違いありません。」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,大麻取締法について

大麻取締法にいう「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品を言います。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除きます。(1条

〈単純所持罪〉(大麻取締法第24条の2)

1項 大麻を、みだりに、所持し、…た者は、5年以下の懲役に処する。

みだりに」とは、社会通念上正当な理由があると認められないことを意味します。
所持」とは、大麻であることを知りながら、これを事実上自己の実力支配内に置く行為を言います。
必ずしも大麻を物理的に持っている必要はなく、大麻の存在を認識してこれを管理し得る状態にあれば「所持」が認められ、大麻取締法違反になります
そのため、自分が直接所持していなくても、他人に預けることで間接的に自分が持っていると認められる場合にも「所持」していることになります。
例えば、警察署に身柄を拘束されている場合に、大麻を隠している事実を隠して、警察官に大麻を引き取るように要求しないことは「所持」に該当します。

2,直接の被害者がいない場合の弁護活動

(1)情状弁護

大麻取締法違反のような薬物事件の場合、犯人以外の誰かに被害が発生したわけではありませんので、直接の被害者が存在しません。
直接の被害者が存在しないということは、示談交渉を試みる相手がいないため、示談ができないことになります。
そのため、示談をする相手が存在しない場合の弁護活動としては、贖罪寄付を行うことが考えられます。
贖罪寄付とは、被害者のいない刑事事件や、被害者との示談ができない刑事事件などにつき、刑事手続の対象となっている方の改悛の真情を表すために日本弁護士連合会(日弁連)等に寄付を行うことです。
その他にも、法テラスが独自で受け付けているものや日弁連交通事故相談センターが交通事故被害者に特化した交通贖罪寄付を受け付けています。
また、大麻取締法違反のような薬物事件は、再犯率が非常に高い犯罪類型です。
そのため、被疑者がどのような経緯で薬物との接点を持つようになってしまったのかなど動機を解明することで、再び薬物に接触しない生活を送れるのかを熟慮し、再犯防止に向けた環境づくりのサポートを行います。
例えば、SNSを通じて薬物を買ったのであれば、当該SNSアカウントの消去や当該SNSをアンインストールし、物理的に再び薬物と接触できないようにするなどの再犯防止策が挙げられます。

(2)早期の身柄解放

逮捕・勾留により身柄拘束を受けている場合には、早期の身柄解放に向けた弁護活動を行います。
被疑者段階において、勾留による身柄拘束が認められるのは、被疑者が定まった住居を有しない、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
そのため、それらを否定し得る客観的な事情や証拠の収集・主張活動を通じて、早期の身柄解放を目指します。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において大麻取締法違反の当事者となり在宅捜査を受けている方、あるいは家族・親族が大麻取締法違反の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件を専門的に取り扱う弁護士が在籍しており、これまでさまざまな刑事事件・少年事件を経験しております。
大麻取締法違反の当事者となり在宅捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
家族・親族が大麻取締法違反の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
フリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にご相談ください。

【事例解説】不同意性交等罪とその弁護活動(被害者を脅迫して性的暴行を加えたケース)

2024-06-29

【事例解説】不同意性交等罪とその弁護活動(被害者を脅迫して性的暴行を加えたケース)

今回は、被害女性の背後から口を塞ぎ、脅迫して性的暴行を加えたという架空の事例を想定して、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:被害者を脅迫して性的暴行を加えたケース

福岡県大野城市の路上で、歩いて帰宅途中だった会社員Vさんの背後から突然抱きついて口を塞ぎ、「声を出したら殺す」などと脅迫し、その後、人のいない場所まで連れていきVさんの陰部に指を入れるなどの性的暴行を加えたとして、福岡県春日市在住の自営業Aさんが逮捕されました。
Aさんは性的暴行を受けた後、警察に連絡し、事件が発覚しました。
警察は犯行現場付近の防犯カメラの映像を解析したところ、不審な動きをしているAさんの姿が映っており、特定に至りました。
警察の調べに対して、Aさんは「性的欲求を満たすためにやった。」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,不同意性交等罪について(刑法177条)

1項 前条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第179条第2項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑に処する。
2項 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3項 16歳未満の者に対し、性交等をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第1項と同様とする。
※前条(刑法176条)第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由
①暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
②心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
③アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
⑤同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
⑧経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

刑法不同意性交等罪は、①~⑧までの行為や原因により、被害者が同意をしない意思を(1)形成し(2)表明し若しくは(3)全うすることが困難な状態にさせまたはその状態にあることに乗じて、性交等をした場合に成立します。
(1)被害者が同意しない意思を形成することが困難な状態とは、性交等をするかどうかを考えたり、決めたりするきっかけや能力が不足していて、性交等をしない、したくないという意思を持つこと自体が難しい状態を言います。
例えば、アルコールや薬物等の影響により正常な判断ができない状態にある場合などです。
(2)被害者が同意しない意思を表明することが困難な状態とは、性交等をしない、したくないという意思を持つことはできたものの、それを外部に表すことが難しい状態をいいます。
例えば、職場の上司や経済的に優位にある者に、その地位を利用して不利益が生じる可能性などを言われることで、拒否することができなくなっている状態にある場合などです。
(3)被害者が同意しない意思を全うすることが困難な状態とは、性交等をしない、したくないという意思を外部に表すことはできたものの、その意思のとおりになることが難しい状態をいいます。
例えば、加害者側の暴行や脅迫などにより抵抗することができない状態にある場合などです。
(参照:法務省 性犯罪関係の法改正等Q%A 4A4
上記の事例では、AさんはVさんに対して、突然背後から抱きつき口を塞いで「声を出したら殺す」などという「暴行」・「脅迫」を用いて、Vさんが「同意しない意思を…全うすることが困難な状態にさせ」て、Vさんの陰部に指を入れるなどの性的暴行を加えており「性交等」をしたといえるため、Aさんに不同意性交等罪が成立することが考えられます。

2,考えられる弁護活動

(1)身柄拘束からの早期解放

被疑者段階における身柄拘束には逮捕・勾留がありますが、逮捕・勾留による身柄拘束は最長で23日間続きます。
そして、被疑者勾留がなされるのは、被疑者が住居不定、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれが認められる場合です。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
そのため、それらを否定し得る客観的な事情や証拠の収集・主張活動を通じて、早期の身柄解放を目指します。
上記の事例では、AさんはVさんとの面識はないため、Vさんに証言をさせないように働きかける現実的可能性は低く、また、犯人がAさんであると特定に至った防犯カメラの映像は既に捜査機関に押収されているとの事情があれば、Aさんによる隠滅は不可能であるため、証拠隠滅のおそれは低いと言えます。
さらに、被疑者の家族等が被疑者の身元を引き受けるという事情は、被疑者の監督が見込めるため、被疑者の逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情となるでしょう。

(2)示談交渉

不同意性交等罪を含む被害者が存在する場合には、被害者との示談交渉を試みます。
示談交渉は当事者同士でも行うことはできますが、不同意性交等罪のような性犯罪の場合、被害者は加害者から連絡されることを拒否することが考えられます。
また、被害者としても加害者に自分の連絡先を知られたくないと思うでしょう。
そこで、弁護士が間に入り、捜査機関経由で被害者とのコンタクトを試み、弁護士が守秘義務を負っているため被害者の連絡先が加害者に知られることはないことなどを説明することで、示談交渉を試みます。
被害者が示談交渉に応じる場合には、加害者の立場から、加害者が謝罪・反省していることを伝え、被害者の自宅・職場等やその経路付近には近づかないことや示談金のお支払いなどを提示して、示談の成立を目指します。
もっとも、示談と一口に言ってもその効果は様々であることから、示談の内容に宥恕条項(加害者を許し、加害者に対する刑事処罰を望まないことを意味する条項)や被害届の取下げや刑事告訴の取消などの約定を加えて成立させることが肝要です。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県春日市において不同意性交等罪の当事者となってしまった方、あるいは家族・親族が不同意性交等罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡市支部には刑事事件・少年事件に特化した弁護士が在籍しており、不同意性交等罪をはじめとするさまざまな刑事事件・少年事件を経験し、豊富な実績がございます。
不同意性交等罪の当事者となり身柄拘束されずに捜査を受けている、あるいはこれから捜査を受けるおそれのある方に対しては、初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
また、家族・親族が不同意性交等罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては、弁護士が直接身柄拘束を受けている方のもとに赴く初回接見サービス(有料)をご提供しております。
フリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にご相談ください。

【事例解説】名誉毀損罪とその弁護活動(インターネットの掲示板に被害者の実名とともに名誉を毀損する書き込みをしたケース)

2024-06-26

【事例解説】名誉毀損罪とその弁護活動(インターネットの掲示板に被害者の実名とともに名誉を毀損する書き込みをしたケース)

今回は、インターネットの匿名掲示板に被害者の実名を書いたうえで被害者の名誉を毀損する書き込みを行ったという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:インターネットの掲示板に被害者の実名とともに名誉を毀損する書き込みをしたケース

福岡県春日市在住のAさんは、約1年の間、インターネットの匿名掲示板に元職場の同僚であるVさんの実名を含めた個人情報や「Vからお金を騙し取られた」、「Vは会社のお金を盗んでいる」などの虚偽の書き込みを複数回行いました。
Aさんは、その件で警察署に出頭するよう求められています。
(事例はフィクションです。)

1,名誉毀損罪について

〈名誉毀損罪〉(刑法230条)

1項 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

①公然と②事実を摘示し、③人の④名誉を⑤毀損した場合、⑥摘示された事実の有無にかかわらず、刑法名誉毀損罪が成立します。
①「公然」とは、不特定又は多数人が認識できる状態を言います。
また、摘示の相手方が特定又は少数人であっても、その人たちを通じて不特定又は多数人へと広がっていくときには「公然」性が認められます。(伝播性の理論)
②摘示される「事実」は、人の社会的評価を害するに足りるものであることを要します。
さらに、その「事実」は、必ずしも非公知のものに限られず、公知の事実でも、それを摘示することによりさらに社会的評価を低下させるおそれがあれば、「事実」に該当します。
また、「事実」はある程度具体的な内容を含むものでなければならず、単なる価値判断(例:この本は良いまたは悪い)や評価(例:○○さんは仕事ができるまたはできない)は「事実」に該当しません。
③「」とは、犯人以外の自然人、法人及びその他の団体が含まれます。
そして、名誉毀損罪は、人が円滑な社会生活を行うための前提であるその人に対する積極的評価を保護するものであるから、④「名誉」とは、社会が与える評価としての外部的名誉を言います。
⑤「毀損」行為とは、人の社会的評価を害するに足りる行為がなされればよく、実際に人の社会的評価が害されたことまでは必要となりません。
⑥「摘示された事実」が真実であるか否かにかかわらず、名誉毀損罪は成立します。

2,名誉毀損罪で捜査を受ける前段階の弁護活動

名誉毀損罪は、親告罪であり、公訴の提起には被害者の刑事告訴が必要となります。

〈親告罪〉(刑法232条1項)

この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

この章」とは、刑法230条から231条を指しています。
告訴とは、犯罪の直接の被害者が、捜査機関に対して、加害者が犯した犯罪事実とその処罰を望む意思表示を申し出ることを言います。

〈告訴〉(刑事訴訟法230条)

犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。

前述の通り、親告罪は被害者の告訴が公訴提起の要件となっているため、弁護活動としては、被害者との示談交渉を試み、示談の成立を目指します。
もっとも、示談と一口に言っても、その内容は多岐にわたります。
被害者に対して反省・謝罪の意を述べ、被害弁償や示談金の支払い等を行うことで示談を成立させるのではなく、宥恕条項(加害者の反省・謝罪を受け入れ、加害者に対する刑事処罰を望まないことを意味する条項)や刑事告訴をしている場合には刑事告訴の取消し等の約定を内容に加えて示談を成立させることが重要となります。
示談交渉は、加害者と被害者の当事者同士でも行うことはできます。
しかし、犯罪の被害者は加害者と直接コンタクトをとることを避けることが考えられ、当事者同士での交渉は拗れて上手くいかないことが十分に予想されます。
そこで、弁護士が間に入り、捜査機関経由で被害者の方にコンタクトをとり、被害者の方に安心して示談交渉に臨んでいただき、冷静かつ丁寧に加害者が反省していること等を説明することで、前述した内容での示談の成立が期待できます。
そのため、名誉毀損罪でこれから捜査機関による任意捜査の対象となっている、あるいは被害者から刑事告訴される可能性がある場合には、少しでも早く弁護士に依頼し、刑事事件化させない、刑事告訴の取消しなどの実現を目指すことが肝要です。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県春日市において名誉毀損罪の当事者となり在宅で捜査を受けている方、あるいはこれから名誉毀損罪で刑事告訴される可能性のある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に特化した弁護士が在籍しており、名誉毀損罪の当事者となりお悩みの方に対しては、弁護士が直接「無料相談」を行います。
フリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にご相談ください。

【事例解説】横領罪とその弁護活動(借りていたレンタカーを返却期限が過ぎても返さず乗り回していたケース)

2024-06-23

【事例解説】横領罪とその弁護活動(借りていたレンタカーを返却期限が過ぎても返さず乗り回していたケース)

今回は、借りていたレンタカーの返却期限が過ぎていたにもかかわらず、返却せずに乗り回していたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:借りていたレンタカーを返却期限が過ぎても返さず乗り回していたケース

Aさんは、福岡市にあるレンタカー会社Vからレンタカーを借り、返却期限が過ぎたにもかかわらず、少なくとも1か月以上レンタカーを乗り回していました。
Vが被害届を警察に提出したことで、警察は捜査を開始して、Aさんを横領の疑いで逮捕するに至りました。
警察の調べに対し、Aさんは「間違いありません。」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,横領罪について

〈横領罪〉(刑法第252条)

第1項 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。

刑法横領罪は、①自己の占有する他人の物を横領した場合に成立します。
また、窃盗罪強盗罪など、他人の占有をその占有者の意思に反して自身または第三者の占有に移転する奪取罪とは異なり、横領罪は既に他人の物が自身の占有下にあるため、保護法益は第一次的には所有権であり、第二次的に物を預けた人との信任関係も保護の対象となります。
そのことから、横領罪は、委託信任関係により他人の物を占有している者という身分を持っている人に成立する犯罪と言えます。
①「占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力をいい、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を及ぼす状態にあることを意味します。
窃盗罪などの奪取罪は、物を自宅で保管しているなど事実上の支配のみが「占有」に該当します。
一方で、横領罪は、法律上の支配、すなわち法律上自身が容易に他人の物を処分し得る状態にある場合にも法律上の「占有」に該当します。
法律上の占有は、不動産や預金の場合に問題となり、不動産の場合は、当該不動産の所有権の登記名義人はその不動産に実際に居住して使用するなど事実上の支配がなくても、当該不動産を売却するなど自由に処分できる地位にあるため、法律上の支配が認められます。
また、他人から預かったお金を自分の口座に入れて管理している場合、そのお金を財布や自宅で保管しているというわけではないので事実上の支配は認められませんが、預金した人は、いつでも自分の口座からそのお金を引き出して自由に処分できる地位にあるため、預金した人に法律上の支配が認められ、他人の物を「占有」していることになります。
」とは、窃盗罪などの「財物」と同じで、管理可能性のある有体物(個体・液体・気体)をいい、動産だけでなく不動産も含まれます
②「横領」行為とは、不法領得の意思を発現する一切の行為をいいます。
不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいいます。
横領」行為は、費消(使い込むこと)、着服(バレないように盗むこと)、拐帯(持ち逃げすること)、抑留(借りたものを返さないこと)などの事実行為だけでなく、売却貸与贈与などの法律行為も含まれます。
上記の事例では、Aさんは借りたレンタカーを期限が過ぎても返すことなく乗り回している(抑留している)行為は「横領」に該当すると考えられます。

2,横領罪で逮捕された場合に考えられる弁護活動

(1)不起訴処分獲得に向けた弁護活動

横領罪の法定刑は5年以下の懲役刑が定められているのみで、窃盗罪などに定められているような罰金刑がありません。
そのため、起訴された場合には、正式裁判が開かれることになります。
そして、起訴・不起訴を決めるのは検察官です。(起訴便宜主義刑事訴訟法248条
不起訴処分獲得に向けた弁護活動としては、被害者との示談交渉を試みます。
弁護士が加害者の立場から、被害者に対して、加害者が反省・謝罪の意思を有していること、被害弁償や示談金の支払いの準備があることを申し入れます。
そして、示談といっても内容は千差万別で、単なる示談の成立(当事者間で紛争が解決したと約束すること)や宥恕付き示談(加害者の反省・謝罪を受け入れ、加害者に対する刑事処罰を望まないことを意味するもの)など多岐にわたります。
そのため、単に示談を成立させるだけでなく、宥恕付き示談や被害届の取下げや刑事告訴の取消などの約定を加えた内容での示談を成立させることが、不起訴処分を獲得するために重要となります。

(2)公判弁護

当事者間で示談が成立したとしても、必ず不起訴処分になるとは限りません。
被告人が行った犯罪の社会に対して大きな影響をもたらしたため、社会秩序を回復させるためなど、検察官が処罰することが相当と判断した場合には起訴される可能性があります。
起訴された場合の弁護活動としては、被告人と入念な打ち合わせを重ね裁判に備えることや、裁判では、示談が成立しており被告人は十分に反省していることなどを主張し、執行猶予付き判決の獲得など、少しでも被告人に有利な結果の実現を目指します。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内で横領罪の当事者となってしまった方、あるいは横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に特化した弁護士が在籍しており、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験してきました。
横領罪の当事者となり捜査機関に捜査されているなど身柄拘束を受けていない方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
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【事例解説】事後強盗罪とその弁護活動(リサイクルショップで商品を万引きし、追いかけてきた店員に暴行を加えたケース)

2024-06-20

【事例解説】事後強盗罪とその弁護活動(リサイクルショップで商品を万引きし、追いかけてきた店員に暴行を加えたケース)

今回は、リサイクルショップで商品を万引きし、追いかけてきた店員に暴行を加えたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:リサイクルショップで商品を万引きし、追いかけてきた店員に暴行を加えたケース

福岡市のリサイクルショップで靴など商品3点を盗んだAさんが、逮捕を免れるため従業員Vさんを殴ったとして、逮捕されました。
事後強盗の疑いで逮捕されたのは、福岡市西区のAさんです。
Aさんは、福岡市西区にあるリサイクルショップで、スニーカーなど商品3店(販売価格合わせて3万円)を盗んだ後、店員のVさんに呼び止められましたが、逮捕を免れるため暴れたり、Vさんを殴ったりする暴行を加えた疑いが持たれています。
Aさんの窃盗に気づいた店員のVさんが、店の外に出たAさんを追いかけて取り押さえたということです。
警察の調べによると、Aさんは「生活に困ってやった。」などと供述し、容疑を認めているとのことで、Vさんに怪我はないとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,事後強盗罪について

〈事後強盗罪〉(刑法238条)

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぐ目的(財物奪還阻止目的)、逮捕を免れる目的(逮捕免脱目的)または証拠を隠滅する目的(罪証隠滅目的)のいずれかの目的で、暴行または脅迫をした場合には、強盗として論ずる、すなわち後述する刑法に定めらた強盗罪が成立することになります。
窃盗が」とは、窃盗犯人、つまり窃盗罪刑法235条)を犯した者を言います。
上記の事例では、窃盗犯人であるAさんは、追いかけてきた店員Vさんに対して、逮捕を免れる目的(逮捕免脱目的)で殴るなどの暴行を加えているため、窃盗罪ではなく強盗罪が成立することになります。
なお 、窃盗罪には、財産上の利益を窃取すること(これを利益窃盗と言います。)を処罰する規定が存在しないため、1項強盗罪が成立することになります。
例えば、初めから無賃乗車するつもりでタクシーに乗れば、運送サービスという財産上の利益を騙し取ったことになり、詐欺罪刑法246条2項)が成立することが考えられます。
しかし、タクシーに乗りしばらくしてお金がないことに気付き、目的地に到着して運賃の支払いを求められたタイミングで運転手の目を盗んで逃走した場合には、財産上の利益を窃取したことになりますが、利益窃盗を処罰する規定が存在しないため、不可罰となります。
ただし、「財布を忘れた。取りに帰りたいからいったん降ろしてくれ。」などと嘘をついて逃走した場合には、その行為は欺罔行為に該当し詐欺罪刑法246条2項)が成立する可能性があります。

〈強盗罪〉(刑法236条)

1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

強盗罪は、暴行または脅迫を用いて、他人の財物(1項)または財産上の利益(2項)を強取した場合に成立します。
強取」とは、相手方(被害者など)の反抗を抑圧させるに足りる程度の暴行または脅迫を加えて財物または財産上の利益を奪取することを言います。
暴行とは、人の身体に対する不法な有形力の行使を言います。
脅迫とは、相手方に畏怖を生じさせる程度の害悪の告知を言います。

2,事後強盗罪における弁護活動

(1)身体拘束の回避・解放

逮捕・勾留による身柄拘束は、最長で23日間続き、その間に捜査機関による取調べを受け、最終的に起訴か不起訴の判断は、検察官によってなされます。
被疑者の勾留が認められるのは、勾留の理由と必要性があると判断された場合です。
勾留の理由は、被疑者が定まった住居を有しないことや、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されることを言います。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
勾留の必要性は、被疑者の身柄を拘束しなければならない必要性と身柄拘束によって被疑者が被る不利益とを比較衡量して、勾留することが相当である場合に認められます。
そのため、例えば、犯罪の証拠物はほとんど押収済みである、あるいは確実な身元引受があれば、被疑者の監督が見込めるといった事情があれば、そもそも勾留の必要性が認められない可能性が高いので、それらの事情を検察官や裁判所に対して意見書として提出するなどの働きかけによって、身柄拘束の回避が期待できます。
身柄拘束をされてしまった場合でも、上記の勾留の理由を否定し得る客観的な事情や証拠が存在すれば、準抗告刑事訴訟法429条1項)や勾留取消請求刑事訴訟法87条1項)を行い、早期の身柄解放を目指します。
被疑者が住居を有しており居住期間も長いといった事情は被疑者の住居不定の要件を否定する方向に働きます。
また、上記の事例のように、犯人は現行犯逮捕されており、加えて捜査機関による捜査がかなり進展していて、その時点において被疑者による証拠隠滅は困難であるといった事情は、被疑者による証拠隠滅を否定し得る客観的な証拠や事情となるでしょう。

(2)示談交渉

事後強盗罪は、被害者が存在します。
また、事後強盗罪は、上記の事例のように、商品を盗まれた、あるいはそれにより商品が売り物にはならなくなるといった財産的な被害と、被疑者により暴行を加えられた被害者の身体的な被害があります。
そこで、それぞれの被害者に対して、場合によっては捜査機関を経由してコンタクトをとり、示談交渉を試みます。
財産的な被害を被ったお店との示談交渉については、そもそもお店側が示談交渉には応じない場合も少なくありません。
そのため、弁護人としては、事件について謝罪・反省の意思を伝えたうえで、商品の買い取りなどの被害弁償や示談金をお支払いする準備がある旨を伝えてお店側に不快感を持たれない程度に粘り強く交渉し、示談の成立を目指します。
身体的な被害を被った被害者との示談交渉については、同じく謝罪・反省の意思を伝えた上で、治療費のお支払いなどの被害弁償や示談金のお支払いの準備がある旨を提示して、示談の成立を目指します。
示談が成立すれば、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれが低いと判断されて早期の身柄解放が期待できます。

(3)不起訴処分獲得

前述の示談が成立していれば、それを検察官に伝えることで、不起訴処分の獲得を目指します。
不起訴処分が獲得できれば、前科がつくことを回避することができるため、その後の社会生活に対する影響を最小限に抑えることができるなどのメリットがあります。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において家族・親族が事後強盗罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件を専門的に取り扱い、刑事事件・少年事件に関する経験・実績が豊富な弁護士が在籍しております。
家族・親族が事後強盗罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
まずはフリーダイヤル0120-631-881まで、お気軽にお問い合わせください。

【事例解説】覚醒剤取締法違反とその弁護活動(自宅において複数回にわたり覚醒剤を使用して逮捕されたケース)

2024-06-17

【事例解説】覚醒剤取締法違反とその弁護活動(自宅において複数回にわたり覚醒剤を使用して逮捕されたケース)

今回は、自宅で覚醒剤を複数回にわたって使用した後、警察に自首して逮捕されたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:自宅において複数回にわたり覚醒剤を使用して逮捕されたケース

福岡県警察博多署は、福岡県の県立高校職員Aさんを覚醒剤取締法違反使用)の疑いで逮捕しました。
警察によると、Aさんは複数回にわたり、覚醒剤を使用した疑いがある。
Aさんは、自宅近くの交番に「覚醒剤を使いました」と出頭し、尿検査で陽性反応が出たとのことです。
警察は入手経路や所持品を調べています。
(事例はフィクションです。)

1,覚醒剤取締法違反(使用)について

覚醒剤取締法(以下「法」と言います。)に言う「覚醒剤」とは、フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパン及び各その塩類を言います。(法2条1項1号
覚醒剤は、一定の場合を除き、何人も、その使用を制限されており(法19条柱書)、使用した場合には、10年以下の懲役刑が科されることになります。(法41条の3第1項1号
覚醒剤の「使用」とは、覚醒剤をその用法に従って用いる一切の行為を言い、自己又は他人の身体への使用だけでなく、鶏・豚などの家畜への使用や、研究、薬品の製造のための使用も含まれます。
また、他人から自己の身体へ注射してもらうような場合にも「使用」に該当します。
なお、覚醒剤を使用するにあたって、覚醒剤を所持することになりますが、これらは別の罪であるため、所持罪使用罪の両方が成立し、併合罪刑法45条)となります。

2,併合罪について

併合罪とは、確定裁判を経ていない2個以上の犯罪が成立する場合を言い、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする刑罰が科されることになります。(刑法47条本文
つまり、覚醒剤の所持罪使用罪が成立する場合には、両罪とも刑罰は10年以下の懲役であるため、10年に2分の1を加えた15年以下の懲役が科されることになります。

3,覚醒剤取締法違反で逮捕された場合の弁護活動

(1)取調対応

覚醒剤取締法違反で逮捕・勾留されると、最長で23日間、身柄を拘束されて捜査機関による取調べを受けることになります。
覚醒剤をはじめとした薬物事案は、被疑者において余罪がある場合があり、取調べにおいて余罪について供述してしまうと再逮捕や追起訴のおそれがあります。
そのため、弁護士は、被疑者に対して、被疑事実に関すること以外は話さない等の取調べに対するアドバイスを致します。
また、被疑者が容疑を認めている場合であっても、覚醒剤取締法違反事件は起訴率が高いため、被疑者段階から公判を見据えた弁護活動を行うことが中心となります。

(2)起訴後の保釈に向けた弁護活動

被疑者が起訴されると、被告人勾留に切り替わります。
被告人勾留は、原則として2カ月、さらに継続の必要があると判断された場合には、1カ月ごとの延長が認められます。(刑事訴訟法60条2項
また、被告人勾留は、保釈されないかぎり判決まで続くのが一般的です。
被疑者勾留が最長で20日間であることに比べると、被告人勾留はより長期にわたって身柄を拘束されることになることが考えられます。
被告人勾留は、被告人において、住居不定や証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合に認められます。(刑事訴訟法60条1項各号
そこで、早期の身柄解放に向けた弁護活動としては、それらの要件を否定し得る客観的な事情や証拠の収集・主張活動を行います。

(3)情状弁護

薬物事件は再犯率の高い事件類型です。
そのため、再犯防止に向けた策を講じている場合には、量刑判断に影響するため、それらを主張して少しでも被告人に有利な結果になるよう働きかけます。
被告人がなぜ薬物と接点を持ってしまったのかを知り、どうすればもう2度と薬物を利用しない生活を送れるのかを考える必要があります。
また、家族をはじめとした周囲のサポートも必要不可欠といえるでしょう。
しかし、かならずしも家族や周囲が薬物の専門家であるとは限りません。
そのため、薬物依存者の回復支援を行っている病院やダルク といった団体の援助を受けることも選択肢の一つとなります。
特に再犯で実刑の見込みが高い事案では、薬物依存症の根本からの治療の必要性などを考慮し、その観点から保釈を請求し、被告人を身柄拘束から解放させる必要があります。
そして、保釈請求が認められれば、被告人を病院やダルクの治療・支援を受けることができ、
病院やダルクのスタッフの方に証人となっていただき裁判で証人尋問をしたり、意見書を書いてもらうことを視野に入れた弁護活動を行うことも挙げられます。
それらの再犯防止策を講じていることを公判において主張し、被告人にとって少しでも有利な判決の獲得を目指します。

(4)無罪弁護

被告人が罪を認めている場合でも、もし捜査機関による捜査の過程や証拠の収集方法に違法があれば、それを主張していくことで無罪判決を獲得できる可能性があります。

4,まずは弁護士に相談を

福岡県内において覚醒剤取締法違反の当事者となり在宅捜査を受けている方、あるいは家族・親族が覚醒剤取締法違反の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件を専門的に取り扱う弁護士が在籍しており、これまでさまざまな刑事事件・少年事件を経験しております。
覚醒剤取締法違反の当事者となり在宅捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
家族・親族が覚醒剤取締法違反の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
お気軽にご相談ください。

【事例解説】性的姿態等撮影未遂罪とその弁護活動(女子中学生の背後から衣服の中を撮影しようとしたケース)

2024-06-13

【事例解説】性的姿態等撮影未遂罪とその弁護活動(女子中学生の背後から衣服の中を撮影しようとしたケース)

今回は、商業施設内で女子中学生のショートパンツの中を撮影しようとしたというニュース記事を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:女子中学生の背後から衣服の中を撮影しようとしたケース

福岡市東区の商業施設で、女子中学生Aさんのショートパンツの中を撮影しようとしたとして自称アルバイトのAさんが逮捕されました。
性的姿態等撮影の疑いで逮捕されたのは、福岡市東区の自称アルバイトAさんです。
Aさんは、福岡市東区の商業施設内の書店で、本を読んでいたVさんのショートパンツの中を撮影しようとした疑いがもたれています。
警察によりますと、保安員がスマートフォンを持って店内を徘徊するAさんを発見。
不審に思い、監視を続けていたところ、AさんがVさんの背後から、履いていたショートパンツの中に、スマートフォンを差し込んだため、警察に通報しました。
Aさんはそのまま店から立ち去りましたが、乗っていたバイクのナンバーの解析や防犯カメラなどの捜査から関与が浮上。警察官がAさんの自宅に向かい、事情を聴いていたところ、盗撮を認めたということです。
取り調べに対し、Aさんは容疑を認めたうえで「性的欲求を満たすため」などと話しているということです。
(事例はフィクションです。)

1,性的姿態等撮影罪について

〈性的姿態等撮影罪〉

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の映像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下「性的姿態撮影等処罰法」と言います。)
2条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
1号 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
 イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治40年法律第45号)第177条第1項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
2号 刑法第百176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
3号 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
4号 正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2項 前項の罪の未遂は、罰する。
3項 前2項の規定は、刑法第176条及び第179条第1項の規定の適用を妨げない。

いわゆる盗撮行為については、これまでも各都道府県が定める迷惑防止条例などにより処罰の対象となっていました。
しかし、迷惑防止条例は、都道府県ごとに処罰対象が異なるなど、必ずしもこれらの条例などでは対応しきれない場合もありました。
そこで、そのような場合に対応するために、2023年7月13日に性的姿態撮影等処罰法が施行され、性的姿態等撮影罪を設けることで盗撮行為を厳罰化し、都道府県ごとに処罰対象が異なるといった状態も解消されることになりました。
性的姿態等撮影罪は、正当な理由がないのに、ひそかに、人の性的な姿態を撮影した場合に成立します。
正当な理由」とは、例えば、医師が救急搬送された意識不明の患者の上半身裸の姿を医療行為上のルールに従って撮影する場合などが、これに該当すると考えられます。
また、「ひそかに」とは、撮影される者の意思に反して自分の性的な姿態等を撮影されることを言います。
被害者が13歳以上16歳未満の者で、加害者が20歳未満の場合、加害者が被害者よりも5歳以上年長である場合に、正当な理由なく性的な姿態等を撮影すれば性的姿態等撮影罪が成立します。
被害者が13歳から15歳の場合、加害者が18歳から20歳の場合が問題となります。
例えば、18歳のXさんが、15歳のYさんの性的な姿態等を撮影すれば、Yさんは16歳未満ですが、年齢差が5歳未満であるため、性的姿態等撮影罪は成立せず、処罰の対象外となります。
なぜ、被害者が13歳以上16歳未満の場合には、年齢差が5歳以上年長の者の行為しか処罰されないのかについて、13歳以上16歳未満の者は、相手との関係が対等でなければ性的姿態等を撮影されることについて自由な意思決定が難しくなると考えられているからです。
どのような場合に相手との関係が対等でなくなるのかについて、一般的に、相手との年齢差が大きくなればなるほど、社会経験等の差から対等ではなくなると考えられます。
また、性的姿態等撮影罪には未遂を処罰する規定があることから、正当な理由がないのに、ひそかに、性的な姿態等を撮影する行為を行えば、結果として性的な姿態等が撮影されていなくても、未遂として処罰されることになります。
上記の事例で言えば、Aさんは、正当な理由がないのに、Vさんの意思に反して(「ひそかに」)、Vさんのショートパンツの中(「人が身に着けている下着のうち現に性的な部分を直接若しくは間接に覆っている部分」)に、スマートフォンを差し込んだ時点で、実際にスマートフォンにVさんのショートパンツの中が撮影されたデータ等が残っていなくても、性的姿態等撮影未遂罪が成立することになります。
なお、被害者が18歳未満の場合に、自己の性的好奇心を満たす目的で、被害者を撮影する行為は、児童ポルノ製造罪児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項)が成立し、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。

2,身柄拘束回避・解放、不起訴処分獲得に向けた弁護活動

性的姿態等撮影未遂罪で逮捕された場合は、最長で72時間身柄を拘束されることになります。
そして、72時間を超えて、検察官がさらに身柄を拘束する必要があると判断した場合、裁判所に対して逮捕よりも長期の身柄拘束である勾留を請求します。(刑事訴訟法205条1項
勾留による身柄拘束は、原則として10日間、さらに10日を超えない範囲で延長することが認められているので、最長で20日間、身柄を拘束されることになります。(刑事訴訟法208条
被疑者に対して勾留が認められるのは、勾留の理由や勾留の必要性があると判断された場合です。
勾留の理由は、被疑者が定まった住居を有しない、被疑者による証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合に認められることになります。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
勾留の必要性は、被疑者の身柄を拘束しなければならない必要性と、身柄拘束によって被疑者が受ける不利益とを比較して、勾留することが相当と言えるかにより判断されます。
そこで、身柄拘束回避のための弁護活動としては、勾留の理由や必要性を否定し得る客観的な事情や証拠の収集の活動を行います。
例えば、被疑者が家族と同居していて、同居している家族が身元引受人となり被疑者を監督するという事情があれば、住居不定と逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情になります。
また、上記の事例のように、盗撮行為に使ったスマートフォンが既に捜査機関に押収されていれば、被疑者による証拠隠滅のおそれを否定できると言えるでしょう。
それらの事情が存在しても検察官の勾留請求が認められ、被疑者が勾留されてしまった場合には、身柄拘束からの解放に向けた弁護活動を行います。
まず、被疑者がいかなる理由に基づいて勾留されてしまったのかを知るために、勾留理由の開示請求を行います。(刑事訴訟法207条1項本文82条~86条
そして、理由が明確になれば、前述のようなそれらの理由を否定し得る客観的な事情や証拠の収集や主張をしていくことで、身柄拘束からの早期解放を目指します。
性的姿態等撮影罪は、被害者が存在する犯罪でもあります。
そこで、弁護士は、加害者に代わって被害者との示談交渉を行います。
示談交渉は事件の当事者同士でもすることはできますが、当事者同士での示談交渉はあまりうまくいかないことが多いです。
特に、性的姿態等撮影罪のような性犯罪の場合、被害者側は加害者側に対して自分の連絡先を知らせたくないと考えるのが一般的であることから、加害者が被害者とコンタクトをとることは難しいと言えます。
しかし、弁護士を間に入れることで、被害者の方に安心して頂き、加害者の立場から被害者に対して謝罪・反省の意思を伝えたり、被害弁償等を行うことができれば示談の成立に対して十分な期待が持てると言えます。
そして、示談と言っても加害者側に一方的に都合のいい内容での示談を成立させることは難しく、被害者側の意向をくみ取りつつ、宥恕条項(加害者を許し刑事処罰を望まないことを意味する条項)や被害届の取下げや刑事告訴の取消等の約定を加えた内容での示談を成立させることが肝要です。
また、示談が成立していれば、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれは低いと判断され、早期の身柄解放や、起訴猶予による不起訴処分の獲得も期待できます。
以上より、性的姿態等撮影罪で逮捕されてしまった場合には、少しでも早く弁護士に依頼することをオススメです。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において性的姿態等撮影罪で逮捕等により身柄を拘束されてしまった、あるいは性的姿態等撮影罪で在宅で捜査を受けている方など、性的姿態等撮影罪でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、刑事事件・少年事件に対する豊富な経験や実績がございます。
ご家族等が性的姿態等撮影罪で身柄を拘束されている方に対しては初回接見サービス(有料)を、性的姿態等撮影罪で在宅事件として捜査を受けている等の方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、それぞれご提供しております。
お気軽にご相談ください。

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