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【事例解説】横領罪とその弁護活動(借りていたレンタカーを返却期限が過ぎても返さず乗り回していたケース)

2024-06-23

【事例解説】横領罪とその弁護活動(借りていたレンタカーを返却期限が過ぎても返さず乗り回していたケース)

今回は、借りていたレンタカーの返却期限が過ぎていたにもかかわらず、返却せずに乗り回していたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:借りていたレンタカーを返却期限が過ぎても返さず乗り回していたケース

Aさんは、福岡市にあるレンタカー会社Vからレンタカーを借り、返却期限が過ぎたにもかかわらず、少なくとも1か月以上レンタカーを乗り回していました。
Vが被害届を警察に提出したことで、警察は捜査を開始して、Aさんを横領の疑いで逮捕するに至りました。
警察の調べに対し、Aさんは「間違いありません。」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,横領罪について

〈横領罪〉(刑法第252条)

第1項 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。

刑法横領罪は、①自己の占有する他人の物を横領した場合に成立します。
また、窃盗罪強盗罪など、他人の占有をその占有者の意思に反して自身または第三者の占有に移転する奪取罪とは異なり、横領罪は既に他人の物が自身の占有下にあるため、保護法益は第一次的には所有権であり、第二次的に物を預けた人との信任関係も保護の対象となります。
そのことから、横領罪は、委託信任関係により他人の物を占有している者という身分を持っている人に成立する犯罪と言えます。
①「占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力をいい、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を及ぼす状態にあることを意味します。
窃盗罪などの奪取罪は、物を自宅で保管しているなど事実上の支配のみが「占有」に該当します。
一方で、横領罪は、法律上の支配、すなわち法律上自身が容易に他人の物を処分し得る状態にある場合にも法律上の「占有」に該当します。
法律上の占有は、不動産や預金の場合に問題となり、不動産の場合は、当該不動産の所有権の登記名義人はその不動産に実際に居住して使用するなど事実上の支配がなくても、当該不動産を売却するなど自由に処分できる地位にあるため、法律上の支配が認められます。
また、他人から預かったお金を自分の口座に入れて管理している場合、そのお金を財布や自宅で保管しているというわけではないので事実上の支配は認められませんが、預金した人は、いつでも自分の口座からそのお金を引き出して自由に処分できる地位にあるため、預金した人に法律上の支配が認められ、他人の物を「占有」していることになります。
」とは、窃盗罪などの「財物」と同じで、管理可能性のある有体物(個体・液体・気体)をいい、動産だけでなく不動産も含まれます
②「横領」行為とは、不法領得の意思を発現する一切の行為をいいます。
不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいいます。
横領」行為は、費消(使い込むこと)、着服(バレないように盗むこと)、拐帯(持ち逃げすること)、抑留(借りたものを返さないこと)などの事実行為だけでなく、売却貸与贈与などの法律行為も含まれます。
上記の事例では、Aさんは借りたレンタカーを期限が過ぎても返すことなく乗り回している(抑留している)行為は「横領」に該当すると考えられます。

2,横領罪で逮捕された場合に考えられる弁護活動

(1)不起訴処分獲得に向けた弁護活動

横領罪の法定刑は5年以下の懲役刑が定められているのみで、窃盗罪などに定められているような罰金刑がありません。
そのため、起訴された場合には、正式裁判が開かれることになります。
そして、起訴・不起訴を決めるのは検察官です。(起訴便宜主義刑事訴訟法248条
不起訴処分獲得に向けた弁護活動としては、被害者との示談交渉を試みます。
弁護士が加害者の立場から、被害者に対して、加害者が反省・謝罪の意思を有していること、被害弁償や示談金の支払いの準備があることを申し入れます。
そして、示談といっても内容は千差万別で、単なる示談の成立(当事者間で紛争が解決したと約束すること)や宥恕付き示談(加害者の反省・謝罪を受け入れ、加害者に対する刑事処罰を望まないことを意味するもの)など多岐にわたります。
そのため、単に示談を成立させるだけでなく、宥恕付き示談や被害届の取下げや刑事告訴の取消などの約定を加えた内容での示談を成立させることが、不起訴処分を獲得するために重要となります。

(2)公判弁護

当事者間で示談が成立したとしても、必ず不起訴処分になるとは限りません。
被告人が行った犯罪の社会に対して大きな影響をもたらしたため、社会秩序を回復させるためなど、検察官が処罰することが相当と判断した場合には起訴される可能性があります。
起訴された場合の弁護活動としては、被告人と入念な打ち合わせを重ね裁判に備えることや、裁判では、示談が成立しており被告人は十分に反省していることなどを主張し、執行猶予付き判決の獲得など、少しでも被告人に有利な結果の実現を目指します。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内で横領罪の当事者となってしまった方、あるいは横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に特化した弁護士が在籍しており、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験してきました。
横領罪の当事者となり捜査機関に捜査されているなど身柄拘束を受けていない方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
家族・親族が横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
フリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にご相談ください。

【事例解説】事後強盗罪とその弁護活動(リサイクルショップで商品を万引きし、追いかけてきた店員に暴行を加えたケース)

2024-06-20

【事例解説】事後強盗罪とその弁護活動(リサイクルショップで商品を万引きし、追いかけてきた店員に暴行を加えたケース)

今回は、リサイクルショップで商品を万引きし、追いかけてきた店員に暴行を加えたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:リサイクルショップで商品を万引きし、追いかけてきた店員に暴行を加えたケース

福岡市のリサイクルショップで靴など商品3点を盗んだAさんが、逮捕を免れるため従業員Vさんを殴ったとして、逮捕されました。
事後強盗の疑いで逮捕されたのは、福岡市西区のAさんです。
Aさんは、福岡市西区にあるリサイクルショップで、スニーカーなど商品3店(販売価格合わせて3万円)を盗んだ後、店員のVさんに呼び止められましたが、逮捕を免れるため暴れたり、Vさんを殴ったりする暴行を加えた疑いが持たれています。
Aさんの窃盗に気づいた店員のVさんが、店の外に出たAさんを追いかけて取り押さえたということです。
警察の調べによると、Aさんは「生活に困ってやった。」などと供述し、容疑を認めているとのことで、Vさんに怪我はないとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,事後強盗罪について

〈事後強盗罪〉(刑法238条)

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぐ目的(財物奪還阻止目的)、逮捕を免れる目的(逮捕免脱目的)または証拠を隠滅する目的(罪証隠滅目的)のいずれかの目的で、暴行または脅迫をした場合には、強盗として論ずる、すなわち後述する刑法に定めらた強盗罪が成立することになります。
窃盗が」とは、窃盗犯人、つまり窃盗罪刑法235条)を犯した者を言います。
上記の事例では、窃盗犯人であるAさんは、追いかけてきた店員Vさんに対して、逮捕を免れる目的(逮捕免脱目的)で殴るなどの暴行を加えているため、窃盗罪ではなく強盗罪が成立することになります。
なお 、窃盗罪には、財産上の利益を窃取すること(これを利益窃盗と言います。)を処罰する規定が存在しないため、1項強盗罪が成立することになります。
例えば、初めから無賃乗車するつもりでタクシーに乗れば、運送サービスという財産上の利益を騙し取ったことになり、詐欺罪刑法246条2項)が成立することが考えられます。
しかし、タクシーに乗りしばらくしてお金がないことに気付き、目的地に到着して運賃の支払いを求められたタイミングで運転手の目を盗んで逃走した場合には、財産上の利益を窃取したことになりますが、利益窃盗を処罰する規定が存在しないため、不可罰となります。
ただし、「財布を忘れた。取りに帰りたいからいったん降ろしてくれ。」などと嘘をついて逃走した場合には、その行為は欺罔行為に該当し詐欺罪刑法246条2項)が成立する可能性があります。

〈強盗罪〉(刑法236条)

1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

強盗罪は、暴行または脅迫を用いて、他人の財物(1項)または財産上の利益(2項)を強取した場合に成立します。
強取」とは、相手方(被害者など)の反抗を抑圧させるに足りる程度の暴行または脅迫を加えて財物または財産上の利益を奪取することを言います。
暴行とは、人の身体に対する不法な有形力の行使を言います。
脅迫とは、相手方に畏怖を生じさせる程度の害悪の告知を言います。

2,事後強盗罪における弁護活動

(1)身体拘束の回避・解放

逮捕・勾留による身柄拘束は、最長で23日間続き、その間に捜査機関による取調べを受け、最終的に起訴か不起訴の判断は、検察官によってなされます。
被疑者の勾留が認められるのは、勾留の理由と必要性があると判断された場合です。
勾留の理由は、被疑者が定まった住居を有しないことや、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されることを言います。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
勾留の必要性は、被疑者の身柄を拘束しなければならない必要性と身柄拘束によって被疑者が被る不利益とを比較衡量して、勾留することが相当である場合に認められます。
そのため、例えば、犯罪の証拠物はほとんど押収済みである、あるいは確実な身元引受があれば、被疑者の監督が見込めるといった事情があれば、そもそも勾留の必要性が認められない可能性が高いので、それらの事情を検察官や裁判所に対して意見書として提出するなどの働きかけによって、身柄拘束の回避が期待できます。
身柄拘束をされてしまった場合でも、上記の勾留の理由を否定し得る客観的な事情や証拠が存在すれば、準抗告刑事訴訟法429条1項)や勾留取消請求刑事訴訟法87条1項)を行い、早期の身柄解放を目指します。
被疑者が住居を有しており居住期間も長いといった事情は被疑者の住居不定の要件を否定する方向に働きます。
また、上記の事例のように、犯人は現行犯逮捕されており、加えて捜査機関による捜査がかなり進展していて、その時点において被疑者による証拠隠滅は困難であるといった事情は、被疑者による証拠隠滅を否定し得る客観的な証拠や事情となるでしょう。

(2)示談交渉

事後強盗罪は、被害者が存在します。
また、事後強盗罪は、上記の事例のように、商品を盗まれた、あるいはそれにより商品が売り物にはならなくなるといった財産的な被害と、被疑者により暴行を加えられた被害者の身体的な被害があります。
そこで、それぞれの被害者に対して、場合によっては捜査機関を経由してコンタクトをとり、示談交渉を試みます。
財産的な被害を被ったお店との示談交渉については、そもそもお店側が示談交渉には応じない場合も少なくありません。
そのため、弁護人としては、事件について謝罪・反省の意思を伝えたうえで、商品の買い取りなどの被害弁償や示談金をお支払いする準備がある旨を伝えてお店側に不快感を持たれない程度に粘り強く交渉し、示談の成立を目指します。
身体的な被害を被った被害者との示談交渉については、同じく謝罪・反省の意思を伝えた上で、治療費のお支払いなどの被害弁償や示談金のお支払いの準備がある旨を提示して、示談の成立を目指します。
示談が成立すれば、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれが低いと判断されて早期の身柄解放が期待できます。

(3)不起訴処分獲得

前述の示談が成立していれば、それを検察官に伝えることで、不起訴処分の獲得を目指します。
不起訴処分が獲得できれば、前科がつくことを回避することができるため、その後の社会生活に対する影響を最小限に抑えることができるなどのメリットがあります。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において家族・親族が事後強盗罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件を専門的に取り扱い、刑事事件・少年事件に関する経験・実績が豊富な弁護士が在籍しております。
家族・親族が事後強盗罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
まずはフリーダイヤル0120-631-881まで、お気軽にお問い合わせください。

【事例解説】覚醒剤取締法違反とその弁護活動(自宅において複数回にわたり覚醒剤を使用して逮捕されたケース)

2024-06-17

【事例解説】覚醒剤取締法違反とその弁護活動(自宅において複数回にわたり覚醒剤を使用して逮捕されたケース)

今回は、自宅で覚醒剤を複数回にわたって使用した後、警察に自首して逮捕されたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:自宅において複数回にわたり覚醒剤を使用して逮捕されたケース

福岡県警察博多署は、福岡県の県立高校職員Aさんを覚醒剤取締法違反使用)の疑いで逮捕しました。
警察によると、Aさんは複数回にわたり、覚醒剤を使用した疑いがある。
Aさんは、自宅近くの交番に「覚醒剤を使いました」と出頭し、尿検査で陽性反応が出たとのことです。
警察は入手経路や所持品を調べています。
(事例はフィクションです。)

1,覚醒剤取締法違反(使用)について

覚醒剤取締法(以下「法」と言います。)に言う「覚醒剤」とは、フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパン及び各その塩類を言います。(法2条1項1号
覚醒剤は、一定の場合を除き、何人も、その使用を制限されており(法19条柱書)、使用した場合には、10年以下の懲役刑が科されることになります。(法41条の3第1項1号
覚醒剤の「使用」とは、覚醒剤をその用法に従って用いる一切の行為を言い、自己又は他人の身体への使用だけでなく、鶏・豚などの家畜への使用や、研究、薬品の製造のための使用も含まれます。
また、他人から自己の身体へ注射してもらうような場合にも「使用」に該当します。
なお、覚醒剤を使用するにあたって、覚醒剤を所持することになりますが、これらは別の罪であるため、所持罪使用罪の両方が成立し、併合罪刑法45条)となります。

2,併合罪について

併合罪とは、確定裁判を経ていない2個以上の犯罪が成立する場合を言い、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする刑罰が科されることになります。(刑法47条本文
つまり、覚醒剤の所持罪使用罪が成立する場合には、両罪とも刑罰は10年以下の懲役であるため、10年に2分の1を加えた15年以下の懲役が科されることになります。

3,覚醒剤取締法違反で逮捕された場合の弁護活動

(1)取調対応

覚醒剤取締法違反で逮捕・勾留されると、最長で23日間、身柄を拘束されて捜査機関による取調べを受けることになります。
覚醒剤をはじめとした薬物事案は、被疑者において余罪がある場合があり、取調べにおいて余罪について供述してしまうと再逮捕や追起訴のおそれがあります。
そのため、弁護士は、被疑者に対して、被疑事実に関すること以外は話さない等の取調べに対するアドバイスを致します。
また、被疑者が容疑を認めている場合であっても、覚醒剤取締法違反事件は起訴率が高いため、被疑者段階から公判を見据えた弁護活動を行うことが中心となります。

(2)起訴後の保釈に向けた弁護活動

被疑者が起訴されると、被告人勾留に切り替わります。
被告人勾留は、原則として2カ月、さらに継続の必要があると判断された場合には、1カ月ごとの延長が認められます。(刑事訴訟法60条2項
また、被告人勾留は、保釈されないかぎり判決まで続くのが一般的です。
被疑者勾留が最長で20日間であることに比べると、被告人勾留はより長期にわたって身柄を拘束されることになることが考えられます。
被告人勾留は、被告人において、住居不定や証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合に認められます。(刑事訴訟法60条1項各号
そこで、早期の身柄解放に向けた弁護活動としては、それらの要件を否定し得る客観的な事情や証拠の収集・主張活動を行います。

(3)情状弁護

薬物事件は再犯率の高い事件類型です。
そのため、再犯防止に向けた策を講じている場合には、量刑判断に影響するため、それらを主張して少しでも被告人に有利な結果になるよう働きかけます。
被告人がなぜ薬物と接点を持ってしまったのかを知り、どうすればもう2度と薬物を利用しない生活を送れるのかを考える必要があります。
また、家族をはじめとした周囲のサポートも必要不可欠といえるでしょう。
しかし、かならずしも家族や周囲が薬物の専門家であるとは限りません。
そのため、薬物依存者の回復支援を行っている病院やダルク といった団体の援助を受けることも選択肢の一つとなります。
特に再犯で実刑の見込みが高い事案では、薬物依存症の根本からの治療の必要性などを考慮し、その観点から保釈を請求し、被告人を身柄拘束から解放させる必要があります。
そして、保釈請求が認められれば、被告人を病院やダルクの治療・支援を受けることができ、
病院やダルクのスタッフの方に証人となっていただき裁判で証人尋問をしたり、意見書を書いてもらうことを視野に入れた弁護活動を行うことも挙げられます。
それらの再犯防止策を講じていることを公判において主張し、被告人にとって少しでも有利な判決の獲得を目指します。

(4)無罪弁護

被告人が罪を認めている場合でも、もし捜査機関による捜査の過程や証拠の収集方法に違法があれば、それを主張していくことで無罪判決を獲得できる可能性があります。

4,まずは弁護士に相談を

福岡県内において覚醒剤取締法違反の当事者となり在宅捜査を受けている方、あるいは家族・親族が覚醒剤取締法違反の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件を専門的に取り扱う弁護士が在籍しており、これまでさまざまな刑事事件・少年事件を経験しております。
覚醒剤取締法違反の当事者となり在宅捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
家族・親族が覚醒剤取締法違反の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
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【事例解説】性的姿態等撮影未遂罪とその弁護活動(女子中学生の背後から衣服の中を撮影しようとしたケース)

2024-06-13

【事例解説】性的姿態等撮影未遂罪とその弁護活動(女子中学生の背後から衣服の中を撮影しようとしたケース)

今回は、商業施設内で女子中学生のショートパンツの中を撮影しようとしたというニュース記事を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:女子中学生の背後から衣服の中を撮影しようとしたケース

福岡市東区の商業施設で、女子中学生Aさんのショートパンツの中を撮影しようとしたとして自称アルバイトのAさんが逮捕されました。
性的姿態等撮影の疑いで逮捕されたのは、福岡市東区の自称アルバイトAさんです。
Aさんは、福岡市東区の商業施設内の書店で、本を読んでいたVさんのショートパンツの中を撮影しようとした疑いがもたれています。
警察によりますと、保安員がスマートフォンを持って店内を徘徊するAさんを発見。
不審に思い、監視を続けていたところ、AさんがVさんの背後から、履いていたショートパンツの中に、スマートフォンを差し込んだため、警察に通報しました。
Aさんはそのまま店から立ち去りましたが、乗っていたバイクのナンバーの解析や防犯カメラなどの捜査から関与が浮上。警察官がAさんの自宅に向かい、事情を聴いていたところ、盗撮を認めたということです。
取り調べに対し、Aさんは容疑を認めたうえで「性的欲求を満たすため」などと話しているということです。
(事例はフィクションです。)

1,性的姿態等撮影罪について

〈性的姿態等撮影罪〉

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の映像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下「性的姿態撮影等処罰法」と言います。)
2条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
1号 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
 イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治40年法律第45号)第177条第1項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
2号 刑法第百176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
3号 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
4号 正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2項 前項の罪の未遂は、罰する。
3項 前2項の規定は、刑法第176条及び第179条第1項の規定の適用を妨げない。

いわゆる盗撮行為については、これまでも各都道府県が定める迷惑防止条例などにより処罰の対象となっていました。
しかし、迷惑防止条例は、都道府県ごとに処罰対象が異なるなど、必ずしもこれらの条例などでは対応しきれない場合もありました。
そこで、そのような場合に対応するために、2023年7月13日に性的姿態撮影等処罰法が施行され、性的姿態等撮影罪を設けることで盗撮行為を厳罰化し、都道府県ごとに処罰対象が異なるといった状態も解消されることになりました。
性的姿態等撮影罪は、正当な理由がないのに、ひそかに、人の性的な姿態を撮影した場合に成立します。
正当な理由」とは、例えば、医師が救急搬送された意識不明の患者の上半身裸の姿を医療行為上のルールに従って撮影する場合などが、これに該当すると考えられます。
また、「ひそかに」とは、撮影される者の意思に反して自分の性的な姿態等を撮影されることを言います。
被害者が13歳以上16歳未満の者で、加害者が20歳未満の場合、加害者が被害者よりも5歳以上年長である場合に、正当な理由なく性的な姿態等を撮影すれば性的姿態等撮影罪が成立します。
被害者が13歳から15歳の場合、加害者が18歳から20歳の場合が問題となります。
例えば、18歳のXさんが、15歳のYさんの性的な姿態等を撮影すれば、Yさんは16歳未満ですが、年齢差が5歳未満であるため、性的姿態等撮影罪は成立せず、処罰の対象外となります。
なぜ、被害者が13歳以上16歳未満の場合には、年齢差が5歳以上年長の者の行為しか処罰されないのかについて、13歳以上16歳未満の者は、相手との関係が対等でなければ性的姿態等を撮影されることについて自由な意思決定が難しくなると考えられているからです。
どのような場合に相手との関係が対等でなくなるのかについて、一般的に、相手との年齢差が大きくなればなるほど、社会経験等の差から対等ではなくなると考えられます。
また、性的姿態等撮影罪には未遂を処罰する規定があることから、正当な理由がないのに、ひそかに、性的な姿態等を撮影する行為を行えば、結果として性的な姿態等が撮影されていなくても、未遂として処罰されることになります。
上記の事例で言えば、Aさんは、正当な理由がないのに、Vさんの意思に反して(「ひそかに」)、Vさんのショートパンツの中(「人が身に着けている下着のうち現に性的な部分を直接若しくは間接に覆っている部分」)に、スマートフォンを差し込んだ時点で、実際にスマートフォンにVさんのショートパンツの中が撮影されたデータ等が残っていなくても、性的姿態等撮影未遂罪が成立することになります。
なお、被害者が18歳未満の場合に、自己の性的好奇心を満たす目的で、被害者を撮影する行為は、児童ポルノ製造罪児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項)が成立し、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。

2,身柄拘束回避・解放、不起訴処分獲得に向けた弁護活動

性的姿態等撮影未遂罪で逮捕された場合は、最長で72時間身柄を拘束されることになります。
そして、72時間を超えて、検察官がさらに身柄を拘束する必要があると判断した場合、裁判所に対して逮捕よりも長期の身柄拘束である勾留を請求します。(刑事訴訟法205条1項
勾留による身柄拘束は、原則として10日間、さらに10日を超えない範囲で延長することが認められているので、最長で20日間、身柄を拘束されることになります。(刑事訴訟法208条
被疑者に対して勾留が認められるのは、勾留の理由や勾留の必要性があると判断された場合です。
勾留の理由は、被疑者が定まった住居を有しない、被疑者による証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合に認められることになります。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
勾留の必要性は、被疑者の身柄を拘束しなければならない必要性と、身柄拘束によって被疑者が受ける不利益とを比較して、勾留することが相当と言えるかにより判断されます。
そこで、身柄拘束回避のための弁護活動としては、勾留の理由や必要性を否定し得る客観的な事情や証拠の収集の活動を行います。
例えば、被疑者が家族と同居していて、同居している家族が身元引受人となり被疑者を監督するという事情があれば、住居不定と逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情になります。
また、上記の事例のように、盗撮行為に使ったスマートフォンが既に捜査機関に押収されていれば、被疑者による証拠隠滅のおそれを否定できると言えるでしょう。
それらの事情が存在しても検察官の勾留請求が認められ、被疑者が勾留されてしまった場合には、身柄拘束からの解放に向けた弁護活動を行います。
まず、被疑者がいかなる理由に基づいて勾留されてしまったのかを知るために、勾留理由の開示請求を行います。(刑事訴訟法207条1項本文82条~86条
そして、理由が明確になれば、前述のようなそれらの理由を否定し得る客観的な事情や証拠の収集や主張をしていくことで、身柄拘束からの早期解放を目指します。
性的姿態等撮影罪は、被害者が存在する犯罪でもあります。
そこで、弁護士は、加害者に代わって被害者との示談交渉を行います。
示談交渉は事件の当事者同士でもすることはできますが、当事者同士での示談交渉はあまりうまくいかないことが多いです。
特に、性的姿態等撮影罪のような性犯罪の場合、被害者側は加害者側に対して自分の連絡先を知らせたくないと考えるのが一般的であることから、加害者が被害者とコンタクトをとることは難しいと言えます。
しかし、弁護士を間に入れることで、被害者の方に安心して頂き、加害者の立場から被害者に対して謝罪・反省の意思を伝えたり、被害弁償等を行うことができれば示談の成立に対して十分な期待が持てると言えます。
そして、示談と言っても加害者側に一方的に都合のいい内容での示談を成立させることは難しく、被害者側の意向をくみ取りつつ、宥恕条項(加害者を許し刑事処罰を望まないことを意味する条項)や被害届の取下げや刑事告訴の取消等の約定を加えた内容での示談を成立させることが肝要です。
また、示談が成立していれば、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれは低いと判断され、早期の身柄解放や、起訴猶予による不起訴処分の獲得も期待できます。
以上より、性的姿態等撮影罪で逮捕されてしまった場合には、少しでも早く弁護士に依頼することをオススメです。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において性的姿態等撮影罪で逮捕等により身柄を拘束されてしまった、あるいは性的姿態等撮影罪で在宅で捜査を受けている方など、性的姿態等撮影罪でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、刑事事件・少年事件に対する豊富な経験や実績がございます。
ご家族等が性的姿態等撮影罪で身柄を拘束されている方に対しては初回接見サービス(有料)を、性的姿態等撮影罪で在宅事件として捜査を受けている等の方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、それぞれご提供しております。
お気軽にご相談ください。

【事例解説】傷害罪とその弁護活動(同僚と口論になり、腹を立てて手拳で顔面を殴って怪我を負わせたケース)

2024-06-10

【事例解説】傷害罪とその弁護活動(同僚と口論になり、腹を立てて手拳で顔面を殴って怪我を負わせたケース)

今回は、同僚と口論になり、腹を立てて手拳で顔面を殴って怪我を負わせたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:同僚と口論になり、腹を立てて手拳で顔面を殴って怪我を負わせたケース

口論から腹を立て、同僚の顔面を手拳で殴ったとして、男が逮捕されました。
傷害の疑いで逮捕されたのは、福岡市の会社員Aさんです。
警察によりますと、福岡市内の飲食店に勤務するVさんから「職場の同僚から殴られた」旨の通報がありました。
警察官が現場の飲食店に駆け付け、事情を聞くなどし、Aさんが口論の末、腹を立てVさんの顔面を手拳で複数回殴り、打撲傷などを負わせたことが明らかになったため、現行犯逮捕しました。
逮捕されたAさんは、「殴ったことは間違いない」と容疑を認めているということです。
(事例はフィクションです。)

1,傷害罪について

〈傷害罪〉(刑法204条)

人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪は、人の身体を「傷害」した場合に成立します。
傷害」とは、人の生理機能を侵害することを言います。
通常は、殴る・蹴るなどの有形的方法によってなされますが、「傷害」の結果を発生させるものであれば、無形的方法によるものでも「傷害」に該当します。
無形的方法による「傷害」に該当するものとしては、嫌がらせの電話により被害者を精神衰弱症にかからせた場合(東京地裁判決昭和54年8月10日)や性病に感染した自分の性器を被害者に押し当てて性病に罹患させた場合(最高裁判決昭和27年6月6日)があります。

2,傷害罪で身柄拘束された場合の弁護活動

(1)早期の身柄解放に向けた弁護活動

傷害罪で逮捕されると、警察に48時間、その後、検察庁に身柄を送検されて24時間身柄を拘束されて取調べを受けることになります。
検察官において、捜査状況等にかんがみて、さらに被疑者の身柄を拘束する必要性があると判断した場合には、勾留請求がなされることになります。
被疑者勾留は、被疑者が定まった住居を有しない場合、被疑者による証拠隠滅または逃亡のおそれがある場合に認められます。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号)
勾留による身柄拘束は、原則として10日間、さらに拘束の必要があると判断された場合には10日を超えない範囲で延長が認められています。(刑事訴訟法208条
傷害罪で検察官が勾留請求した場合における勾留が認められる割合は90% 近くとなっており、傷害罪で逮捕された事件のほとんどが勾留されていると言えます。
(参照:令和5年版検察庁既済事件の身柄率・勾留請求率・勾留請求却下率の推移
したがって、傷害罪による身柄拘束は比較的長期にわたる可能性があるため、弁護活動としては、早期の身柄解放の実現を目指すことが考えられます。
被疑者勾留は、被疑者の住居不定、被疑者による証拠隠滅または逃亡のおそれがある場合に認められるため、それらを否定し得る客観的な証拠や事情を収集・主張していく必要があります。
被疑者と同居している家族が被疑者の身元を引き受ける、あるいは同居していない家族・親族でも被疑者の身元を引き受ける等の事情があれば、被疑者を監督し、裁判所や捜査機関への出頭の機会が確保されるため、被疑者の逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情となるでしょう。
また、上記の事例のように、被害者との面識がある場合には、被害者や犯行現場に接近しない旨の誓約書を作成することで、被疑者による証拠隠滅のおそれがないことを示す客観的な事情となり得ます。
そして、傷害罪は被害者が存在する犯罪でもあることから、被害者との示談交渉を行うことが考えらます。
示談の成否は早期の身柄解放だけでなく起訴・不起訴の処分に対しても大きく影響します。
そのため、弁護士は、被害者とコンタクトをとり、加害者の立場から、反省・謝罪の意を述べて、被害弁償等を行い示談の成立を目指します。
示談が成立した場合には、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれはないと考えられるため、釈放による早期の身柄解放が十分に期待できます。

(2)不起訴処分獲得に向けた弁護活動

傷害罪で公判請求されて裁判となると、有罪となり前科が付いてしまう可能性があります。
前科が付いてしまうと、その後の社会生活を送る上でさまざまな影響が出てくるおそれがあります。
たとえば、職場からの解雇、公務員や会社の採用時に前科の有無を確認され、判断材料になることがあるなどが挙げられます。
被害者との示談が成立していれば、それを検察官に主張することで、起訴猶予による不起訴処分の獲得が期待できます。
以上より、傷害罪で逮捕・勾留されてしまった場合には、少しでも早く弁護士に相談することが大切です。

3,まずは弁護士に相談を

福岡市内において、傷害罪の当事者となり身柄拘束されずに捜査をされている方、あるいは家族・親族等が傷害罪の当事者となり身柄を拘束されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件を専門的に取り扱い、さまざまな経験や実績のある弁護士が在籍しております。
傷害罪の当事者となり身柄拘束をされずに捜査をされている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
家族・親族等が傷害罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
お気軽にご相談ください。

【事例解説】少年事件とその弁護活動(少年2人がガラスを割り会社の事務所に侵入し車のキーと軽トラックを盗んだケース)

2024-06-07

【事例解説】少年事件とその弁護活動(少年2人がガラスを割り会社の事務所に侵入し車のキーと軽トラックを盗んだケース)

今回は、17歳の少年2人がガラスを割り会社の事務所に侵入し車のキーと軽トラックを盗んだというニュース記事を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:少年2人がガラスを割り会社の事務所に侵入し車のキーと軽トラックを盗んだケース

福岡市内の会社事務所のガラスを割って、中にあった会社所有のエンジンキーを使って、軽トラックを盗んだ疑いで少年2人が逮捕されました。
建造物侵入窃盗の疑いで逮捕されたのは、福岡市内在住の少年Aさんら2人で、いずれも17歳です。
警察によりますと、2人は共謀して福岡市内にある会社事務所のガラスを割って侵入しました。
そして中にあった、エンジンキーを手にして、会社が所有する軽トラック1台を盗んだ疑いです。
軽トラックが無くなっていることに気づいた会社の関係者が警察に連絡して、防犯カメラの解析などから、2人を特定して、逮捕しました。
警察は2人のうち、どちらかが会社に出入りしていたものとみて、動機などを調べています。
認否については明らかにしていません。
BS大分放送 4/19(金)10:32配信のニュース記事を参考に、地名や内容を一部変更し引用しています。)

1,建造物侵入罪について

〈建造物侵入罪〉(刑法130条前段)

正当な理由がないのに、…人の看守する…建造物に侵入し…た者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

正当な理由がないのに、人の看守する建造物に侵入した場合に、建造物侵入罪は成立します。
人の看守する」とは、人が事実上支配管理すること、すなわち侵入を防止するための人的・物的設備を施していることを言います。
侵入」とは、管理権者の意思に反する立ち入りを言います。
建造物」とは、屋根を有し支柱などによって支えられた土地の定着物で、人が出入りできる構造のものを言います。

2,窃盗罪について

〈窃盗罪〉(刑法235条)

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪は、他人の財物を窃取した場合に成立します。
財物」とは、財産的価値のある有体物(固体・液体・気体)であるとするのが通説的見解となっています。
電気については、 無体物であるため原則として財物には当たりませんが、「電気は、財物とみなす」(刑法245条)と規定されているため、「財物」と同じように扱われるため、「財物」と同じように窃盗罪の対象とされます。
窃取」とは、他人の占有する財物を、占有者の意思に反して、その占有を侵害し自己又は第三者の占有に移転させることを言います。

3,少年事件の場合に開かれる手続きについて

少年事件では、成人の刑事事件とは異なり、捜査機関が捜査をした結果、犯罪の嫌疑があると判断した場合、事件を家庭裁判所に送致することになっています。(全件送致主義少年法41条42条
また、身柄拘束が少年に与える影響等を考慮し、少年被疑者が勾留の要件を充たしていることに加えて、やむを得ない場合でなければ、検察官は勾留を請求することができません。(少年法43条3項
そして、裁判所も、やむを得ない場合でなければ、勾留状を発することができません。(少年法48条1項
少年事件では、事件が家庭裁判所に送られると非公開の審判という手続きで審理が行われることになり(少年法22条2項)、弁護士は、弁護人ではなく付添人として活動していくことになります。(少年法10条1項

4,審判が開かれた場合の弁護活動

少年事件の審判では、少年被疑者の非行事実に加えて、要保護性も審理の対象になります。
要保護性とは、①犯罪的危険性、②矯正可能性、③保護相当性が認められることを言います。
犯罪的危険性とは、少年の性格や環境に照らして将来再び非行をしてしまう可能性があることを言います。
矯正可能性とは、保護処分による矯正教育を行うことで再び非行を行う危険性を排除することができる可能性を言います。
保護相当性とは、保護処分による保護が最も有効かつ適切な処遇であることを言います。
少年事件では、非行が軽微なものであったとしても、要保護性が高い場合には、少年院送致などの重い処分がなされる可能性があります。
そのため、少年事件における付添人としての活動は、非行事実に争いが無い場合には、要保護性の解消が重要となります。
要保護性の解消に向けた活動としては、少年被疑者本人への働きかけを行い、反省を促し、被害者への謝罪の気持ちを持てるようにするといった内面的なものから、少年の事件後の状況を把握したうえで、保護者だけでなく社会活動の場が整っていて、社会内で保護者を含めた「大人」が少年に指導することが期待できるため施設内処遇(あるいは保護処分)は必要ではないとった客観的事情や証拠の収集活動など種々様々な活動が挙げられます。
以上のような活動を行い、少年被疑者がその後の社会生活を送っていくうえで、少しでも有利になるような結果を実現できるよう尽力いたします。

4,まずは弁護士に相談を

福岡県内において少年事件でお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件を専門的に取り扱い、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験してきました。
少年事件の当事者で身柄拘束を受けていない方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
家族・親族が少年事件の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
お気軽にご相談ください。

【事例解説】威力業務妨害罪とその弁護活動(飲食店で迷惑行為を行う動画を撮影しSNSに投稿して店の業務を妨害したケース)

2024-06-04

【事例解説】威力業務妨害罪とその弁護活動(飲食店で迷惑行為を行う動画を撮影しSNSに投稿して店の業務を妨害したケース)

今回は、飲食店において水の入ったピッチャーのふたを舐めるなどの迷惑行為を行う様子を動画で撮影し、それをSNSに投稿して店の業務を妨害したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:飲食店で迷惑行為を行う様子を動画で撮影しSNSに投稿して店の業務を妨害したケース

福岡市中央区にある飲食店において、迷惑行為を行う様子の動画がSNSに投稿された事件で、福岡県警察中央警察署は、福岡市在住の大学生Aさんら3人を威力業務妨害の疑いで逮捕しました。
中央警察署の発表によりますと、Aさんらは、水の入ったピッチャーのふたを舐めるようなしぐさをする様子をスマートフォンで動画を撮影し、SNSに投稿したところ、投稿された動画が拡散された動画により店側に苦情の対応などをさせて業務を妨害した疑いが持たれています。
警察の調べに対し、Aさんらは動画の撮影と投稿を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,威力業務妨害罪について

〈威力業務妨害罪〉(刑法234条)

威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

刑法に定められた威力業務妨害罪は、①威力を用いて②の③業務を④妨害した場合に成立します。
①「威力」とは、人の意思を制圧するような勢力を言い、暴行・脅迫を用いる場合のみならず、それに至らない程度の威迫行為を用いる場合にも「威力」に該当します。
過去の裁判例では、猫の死骸を事務所の机の引き出し内に入れておいて被害者に発見させた場合(最高裁判決平4年11月27日)や教室で授業中の大学講師に対して大きな声で質問し続けた場合(大阪高等裁判所判決昭和58年2月1日)などが、「威力」に該当するとしています。
②「」には、自然人のみならす法人も対象となります。
③「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務又は事業を言います。
④「妨害」とは、業務の平穏かつ円滑な遂行を害するおそれのある行為を言い、実際に業務遂行の妨害したことは必要となりません。

2,身柄解放・不起訴処分獲得に向けた弁護活動

威力業務妨害で逮捕・勾留されると、最長で23日間、身柄を拘束されて捜査機関による取調べを受け、検察官により起訴・不起訴が判断されます。
そこで、まず、早期の身柄解放に向けた弁護活動を行います。
被疑者段階における勾留が認められるのは、被疑者が定まった住居を有しない場合、被疑者による証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
そのため、弁護活動としては、それらの要件を否定し得る客観的な事情や証拠の収集・主張していくことが考えられます。
例えば、被疑者が定まった住居を有しない場合には、ご家族や親族の方にお願いして被疑者の身柄を引き受けてもらうなど環境調整を行い、被疑者の住居不定や逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情となるため、それらを捜査機関や裁判所に対して主張していきます。
また、上記の事例のように、犯罪行為に使われたスマートフォンやパソコンなどの電子端末が捜査機関に既に押収されている場合には、被疑者による証拠隠滅は困難であるため、剃証拠隠滅のおそれを否定し得る客観的な事情であると言えるでしょう。
以上のような弁護活動を行い早期の身柄解放を目指します。
威力業務妨害罪は、被害者が存在する犯罪でもあるため、被害者との示談交渉が重大な弁護活動の1つでもあります。
示談交渉は加害者側と被害者側の当事者同士でも行うことはできますが、当事者同士での示談交渉は拗れて上手くいかない可能性があります。
そこで、弁護士が加害者の立場から、被害者に対して反省・謝罪の意思を示し、被害の弁償を行うことで示談の成立を目指します。
示談が成立し被害者が加害者側を許していれば、起訴猶予による不起訴処分の獲得が期待できます。
そのため、反省・謝罪の意思を示し被害弁償を行うだけでなく、宥恕条項(加害者の謝罪を受け入れ加害者に対する刑事処罰を望まないことを意味する条項)や被害届の取下げや刑事告訴の取消などの約定を加えた内容での示談を成立させることが必要不可欠です。
また、示談が成立すれば、不起訴処分の獲得が期待できるだけでなく、捜査機関や裁判所から被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれは低いと考えられ、早期の身柄解放も期待できます。
もっとも、示談は、逮捕されてから起訴・不起訴が決められるまでの間に成立させていることが重要であり、起訴されてしまうと前科が付く可能性があり、職場からの解雇や転職活動、婚姻関係の解消(離婚)など、その後の人生に多大な影響を及ぼすことが懸念されます。
そのため、威力業務妨害罪で逮捕・勾留により身柄を拘束されてしまった場合や、身柄拘束を受けない在宅事件として捜査が進んでいる場合には、少しでも早く弁護士に相談することをオススメします。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において威力業務妨害罪の当事者となり在宅事件で捜査を受けている、あるいはご家族等が威力業務妨害罪の当事者となり身柄を拘束されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件に特化した弁護士が在籍しております。
そのため、威力業務妨害罪の当事者で在宅事件として捜査を受けているなど身柄を拘束されていない方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が威力業務妨害罪の当事者となり身柄を拘束されている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
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【事例解説】職務質問中に警察官の顔を殴り怪我を負わせた場合に成立する可能性のある犯罪とその弁護活動について

2024-06-01

【事例解説】職務質問中に警察官の顔を殴り怪我を負わせた場合に成立する可能性のある犯罪とその弁護活動について

今回は、職務質問中に警察官の顔を殴り怪我を負わせたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例 :職務質問中に警察官の顔を殴り怪我を負わせたケース

職務質問をした警察官の顔を拳で殴り怪我を負わせたとして、福岡県警察春日警察署は、公務執行妨害傷害の容疑で春日市在住の会社員Aさんを現行犯逮捕しました。
警察の調べに対し、Aさんは、逮捕当時酒に酔っていたため「覚えていません。」などと容疑を否認しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

公務執行妨害罪傷害罪は、どちらも刑法に定められています。

1,公務執行妨害罪について

〈公務執行妨害罪〉(刑法95条1項)

公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

公務執行妨害罪は、①公務員が②職務を執行するに当たり、③暴行又は脅迫を加えた場合に成立します。
①「公務員」とは、法令により公務に従事する職員を言います。
法令とは、法律、命令、条例を指します。
公務とは、国または地方公共団体の事務を言います。
職員とは、法令上の根拠に基づき国または地方公共団体の機関として公務に従事する者をいます。
②「職務を執行するに当たり」とは、公務の執行の際に、という意味であり、また執行される職務については適法なものであることが要求されます。
仮に違法であっても公務であれば保護されるとなれば、それは公務員の身分や地位を保護することになり、公務執行妨害罪が公務の円滑の執行、すなわち公務を保護するとした趣旨に反すると考えられているからです。
「職務」とは、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてであるとされています。(最高裁判決昭和53年6月29日
③「暴行又は脅迫を加えた」における「暴行」とは、不法な有形力の行使を言い、「脅迫」とは、相手方を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知を言います。
公務執行妨害罪が公務の円滑な執行を保護している趣旨からすれば、暴行または脅迫は、公務員による職務の執行を妨害するに足りる程度のものであれば良いと考えられています。
また、「暴行」は、直接公務員の身体に向けられる必要はなく、職務執行を妨害するに足りる程度の暴行と言えれば、間接的に公務員に向けられた暴行(間接暴行)でも、公務執行妨害罪は成立します。
過去の裁判例では、覚せい剤取締法違反の現行犯逮捕の現場において、警察官に証拠として差し押さえられた覚せい剤入り注射液入りアンプルを足で踏みつけて破壊した事案では、間接暴行により警察官の職務執行を妨害したとして、公務執行妨害罪の成立を認めています。(最高裁判決昭和34年8月27日
また、公務執行妨害罪は、公務員が職務を執行するに当たり、暴行または脅迫が加えられた時点で既遂となり、現実に職務執行が妨害されたことを要しません。
上記の事例で考えると、警察官という「公務員」が行う職務質問(警察官職務執行法2条1項)という「職務を執行するに当たり」、顔を拳で殴るという「暴行」を加えているため、Aさんに公務執行妨害罪が成立すると考えられます。

2,傷害罪について

〈傷害罪〉(刑法204条)

人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪は、人の身体を「傷害」した場合に成立します。
傷害」とは、人の生理的機能を侵害することを言います。
殴る・蹴るなどの有形的な方法のみならず、病気を移すことなど無形的な方法によって「傷害」の結果を生じさせれば、傷害罪は成立します。
傷害」の結果とは、打撲や擦過傷などの外傷の他に、睡眠薬により意識朦朧状態にさせることやPTSDに罹患させることなどもこれに該当します。

3,観念的競合について

観念的競合とは、「1個の行為が2個以上の罪名に触れる」場合をいい、その場合は「その最も重い刑により処断」されることになります。(刑法54条前段
上記の事例で言えば、Aさんの職務執行中の警察官の顔を殴り怪我を負わせたという1個の行為が、公務執行妨害罪傷害罪という2個以上の罪名に触れています。
そのため、Aさんは、「その最も重い刑により処断」されることになりますが、公務執行妨害罪の法定刑は3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金傷害罪15年以下の懲役または50万円以下の罰金であるため、傷害罪の刑罰をもって処断されることになります。

4,身体拘束からの解放・不起訴処分獲得などに向けた弁護活動

逮捕による身柄拘束は最長で72時間続き、捜査の必要性などさらに被疑者の身柄を拘束する必要があると判断された場合、逮捕より長期の身体拘束である勾留がなされることがなされることがあります。
勾留による身柄拘束は、最長で20日間続くため、被疑者段階における身柄拘束は、逮捕の時から起算すると最長で23日間続くことになります。
そこで、早期の身体拘束からの解放に向けた弁護活動を行います。
被疑者の勾留が認められるのは、被疑者が定まった住居を有しない場合、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
そこで、それらを否定し得る客観的な事情や証拠の収集・主張といった活動を行います。
例えば、被疑者が家族と同居しており、同居している家族が被疑者の身元引受人になるといった事情があれば、被疑者の住居不定や逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情と言えます。
また、上記の事例で言えば、被疑者であるAさんは現行犯逮捕されており、また、被害者も警察官であるため、Aさんによる証拠隠滅のおそれは低いことを示す客観的な事情と言えるでしょう。

公務執行妨害罪は、公務の執行、すなわち公務自体を保護しているため、直接の被害者が存在しません。
直接の被害者がいないということは示談する相手がいないので示談ができない ということになります。
しかし、謝罪の手紙を書き反省の意を示し再犯可能性がないことや、贖罪寄付を行うといった弁護活動により、不起訴処分の獲得を目指します。
贖罪寄付とは、被害者のいない刑事事件を起こしてしまった場合など、被疑者や被告人が反省や悔悟の気持ちを示すために公的な団体等に対して行う寄付を言います。
贖罪寄付は、各都道府県にある弁護士会や法テラス、日弁連交通事故相談センターで行うことができます。
傷害罪については、被害者が存在するため示談を行うことが可能です。
しかし、上記の事例のように、被害者が公務員である場合は、示談には応じないといった場合も考えられますが、被疑者が反省していることや被害の弁償をする意思があることなどを粘り強く主張していくといった弁護活動が考えられます。

5,まずは弁護士に相談を

福岡県春日市において、公務執行妨害罪傷害罪の当事者となってしまった、あるいはご家族等が当事者となり身柄を拘束されている場合には、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、刑事事件・少年事件に対する豊富な経験や実績がございます。
公務執行妨害罪傷害罪を起こしてしまい在宅捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が公務執行妨害罪傷害罪を起こしてしまい身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
お気軽にご相談ください。

【事例解説】暴行罪とその弁護活動(口論になった相手に肘うちなどの暴行を加えたケース)

2024-05-29

【事例解説】暴行罪とその弁護活動(口論になった相手に肘うちなどの暴行を加えたケース)

今回は、集合住宅の前で近隣住民Vさんと口論になり、肘うちなどの暴行を加えたというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:集合住宅の前で近隣住民と口論になり、肘うちなどの暴行を加えたケース

アパートの前で地面の氷を割っていたところを近所の人に注意されて口論になり、肘打ちをした疑いでAさんが逮捕されました。
逮捕されたのは福岡県福岡市西区に住む無職のAさんです。
警察によりますと、Aさんは22日午前10時半すぎ、自宅アパートの敷地内で近所に住むVさんの腕を1回、肘打ちした暴行の疑いが持たれています。
Vさんの娘がその様子を目撃して「近隣の人に母がどつかれた」と110番通報。駆け付けた警察官がAさんをその場で逮捕しました。
Vさんにけがはありませんでした。
Aさんは、アパートの前で地面の氷をスコップで割っていたところ、Vさんに注意されたことから口論になったということです。
警察の取り調べに対して、Aさんは「氷割りはやったと思うが、Vさんを叩いたりした記憶はない」と容疑を否認しています。
警察は過去にトラブルがあったかどうかも含めて調べています。
HBC 北海道放送 2024年3月22日(金) 16:54の記事を参考にし、地名などを変更して引用しています。)

1,暴行罪について

〈暴行罪〉

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」(刑法208条

暴行罪における「暴行」とは、人の身体に対する不法な有形力の行使を言います。
殴る・蹴る・叩く等の典型的なものから、病原菌や毒物、さらに光、音、電機や熱などの物理力を行使する場合も広く「暴行」に含まれます。
また、行使された有形力が被害者の身体に接触しなかった場合でも、暴行罪は成立します。
実際、相手を驚かせる目的で、相手の数歩手前を狙って石を投げたという事案では、仮に投げた石が相手方に接触しなくても暴行罪は成立するとした裁判例があります。(東京高裁判決昭和25年6月10日
そして、「傷害」とは、傷害罪におけるのと同じ意味で、人の生理機能を障害することを言います。
傷害」の具体例としては、擦過傷や打撲傷のような外傷以外に、めまい、失神、中毒や病気に罹患させることも含まれます。
暴行罪傷害罪の未遂規定のような性格を有しているため、暴行罪の成立において傷害の結果を発生させるほどの危険性が必要か否かが問題となります。
判例は、暴行はその性質上障害を生ぜしめるものである必要がないという危険不要説の立場に立っています。
そのため、たとえば、電車に乗ろうとしている人の衣服を引っ張り電車に乗ることを邪魔しようとした場合にも暴行罪は成立することになります。(大審院判決昭和8年4月15日

2,弁護活動

暴行罪で逮捕されると、逮捕されてから72時間で捜査機関による取調べを受けることになります。
暴行罪傷害罪強盗罪などと比べると軽微な犯罪ではありますが、取調べにおいて暴行の容疑を否認している場合には勾留によるさらに長期の身柄拘束を受けるおそれがあります。
勾留は、被疑者が定まった住居を有しない場合、被疑者による証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
その期間は原則として10日間、延長された場合にはさらに10日間の合計20日間、逮捕から計算すると最長で23日間、身柄を拘束されることになります。
そのため、弁護士に依頼するメリットとしては、取調べ対応についての適切なアドバイスを受けることができることが挙げられます。
たとえば、繁華街でお酒を飲んで意識がはっきりしていない状態で喧嘩になって暴行を加えてしまったが、防犯カメラにその映像が映っているなどの場合であれば、酔っていて記憶が無いなどと否認するのではなく、記憶はないが事実を争わないと取調べで供述すれば、早期の身柄解放が期待できます。
また、暴行罪は被害者がいる犯罪です。
繰り返しになりますが、暴行罪は被害者に暴行を加えたがケガなど傷害の結果が発生しなかった場合に成立する犯罪です。
そのため、被害の程度は比較的小さいと言えます。
そこで、被害者に対して謝罪し、お見舞金を支払うなど行い示談交渉を進めて、示談の成立に向けた活動を行います。
起訴するか不起訴にするかは検察官が決めます。(起訴便宜主義刑事訴訟法248条
示談が成立していれば、検察官は起訴猶予による不起訴処分になる可能性が高くなります。
不起訴処分になれば前科が付くことを回避できるため、その後の社会生活への影響を最大限小さくすることができます。
しかし、通常、事件の加害者と被害者の当事者同士での示談交渉はうまくいかず拗れる可能性が高いです。
また、加害者側から示談交渉を働きかけると、捜査機関からは、加害者が自分に都合のいい供述をしてもらうため被害者に供述誘導をして証拠を隠滅しようとしているのではないかなどと疑われかねません。
しかし、弁護士が間に入れば、被害者に対して加害者が反省していることなど丁寧な説明をすることができ、よりスムーズな示談の成立が期待できます。
そのため、暴行罪で逮捕された、または在宅で捜査を受けている場合には、少しでも早く弁護士に依頼することがオススメです。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において暴行罪の当事者となってしまった方または家族・親族が暴行罪の当事者となってしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事弁護に関する経験や実績が豊富な刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、暴行罪の当事者で警察から在宅で捜査を受けている方には初回無料でご利用いただける法律相談を、家族・親族が暴行罪の当事者となり身柄を拘束されている方には初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
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【事例解説】窃盗罪とその弁護活動(スーパーの売り場から商品を持ち出し会計前に店内で費消したケース)

2024-05-26

【事例解説】窃盗罪とその弁護活動(スーパーの売り場から商品を持ち出し会計前に店内で費消したケース)

今回は、スーパーの売り場からカップ焼酎を持ち出してスーパー内のトイレに持ち込み、会計を済ませる前にトイレ内で飲んだというニュース記事を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:スーパーの売り場から商品を持ち出し会計前に店内で費消したケース

スーパーの売り場から、代金を支払うことなくカップ焼酎1点をトイレに持ち込み、飲んだとしてAさんが窃盗の疑いで逮捕されました。
この店では、カップ焼酎の盗難が相次いでいて、警察が関連を調べています。
窃盗の疑いで逮捕されたのは、福岡県小郡市のAさんです。
Aさんは、小郡市のスーパーで、カップ焼酎1点を盗んだ疑いが持たれています。
商品の棚卸をしていた店長が、カップ焼酎の数量が合わないことに気づき、防犯カメラを確認したところ、Aさんがカップ焼酎を盗んだとみられる映像が確認されたということです。
Aさんは、代金を支払うことなく売り場のカップ焼酎をトイレに持ち込んで個室内で飲み、容器をトイレに放置していたとみられています。
取り調べに対し、Aさんは、容疑を認めた上で「夫が家計を管理していてお金が無かった」「今でも酒が好き」などと話しているということです。
RKBオンライン 2024/04/03 15:42の記事を参考にして、地名や内容を一部変更して引用しています。)

1,窃盗罪について

〈窃盗罪〉(刑法235条)

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪は、①他人の財物を②窃取した場合に成立します。
また、上記の他に③故意刑法38条1項)と条文上明記されてはいませんが④不法領得の意思が必要になります。
①他人の「財物」とは、所有権の対象であれば広く保護の対象となります。
しかし、経済的にも主観的にも価値が認められないような場合には、保護の対象となりません。
判例では、メモ紙1枚(最高裁判決昭和43年3月4日)やちり紙13枚(東京高裁判決昭和45年4月6日)などが財物性を否定されています。
②「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことを言います。
上記の事例では、Aさんはスーパーの売り場からカップ焼酎を持ち出して、トイレに持ち込み飲んだ時点で、占有者であるスーパーの店長またはオーナーの意思に反してカップ焼酎に対する占有者の占有を排除し、カップ焼酎を自身の占有に移しているため、「窃取した」と言えます。
故意とは、犯罪事実の認識・認容を言い、窃盗罪の場合は他人の財物を窃取することを認識し、窃取することになっても構わない(認容)していることを言います。
不法領得の意思とは、Ⓐ権利者を排除して他人の物を自己の所有物として(権利者排除意思)、Ⓑその経済的用法に従いこれを利用・処分する意思(利用処分意思)を言います。
Ⓐの権利者排除意思は、窃盗罪使用窃盗(例えば、他人の自転車を数分間勝手に乗り回すことなど)を区別するために必要とされます。
Ⓑの利用処分意思は窃盗罪毀棄隠匿罪との区別のために必要とされます。
例えば、会社の同僚を困らせる目的で、仕事で使うパソコンを持ち帰った場合は、窃盗罪ではなく器物損壊罪刑法261条)の成立が検討されることになります。

2,身柄拘束の解放、不起訴処分獲得に向けた弁護活動

窃盗罪で逮捕・勾留された場合、身柄を拘束されて捜査機関の取調べを受けることになります。
勾留による身柄拘束は、原則として10日間、さらに必要があると判断された場合には10日を超えない範囲で延長が認められるため、最長で20日間、逮捕の時から数えると最長で23日間身柄を拘束されることになります。(刑事訴訟法208条
逮捕に対する不服申立手続きは法律上用意されていませんが、勾留に対する不服申立手続きは準抗告刑事訴訟法429条1項)と勾留取消請求刑事訴訟法207条1項本文、87条1項)の2種類があります。
準抗告:被疑者において、そもそも勾留を認める理由が存在しないことを裁判所に申し立てること
勾留取消請求:被疑者を勾留した当初は勾留の理由が存在したが、後発的な事情の変化により被疑者の勾留を認める理由が存在しなくなったため、勾留を取り消すよう裁判所に申し立てること
被疑者の勾留が認められるのは、被疑者が定まった住居を有しない場合、被疑者による証拠隠滅又は逃亡のおそれが認められると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
そのため、早期の身柄解放に向けた弁護活動としては、それらを否定し得る客観的な事情や証拠の収集活動を行うことが挙げられます。
例えば、報道の通りであるとすれば、Aさんがカップ焼酎を盗んだとみられる映像が記録されている防犯カメラは、既に捜査機関により押収されているという事情は、Aさんによる証拠隠滅のおそれを否定する客観的な事情になります。
そして、Aさんには配偶者がいるため、配偶者に身元引受人になってもらえれば、Aさんの逃亡のおそれを否定する客観的な事情にもなります。
また、Aさんには定まった住居が有しているため、住居不定の要件も否定できます。
このような弁護活動を行うことで、被疑者の早期の身体解放を目指します。
窃盗罪は、財産事件であり被害者が存在する犯罪でもあります。
そのため、被害者の方との示談交渉を被疑者に代わって行います。
示談交渉は、事件の加害者と被害者の当事者同士で行うこともできますが、当事者同士での交渉は通常は拗れて上手くいかないことがほとんどです。
また、スーパーやコンビニ、書店などは示談を拒否している場合が多く、示談交渉が難航することが考えられます。
そのため、弁護士が被疑者に代わって、被害者の方が不快にならないよう最大限配慮して、被疑者の謝罪の弁を述べ、被害弁償を行うなど慎重を期した粘り強い交渉を行い、示談の成立を目指します。
また、示談の内容として、宥恕条項(加害者を許し、刑事処罰を望まないことを意味する条項)や既に被害届の提出や刑事告訴がなされていればその取下げや取消しの約定を加えた内容での示談を成立させることが必要不可欠となります。
そして、示談の成立は、被疑者の身柄拘束からの早期解放においても重要な意味を持つだけでなく、被疑者が逮捕されてから起訴されるまでの間に示談を成立させることができれば、起訴猶予による不起訴処分の獲得も期待できます。
示談の成立は逮捕されてから起訴されるまでの間に成立させる必要があるため、窃盗罪で逮捕されてしまった場合には、少しでも早く弁護士に依頼することがオススメです。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県小郡市で窃盗罪の当事者となり在宅で捜査を受けている方、またはご家族等が窃盗罪の当事者となり身柄を拘束されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所であり、刑事事件・少年事件における豊富な経験と実績がございます。
そのため、窃盗罪で在宅捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、窃盗罪でご家族等が身柄を拘束されている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
お気軽にご相談ください。

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