Author Archive
【事例解説】監禁罪とその弁護活動(飲食店で知り合った女性を自宅に連れ込み監禁したケース)
【事例解説】監禁罪とその弁護活動(飲食店で知り合った女性を自宅に連れ込み監禁したケース)
今回は、飲食店で知り合った女性を自宅に連れ込み監禁したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:飲食店で知り合った女性を自宅に連れ込み監禁したケース
福岡市西区にある自宅マンションに、飲食店で知り合った女性Vさんを監禁したとして、福岡県警西警察署は、Aさんを監禁の疑いで逮捕しました。
監禁の疑いで逮捕されたのは、福岡市西区に住む会社員Aさんです。
警察によりますと、Aさんは、飲食店で知り合ったVさんを自宅マンションに連れ込み監禁した疑いが持たれています。
Vさんから「Aさんから部屋から出たら痛い目に合わせると言われている。助けてほしい。」という旨の連絡を受けた友人が警察に通報し、事件が発覚しました。
その後、駆け付けた警察官がAさんから事情を聴き、その場で現行犯逮捕しました。
警察の調べに対し、Aさんは「部屋から出たら痛い目に合わせるなどと脅すようなことは言っていない」などと供述し、容疑を否認しています。
(事例はフィクションです。)
1,監禁罪について

〈監禁罪〉(刑法220条後段)
不法に人を…監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
監禁罪とは、不法に人を監禁した場合に成立する刑法の犯罪です。
「不法に」とは、違法にという意味であり、例えば被害者が監禁されることを承諾しているなど違法性が排除される事情が無ければ、当該監禁行為は「不法に」監禁したものと考えられます。
「監禁」とは、一定の場所から脱出できないようにして被害者の場所的移動の自由を奪うことをいいます。
場所的移動の自由とは、逮捕・監禁罪の保護法益であり、被害者が移動しようと思えば移動できる自由をいいます。(可能的自由説)
また、可能的自由説からは、被害者に意思能力は不要であり、被害者に場所的移動の自由が奪われていることの認識も不要であると考えられています。
そのため、被害者が監禁されていることを理解できない幼児や認知症などの精神疾患を患っており意思能力が欠如している場合でも監禁罪は成立します。
一定の場所は、必ずしも壁などによって囲まれた場所であることは必要ではありません。
また、脱出についても、脱出が全く不可能でなくても著しく困難であればいいとされています。
脱出できたか否か、脱出がどの程度困難であったかなどは、物理的障害の有無や程度、被害者の年齢や性別など具体的事情の下で、一般人を基準にして客観的に判断されます。
被害者を自分が運転する第2種原動機付自転車の荷台に乗せたまま1キロメートルほど走行した事件では、後部荷台に外囲いなどはなかったものの監禁罪の成立を認めています。(最高裁判例昭和38年4月18日)
監禁の方法としては、暴行・脅迫を用いて被害者を部屋に閉じ込めるなど被害者を外部への場所的移動を不可能・困難にする場合や、被害者を騙して睡眠薬を飲ませて眠らせることで室内に留め置いた場合などが監禁罪になり得ます。
脅迫による監禁とは、被害者を脅迫することによって被害者に恐怖心による心理的拘束を加えて脱出を不可能または困難にすることをいいます。
上記の事例のように、AさんはVさんに対して「部屋から出たら痛い目に合わせる」などの脅迫し、Vさんに恐怖心による心理的拘束を加えて脱出を不可能または困難にしているため、Aさんに監禁罪が成立することが考えられます。
2,否認事件における弁護活動
上記の事件のように、被疑者が容疑について否認しており、逮捕によって身柄拘束を受けている場合の弁護活動としては取調対応についてのアドバイスをすることが考えられます。
逮捕により身柄拘束を受けている被疑者は、捜査機関からの取調べを受けることになりますが、取調室という密室で一人きりで取調べを受けなければならないこと、家族や友人など外部との接触がとれなくなることなどから不安や恐怖を抱え、冷静な状態で取調べに臨むことが難しくなることがあります。
また、やみくもに黙秘権を行使すれば取調官の取調べが厳しくなったり、勾留を匂わせて被疑者の不安や恐怖を煽り立てて被疑者に自白を誘導するような取調べが行われることも考えられます。
そして、取調べにおける被疑者の供述は、その後裁判が開かれた場合には証拠して重要な役割を果たすことになるため、取調べでは慎重な供述が求められます。
もっとも、先述した被疑者の精神状態や適切な黙秘権の行使については、刑事事件についての専門的な知識や経験が要求されると言えます。
そこで、弁護士が被疑者と接見し、適切な黙秘権の行使など取調対応についてアドバイスいたします。
また、弁護士は身柄拘束を受けている被疑者のご家族などからの伝言を預かり被疑者に伝えることができるため、被疑者との接見は被疑者の不安や恐怖の解消にも繋がります。
もし被疑者に対して違法または不当な取調べが行われた場合には、被疑者が適切に黙秘権を行使することが難しくなります。
そのような違法または不当な取調べが行われたとの報告を受けた場合には、然るべき機関(警察の場合には捜査官や警察署長)に対して抗議します。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内においてご家族等が監禁罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験し、当該分野において高い実績を誇ります。
ご家族等が監禁罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)をご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
【事例解説】性的姿態等撮影罪とその弁護活動(ドラッグストアで女性のスカートの中をスマートフォンで撮影したケース)
【事例解説】性的姿態等撮影罪とその弁護活動(ドラッグストアで女性のスカートの中をスマートフォンで撮影したケース)
今回は、福岡市内にあるドラッグストアにおいて、自分のスマートフォンを使って女性のスカートに中を撮影したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:ドラッグストアで女性のスカートの中をスマートフォンで撮影したケース
福岡縣那珂川市のドラッグストアで、20代女性Vさんのスカートの中を撮影したとして、那珂川市職員のAさんが性的姿態等撮影の疑いで逮捕されました。
福岡県警察春日警察署によりますと、Aさんは、那珂川市のドラッグストアで、面識のないVさんに背後から近づき、自分のスマートフォンでVさんのスカートの中を撮影した疑いが持たれています。
警察の調べに対して、Aさんは「スマートフォンをスカートの中を撮影したことは間違いありません」と容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)
1,性的姿態等撮影罪について
〈性的姿態等撮影罪〉(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の映像に係る電磁的記録の消去等に関する法律。以下「性的姿態撮影等処罰法」と言います。)
2条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
1号 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治40年法律第45号)第177条第1項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
2号 刑法第176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
3号 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
4号 正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2項 前項の罪の未遂は、罰する。
3項 前2項の規定は、刑法第176条及び第179条第1項の規定の適用を妨げない。

いわゆる盗撮行為については、これまでも各都道府県が定める迷惑防止条例などにより処罰の対象となっていました。
しかし、迷惑防止条例は、都道府県ごとに処罰対象が異なるなど、必ずしもこれらの条例などでは対応しきれない場合もありました。
そこで、そのような場合に対応するために、2023年7月13日に性的姿態撮影等処罰法が施行され、性的姿態等撮影罪を設けることで盗撮行為を厳罰化し、都道府県ごとに処罰対象が異なるといった状態も解消されることになりました。
性的姿態等撮影罪は、正当な理由がないのに、ひそかに、人の性的な姿態を撮影した場合に成立します。
「正当な理由」とは、例えば、医師が救急搬送された意識不明の患者の上半身裸の姿を医療行為上のルールに従って撮影する場合などが、これに該当すると考えられます。
また、「ひそかに」とは、撮影される者の意思に反して自分の性的な姿態等を撮影されることを言います。
被害者が13歳以上16歳未満の者で、加害者が20歳未満の場合、加害者が被害者よりも5歳以上年長である場合に、正当な理由なく性的な姿態等を撮影すれば性的姿態等撮影罪が成立します。
被害者が13歳から15歳の場合、加害者が18歳から20歳の場合が問題となります。
例えば、18歳のXさんが、15歳のYさんの性的な姿態等を撮影すれば、Yさんは16歳未満ですが、年齢差が5歳未満であるため、性的姿態等撮影罪は成立せず、処罰の対象外となります。
なぜ、被害者が13歳以上16歳未満の場合には、年齢差が5歳以上年長の者の行為しか処罰されないのかについて、13歳以上16歳未満の者は、相手との関係が対等でなければ性的姿態等を撮影されることについて自由な意思決定が難しくなると考えられているからです。
どのような場合に相手との関係が対等でなくなるのかについて、一般的に、相手との年齢差が大きくなればなるほど、社会経験等の差から対等ではなくなると考えられます。
上記の事例では、Aさんは、「正当な理由なく」、「ひそかに」、Vさんのスカートの中という「人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を直接または間接に覆っている部分」を自分のスマートフォンで「撮影」しているので、Aさんには性的姿態等撮影罪(性的姿態等撮影処罰法2条1号イ)が成立することが考えられます。
2,不起訴処分獲得に向けた弁護活動
性的姿態等撮影罪で逮捕されると、捜査機関により捜査され、その後検察官により起訴されるかどうかが決まります。
起訴されると裁判が開かれて、有罪判決が出ると前科が付きます。
また、上記の事例のように被疑者・被告人が公務員の場合、前科が付いてしまうと国家公務員であると地方公務員であるとを問わず公務員資格を失い、失職してしまう可能性があります。
〈国家公務員法38条〉
次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則で定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
1号 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
〈地方公務員法16条〉
次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
1号 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
「禁固以上の刑」とは、禁固刑・懲役刑・死刑を意味します。
上記の事例における性的姿態等撮影罪の法定刑は3年以下の拘禁刑(禁錮刑と懲役刑を統合した刑罰)又は300万円以下の罰金であるため、裁判で有罪となり拘禁刑の刑罰が科された場合には、公務員資格を失い、失職してしまう可能性があります。
しかし、検察官が不起訴処分とすると、裁判が開かれることはないため、有罪判決を受けてしまうおそれはなくなります。
そのため、不起訴処分獲得に向けた弁護活動を行うことが重要であると考えられます。
性的姿態等撮影罪は被害者が存在する犯罪であるため、被害者の方との示談交渉を試みます。
そして、弁護士が加害者の立場から、被害者の方に対して反省・謝罪の意思を伝え、被害の弁償などを行うことにより示談の成立を目指します。
示談と言っても内容は種々様々であり、事件を当事者間で解決し将来の民事訴訟を予防することを内容とする単なる示談や、加害者の謝罪を受け入れ加害者に対する刑事処罰を望まないことを意味する宥恕条項付き示談、被害届の取下げや刑事告訴の取消しを内容とする示談などがあります。
示談交渉は当事者でもできますが、性的姿態等撮影罪をはじめとする性犯罪事件では被害者は加害者から直接接触されることを拒むことが通常といえ、また、示談の内容もさまざまであり、刑事事件に関する高度な知識や経験が要求されるといえるため、当事者間で示談交渉を行うことはあまり得策とはいえません。
示談交渉は、交渉のプロである弁護士に依頼して、少しでも不起訴処分獲得の可能性を高めることが肝要です。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県那珂川市において性的姿態等撮影罪の当事者となりお困りの方、ご家族等が性的姿態等撮影罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に関する知識や経験が豊富な弁護士が在籍しております。
性的姿態等撮影罪の当事者となりお困りの方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が性的姿態等撮影罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
【事例解説】建造物侵入罪とその弁護活動(公民館にある女性用トイレに侵入したケース)
【事例解説】建造物侵入罪とその弁護活動(公民館にある女性用トイレに侵入したケース)
今回は、福岡市内にある公民館の女性用トイレに侵入したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:公民館にある女性用トイレに侵入したケース
福岡市内の公民館にある女性用トイレに正当な理由なく侵入したとして、建造物侵入の疑いで福岡市内に住む会社員のAさんが逮捕されました。
警察によりますと、福岡市内の公民館から「男性が女性用トイレに入っていた」と届け出があり、公民館の館長や目撃者の徴取を行うなどの捜査を行い、Aさんを特定し逮捕に至りました。
警察の調べに対し、Aさんは「女性が用便する音を聞くために女性トイレに入った事に間違いはありません」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,建造物侵入罪について
〈建造物侵入罪〉(刑法130条前段)
正当な理由がないのに、…人の看守する…建造物…に侵入し…た者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
建造物侵入罪は、正当な理由がないのに、人の看守する建造物に侵入した場合に成立する刑法の犯罪です。
「人の看守する」とは、他人が事実上管理・支配しているという意味であり、例えば、管理人や監視員が置かれているとか、施錠されている場合がこれに該当します。
「建造物」とは、住宅・邸宅以外の工作物で、屋根があり壁や柱で支えられて土地に定着し、人が出入りできる構造のものを言います。
例えば、官公庁の庁舎、学校の校舎、工場、駅舎、神社などが「建造物」に該当します。
「侵入」とは、管理権者の意思に反する立ち入りを言います。
そのため、管理権者の承諾がある場合には、管理権者の意思に反する立ち入りとは言えず「侵入」には該当しないことになります。
もっとも、立ち入りについて承諾があったとしても、その承諾の範囲外の場所に立ち入れば、その部分については承諾が無いと言えるため、「侵入」に該当します。
過去の裁判例では、銀行のATMを利用する他の客のカードの暗証番号などを盗撮する目的で、銀行員が常駐しないX銀行支店出張所に営業中に侵入した場合には、X銀行支店の支店長の承諾を欠くとして、建造物侵入罪が成立するとしました。(最高裁判決平成19年7月2日)
また、建造物侵入罪において承諾し得る看守者は、当該建造物の管理権者です。
上記の事例で言えば、「人の看守する」公民館の管理権者である館長が公民館への立ち入りを承諾し得る看守者であり、男性であるAさんが女性用トイレに入ることについて承諾は無かったと言えるため、Aさんの公民館の女性用トイレへの立ち入りは「侵入」に該当し、建造物侵入罪が成立することが考えられます。
2,身柄拘束からの解放に向けた弁護活動
逮捕・勾留による身柄拘束は、最長で23日間続き、その間に警察と検察の取調べが行われます。
被疑者勾留は原則10日、延長が認められればさらに10日を超えない範囲で身柄を拘束されます。
そのため、被疑者勾留は、延長が認められなかったとしても10日間は警察署の留置施設にて身柄を拘束される可能性があります。
そうなれば、上記の事例のように、被疑者がどこかに勤めている場合には、その間勤め先を無断欠勤することになりますが、10日も無断欠勤を許してくれる勤め先はあまりなく、懲戒解雇などの不利益を被ることになります。
そこで、弁護士は被疑者の早期の身柄解放に向けた弁護活動を行います。
そもそも、被疑者勾留が認められるのは、被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文、60条1項各号)
そのため、それらのおそれを否定し得る客観的な証拠や事情の収集活動を通じて早期の身柄解放の実現を目指します。
例えば、被疑者と被害者とが面識がない場合、被疑者が被害者の住所や連絡先を知らず、被害者を威迫するなどして証拠の隠滅を図るおそれは低く、証拠隠滅のおそれを否定し得る客観的な事情と言えます。
また、被疑者に養っている家族がいる場合や定職についている場合には、それらを捨ててまで逃走することは一般的に見て考え難いため、そのような事情は被疑者の逃亡のおそれを否定し得る事情となります。
以上のような弁護活動を行い、被疑者の早期の身柄解放の実現を目指します。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において建造物侵入罪の当事者となりお困りの方、あるいはご家族等が建造物侵入罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件・少年事件を専門的に取り扱っている法律事務所であり、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験し、当該分野において高い実績を誇ります。
建造物侵入罪の当事者となり捜査機関の捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が建造物侵入罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
【事例解説】脅迫罪とその弁護活動(知人に対してSNSを使って親族を殺すなどと言って脅迫したケース)
【事例解説】脅迫罪とその弁護活動(知人に対してSNSを使って親族を殺すなどと言って脅迫したケース)
今回は、福岡市内に住む知人女性に対してその親族に危害を加えるなどと脅迫したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:知人に対してSNSを使って親族を殺すなどと言って脅迫したケース
福岡市内に住む知人女性VさんにSNSを使ってVさんの親族を「殺すぞ」などと脅迫した疑いで、福岡県警察博多警察署は、福岡市博多区在住の無職のAさんを逮捕しました。
Aさんは、福岡市中央区に住むVさんに対して、SNSアプリを使ってVさんの親族を「殺すぞ」などと危害を加える内容のメッセージを送り、脅迫した疑いが持たれています。
Vさんが博多警察署に相談したことで事件が発覚しました。
その後、博多警察署はAさんから任意で事情を聴き、容疑が固まったため、逮捕に至りました。
警察の調べに対し、Aさんは「間違いありません」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,脅迫罪について
〈脅迫罪〉(刑法222条)
1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
刑法の脅迫罪は、①生命、身体、自由、名誉又は財産に対して②害を加える旨を告知して③人を④脅迫した場合に成立します。
脅迫罪における③「人」とは、自然人を言い、④「脅迫」とは、一般に人を畏怖させるに足りる害悪を告知することを言います。
また、害悪の告知が相手方に伝わった時点で既遂となり、その結果として相手方が現実に畏怖したかどうかは問われません。
例えば、職場の同僚に殺害予告を内容とするメールを送ったところ、それを一読した同僚が豪胆な性格であったために畏怖しなかった場合でも、脅迫罪が成立することになります。
また、①加害の対象は、1項は生命、身体、自由、名誉または財産であり、2項は告知の相手方の親族の生命、身体、自由、名誉または財産でなければなりません。
2項における「親族」は民法上の親族であるため、告知の相手方の恋人や内縁関係にある者に対しての加害の告知は2項の処罰の対象にはなりません(なお、1項の処罰の対象となる可能性があります。)。
そして、②告知の方法については何の制限もありません。
そのため、文書、口頭、態度などいずれの方法でもよく、また、行為者が直接相手方に告知する場合でだけでなく、第三者を媒介にして間接的に告知する場合でも脅迫罪は成立します。
上記の事例では、AさんはVさんの親族に対してSNSアプリを使って「殺すぞ」などと害を加える旨を告知しているため、Aさんに脅迫罪(222条2項)が成立することが考えられます。
2,示談交渉の重要性
脅迫罪は被害者が存在する犯罪であるため、被害者との示談交渉を試みます。
示談交渉は、事件の当事者同士でも行うことはできます。
しかし、上記の事例のような脅迫事件の場合、被害者側はとても怖い思いをしており、加害者側からの示談交渉の打診を拒み、示談交渉ができないことも充分に考えられます。
そこで、弁護士が間に入り、加害者の立場から、被害者に対して被害弁償や反省・謝罪の意思を伝えることで、被害者側との示談交渉を試みます。
事件の加害者側から直接連絡されて示談交渉を持ち掛けられるよりも、守秘義務を負った弁護士を相手にする方が被害者側としても示談交渉に応じやすい場合もあります。
また、示談と言っても加害者側にだけ都合の良い内容で示談を成立させることは難しいです。
被害者側の意向を汲み取りつつ、宥恕(加害者を許し、加害者に対する刑事処罰を望まないという意味)付き示談の成立や、被害届の取下げや刑事告訴の取消しを内容に加えた示談を成立させることが肝要と言えます。
しかし、これらの内容で示談を成立させることは刑事事件に関する知識・経験が求められるため、当事者同士で交渉して示談を成立させるのは難しいと言えます。
そのため、示談交渉は交渉のプロであり、刑事事件に関する知識・経験が豊富な弁護士に依頼することがオススメです。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において脅迫罪の当事者となりお困りの方、あるいはご家族等が脅迫罪の当事者となり身柄拘束されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験しており、当該分野において高い実績を誇ります。
脅迫罪の当事者となり在宅事件で捜査機関の捜査を受けている方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が脅迫罪の当事者となり逮捕・勾留により身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
【事例解説】名誉毀損罪とその弁護活動(インターネット上で大学生らの名誉を毀損したケース)
【事例解説】名誉毀損罪とその弁護活動(インターネット上で大学生らの名誉を毀損したケース)
今回は、自称ユーチューバーAさんが、大学生Vさんら2人がA自身のことを殺害する計画を立てたという趣旨の動画を撮影し動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿してVさんら2人の名誉を毀損したというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:インターネット上で大学生らの名誉を毀損したケース

千葉市に住む25歳の自称「ユーチューバー」Aさんが、大学生と中学生が自分を殺害する計画を立てたとする内容の動画を、動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿してVさんら2人の名誉を傷つけたとして、名誉毀損の疑いで逮捕されました。
容疑を一部、否認しているということです。
逮捕されたのは撮影した動画をユーチューブに投稿する活動をしている自称「ユーチューバー」で、千葉市緑区在住のAさんです。
警察によりますと、ことし6月、21歳の男子大学生V1さんと15歳の女子中学生V2について、2人が自分を殺害する計画を立てたとする内容の動画をユーチューブに投稿しVさんら2人の名誉を傷つけたとして、名誉毀損の疑いがもたれています。
動画の配信後、2人の父親から警察に被害の届け出があったということで、Aさんは調べに対し、「動画を投稿したことは認めるが、名誉毀損をしようと企てたものではない」などと話し、容疑を一部否認しているということです。
警察が詳しいいきさつを調べています。
(NHK 首都圏NEWS WEB 2023年11月09日 20時34分のニュース記事を一部変更し引用しています。)
1,名誉毀損罪について
〈名誉毀損罪〉
「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法230条1項)
名誉毀損罪は、①公然と②事実を摘示し、③人の④名誉を⑤毀損した者は、⑥その事実の有無にかかわらずに成立し、刑罰を受けることになります。
①「公然」(公然性)とは、不特定又は多数人が認識できる状態を言います。
また、摘示の相手方が特定かつ少数の者であったとしても、その人たちを通じて不特定又は多数の者に広がっていき摘示された事実が認識できる状態になっていれば、公然性が認められます(伝播性の理論)。
②摘示される事実は、人の社会的評価を害するに足りるものでなければなりません。
そして、摘示される事実は非公知の事実に限られず、公知の事実でも、摘示される人の社会的評価を害するに足りるものと認められれば、名誉毀損罪にいう事実の摘示に該当します。
また、摘示される事実はある程度具体的な内容を含むものでなければならないので、単なる価値判断や評価は含まれません。
そして、事実の摘示において対象とされる者が誰であるかが明示される必要はないが、それにより人の社会的評価が害される危険性が必要となるため、例えば、モデル小説や新聞記事などで仮名を使ったとしても特定の人物のことを指すことが見た人にとって認識できる程度に具体的であれば、その特定の人物の社会的評価を害する危険性が認められ「事実を摘示し」たと言えます。
③「人」とは、自然人のみならず法人(例えば株式会社など)やその他の団体もこれに含まれます。
④「名誉」とは、既に述べましたが、外部的名誉、すなわち社会が人に与える評価(社会的評価)を言います。
なお、名誉毀損罪にいう「名誉」とは法的保護に値するものでなければならず、消極的な評判や悪評のようなものは「名誉」には含まれません。
⑤「毀損」とは、人の社会的評価を害するに足りる行為を行うことを言います。
また、名誉毀損罪は抽象的危険犯(実際に結果が発生する必要はなく、結果発生のおそれが認められれば犯罪が成立)であるため、実際に人の社会的評価が害された結果の発生は必要ではなく、害される行為があればそれにより「毀損」行為と認められます。
⑥「その事実の有無にかかわらず」とは、摘示された事実が真実であるか虚偽であるかは問わないことを意味します。
例えば、ある男女が不倫関係にあることを「公然と」暴露するような行為は、不倫という事実が真実であれ虚偽であれ、社会的評価を害するおそれがある以上、名誉毀損罪が成立することになります。
2,名誉毀損罪とその弁護活動
名誉毀損罪で逮捕・勾留された場合、最長で23日間の間、身柄を拘束されることになります。
その間に警察と検察の取調べを受け、最終的に検察官に起訴されるか否かが決められます。
被疑者は法律についてあまり詳しくなく、取調べを一人で受けるため、どのように対応すればよいか不安を抱えていることが多いです。
法律の専門家である弁護士であれば、面会に行き、適切かつ丁寧なアドバイスを行うことができます。
たとえば、警察からこのように言われたらどのように答えればよいか、あるいは黙秘を貫くべきかなどが、弁護活動の一例と言えます。
そのため、逮捕・勾留により身柄拘束を受けた場合には弁護士による迅速なサポートを受けることが重要と言えるでしょう。
また、名誉毀損罪は親告罪でもあります(刑法232条1項)。
親告罪とは、被害者の告訴が無ければ公訴を提起することができない犯罪のことを言います。
そのため、弁護活動としては、被害者に対して謝罪の意思を示し、被害の弁償を行うことで告訴を取り消してもらえるよう示談の成立に向けた活動を行います。
示談の成立により被害者に告訴を取り下げてもらえれば、検察官は起訴することができなくなるため、前科が付くことを回避できます。
そして、被疑者勾留による身柄拘束がなされるのは、被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合です(刑事訴訟法207条1項、60条1項各号)。
しかし、示談が成立すれば、被疑者にそれらのおそれはないと判断されやすく、早期の身柄解放が期待できます。
以上から分かることは、刑事事件はとにかくスピードがなによりも重要ということです。
名誉毀損罪で逮捕・勾留された場合には、刑事弁護の経験や実績が豊富な刑事事件に特化した弁護士の迅速なサポートを受けることが重要となってきます。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において名誉毀損罪でお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、名誉毀損罪でお困りの方からの法律相談を初回無料で承っております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
【事例解説】窃盗罪とその弁護活動(コンビニエンスストアで雑貨など商品を万引きしたケース)
【事例解説】窃盗罪とその弁護活動(コンビニエンスストアで雑貨など商品を万引きしたケース)
今回は、コンビニエンスストアで化粧品など商品を万引きしたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:コンビニエンスストアで雑貨など商品を万引きしたケース

福岡市南区内のコンビニエンスストアで雑貨、飲食物や化粧品の3点(合計約1万円)を盗んだとして、福岡県警察南警察署は、福岡市南区在住の会社員Aさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
警察によりますと、Aさんの万引きに気付いた店員が警察に通報し、現場に駆け付けましたが、Aさんは既に店から立ち去っていました。
その後、防犯カメラの映像を確認するなどの捜査によりAさんを特定し、逮捕に至りました。
警察の調べに対し、Aさんは「盗んだことに間違いありません」と供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)
1,窃盗罪について
〈窃盗罪〉(刑法235条)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一般的に万引きと呼ばれる行為は、刑法では窃盗罪に該当します。
そして、窃盗罪は、①他人の財物を②窃取した場合に成立します。
また、上記の他に③故意(刑法38条1項)と条文上明記されてはいませんが④不法領得の意思が必要になります。
①他人の「財物」とは、所有権の対象であれば広く保護の対象となります。
しかし、経済的にも主観的にも価値が認められないような場合には、保護の対象となりません。
判例では、メモ紙1枚(最高裁判決昭和43年3月4日)やちり紙13枚(東京高裁判決昭和45年4月6日)などが財物性を否定されています。
②「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことを言います。
③故意とは、犯罪事実の認識・認容を言い、窃盗罪の場合は他人の財物を窃取することを認識し、窃取することになっても構わない(認容)していることを言います。
④不法領得の意思とは、Ⓐ権利者を排除して他人の物を自己の所有物として(権利者排除意思)、Ⓑその経済的用法に従いこれを利用・処分する意思(利用処分意思)を言います。
Ⓐの権利者排除意思は、窃盗罪と使用窃盗(例えば、他人の自転車を数分間勝手に乗り回すことなど)を区別するために必要とされます。
Ⓑの利用処分意思は窃盗罪と毀棄・隠匿罪との区別のために必要とされます。
例えば、会社の同僚を困らせる目的で、仕事で使うパソコンを持ち帰った場合は、窃盗罪ではなく器物損壊罪(刑法261条)の成立が検討されることになります。
上記の事例では、Aさんは雑貨などの商品を窃取しており、コンビニエンスストアの商品を窃取することを認識しているため、Aさんに窃盗罪が成立することが考えられます。
2,身柄拘束の回避に向けた弁護活動
窃盗罪で逮捕されると、警察で48時間、検察で24時間身柄を拘束され、取調べを受けることになります。
その後、検察官がさらに被疑者の身柄を拘束する必要があると判断した場合、検察官は裁判官に対して逮捕よりも長期の身柄拘束である勾留を請求します。
そして、検察官の勾留請求が認められると、被疑者は勾留されることになります。
勾留期間は、原則として10日、さらに必要があると判断された場合は10日を超えない範囲で延長が認められます。
そのため、逮捕から計算すると、最長で23日間、身柄拘束を受けることになります。
勾留による長期の身柄拘束は、被疑者だけでなくその家族にも様々な影響を及ぼします。
10日も無断欠勤を許してくれる勤め先というのはなかなか無いため、勤め先から解雇されることも考えられます。
職を失うということは収入が無くなることになるため、これまで通りの生活を送ることは難しくなるでしょう。
このように、勾留による身柄拘束は被疑者やその周囲に対して様々な不利益をもたらすことがあると言えます。
しかし、勾留請求の前に事件を受任した場合には、勾留による身柄拘束の回避に向けた弁護活動を行うことができます。
被疑者の勾留が認められるのは、被疑者が住居不定、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合です。
そのため、弁護士は、検察官が勾留請求する前に、被疑者が勾留の要件を充たさない旨の意見書を提出し、勾留請求しないよう働きかけ、被疑者の身柄拘束の解放を求めます。
また、仮に検察官が勾留請求したとしても、裁判官にも意見書を提出し、検察官が勾留決定をしないよう働きかけて身柄拘束からの解放を求める活動を行うことができます。
勾留に対する意見書は、被疑者が勾留される前に提出する必要があるため、逮捕された場合にはできるだけ早く弁護士に依頼することがオススメです。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において窃盗罪の当事者となりお困りの方、あるいはご家族等が窃盗罪の当事者となりお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に特化した弁護士が在籍しており、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験してきました。
窃盗罪の当事者となりお困りの方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が窃盗罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
【事例解説】詐欺罪と否認事件における弁護活動(コンサートのチケットをめぐり被害者かお金を騙し取ったケース)
【事例解説】詐欺罪と否認事件における弁護活動(コンサートのチケットをめぐり被害者かお金を騙し取ったケース)
今回は、コンサートのチケットをめぐり、被害者からお金を騙し取ったという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:コンサートのチケットをめぐり被害者からお金を騙し取ったケース
「チケットが余っていて、買ってくれる人を探している」などとSNS上でかたり、20代の女性Vさんから現金約50万円を騙し取ったとして、福岡県春日市在住のAさんが詐欺の疑いで逮捕されました。
警察によりますと、AさんはSNS上で「チケットが余っていて、買ってくれる人を探している」などとかたり、コンサートのチケットの購入を呼び掛けていました。
そこに、Vさんがチケットの購入を希望してきたため、Aさんは、Vさんに宿泊交通費やその他の費用など約50万円を自分の銀行口座に振り込ませ、騙し取った疑いがもたれています。
被害に遭ったVさんが、品物が届かないことを不審に思い、警察に相談して事件が発覚し、被害届を提出しました。
警察の調べに対して、Aさんは「品物はあとで送るつもりだった」などと供述し、容疑を否認しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,詐欺罪について
〈詐欺罪〉(刑法246条1項)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪は、刑法に定められた人を欺いて財物を交付させた場合に成立する犯罪です。
「人を欺」く行為(欺罔行為)とは、欺罔行為の相手方を錯誤に陥らせる行為、すなわち相手方が財物や財産上の利益を交付(処分)しようと判断する際の、その判断の重要な事項を偽ることを言います。
「財物」とは、所有権の対象となり得る物であれば広く保護されますが、経済的にも主観的にも全く無価値な物は保護されません。
過去の裁判例では、メモ紙1枚(大阪高等裁判所判決昭和43年3月4日)やちり紙13枚(東京高等裁判所判決昭和45年4月6日)などが財物性を否定されています。
詐欺罪は、欺罔行為→相手方の錯誤→錯誤に基づく交付(処分)行為→財物または財産上の利益の移転がそれぞれ原因と結果の関係になければなりません。
欺罔行為を行ったが、その相手方が錯誤に陥らず別の理由(例えば、欺罔行為者にお金がないことを知っていて憐みからお金を渡したなど)で交付(処分)行為を行った場合は、詐欺罪は既遂とはならず未遂にとどまることになります。
そして 、詐欺罪は他人の財産を侵害する犯罪であるため、条文上の記載はありませんが成立には財産的損害の発生が必要とされています。
財産的損害が発生したか否かは経済的に評価して損害が発生したかどうかを実質的に見て判断されることになります。
過去の裁判例では、価格相当の商品を提供したとしても、事実を知ればお金を払わないといえるような場合において、商品の性能等につき真実に反する誇大な事実を告知して相手方を誤信させてお金を受け取った場合には、相手方に対する詐欺罪が成立するとしたものがあります。(最高裁判決昭和34年9月28日)
2,取調対応
上記の事例において、Aさんは「品物は後で送るつもりだった」と供述し、詐欺罪の容疑について否認しています。
また、Aさんは逮捕により身柄拘束を受けています。
身柄拘束を受けている被疑者は、外部との接触ができなくなることで不安や恐怖を抱え、そのような状態で密室の取調室で捜査官による取調べを受けることになります。
密室で一人きりで取調べを受けることになり不安を抱えた被疑者の精神状態などを考慮すると、冷静に取調べに臨むことが難しいと言えます。
また、容疑を否認しているからと言って、やみくもに黙秘権を行使すれば、取調官の取調べがきつくなったり、「このままじゃ帰れなくなる」などの逮捕に続く勾留を匂わせて被疑者を不安や恐怖をあおって被疑者に供述させるような取調べが行われることも考えられます。
また、取調べにおける被疑者の供述は供述調書となり、その後裁判が開かれる場合には証拠として重要な役割を持つことになるため、取調べにおいては慎重な供述が求められます。
もっとも、被疑者の精神状態や適切な黙秘権の行使については、刑事事件の専門的や知識や経験が要求されると言えます。
しかし、弁護士であれば、被疑者と接見し、適切な黙秘権の行使など取調べの対応についてアドバイスをすることができます。
また、被疑者に対して違法または不当な取調べが行われた場合には、被疑者が黙秘権を行使することが難しくなります。
そのような違法または不当な取調べが行われたことを被疑者から報告を受けた場合には、然るべき機関(警察の場合は捜査官や警察署長)に対して抗議します。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において詐欺罪の当事者となりお困りの方、あるいはご家族等が詐欺罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に関する知識・経験が豊富な弁護士が在籍しております。
詐欺罪の当事者となりお困りの方に対しては、初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が詐欺罪の当事者となりお困りの方に対しては、初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
【事例解説】在宅事件における弁護活動(万引きで現行犯逮捕されたがその後釈放され在宅事件として捜査を受けているケース)
【事例解説】在宅事件における弁護活動(万引きで現行犯逮捕されたがその後釈放され在宅事件として捜査を受けているケース)
今回は、万引きで現行犯逮捕されたが、その後釈放されて在宅事件として捜査を受けることになったという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例 :万引きで現行犯逮捕されたが釈放され在宅事件として捜査を受けているケース
Aさんは、福岡市博多区のショッピングモール内のスーパーマーケットで5000円相当の食料品を自分のバッグに入れて万引きし、店を出ようとしたところ、店員に見つかり事務所に連れて行かれ、出入り禁止の誓約書等を書かされました。
その後、店側が警察に通報し福岡県警察博多警察署の警察官が臨場し 、その場で現行犯逮捕されました。
Aさんは博多警察署に連行されて取調べを受けた後、Aさんの家族が身元引受人となり釈放されました。
そして、Aさんは、在宅事件として捜査を受けることになりました。
(事例はフィクションです。)

1,窃盗罪について
〈窃盗罪〉
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。(刑法235条)
世間一般で言われる万引きという行為は、刑法での窃盗罪に該当します。
そして、窃盗罪は、①他人の財物を②窃取した場合に成立します。
①「財物」とは、財産的価値のある有体物(個体・液体・気体)であるとするのが判例・通説です。
また、電気は無体物であるため原則として財物には当たりませんが、「電気は、財物とみなす。」(刑法245条)と規定されており、「財物」と同じように扱われるため、窃盗罪における「財物」として保護の対象になります。
②「窃取」とは、他人の占有する財物を、占有者の意思に反して、その占有を侵害し自己又は第三者の占有に移転させることを言います。
上記の事例で言えば、スーパーマーケットの所有者あるいは店長などの責任者が占有する食料品を、スーパーマーケットの所有者あるいは店長などの責任者の意思に反して、その占有を侵害し、Aさんは自分のバッグに入れて自分の占有に移したと言えるため、Aさんの行為は「窃取」に該当すると考えられます。
また、窃盗罪は故意犯であるため、故意(刑法38条1項)と条文上要求されていませんが不法領得の意思が必要となります。
故意とは、犯罪事実の認識・認容を言い、窃盗罪における故意は他人の財物を窃取することの認識・認容を言います。
不法領得の意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物として(権利者排除意思)その経済的用法に従い利用し処分する意思(利用処分意思)を言います。
権利者排除意思は、窃盗罪と使用窃盗(他人の財物を一時的に使用すること)を区別するために必要となります。
利用処分意思は、窃盗罪と毀棄罪(例えば、器物損壊罪)との区別のために必要となります。
過去の裁判例では、教員が校長を恨んでおり、校長に責任を負わせるために教育勅語謄本等を教室の天井裏に隠したという事件では、当該教員に利用処分意思が認められず、窃盗罪の成立が否定されました。(大審院判決大正4年5月21日)
2,在宅事件になる場合とその弁護活動
事件・事故を起こしてしまった場合でも、逮捕の必要性があると判断されなければ、逮捕による身柄拘束を受けずに、捜査機関による捜査を受けることになります。
このような場合を一般的に在宅事件と言います 。
逮捕の必要性は、以下の条文に定めがあります。
〈刑事訴訟法199条2項ただし書〉
裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。次項及び第201条の2第1項において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。
ただし、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
〈刑事訴訟規則143条の3〉
…逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。
被疑者が逮捕されるのは、被疑者に逮捕の理由(「罪を犯したと疑うに足りる相当の理由」)と必要性(逃亡や証拠隠滅のおそれ等)が認められる例外的な場合です。
そのため、たとえ被疑者に逮捕の理由が認められたとしても、被疑者が逃亡または証拠を隠滅するおそれがない場合には、被疑者は逮捕されないことになります。
もっとも、逮捕されないといっても事件が終了するわけではなく、警察は犯罪を捜査し、その後速やかに書類および証拠物とともに事件を検察官に送ることになります。(刑事訴訟法246条本文)
そして、検察官により、在宅事件として起訴されるか不起訴になるかが判断されます。(刑事訴訟法248条)
そのため、在宅事件における弁護活動としては、不起訴処分の獲得または実刑回避に向けた活動に重点をおくことが考えられます。
被害者が存在する犯罪の場合には、被害者との示談交渉を試みます。
上記の事例の場合、被害品の買い取り等の被害弁償を行い、謝罪文・反省文を作成し被害者に送付し謝罪・反省の意思を示すことや示談金の支払いにより、示談の成立を目指します。
もっとも、店舗によっては、示談に応じないという姿勢をとっている場合があるため、被害者が不快な感情を抱かないよう細心の注意を払って示談交渉を試みる必要があります。
示談が成立すれば、それを検察官に主張すれば、起訴猶予による不起訴処分の獲得が期待できます。
また、示談が成立しなかったとしても、被疑者が反省し、前科や余罪もないなどの事情があれば、略式起訴により罰金刑が言い渡され、宣告された金額を納付することで手続きが終了することが考えられます。
罰金刑も前科は付きますが、懲役又は禁錮などの身柄拘束を受ける刑罰ではないため、その後の社会生活における影響を最小限度に抑えることができます。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内において万引きの当事者となり在宅で捜査を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件を専門的に取り扱っており、これまでにさまざまな刑事事件・少年事件を経験して、高い実績がございます。
福岡県内において万引きの当事者となり在宅で捜査を受けている方、あるいはこれから刑事事件になるおそれがある方には、初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
まずはお気軽にフリーダイヤル「0120-631-881」までご連絡ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
【事例解説】ひき逃げとその弁護活動(自転車で走行中の被害者に車でぶつかり怪我を負わせ、その場から逃走したケース)
【事例解説】ひき逃げとその弁護活動(自転車で走行中の被害者に車でぶつかり怪我を負わせ、その場から逃走したケース)
今回は、自転車を運転していた被害者に車でぶつかったにもかかわらず、その場から逃走したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:自転車で走行中の被害者に車でぶつかり怪我を負わせ、その場から逃走したケース

福岡市城南区の交差点で、自転車に乗って交差点を横断していたVさんに誤って車でぶつかり、怪我を負わせたにもかかわらずその場から逃走したとして、福岡市南区在住の会社員Aさんが逮捕されました。
Vさんは、加療約10日の怪我を負いました。
福岡県警察城南警察署は、事件当時、近くを走っていた別の車のドライブレコーダーの映像を解析するなどした結果、Aさんの犯行と特定しました。
警察の調べに対して、Aさんは容疑を認めたうえで「怖くなって逃げてしまった」などと供述しているとのことです。
(事例はフィクションです。)
本件の事例において、Aさんには、Vさんに誤って車でぶつかり怪我を負わせたことにつき過失運転致傷罪が、事故を起こしたにもかかわらずVさんの救護をすることなく逃走し、警察に報告しなかったことにつき救護義務違反・報告義務違反が成立することが考えられます。
以下、それぞれについて検討・解説致します。
1,過失運転致傷罪について
〈過失運転致傷罪〉
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」と言います。)5条)
過失運転致傷罪は、自動車の運転に必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合に成立します。
なお、運転者の過失運転により被害者に発生した傷害の結果が軽いものであるときは、情状により、その刑が免除される可能性があります。
「自動車の運転上必要な注意」とは、自動車の運転を行う上で必要とされる注意を言い、「自動車」には、車だけでなく原動機付自転車(原付)も含まれます。
2,救護義務違反・報告義務違反について
〈救護義務〉
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。 (道路交通法72条1項前段)
〈救護義務違反の罰則〉
車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第72条(交通事故の場合の措置)第1項前段の規定に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。(道路交通法117条1項)
前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。(道路交通法117条2項)
交通事故があった場合は、事故を起こした車両等の運転者その他の乗務員には、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する義務を負います。
救護義務に違反した場合、違反者には、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
また、死傷の原因が運転者の運転に起因するものである場合には、その運転者に対しては、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることになります。
〈報告義務〉
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。同項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第75条の23第1項及び第3項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない。(道路交通法72条1項後段)
〈報告義務違反の罰則〉
次の各号のいずれかに該当する者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。(道路交通法119条1項柱書)
第72条(交通事故の場合の措置)第1項後段に規定する報告をしなかった者(同項17号)
事故を起こした場合に、車両等の運転者は、警察に対して事故が発生した日時及び場所等を報告する義務を負い、この義務に違反した場合は、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されることになります。
救護義務とは、交通事故が発生した場合に、その車両の運転者等は、救急車を呼ぶなど当該事故の負傷者を救護する義務をいいます。
救護義務違反は、もし事故を起こした車両の運転者等が、たとえば負傷者の存在を認識していたがその場から立ち去ったなど、負傷者を救護する義務を果たさなかった場合に成立します。
報告義務とは、交通事故が発生した場合に、車両の運転者等は、当該事故が発生したことを警察官若しくは警察署に対して報告する義務をいいます。
報告義務違反は、この報告をすることなく、当該事故を起こした車両の運転者等がその場から立ち去った場合に成立します。
上記の事例では、AさんはVさんにぶつかり怪我を負わせましたが、運転していた車を停止してVさんを救護することなく、また、事故が発生したことも警察に報告することもなくその場から逃走しています。
そのため、Aさんには、救護義務違反・報告義務違反が成立することが考えられ、両者は観念的競合となります(刑法54条1項前段)。
3,ひき逃げ事案における弁護活動
(1)ひき逃げの加害者が負う責任
過失運転致傷罪が成立する場合には、刑事上の責任のみならず、民事上、行政上の責任を負うことになります。
刑事上の責任として、7年以下の懲役若しくは禁錮、または100万円以下の罰金が科されます。
民事上の責任として、過失運転致傷の加害者は、被害者から不法行為責任(民法709条)を追及され、被害者が負った怪我に対する治療費、通院にかかった交通費や傷害を受けたことによる精神的苦痛に対する慰謝料等の肉体的・精神的損害を金銭的に評価し、その金額の賠償を請求されることになります。
さらに、行政上の責任として、過失運転致傷の加害者には、当事者の過失や被害者の被害の程度などを考慮した上で点数が付与され、免許の停止や取り消しなどの処分が科されることになります。
もっとも、違反点数が累積15点以上の場合に免許取り消しの処分が下されるところ、上記の事例のように、加害者に過失運転致傷罪が成立するだけでなく、救護義務違反も成立する場合、救護義務違反の違反点数は35点であるため、加害者は、たとえ過去に一度も違反歴が無いとしても免許取り消しとなります。
(2)示談
ひき逃げ事案の場合、被害者が存在します。
そのため、被害者との示談交渉を試みます。
示談交渉は、当事者同士でも行えますが、当事者同士での交渉は拗れて上手くいかない可能性があります。
しかし、弁護士が間に入ることで、被害者の方に安心していただき、冷静かつ丁寧に加害者が反省・謝罪の意思があり、被害弁償をする準備があることを伝えることで、示談の成立を目指します。
もっとも、ただ謝罪・反省の意思を述べて被害弁償をするだけでなく、宥恕条項(加害者の謝罪を受け入れて加害者に対する刑事処罰を望まないことを意味する条項)や刑事告訴の取消などの約定を加えた内容での示談を成立させることが肝要となります。
(3)情状弁護
前述の通り、救護義務違反の違反点数は35点であるため、仮に被疑者に違反歴がないとしても、一発で免許取り消しとなります。
そのため、交通事故事案の場合、車を売却することを検討し、それに伴う生活環境の変化も調整していくことも考慮する必要があります。
例えば、被疑者が車で通勤している場合には、家族等に代わりに運転してもらうなどの代替手段を模索していくことが考えられます。
そのような調整活動の内容を証拠化し、被疑者に再犯可能性が無いことを示す証拠として、検察官や裁判所に提出し、被疑者・被告人にとって少しでも有利な結果の実現を目指します。
また、被害者の怪我がそれほど重大ではないなど事案が軽微である場合や被疑者が罪を認めて反省している場合には、略式起訴されて罰金刑が科されることで事件が終了することが考えられますが、公判請求されて正式裁判になる(起訴される)可能性もあります。
その場合に備えて、入念な打ち合わせを行うなどの活動も行います。
4,まずは弁護士に相談を
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件を専門的に取り扱う法律事務所です。
ひき逃げの当事者となり在宅捜査を受けているなど身柄拘束を受けていない方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談をご提供しております。
また、家族・親族がひき逃げの当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては、初回接見サービス(有料)をご提供しております。
まずはお気軽にフリーダイヤル「0120-631-881」までお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(コンビニの元店長が店の売上金を持ち逃げしたケース)
【事例解説】業務上横領罪とその弁護活動(コンビニの元店長が店の売上金を持ち逃げしたケース)
今回は、コンビニの元店長が店の売上金を持ち逃げして逮捕されたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:コンビニの元店長が店の売上金を持ち逃げしたケース
福岡県北九州市のコンビニエンスストアの売上金約100万円を持ち逃げしたとして、業務上横領の疑いで、元店長のAさんが逮捕されました。
Aさんは、福岡県北九州市内のコンビニエンスストアに店長として勤務していた店の売上金約100万円を持ち逃げした疑いが持たれていて、福岡県警察小倉北警察署に業務上横領の容疑で逮捕されました。
警察の調べに対し、Aさんは「金額は正確には覚えていないが、お金を持ち逃げしたことに間違いはありません」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

1,業務上横領罪について
〈業務上横領罪〉(刑法253条)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
業務上横領罪は、刑法に定められた通常の横領罪を業務者という身分を有する者が犯した場合に成立する犯罪です。
そのため、まずは横領罪について解説致します。
横領罪は、①自己の占有する他人の物を②横領した場合に成立します。
また、横領罪は故意犯であるため③故意(刑法38条1項)と、条文上の記載はありませが、④不法領得の意思が必要となります。
横領罪は窃盗罪などとは異なり、既に行為者のもとに他人が所有権を有する物が存在しているため、他人の占有を侵害する犯罪ではありません。
そのため、横領罪の保護法益は、第一次的には所有権であり、また、横領行為は物を預けた人に対する裏切り行為といえるため、第二次的には委託信任関係であると考えられています。
①「自己の占有する他人の物」にいう、「物」とは財物を意味し、窃盗罪における財物と同じですが、横領罪の場合は不動産も含まれます。
「占有」とは、処分の濫用のおそれのある支配力を言い、具体的には、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態を言います。
法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人の物を処分し得る状態を言い、法律上の支配が問題となる場面は不動産の占有と銀行預金の占有です。
不動産の場合は、不動産の所有権の登記名義人は、当該不動産を実際に居住するなど事実上支配していなくても、売却など自由に処分できる立場にあるため、法律上支配していると言えます。
他人から預かった金銭を自分の口座で管理している場合は、金銭を自分の財布に入れて実際に管理しているわけではないため事実上支配しているとは言えませんが、その金銭はいつでも自分の口座から引き出すことができ、自由に処分できる立場にあるため、他人の金銭に対する法律上の支配が認められます。
また、その占有は他人からの委託信任関係を原因とすることが必要となります。
仮に、その占有が委託信任関係によらずに開始した場合、その物は誰の占有にも属していない、あるいは偶然自分の占有に属したことになり、その場合は遺失物等横領罪(刑法254条)が成立します。
そのため、横領罪における占有は他人からの委託信任関係が必要となります。
委託信任関係は委任(民法643条以下)などの契約に基づく場合のほか、取引上の信義則に基づく場合などがあります。
②「横領」とは、不法領得の意思を発現する一切の行為を言います。
横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、その物の経済的用法に従って、所有者でなければできないような処分をする意思を言います。
横領行為は、費消、着服、拐帯などの事実行為のみならず、売却、貸与、贈与などの法律行為も含まれます。
以上が横領罪の成立に必要な要件となり、業務上横領罪は、業務者という身分を有する者が横領行為を行った場合に成立します。
業務者とは、委託を受けて他人の物を保管・管理する事務を反復又は継続的に行う者を言い、質屋や運送業者などがその典型ではありますが、職務上公金を管理する公務員や会社や団体などの金銭を管理する会社員や団体役員なども業務者に含まれます。
上記の事例ですと、Aさんはコンビニエンスストアに店長として勤務しており、店のオーナーから委託を受けて店の売上金を保管・管理する事務を行う者であり、業務者に該当します。
そのため、Aさんが店の売上金約100万円を持ち逃げする行為には、業務上横領罪が成立することが考えられます。
2,示談成立に向けた弁護活動
業務上横領罪は、被害者が存在する犯罪です。
そのため、弁護士は被害者との示談交渉を試み、示談の成立に向けた活動を行います。
示談にも様々な種類があり、単に当事者間で事件が解決したと約束するものや、加害者が被害者に対して被害の弁償を行うことで、宥恕(加害者の刑事処罰を望まないこと)付き示談や、刑事告訴の取消しや被害届の取下げなどを内容に加えた示談があります。
被害者との示談を成立させる場合、宥恕付き示談や刑事告訴の取消しや被害届の取下げなどを内容に加えた示談を成立させることが望ましいといえます。
示談交渉は事件の当事者同士でも行うことはできますが、当事者同士での示談交渉は拗れて上手くいかないことも考えられます。
また、被害者がスーパーやコンビニエンスストア、書店などの場合は、そもそも示談を拒否しているところが多く、当事者同士では示談交渉すらできないこともあります。
しかし、弁護士が粘り強く交渉すれば、示談交渉に応じていただけることもあるため、示談の成立が期待できます。
そのため、示談交渉は交渉のプロである弁護士に依頼することがオススメです。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県北九州市内で業務上横領罪の当事者となりお困りの方、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件に関する知識・経験が豊富な弁護士が在籍しており、これまでに業務上横領罪をはじめとするさまざまな刑事事件・少年事件を取り扱ってきました。
業務上横領罪の当事者となりお困りの方は初回無料でご利用いただける法律相談を、ご家族等が業務上横領罪の当事者となり身柄拘束を受けている方に対しては初回接見サービス(有料)を、それぞれご提供しております。
まずはフリーダイヤル「0120-631-881」までお気軽にお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、福岡県を中心として刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の弁護経験が豊富な弁護士が、初回の相談や接見から事件解決まで一貫して、適切な対応を致します。
当事務所は、土日祝日を含め、24時間体制で、無料相談や接見(面会)・同行サービスのお電話を受け付けております。お急ぎの方につきましては、お電話をいただいたその日中に相談・接見等の弁護サービスをご提供しております。
刑事事件や少年事件に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 福岡支部 弁護士紹介
