【事例解説】傷害罪とその弁護活動(同僚と口論になり、腹を立てて手拳で顔面を殴って怪我を負わせたケース)
今回は、同僚と口論になり、腹を立てて手拳で顔面を殴って怪我を負わせたという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:同僚と口論になり、腹を立てて手拳で顔面を殴って怪我を負わせたケース
口論から腹を立て、同僚の顔面を手拳で殴ったとして、男が逮捕されました。
傷害の疑いで逮捕されたのは、福岡市の会社員Aさんです。
警察によりますと、福岡市内の飲食店に勤務するVさんから「職場の同僚から殴られた」旨の通報がありました。
警察官が現場の飲食店に駆け付け、事情を聞くなどし、Aさんが口論の末、腹を立てVさんの顔面を手拳で複数回殴り、打撲傷などを負わせたことが明らかになったため、現行犯逮捕しました。
逮捕されたAさんは、「殴ったことは間違いない」と容疑を認めているということです。
(事例はフィクションです。)
1,傷害罪について
〈傷害罪〉(刑法204条)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
傷害罪は、人の身体を「傷害」した場合に成立します。
「傷害」とは、人の生理機能を侵害することを言います。
通常は、殴る・蹴るなどの有形的方法によってなされますが、「傷害」の結果を発生させるものであれば、無形的方法によるものでも「傷害」に該当します。
無形的方法による「傷害」に該当するものとしては、嫌がらせの電話により被害者を精神衰弱症にかからせた場合(東京地裁判決昭和54年8月10日)や性病に感染した自分の性器を被害者に押し当てて性病に罹患させた場合(最高裁判決昭和27年6月6日)があります。
2,傷害罪で身柄拘束された場合の弁護活動
(1)早期の身柄解放に向けた弁護活動
傷害罪で逮捕されると、警察に48時間、その後、検察庁に身柄を送検されて24時間身柄を拘束されて取調べを受けることになります。
検察官において、捜査状況等にかんがみて、さらに被疑者の身柄を拘束する必要性があると判断した場合には、勾留請求がなされることになります。
被疑者勾留は、被疑者が定まった住居を有しない場合、被疑者による証拠隠滅または逃亡のおそれがある場合に認められます。(刑事訴訟法207条1項本文、60条1項各号)
勾留による身柄拘束は、原則として10日間、さらに拘束の必要があると判断された場合には10日を超えない範囲で延長が認められています。(刑事訴訟法208条)
傷害罪で検察官が勾留請求した場合における勾留が認められる割合は90% 近くとなっており、傷害罪で逮捕された事件のほとんどが勾留されていると言えます。
(参照:令和5年版検察庁既済事件の身柄率・勾留請求率・勾留請求却下率の推移)
したがって、傷害罪による身柄拘束は比較的長期にわたる可能性があるため、弁護活動としては、早期の身柄解放の実現を目指すことが考えられます。
被疑者勾留は、被疑者の住居不定、被疑者による証拠隠滅または逃亡のおそれがある場合に認められるため、それらを否定し得る客観的な証拠や事情を収集・主張していく必要があります。
被疑者と同居している家族が被疑者の身元を引き受ける、あるいは同居していない家族・親族でも被疑者の身元を引き受ける等の事情があれば、被疑者を監督し、裁判所や捜査機関への出頭の機会が確保されるため、被疑者の逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情となるでしょう。
また、上記の事例のように、被害者との面識がある場合には、被害者や犯行現場に接近しない旨の誓約書を作成することで、被疑者による証拠隠滅のおそれがないことを示す客観的な事情となり得ます。
そして、傷害罪は被害者が存在する犯罪でもあることから、被害者との示談交渉を行うことが考えらます。
示談の成否は早期の身柄解放だけでなく起訴・不起訴の処分に対しても大きく影響します。
そのため、弁護士は、被害者とコンタクトをとり、加害者の立場から、反省・謝罪の意を述べて、被害弁償等を行い示談の成立を目指します。
示談が成立した場合には、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれはないと考えられるため、釈放による早期の身柄解放が十分に期待できます。
(2)不起訴処分獲得に向けた弁護活動
傷害罪で公判請求されて裁判となると、有罪となり前科が付いてしまう可能性があります。
前科が付いてしまうと、その後の社会生活を送る上でさまざまな影響が出てくるおそれがあります。
たとえば、職場からの解雇、公務員や会社の採用時に前科の有無を確認され、判断材料になることがあるなどが挙げられます。
被害者との示談が成立していれば、それを検察官に主張することで、起訴猶予による不起訴処分の獲得が期待できます。
以上より、傷害罪で逮捕・勾留されてしまった場合には、少しでも早く弁護士に相談することが大切です。
3,まずは弁護士に相談を
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