【事例解説】有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪とその弁護活動(交通違反切符に知人の名前でサインしたケース)

【事例解説】有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪とその弁護活動(交通違反切符に知人の名前でサインしたケース)

今回は、複数回にわたり交通違反の切符に知人の名前を書いたというニュース記事を参考にして、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:交通違反切符に知人の名前でサインしたケース

交通違反の切符に知人の名前を書くなどした疑いで、北九州市在住のAさんが逮捕されていたことが分かりました。
有印私文書偽造などの疑いで逮捕されたのは、北九州市小倉北区在住のAさんです。
警察によりますと、Aさんは、北九州市小倉南区で軽乗用車を運転した際に、運転免許証の不携帯で警察から取り調べを受けたところ、知人男性の名前をかたり、交通違反の切符にその知人男性の名前を書くなどした疑いです。
名前をかたられた知人男性が、運転免許の更新を行った際、身に覚えのない違反があることに気づき事件が発覚したということです。
Aさんは、複数回にわたって軽乗用車を運転した際の運転免許の不携帯や、携帯電話の使用で、警察に違反切符を切られていて、その時にも同じ知人男性の名前をかたるなどしていて、警察はAさんを追送致しています。
警察の調べに対し、Aさんは、「警察官をだましたことは間違いありません」と容疑を認めていて、知人男性の名前をかたった理由について「本当の名前を話すと、熊本県で窃盗をしたことがばれると思った」などと話しているということです。
Aさんは、今回の事件で逮捕された後、熊本県警に窃盗の疑いで逮捕されています。

TNCテレビ西日本 3/19(火)18:44配信のニュース記事を参考にして、地名や内容を一部変更し引用しています。)

1,有印私文書偽造罪について

行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。刑法159条1項

有印私文書偽造罪をはじめとする文書偽造の罪刑法154条以下)は、文書に対する公共の信用を保護法益とします。
文書偽造の罪は、文書を偽造若しくは変造することで文書に対する公共の信頼を侵害する犯罪です。
有印私文書偽造罪は、①行使の目的で②他人の印章若しくは署名を使用して、③権利、義務に関する文書または図画若しくは事実証明に関する文書または図画を④偽造した場合に成立します。
②他人の「印章」とはハンコを指しますが、人の同一性を示すものであれば必ずしも氏名である必要はありません。
署名」とは、氏名その他を呼称するものを言います。
権利・義務に関する文書とは、権利・義務の発生、変更、消滅の効果を発生させることを目的とする意思表示を内容とする文書を言います。
借用証書や売買契約書などがこれに当たります。
事実証明に関する文書とは、社会生活に交渉を輸有する事項を内容とする文書を言います。
郵便局への転居届や履歴書がこれに当たります。
偽造とは、文書の名義人と作成者との人格の同一性を偽って文書を作成することを言います。
名義人とは文書から見て取れる作成者をいい、作成者とは文書作成に関する意思主体、すなわち文書に表示された意思が自己のものとして帰属することを表示した者を言います。
上記の事例で言えば、Aさん交通事件原票の供述欄に知人男性の名前で署名しているところ、交通事件原票の名義人は知人男性ですが、作成者はAさんであるため、Aさんは名義人と作成者との人格の同一性を偽ったと言え「偽造」したと言えます。
そして、偽造行為を①行使の目的で行う必要があります。

2,偽造私文書行使罪について

前2条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。刑法161条1項

偽造した文章を行使した場合に成立するところ、「行使」とは、偽造された文書を真正な文書または内容が真実な文書としてこれを他人が認識し得る状態に置くことを言います。

3,その弁護活動について

有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪で逮捕・勾留された場合、捜査機関による取調べを受けることになります。
被疑者段階における勾留は原則10日間、必要があると判断された場合には10日を超えない範囲でさらに延長されます。(刑事訴訟法208条
被疑者の勾留が認められるのは、被疑者が住居不定、被疑者に証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合です。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
そのため、弁護士はこれらの要件を否定し得る客観的な事情や証拠の収集活動を行うことで早期の身柄解放を目指します。
例えば、被疑者に家族がいる場合、ご家族が身元引受人となり被疑者を監督することを約束してもらうことで、被疑者の裁判所や捜査機関への出頭の機会が確保され被疑者の逃亡のおそれが無いことを主張することなどが挙げられます。
また、有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪の保護法益である文書に対する公共の信用は、社会や国家の利益に対する犯罪と言われ、被害者がいない犯罪でもあります。
しかし、被疑者が他人の名義を冒用(勝手に使うこと)した場合、被冒用者に対する被害が発生している可能性があります。
上記の事例で言えば、Aさんに氏名を冒用された知人男性には反則金の支払いなど間接的に被害が生じています。
弁護活動としては、文書偽造による被害が軽微である、間接的な被害者に対して被害弁償や謝罪などを行い示談が成立しているとの事情があれば、それらを主張することで起訴猶予による不起訴処分や早期の身柄解放を目指します。
また、もし起訴されてしまったとしても、被告人は罪を認めて反省しているなどの事情を公判で主張することで、減軽や執行猶予付き判決の獲得を目指します。

4,まずは弁護士に相談を

北九州市において有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪で逮捕されてしまった場合あるいは在宅事件として捜査機関の捜査を受けている場合には、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、有印私文書偽造罪及び偽造私文書行使罪でご家族等が身柄を拘束されてしまっている方に対しては初回接見サービス(有料)を、在宅事件で捜査機関の捜査を受けている方には初回無料でご利用いただける法律相談を、それぞれご提供しております。
お気軽にご相談ください。

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