【痴漢】新種の痴漢(触らない痴漢)
新種の痴漢(触らない痴漢)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡市南区に住むAさんは、JR南福岡駅からJR博多駅に向かう電車内で、女性Vさんに近づきVさんの頭に顔を近づけてVさんの匂いをかぐ痴漢行為を繰り返していたところ、JR博多駅を降りたところで待ち伏せしていた福岡県博多警察署の警察官に福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動の罪)の被疑者として事情を聴かれることになりました。実はVさんは以前からAさんらしき人から同様のことをされる痴漢被害に遭っており、福岡県博多警察署に相談していたところAさんが痴漢の犯人である疑いが高まり今回の事態に至ったようです。その後、Aさんは逮捕されてしまいました。逮捕の通知を受けたAさんの妻は弁護士に早期釈放のための弁護活動を依頼しました。
(フィクションです。)
~新種の痴漢~
痴漢と言えば、人の身体に触れる行為が典型ですが、近年は
触らない痴漢
という新種の痴漢が増えてきているようです。
具体的には、
・人に近づいて匂いを嗅ぐ
・息を吹きかける
・鞄を押し当てる
などのほか、
AirDrop痴漢
といって、AirDrop機能(iPhoneやiPadなど米アップル製端末に標準搭載されている機能で、半径9メートル以内の通信可能な所有者の名前が画面に一覧で表示され、名前を選ぶと、すぐに写真や動画を送受信できる機能)を利用して、全く見ず知らずの人のスマートフォン宛にわいせつな写真や動画を送信しこれを閲覧させる手口もあります。
なぜ、こうした痴漢が増えてきているかといいますと、仮に痴漢として検挙されたとしても「触れてないから痴漢ではない」という言い訳ができるからだそうです。
しかし、こうした新種の痴漢も犯罪として検挙される可能性があります。
福岡県迷惑行為防止条例(以下、条例)では、盗撮、痴漢を禁止する条文と同じ条文の中で「卑わいな言動」を禁止する規定を設けています。
条例6条1項では
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で次に掲げる行為をしてはならない。
とし、その1号、2号で、
1号 他人の身体に直接触れ、、又は衣服の上から振れること。
2号 前号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
としています。1号が、いわゆる従来の痴漢に関する規定で、2号がいわゆる新種の痴漢(卑わいな言動)に関する規定です。ここで、「卑わいな言動」とは
社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいう
とされており、世間的にみて「卑わいだな」と思われるものはこの規定で処罰される可能性があります。
罰則は、
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(条例11条1項)
あるいは、常習として行った場合は
2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(条例12条1項)
とされています。
~釈放に向けた弁護活動~
Aさんは痴漢の逮捕後は,「警察→検察→裁判所」での手続を踏むことが予定されます。ただし、「警察」、「検察」、「裁判所」の段階で釈放との判断がなされることがあります。仮に、「裁判所」でも釈放と判断されない場合は、勾留されたことになるでしょう。勾留期間は、検察官の勾留請求があってから10日間,その後は「やむを得ない事由」がある場合に限り,最大10日間の勾留延長が認められています。このように,勾留されてしまうと,比較的長期間の身柄拘束を受け,その期間が長引けば長引くほど,日常生活へ与える影響は大きくなります。したがって,早めの早めに釈放に向けた弁護活動を開始することが望まれます。
釈放に向けた弁護活動(起訴前)には,①検察官に送致前,②検察官の勾留請求前,③勾留後の3段階があります。①,②の段階では,警察や検察官,裁判官に対し意見書などを提出するなどして身柄を拘束しないよう働きかけます。また,③の段階では,法律上の不服申し立ての手段を用いたり,不起訴処分を求める意見書を提出するなどして,満期(勾留請求から10日後)前の身柄解放,勾留延長期間の短縮などにも努めます。
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