人を殺す罪
福岡市中央区に住むAさんは、手足が不自由でうつ病で悩む友人Vさんから「自殺して楽になりたい」との相談を受けていました。そこで、Aさんはハーネスを購入してVさんに装着し、Vさんを福岡市中央区の大濠公園の池まで連れて行き、入水させて溺死させました。翌朝、散歩中の男性が池に浮かんでいるVさんを発見し、福岡県中央警察署に通報しました。中央警察署の警察官が付近の防犯カメラなどを捜査していたところ、ハーネスを着用したVさんを運ぶAさんを特定。Aさんは自殺幇助罪で逮捕されました。
(フィクションです)
~ 人を殺す罪 ~
人を殺す罪については刑法199条で殺人罪、刑法201条で殺人予備罪、刑法202条で自殺関与罪、同意殺人罪が規定されています。このうち、自殺幇助罪は自殺関与罪に当たります。
~ 自殺関与罪 ~
まずは、刑法202条の規定から確認しましょう。
刑法202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。
= 自殺が不可罰なのになぜ処罰されるの? =
「~自殺させ」までの部分が自殺関与罪に関する規定です。自殺は本来不可罰とされています。しかし、自分の命をどうするのかは他人の手に委ねられるべきものではなく、自分自身で決めるものです。また、命の断絶について他人の手に委ねることをよしとする世の中としてしまうと、他に生きる選択肢があるにもかかわらず、容易に死を選択してしまう世の中になってしまうとも限りません。そこで、他人の命を絶つことはやはり違法とし、処罰することとしているのです。
= 自殺幇助罪 =
それでは、自殺幇助罪についてご説明いたします。
* 幇助して自殺させる *
幇助して自殺させるとは、既に自殺の決意のある者の自殺行為に援助を与え、自殺を遂行させることをいいます。他方で、「教唆して自殺させる」とは、自殺の意思のない者に自殺を決意させて、自殺を遂行させることをいいます。本件は、VさんがAさんに「自殺して楽になりたい」などと言って自殺の意思を表明していたことが認められることから自殺幇助罪とされたのだと考えられます。
幇助行為は、例えば、自殺志願者に自殺器具を与えるなどの有形的(物質的)方法によるものであると、「君は死んだ方がいい」「死んだ方が楽になるよ」などとの言葉をかけるなどの無形的(精神的)方法によるものであるとを問わないとされています。また、積極的手段(作為)であると消極的手段(不作為)によるものであるとを問わないとされています。
* 争点になりやすい事柄 *
自殺はその意味を理解し得る能力のある者自身が自由な意思決定に基づいてその生命を断絶することですから、自殺を援助する相手方は、少なくとも自殺が何たるかを理解し得る能力とともに自由に意思決定をなし得る能力を有する者であることを必要とします。その意味では、幼児、心神喪失者などは自殺幇助罪の客体とはなり得ません。
自殺幇助罪では、相手方が「自殺の意味を理解できる者」であったか、自殺が「自由な意思決定に基づくもの」だったのか否かが争点となることがあります。仮に、相手方が「自殺の意味を理解できない者」、自殺が「自由な意思決定に基づいていない」などと判断された場合は殺人罪で処罰されるおそれもあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、自殺幇助罪をはじめとする刑事事件、少年事件を専門とする法律事務所です。自殺幇助罪その他の刑事事件、少年事件でお困りの方は、まずは、お気軽に0120-631-881までお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております
(福岡県中央警察署までの初回接見費用:35,000円)