うその申告で軽犯罪法違反
福岡県うきは市に住むAさんは,うきは市内の駐車場で,ナイフを突き付けてきた男に現金約180万円を奪われたとうきは警察署の警察官にうその通報をしたとして,軽犯罪法違反(虚構申告の罪)の疑いで書類送検されました。福岡県うきは警察署の捜査過程でうそであることが判明したようです。Aさんは,お金に困っていたと話しています。Aさんは,刑事事件に強い弁護士に無料法律相談を申込みました。
~ 軽犯罪法(虚構申告の罪) ~
軽犯罪法の1条では,1号から34号までに規定する者を拘留又は科料に処すると定めています。そして,16号には,
虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者
と規定しています。これが虚偽申告の罪の規定です。以下,詳しく解説いたします。
= 「虚構の」とは =
「虚構の」とは,存在しない事実を存在するように装うことをいいます。すなわち,根も葉もないことをいいます。したがって,「虚偽」あるいは「不実」というのとは異なります。実在する事実に若干の変更を加える程度では足りません。言い換えれば,基本的事実関係が存在すれば,多少大げさに述べても「虚構」とはいえません。もっとも,人がかすり傷を負ったにすぎないものを殺されたと述べるように,極端に針小棒大になれば「虚構」に当たることになります。
= 「犯罪又は災害の事実」とは =
「犯罪又は災害の事実」とは,犯罪又は災害が発生したこと自体に関するものをいいます。「事実」というだけあって,犯罪又は災害の発生については,事実といえるだけの具体性をもった内容の申告がなされることを要します。すなわち,犯罪又は災害の概要のほか,概略の日時,場所等が明示により,あるいは暗黙のうちに分かるものでなければなりません。
= 「申し出る」とは =
「申し出る」とは,自発的に申告することをいいます。申告の方法は問いません。ただし,自発的に申告するこを要しますから,公務員の質問に対して虚偽の答弁をする場合は含まれません。
~ 虚偽申告の罪と他の法令に規定する罪との関係 ~
虚偽申告の罪に当たる行為を行えば,他の犯罪に該当するおそれがあることから注意が必要です。
= 刑法 =
刑法172条には虚偽告訴の罪が規定されています。
刑法172条
人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で,虚偽の告訴,告発その他の申告をした者は,3月以上10年以下の懲役に処する。
「虚偽」とは,申告の内容とするところの刑事・懲戒処分の原因となる事実が,客観的事実に反することをいいます。犯人でないと思って申告したところ,実際は犯人だった(客観的事実)という場合は虚偽申告の罪は成立しません。
虚偽申告罪が成立する場合は,虚構申告の罪は吸収され適用されることはありません。
= 消防法 =
消防法44条では「次のいずれかに該当する者は,三十万円以下の罰金又は拘留に処する。」とし,その10号で,
正当な理由がなく消防署,第十六条の三第二項の規定により市町村長の指定した場所,警察署又は海上警備救難機関に同条第一項の事態の発生について虚偽の通報をした者
と規定しています。「同条第一項」の事態とは,「製造所,貯蔵所又は取扱所における危険物の流出その他の事故」のことをいいます。消防法の罪は,虚構申告の罪に対しての特別規定であることから,消防法の罪が成立した場合は虚構申告の罪は成立しません。
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