ラーメン店主の名誉棄損罪で示談 

ラーメン店主の名誉棄損罪で示談 

福岡県久留米市で長年ラーメン店を経営してきたベテランのAさんは近年の経営難に悩みを抱えていました。Aさんの個人としては,経営難に陥った原因の1つとして,約1年前に,Aさんの店から約100メートル離れた場所に新種のラーメンを提供するラーメンB店が進出し,従来からAさんのお店に足を運んでいたお客さんを奪われ,客足が遠のき売上が減少したことにあると考えていました。そこで,Aさんは,なんとかこの経営難を乗り切ろうと,B店に対する悪評を流すことを思いつきました。Aさんは,グルメサイトのB店に対する口コミ欄に「ここは(B店は)お客の残した麺,スープを使いまわしている」「ラーメンだけではない,ご飯や餃子など全てだ」などと書き込みました。すると,ある日,Aさんは,福岡県久留米警察署から名誉棄損罪で呼び出しを受けました。そこで,Aさんは,今後のことが不安になって刑事事件専門の弁護士に無料相談を申込みました。
(フィクションです)

~ 名誉棄損罪(刑法230条) ~

刑法230条1項
 公然と事実を摘示し,人の名誉を毀損した者は,その事実の有無にかかわらず,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

= 公然と事実を摘示 =

公然とは,不特定又は多数人が認識し得る状態と解されています。そして,不特定又は多数人が認識し得る状態は,不特定又は多数人の視聴に達し得べき状態であれば足り,現実に,人々が覚知したことを要しないとされています。
事実を摘示するとは,人の社会的評価を低下させるおそれのある具体的事実を指摘,表示することをいいます。例えば,Aさんのように「ここは(B店は)お客の残した麺,スープを使いまわしている」「その人は不倫している」などと言った場合です。他方で,「B店のラーメンはまずい」「店主は愛想が悪い」と言った場合,これは事実を摘示したことにはならず,単なる意見・憶測に過ぎませんから,侮辱罪(刑法231条)に当たることはあっても名誉棄損罪に当たることはありません。
ところで,グルメサイトの口コミ欄などはインターネットを経由して,誰でも,いつでも閲覧することが可能です。よって,Aさんが口コミ欄に上記内容を書き込む行為は「公然と事実を摘示した」ことに当たる可能性が高いです。もっとも,口コミ欄には,様々な感想・意見が書き込まれることが予定されています。しかし,その許容限度を超えた場合は侮辱罪となったり,Aさんのように悪評を流す目的で事実を書き込んだ場合は名誉棄損罪となることがあるので注意が必要です。

= 事実,名誉 =

ところで,上記で出てきた「事実」とは,それが真実か否かを問いません。これは考えてみれば当然のことですが,よく誤解されやすいため注意が必要です。「名誉」とは,人の社会的評価又は価値と解されています。そのため名誉棄損罪は,人の社会的評価又は価値の保護を目的として作られた罪名です。そして,事実が真実である場合よりもむしろ根も葉もない虚偽,嘘の場合の方が人の社会的評価又は価値を失墜させるおそれは大きい場合もあります。ですから,後者の場合にも,名誉棄損罪で処罰され得ることになります。
Aさんの例でいうと,ラーメン店が麺,スープなどを使いまわしするというのはほとんど稀なケースです。ですから,根も葉もない事実の可能性が高いですが,それでも名誉棄損罪の「事実」に当たることになります。

= 毀損 =

毀損とは,人の社会的評価又は価値を低下させることをいいます。ただし,その評価が現実に害されたことを必要とするものではなく,これが害されるおそれのある状態が発生したことで足りるとされています。

= 名誉毀損罪が成立しない場合 =

刑法230条の2第1項では,摘示された事実が

1 「公共の利害に関する事実」であって, 
2 摘示行為の目的が公益を図ることにあったと認められ,
3 摘示された真実であったことの証明があったとき 

は罰しないと規定しています。例えば,政治家や公務員などのスキャンダルと公表し,上記の要件を満たした場合などがこれに当たります。また,3に関しては,真実であることの証明ができなかったとしても,当時の状況から真実であると信じるに足りる根拠があった場合には名誉棄損罪の故意がなく,名誉棄損罪は成立しないとされています。
ただし,Aさんについては,上記1から3の要件には該当しがたいと思われます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,名誉棄損罪等の刑事事件でお悩みの方のための無料法律相談等を随時受け付けています。まずはフリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

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