農機具を運んで盗品等運搬罪
本日は、盗品等運搬罪について、あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県福津市に住む農家のAさん(60歳)は、同じ農家である友人Bから「農機具が壊れたから運んでくれないか?」と言われました。そこで、Aさんはトラックを運転してBさんと一緒に農機具が置かれているという山中の畑に行きました。現場に着くと、AさんはBさんから「あれだよ。」と、Bさんが言う壊れた農機具を示されました。AさんはBさんとの長年の経験から、「ここはBさんの畑か?」「農機具は本当にBさんのものか?」と少し疑念がよぎりましたが、それ以上Bさんに尋ねることなく運搬を了承しました。その日は、Aさんは農機具をトラックに載せるための器具を忘れてしまったためいったん帰り、後日、畑に来てトラックに農機具を積み込み、農機具をBさんに指示された場所まで運びました。ところが、後日、Aさんは、福岡県宗像警察署から盗品等運搬罪の被疑者として呼び出しを受けてしまいました。Aさんは、「やっぱりあれはBさんのものではなかったんだ」などとすごく後悔し、宗像警察署で事実をありのままに話しました。一方の、Bさんは、宗像警察署に窃盗罪で逮捕されたようです。
(フィクションです)
~ 盗品等に関する罪について ~
他人の物を盗んだ場合は窃盗罪に当たります。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
では、その盗品を処分(運搬、保管、譲り渡しなど)した場合はどんな罪に問われるでしょうか?
まず、窃盗犯人が処分した場合は、不可罰的事後行為と呼ばれ罪に問われることはありません。
窃盗犯人の処分行為についても窃盗罪で評価されている、というのがその理由です。
他方、窃盗犯人から依頼を受けた他者が処分した場合は、
盗品等に関する罪
という窃盗罪とは別の罪に問われる可能性があります。盗品等に関する罪は刑法256条に規定されていますから、まずは条文から確認しましょう。
刑法256条
1項 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
2項 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。
1項では、盗品を無償で譲り受ける行為、2項では、運搬、保管、有償での譲り受けのほか、有償処分(売買)のあっせん(あっせん自体は有償、無償を問わない)の行為が規定されています。
なお、「盗品」とは、財産犯によって取得された財物であって、被害者が法律上その返還を請求できるものをいいます。財産犯には、窃盗罪のほかに
・強盗(刑法236条など)
・詐欺(刑法246条など)
・背任罪(刑法247条)
・恐喝罪(刑法249条)
・横領(刑法252条など)
も含まれます。
Bさんのような本犯がこれらの罪を犯した結果得たもの(盗品)を処分すれば盗品等に関する罪に問われる可能性があります。
~ 盗品等運搬罪について ~
Aさんが問われている罪は、盗品等運搬罪です。
同罪は刑法256条2項に規定されていました。
「運搬」とは、盗品等を場所的に移転することをいいます。有償、無償は問いません。
移転の距離は、必ずしも遠いことを要しないとされていますが、少なくとも被害者の追求が困難となる程度の場所的移転は必要とされます。
また、運搬罪に限らず、盗品等に関する罪は、盗品等を受け取った時点で、それが盗品等であることを認識していなければ罪に問われることはありません。
ただ、この認識の程度は、はっきりと「盗品等だ」との確定的なものである必要はなく、「本当にBさんのものかな~」「どこかから盗んできたものじゃないのかな~」など未必的なものであれば足りるとされています。
Aさんのように友人のためによかれと思って行った行為が、思わぬ犯罪につながるということにもなりかねません。
本当にご本人のものかどうか不安、心配なときは、本当に自分のものかどうか本人に尋ねる、あるいはそもそも処分を引き受けない、という心構えが必要でしょう。
盗品等に関する罪の弁護活動についても被害者との示談交渉が主となります。
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