喧嘩相手が重傷なった傷害事件を参考に、警察署に自首すべきですかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
先日、会社員のAさんは、知人と一緒に天神にある居酒屋で酒を飲みました。
その帰り道、タクシー乗り場に並んで順番を待っていたところ、順番を抜かしてきた若い男性と口論になってしまいました。
この男性に胸倉を掴まれたAさんは、咄嗟に男性の手を払いのけて両手で男性の身体を突き飛ばしました。
その結果、男性は後方に転倒し、コンクリートの地面で後頭部を強打したようです。
Aさんは、倒れた男性を残してその場を立ち去り別の場所でタクシーに乗車して帰宅しましたが、翌日のニュースで男性が意識不明の重体に陥っていることを知りました。
Aさんは、警察署に出頭すべきか悩んでいます。
(フィクションです)
傷害罪
他人に暴行を加え傷害を負わせてしまうと傷害罪が成立します。
今回の事件でAさんは、相手の男性に傷害を負わせる気はありませんでしたが、身体を突き飛ばすという暴行の結果、男性は意識不明の重体に陥っています。
このような場合でも、暴行の故意があれば傷害罪が成立してしまうのです。
傷害罪は暴行罪の結果的加重犯とされ、さらに、意識不明の男性が死亡した場合は、傷害致死罪が適用されます。
当然、傷害罪が成立するには、暴行によって傷害を負ったという因果関係が必要となり、暴行と傷害に因果関係がない場合は、暴行罪が成立するにとどまります。
ちなみに、暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」ですが、傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と厳しく、傷害罪致死罪は「3年以上の有期懲役」と更に厳罰化されています。
自首
Aさんは、ニュースを見て被害者が意識不明に陥って、事件を警察が捜査していることを知りました。
そして自ら警察署に出頭しようか悩んでいます。
この出頭が自首に当たるのかについて検討します。
自首とは
①犯罪行為(事件)自体を警察等その捜査機関が把握していない場合
②警察等の捜査機関が犯罪行為(事件)を把握しているが、犯人が判明していない場合
の何れかに、捜査機関に犯人自らが出頭することです。
Aさんの出頭が自首にあたるとすれば②のケースになるでしょう。
Aさんが警察署に出頭するまでに犯人がAさんであることが判明していた場合は、Aさんの出頭は自首に当たりませんが、もし、捜査機関においてAさんが犯人だと判明していなければ、Aさんの出頭は自首となるでしょう。
刑法第42条の自首について明記した条文には「~自首したときは、その刑を減軽することができる」と自首が、刑の任意的な軽減事由に当たることが定められています。
~明日に続く~