口座売買と刑事事件
口座売買について、あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県筑紫野市に住む会社員のAさんは、会社の業績の落ち込みで給料が減り、借金の返済が滞っていました。そこで、何とかお金を捻出できないかとインターネットを閲覧していたところ、「あなたのキャッシュカードを1万円で買い取ります。」と書かれたページを見つけました。Aさんは、なんとなく怪しそうなページだし、自己名義のキャッシュカードを全く見ず知らずの第三者に譲り渡すことは悪いとは分かっていながら、しかしお金に困っていたためキャッシュカードを送ることに決めました。そして、Aさんはタンスの中などくまなく探したところ、5年ほど前に開設した◎◎銀行口座のキャッシュカードを発見しました。Aさんは、「これなら今後使うこともない。」と思い、レターパックに暗唱番号を書いた紙、自己名義の◎◎銀行のキャッシュカードを同封して指定された送り先へ郵送しました。すると、後日、Aさんは、福岡県筑紫野警察署より、犯罪による収益の移転防止に関する法律違反の疑いで呼び出しを受けてしまいました。Aさん名義の◎◎銀行の口座が不正な取引用の口座であると銀行側から疑われて口座凍結措置を受け、銀行から筑紫野警察署に通報があったことがきっかけで本件が発覚したようです。
(フィクションです。)
~ なぜ口座売買が違法なのか? ~
口座売買とは、自分の名義で作成した銀行口座の通帳やキャッシュカードを売ったり買ったりする行為を指します。
売買された口座は振り込め詐欺(投資勧誘詐欺や還付金等詐欺など)、資金洗浄(ヤミ金融業者、マネーロンダリング)、ネットショッピング詐欺など、さまざまな犯罪で悪用され、特殊詐欺グループ、ヤミ金業者、暴力団組織などの活動を助長しかねないからです。
最近は、厳密な本人確認はあるものの、スマホアプリを通じても口座を作成できる金融機関も登場し、利用者の利便性はますます高まっています。しかし、他人に利用させるために口座を開設したり、開設した口座を他人に譲り渡すといったことは、決してやってはいけません。
~ 口座売買に関する罪 ~
① 犯罪収益移転法にかかる罪
自分以外の人に通帳、キャッシュカード(預金通帳等)を譲り渡すなどした場合に問われる罪です。
預金通帳等の中には通帳、キャッシュカードのほかにも、暗証番号なども含まれます。
なお、無償で譲り渡すなどする場合は「相手方が他人になりすまして銀行との間における預貯金契約のサービスを受けること又は第三 者にさせる目的があること」の認識 が必要ですが、有償でした場合は、その認識は不要とされています。
罰則は、無償の場合も、有償の場合も「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」又は併科です。併科とは、懲役刑、罰金刑の両方を科されることをいいます。
② 詐欺罪
現在では、どの金融機関も、預金規定により他人による口座の利用や、口座の譲渡は禁止しているのが通常です。にも関わらず、口座を他人に利用させたり譲渡したりす る意図を隠して口座を開設することは、金融機関を騙して口座を開設したことになり、詐欺罪(刑法246条)に問われる可能性があります。
刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
もっとも、事例のAさんは◎◎銀行口座を5年ほど前に開設し、それから今までキャッシュカードを使わずに持っていたとのことで す。
これからすると、詳細な口座開設の目的は分かりませんが、少なくとも他人に譲渡する意思ではなく、自ら使用するつもりで口座を開設したものと考えられます。したが って、◎◎銀行口座の開設については詐欺罪は成立しないと考えられます。
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